ボストーク宇宙船とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 学問 > 宇宙百科事典 > ボストーク宇宙船の意味・解説 

ボストーク宇宙船

分類:宇宙飛行

世界初の有人飛行船ボストーク1号
世界初有人飛行ボストーク1号

名称:ボストーク宇宙船(Vostok)
打ち上げ国名機関:ソ連/ソビエト連邦空軍
打ち上げ開始年月日:1961年4月12日
打ち上げ終了年月日:1963年6月16日
打ち上げ宇宙船:ボストーク1号(1961年4月12日)/ボストーク2号(1961年8月6日)/ボストーク3号(1962年8月11日)/ボストーク4号(1962年8月12日)/ボストーク5号(1963年6月14日)/ボストーク6号(1963年6月16日)
打ち上げロケット:A−1
宇宙飛行士:ユーリ・A・ガガーリン(1号)/ゲルマン・S・チトフ(2号)/アンドリアン・G・ニコラエフ(3号)/パベル・R・ポポビッチ(4号)/バレリー・F・ブイコフスキー(5号)/ワレンチナ・V・テレシコワ(6号)

ソ連初期有人宇宙船飛行担ったのが、ボストーク宇宙船でした。ボストーク(Vostok)は、東方という意味です。この宇宙船は、ソ連航空宇宙技術先駆者であるセルゲイ・P・コロレフ設計主任務めた科学技術チームの手になるものです。コロレフ1965年1月死後に、初め国内外にその存在明らかになった人物です。1960年代初めソ連はすでに、史上初の人工衛星であるスプートニク1号(1957年10月)でアメリカ宇宙開発先手打ちその後実験動物乗せたスプートニク打ち上げました。そして、ついに人間乗せた宇宙船であるボストーク1号が、1961年4月12日打ち上げられました。飛行士ユーリ・A・ガガーリンで、1時間48分に及ぶ史上初の有人宇宙飛行実現しましたゲルマン・S・チトフ乗った同年8月ボストーク2号は、まる1日宇宙飛行をします。1962年8月には、ボストーク3号ボストーク4号が、編隊飛行(近い軌道ではあるけれども純粋のランデブーではない)を行なってます。1963年6月にはバレリー・F・ブイコフスキーの乗ったボストーク5号が、119時間6分という宇宙での長期滞在記録作りました同時期に飛んだボストーク6号には、史上初の女性宇宙飛行士であるワレンチナ・V・テレシコワ搭乗し先に地球周回軌道乗っていたボストーク5号編隊飛行行ないました。
この間アメリカマーキュリー計画実施し月着陸目指しアポロ計画への基礎着々と固めていました。しかし、米ソ対立冷戦構造の中での宇宙開発競争は、華々しい記録という意味ではソ連一歩リードしていました

1.どんな宇宙船宇宙飛行したの?
ボストーク宇宙船は、機械船(計器ユニット)と、乗員用の再突入カプセルでできていました機械船は、直径2.58m、長さ3.1mの大きさです。飛行士乗るカプセルは、直径2.3mの球形で、熱シールド覆われいました乗員カプセル必要な設備は、すべて機械船積まれいました機械船には、高圧酸素窒素ボンベ、逆推進ロケット姿勢制御用小ロケットなどが搭載されいました

2.どんなロケット打ち上げられたの?
ボストーク宇宙船は1号から6号まで、すべてA-1ロケット(SL-3)によって打ち上げられました。Aシリーズロケットは、コロレフチーム開発したR7サップウッドというICBM(大陸間弾道ミサイル)を基にしています。Aシリーズには、ほかにソユーズ衛星打ち上げたA-2などがありますボストーク打上げ使用されたA-1ロケット直径は10.3m、全長38.4m、重さは287tでした。A-1ロケット第1段Aシリーズ共通、ソ連独自のクラスター(束ねる)方式で、大小24個のエンジン搭載されています。数字型番によるバリエーション第2段見られます。Aシリーズロケットは、液体酸素灯油推進剤使用していました。A-1ロケットは、ボストークのほかには、エリント(電子ロボット衛星)やメテオール(気象衛星)などの打上げ転用されています。近年では、インド衛星商業ベース打ち上げて話題となりました

3.計画どういう目的のためにおこなわれどのようなことに成功したの?
1960年代初頭東西冷戦の中で、アメリカソ連の宇宙開発競争激化しつつありましたソ連フルシチョフ首相は、宇宙開発成果ソ連社会主義プロパガンダ(宣伝)に利用しようとしました有人宇宙船製造命じられセルゲイ・P・コロレフ設計局は、ソ連の宇宙計画存続のためにも、大急ぎ有人宇宙飛行計画進めなければなりませんでした。その計画実現したのが、人類初の宇宙飛行行なったガガーリン(ボストーク1号)、宇宙空間初め1日滞在したチトフ(ボストーク2号)、そして史上初の女性宇宙飛行士となったテレシコワ(ボストーク6号)らでした。たとえそれらが冷戦構造産物であったとしても、人類宇宙空間生存できることを証明した彼らの仕事は、人類にとって貴重な経験となりましたまた、3号4号5号6号編隊飛行純粋なランデブーではなかったものの、のちの衛星同士ドッキング向けてデータ積み重ねたのです。

4.ロケット打上げ宇宙船飛行どのような順序おこなわれたの?
ボストーク宇宙船は、中央アジアカザフバイコヌール宇宙基地からA-1ロケットによって打ち上げられました。そして増力ロケット中心ロケット最終ロケットが順に切り離され、高度約300kmの大気圏外地球周回軌道乗ります。そして軌道飛行(1時間48分〜119時間6分)のあと、逆推進ロケット噴射のための方向転換がなされ、再突入カプセル電子装置機械船から分離します。大気圏再突入したカプセル加熱し、高度約7kmで宇宙飛行士射出座席脱出します。飛行士は高度約4km射出座席投棄しそのあとパラシュート開きソ連領内降下します。一方カプセルは高度約4km補助パラシュート開きます。やがて補助パラシュート切り離され、メインパラシュートが開きカプセル着地します。アメリカ宇宙船のように海に着水できないソ連宇宙船は、このように船体飛行士別々に着地させなければなりませんでした落下衝撃から宇宙飛行士を守るためだったのです。ボストーク飛行は、基本的に自動制御装置地上宇宙基地からの無線指令支えられいました飛行士が自らの判断手動制御することができたのは、ほとんど緊急時限られていたのです。

参考文献:Y・ガガーリン/江川卓・訳「宇宙への道」(新潮社)ポケット・ライブラリ、バズ・オルドリン+マルカム・マコネル/鈴木健次ほか訳「地球から来た男」(角川選書)、的川泰宣飛びだせ宇宙へ」(岩波ジュニア新書)、的川泰宣ロケット昨日・今日・明日」(裳華房)、「日本世界宇宙ロケット衛星カタログ」(成美堂出版)、宇宙開発事業団・編「新版宇宙飛行士になるための本」(同文書院)、ケネス・W・ガトランドほか/佐貫亦男日本語監修世界宇宙開発」(旺文社)、「世界大百科事典」(平凡社)



このページでは「スペース百科」からボストーク宇宙船を検索した結果を表示しています。
Weblioに収録されているすべての辞書からボストーク宇宙船を検索する場合は、下記のリンクをクリックしてください。
 全ての辞書からボストーク宇宙船を検索

英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「ボストーク宇宙船」の関連用語

ボストーク宇宙船のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



ボストーク宇宙船のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
JAXAJAXA
Copyright 2024 Japan Aerospace Exploration Agency

©2024 GRAS Group, Inc.RSS