機械船
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/05 05:56 UTC 版)
機械船は与圧されていない直径3.9m、高さ7.5mの円筒形の構造物である。内部は中央部とそれを放射状に取り巻く6つの外郭部によって構成されており、推進用ロケット・姿勢制御ロケットおよびその燃料、酸素、燃料電池、通信用のSバンドアンテナなどが配置されている。アポロ15号、アポロ16号、アポロ17号では、科学探査機器なども搭載された。 前部覆い(forward fairing)は高さが864mmで、機械船コンピューター、司令船との結合装置などが配置されている。結合装置はステンレス製で、司令船に分配するすべての電力や酸素・水などのホースやコード類はここに集中しており、切り離しの際には爆発ボルトが使用される。 主エンジンは高さ3.882m、直径2.501mで、燃料にはエアロジン-50、酸化剤には四酸化二窒素を使用する。推力は91.2kNで、月周回軌道への投入および離脱、途中での軌道修正などを行なう。 姿勢制御用ロケットは一基が推力445Nで、四基ずつ集合したものがそれぞれ90度の角度をおいて外周に配置され、宇宙船の姿勢制御や速度の微調整などを行なう。こちらの燃料はモノメチルヒドラジン、酸化剤は四酸化二窒素である。 機械船は6つの区画に分かれている。それぞれの内訳は、 第一区画は、主に機械船の重心を調整するためのバラストとして使用される。アポロ15~17号では、ここにパノラマカメラ、ガンマ線検出器、高度計などの探査機器が搭載された。フィルムは、飛行士の船外活動によって回収された。 第二区画には、高さ3.9m、幅1.3m、重さ6,315kgのロケットエンジンの酸化剤タンクが配置されている。 第三区画には、高さ3.294m、幅1.14m、重さ5,118kgの酸化剤タンクが配置されている。 第四区画には、燃料電池が配置されている。酸素タンクには290kgの液体酸素が貯蔵され、飛行士の呼吸用の酸素もここから供給される。水素タンクには25kgの液体水素が貯蔵されている。 第五区画には、ロケットエンジンの補助燃料タンクが配置されている。燃料の総量は3,950kgである。 第六区画には、ロケットエンジンの主燃料タンクが配置されている。燃料の総量は3,201kgである。 後部隔壁には、Sバンドの高利得アンテナが配置されている。アンテナは直径787mmのパラボラアンテナが4基と279mm四方の方形アンテナが1基で、遠距離での通信用に使用される。また機械船外壁には前方を照射するライトが設置されており、飛行士が船外活動をする際に足下を照らしたり、ランデブーの際に宇宙船の位置を示すために使用される。ライトは100km離れた場所からも視認できる。 機械船は大気圏再突入の直前まで司令船に結合されている。切り離しの際は、機械船の姿勢制御用ロケットが自動的に噴射して司令船から離れ、司令船よりも先に大気圏に再突入する。
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