「日本」論についてとは? わかりやすく解説

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「日本」論について

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/24 23:21 UTC 版)

網野善彦」の記事における「「日本」論について」の解説

晩年期著作である『「日本」とは何か』において、一般的な日本人の「孤立した島国」という日本像は改めるべきであると述べ実際日本が「列島」であり、「アジア大陸東辺の懸け橋」として、周辺の海を通じて多くの人や物がたえまなく列島出入りしていると主張している。また、日本」という国号古くからいつのまに決まっているという見方見直すべきであり、実際は「日本」という国号七世紀末、689年実行され飛鳥浄御原令によって定まりそのときから「日本」ははじめて地球上現れのである主張する(なお、日本国号の成立期に関して異説もある)。 日本人とはただ「「日本国」の国制の下にある人々」であると定義し日本国家の出発点以前には日本日本人存在しない考えている。つまり、現在の日本国支配する地域暮らしていたのが「日本人」だと定義することは誤りだと述べている。小・中・高の教科書には国名関わる記述はなく、逆に縄文時代日本」、「弥生時代の日本人」などと書かれているが、実際それぞれの時代日本日本人存在していなかったと主張し、「旧石器時代日本人がいた」という新聞記事現れているが、これらは「神代」から日本始まったという戦前史観と近いとしている。 また、成立当初日本国家、つまり7世紀末から日本国家が支配する地域現在の日本列島日本国領域同じだったというわけではなく、自然に国境定まったわけではない主張している。「日本国」という国家は「侵略」と「征服」で領域広げた意識しておくべきであると述べている。アイヌ民族琉球人などに限らず日本国家の支配者蝦夷なども侵略され軍事力背景とした力による圧服であった主張しそういった認識をもつべきだとしている。 沈仁安北京大学教授)は、「『倭』『倭人』が、日本日本人古代呼び方であることは、中国学界では、疑問はない」「『倭人日本人ではない』の論拠あるいは史料根拠はないか不足しており、さらに主としてその論証方法多く問題」「歴史事実からも無論のこと、論理からも成立しがたい」として、網野の『「日本」とは何か』における「日本」は特定の国家国号であることを根拠に「倭人日本人ではない」という主張や、倭寇全て日本人ではなく古代倭人勢力は、東海地区より以東には達しておらず、朝鮮半島南部にも倭人がいたとする主張批判している。網野の「『倭寇』の実態国家をこえた海を生活の舞台とする人々動きであり、『倭人』はけっして日本人と同じではない」という主張は、13世紀から16世紀にかけて発生形成発展変遷過程変化している倭寇概括的に解釈することは、具体的な歴史過程隠し具体的な問題対す具体的な分析の方法論の原則符合しない批判した。また沈は、前期倭寇主力日本人領主武士商人)であることは間違いなく後期倭寇他国人が加わっても、主力果たしたではなく倭寇起源活動初期日本人と関係があるため、「日本古代呼び方である『倭』寇命名」したのであり、千数百以後歴史的事実紀元前後に形成された「倭」「倭人」で解釈することは方法論からも不適当批判している。中国文献の「倭」は異なる表現であり、「倭」は地名、「倭人」「倭種」は種族名、「倭国」は地名及び政治的実態指しているが、政治的実態「国」は日本列島政治的統一従い変化、「倭国」と呼ばれていたのは、列島基本的に統一していたことを意味し、最も早く「倭」に言及した中国文献は、数種の地名種族名国家名以外はなく「『倭』が指しているのは、疑いなく一致しており、後の日本」とする。また、網野の「紀元前1世紀文献現れる倭人』と日本国成立後日本人とは、列島西部においては重なるとしても、けっして同一ではない」「3世紀の『倭人』の勢力は、たとえ邪馬台国近畿にあったとしても、現在の東海地域以東には及んでいないと見てよかろう」「関東人中部九州人は成立当初日本国国制の下に入っているので『日本人』ではあるが、けっして『倭人』ではなかったのである」という主張については、網野は「倭」の意味支配領域理解しており、支配領域によって「倭人」を解釈しているが、中国文献現れる元来の「倭人の意味符合していないと批判している。網野の「『倭人』と呼ばれた人々は、済州島朝鮮半島南部などにもいたと見られるが、新羅王成立後朝鮮半島の『倭人』は新羅人となっていった。このように倭人』と『日本人』とが同一視できないことを、我々は明確に確認しておく必要がある」という主張については、周知の事実として古代朝鮮半島南部居住していたのは韓人であり、列島倭人入手するため、産出する朝鮮半島南部弁韓侵犯ないし交流したため、弁韓倭人がいたのは確実であるが、列島倭人移住していただけであり、この場合「『日本人』と同一視してよい」と述べている。また、朝鮮半島南部(特に弁韓)の種族韓人ではなく倭人呼ばれるなら、江上波夫井上秀雄国分直一角林文雄井伊章などが主張している「広義倭人論」となるが、「広義倭人論」は「いかなる史料根拠」もなく、網野が「広義倭人論」の史料根拠確実な分析をせずに、結論受け入れているのは軽率、と述べている。網野は「『日本』が特定の時点で、特定の意味をこめて、特定の人々定めた国家の名前-国号である」「『日本人』という語は日本国国制の下にある人間集団を指す言葉である」「日本国成立出現以前には、日本日本人存在せず、その国制の外にある人々日本人ではない。『聖徳太子』は『倭人』であり、日本人ではない」として「倭人日本人ではない」と主張するが、沈は、網野は「日本国国制」の定義をしていないが、おそらく「律令体制」を指しているとみて間違いなく聖徳太子推古朝改革律令体制始まりということができ、そこから数えると大宝律令制定まで律令体制完成して1世紀にわたり、孝徳朝の大化の改新から数えて半世紀となり、日中文献から推測できるのは、670年代700年代初期、さらに遡るなら天武天皇時代672年686年)に「日本」の国号確定した可能性高く網野の「『日本』の国号成立以前列島人がすべて日本人でない」に従えば聖徳太子孝徳天皇天智天皇日本人ではなく、ひどい事例では、天武天皇半分倭人半分日本人であり、国号改名前は倭人国号改名後日本人化け、沈は「歴史は、連続性継承性があり、歴史家主観的意図によって任意に歴史断ち切ってならない」として、日本国制形成国号確定同時ではなく国制50年100年経て形成国号天皇の詔令により解決でき、「二つ異な範疇事柄混同」していると批判している。また網野訪韓時に韓国人が「倭寇壬辰倭乱日帝36年」を取り上げて日本人の『暴虐』」を批判したことを、豊臣秀吉2度朝鮮侵略日帝植民地支配は「一言弁明もなく頭を下げるが、『倭寇』をこれに加えるについては、事実反するとして承服しない」と述べているが、網野見方でいうと「豊臣秀吉日本人であり、倭人ではない」ことになり、「『倭』乱」と呼んではいけないが、網野は「壬辰『倭』乱」について異議唱えていない。「倭人日本人ではない」は一貫しておらず、網野見方列島歴史を描くなら、「日本史」は「日本」と国号定めた時点からだけ描くことができ、それより以前倭人歴史となり、それとは別個に描くしかなく、網野は、日本通史で「縄文時代日本」「弥生時代の日本」を、「日本国」はまだないとして否定的な態度示しているが、縄文時代弥生時代前期にも「倭」の呼称はまだ存在せず網野見方でいうと、縄文時代弥生時代前期歴史は、「また別に描かなくてはならない」が、しかし網野はその視点による大枠提起せず、その視点どのように貫徹する判断しようがないと述べている。 古田武彦は、網野は「倭国」は7世紀末まで、「日本国」は8世紀初頭以後という基本認識について、7世紀以前関連して例えば「九州王朝」「近畿天皇家とは別個の王朝」というような実体的な歴史認識示されておらず、結果7世紀以前は、日本国非ず」という主張が、「単なる『名議論』『国名言い換え論』に陥っている」と指摘しており、さらに古田は「網野説の場合、『倭国日本国との国名変化に関する先行説であるわたしの立説をとりあげ、それと自家の新説網野説)との異同論ずきだった思われる。それが学者として先行説に対す学的礼儀だったのではあるまいか」と苦言呈している。

※この「「日本」論について」の解説は、「網野善彦」の解説の一部です。
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