発疹チフスとは? わかりやすく解説

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はっしん‐チフス【発×疹チフス】

読み方:はっしんちふす

ほっしん発疹チフス


ほっしん‐チフス【発×疹チフス】

読み方:ほっしんちふす

リケッチア一種プロワツェキイがシラミ媒介により感染して起こる感染症1014日間潜伏期ののち発症し高熱全身細かな発疹出て意識混濁うわごとなどの脳症状を示す。感染症予防法4類感染症の一。かつてヨーロッパで戦争飢饉(ききん)時に流行をみることが多かったはっしんチフス


発疹チフス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/08/19 06:55 UTC 版)

発疹チフス
別称 camp fever, jail fever, hospital fever, ship fever, famine fever, putrid fever, petechial fever, epidemic louse-borne typhus,[1] louse-borne typhus[2]
Rash caused by epidemic typhus
概要
診療科 感染症内科学
分類および外部参照情報
ICD-10 A75.1
ICD-9-CM 080-083
DiseasesDB 29240
MedlinePlus 001363
eMedicine med/2332
MeSH D014438

発疹チフス(ほっしんチフス、: epidemic typhus)は、発疹チフスリケッチア[3](リケッチア・プロワゼキイ、Rickettsia prowazekii)の感染を原因とする細菌感染症感染症法における四類感染症である。「チフス」の名称がつき症状も類似しているが、腸チフスパラチフスとは全く別の疾患であり、感染経路も異なる。

原因

リケッチアの一種である発疹チフスリケッチア(Rickettsia prowazekii)の感染を原因とする。コロモジラミ(Pediculus humanus)またはアタマジラミにより媒介される。自然感染したムササビが発見されたため、人獣共通感染症の可能性が指摘されている。

疫学

人口密集地域、不衛生な地域に見られ、衣服に付くシラミやダニが媒介することから、冬期、または寒冷地で流行が見られる。特に戦争・飢饉・牢獄・収容所などに好発し、「戦争熱」「飢饉熱」などの通称がある。

例えば、1812年のナポレオンのロシア遠征などである。第一次世界大戦のロシアでは3000万人が罹患し、10%が死亡した。またナチス・ドイツのユダヤ人強制収容所でも発生し、大きな被害を出したが、これには、アウシュヴィッツをはじめとするユダヤ人収容所が存在したポーランドが、歴史的に、発疹チフスの発生を繰り返してきた土地であった事にも注目する必要がある。『アンネの日記』のアンネ・フランクも、アウシュヴィッツ第二収容所からベルゲン・ベルゼン強制収容所に移送された後、発疹チフスによって死亡したとされている[4]ほか、独ソ戦でも両軍に多数の死者を出している。

日本では明治20年頃から感染が診られるようになり、日本軍の大陸侵攻が進んだ明治後期より昭和20年代にかけて流行したが、1955年昭和30年)以降報告されていない。20世紀初頭にはそのほか世界各地でもみられたが、現在ではアフリカ南アメリカの高地といった寒冷地を中心に発生する。

症状

潜伏期は1から2週間。発熱頭痛悪寒、手足の疼痛などで突発し、高熱、全身に広がる発疹が特徴的症状である。皮疹は体幹の斑状の紅斑や丘疹からはじまり次第に手足に広がってゆく。手掌、足蹠をおかさないとされる。重症例では点状出血様になる。頭痛・精神錯乱などの脳症状が強いのも特徴である。致死率は年齢により異なり、20歳まででは5%以下であるのに対して、加齢に伴い増加し、60歳以上では100%近くなる。発疹チフスの初感染から回復したヒトに発生する再発型リケッチア症があり、これは Brill-Zinsser病 と呼ばれ[5]患者は新たな病原体の供給源になる[5]

診断

寒天培地に代表される、培地を用いた培養は成功しない。培養細胞を用いた発疹チフスリケッチアの増殖・培養は設備があれば容易である。血清学的には蛍光抗体法などによって診断され、スタンダードである。また遺伝子工学的にはポリメラーゼ連鎖反応によって診断可能であり、感度特異度・診断までのスピードのどれをとってももっとも優れているが、コンタミネーションに気をつける必要がある。世界的に見ると、本症の流行地においてはこのような高価な最先端の方法は行いづらいという問題がある。

治療

感受性のある抗生物質が有効である。

予防

予防は、衣服や寝具なども含め身体を清潔にし、シラミを少なくすることが有効である。このことから戦後直後の日本では進駐軍が持ち込んだDDTがシラミ駆除に用いられたが、1981年(昭和56年)以降DDTの輸入、製造、利用は禁止されている。

出典

  1. ^ Rapini, Ronald P.; Bolognia, Jean L.; Jorizzo, Joseph L. (2007). Dermatology: 2-Volume Set. St. Louis: Mosby. pp. 1130. ISBN 1-4160-2999-0 
  2. ^ Diseases P-T at sedgleymanor.com”. 2007年7月17日閲覧。
  3. ^ 発しんチフスとは”. 2023年10月17日閲覧。
  4. ^ 金子晋右「ネオリベラリズムとアウシュヴィッツ化する日本」『横浜市立大学論叢.人文科学系列』第60巻第2号、横浜市立大学学術研究会、2009年3月、169-192頁、doi:10.15015/0002002009ISSN 09117717 
    徐京植「「証言不可能性」の現在 : アウシュヴィッツとフクシマを結ぶ想像力」『現代法学』23・24合併号、東京経済大学現代法学会、2013年2月、99-120頁、 hdl:11150/1103ISSN 1345-9821 
  5. ^ a b 発疹チフス - 13. 感染性疾患 MSDマニュアル プロフェッショナル版

参考文献

関連項目

外部リンク


発疹チフス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/18 07:42 UTC 版)

感染症の歴史」の記事における「発疹チフス」の解説

詳細は「発疹チフス」および「シャルル・ジュール・アンリ・ニコル」を参照 発疹チフスとはコロモジラミ媒介するリケッチアによる感染症で、高熱、せき、発疹特徴である。人口密集地域不衛生な地域にみられ、冬期、または寒冷地での流行顕著である。1490年スペイン兵がキプロス島から発疹チフスをもちこみヨーロッパで流行し1545年にはメキシコ流行した17世紀以降ヨーロッパ王侯貴族裕福な中・上市民の間で頭髪丸刈りにしてかつらをかぶる習俗大流行した背景にはシラミ予防の意味もあったという。 1812年ナポレオンのロシア遠征の際にはフランス軍大流行し大勢死者出した19世紀の発疹チフスの流行は、コレラとともに労働運動活発化一因となり、各国都市改造公衆衛生徹底させるなどの都市政策おこなった第一次世界大戦下ロシアでは3000万人が罹患しその1割にあたる人びと死亡している。また、ナチス・ドイツによるユダヤ人虐殺のための強制収容所内でも大流行したフランス細菌学者シャルル・ジュール・アンリ・ニコルフランス植民地チュニスチュニジア)において風土となっていた発疹チフスを研究し病院入院する感染しない傾向みられるから院内院外条件比較して患者衣服着目したニコル1928年に発疹チフスの研究ノーベル生理学・医学賞受賞している。

※この「発疹チフス」の解説は、「感染症の歴史」の解説の一部です。
「発疹チフス」を含む「感染症の歴史」の記事については、「感染症の歴史」の概要を参照ください。

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