【6号戦車】(ろくごうせんしゃ)
第二次世界大戦におけるドイツの代表的な重戦車。
以下の二形式が存在した。
- 6号戦車E型「Tiger(ティーガー)1」
1935年、3号戦車、4号戦車を上回る重戦車が構想され、そして1937年に30t級、105mm/L28、最大装甲厚50mmの「1号突破戦車」として開発が開始されたが、紆余曲折の後、1941年5月、敵戦車よりも強力な主砲と重装甲を施し、戦車部隊の先頭に立って敵を突破する為の重突破戦車を作ると言う構想が生まれ、その構想から前面装甲100mm、88mm/L56の主砲を搭載した戦車と生まれ変わり、バルバロッサ作戦で出現したソ連戦車T-34、KV-1の対抗の為にも突貫工事で開発が進められ、1942年7月に完成した。
基本構造はドイツ伝統の無骨な箱形、均質圧延装甲の溶接構造で、車体配置や乗員も他のドイツ戦車と同じであり、これといって革新的な構造は取っておらず、伝統的ドイツ戦車に重武装、重装甲を施した車両といえる。
主砲はかの有名な88mm対空砲から発展したもので、1000mで120mmの装甲を撃ち抜くことが可能であり、出現当時はほぼ全ての連合国戦車をアウトレンジで撃破可能であった。
また装甲も最大で100mmと出現当時、連合国戦車では撃破不能の装甲を誇った。
だがその強力無比な装甲と武装と引き替えに非常に重過ぎた為(57t)、機動力は劣悪であった上に、整備性も優れているとは言えず、各地で本車の脚を引っ張った。
本車は各地の戦場で友軍が苦戦する中を奮戦し、数々の伝説を作り上げ、立派に任務を果たした。そして現在でも名戦車として多くのファンを持っている事は言うまでもない。
【スペックデータ】
乗員 5名 全長 8.45m 車体長 6.3m 全高 2.93m 全幅 3.4~3.7m 重量 56t 懸架方式 トーションバー方式 最大速度 38km(整地)
10~20km/h(不整地)エンジン マイバッハ HL210 P45ガソリンエンジン(水冷V型12気筒 650hp) 行動距離 125km 武装 KwK 36 L/56 88mm砲×1基
MG34 7.92mm機関銃×2挺
NbK39 90mm Sマイン発射機×6基最大装甲厚 100mm(前面)
80mm(側面および後面)
25mm(上面および底面)
【各形式】
注:初期型、中期型、後期型が存在するが、キューポラや防盾等の手直しにとどまり、大差はない。
- DW(DurchbruchWagen):最初にVI号戦車として予定された突破戦車。車台試作のみ。
- VK3001(H):DW II試作車をベースにした重型中戦車車台の試作車。
- VK3001(P):ポルシェ製の重型中戦車車台の試作車。電気式変速装置を装備。
- VK3601(H):VK3001(H)の設計をベースにした重戦車車台の試作車。
- VK4501(P):ポルシェ製のTiger試作車。生産された車台は自走砲へ流用された。
- E型:ティーガー Iとも呼ばれる量産型。初期型と後期型でキューポラや防盾等が異なる。
- B型:ティーガー IIともケーニヒス・ティーガーとも呼ばれる最終型。下項参照。
- Grille:大口径重砲を搭載した自走砲。複数の計画のみ。
- ヤークトティーガー:固定戦闘室に12.8cm砲を装備した重駆逐戦車。別項参照。
- Pz Sf V:VK3001(H)の車台に12.8cmカノン砲を搭載した対戦車自走砲。試作のみ。
- Sturmmörser Tiger:38cmロケット砲を搭載した自走突撃臼砲。
- DW(DurchbruchWagen):最初にVI号戦車として予定された突破戦車。車台試作のみ。
- 6号戦車B型「Tiger(ティーガー)2(Königstiger(ケーニヒスティーガー))」
1941年、上記のティーガー1の性能不足が開発中に指摘され、より長砲身の88mm/L71の搭載が計画された。
そして1942年10月に正式にティーガー2として開発が開始された。
だが途中でパンター2との部品共通化が企画されたのだが、結局それは中止となり、その為開発は遅れをきたした。
そして1943年10月に試作が完成、1944年に量産が開始された。
車体デザインは5号戦車の発展拡大型であり、上記のティーガー1とは全く関係がない。
車体構造は均質圧延装甲の溶接、乗員は5名である。
主砲は当時最強とも言える88mm/L71を搭載(1000mで203mm)し、IS-2と言ったソ連新型重戦車も含め、全ての連合国戦車を撃破可能であった。
尚、初期型50両の砲塔には「ポルシェ砲塔」と呼ばれる前面が丸く滑らかに成形された砲塔が搭載されていたのだが、ショットトラップを起こす上に、製作に時間がかかると言う理由から、その後はザウコフ型防盾を持つ、「ヘンシェル砲塔」と呼ばれるタイプに変更された。
それぞれの前面装甲厚は前者が最大100mm、後者が前面180mmと極めて重装甲であり、武装も含め文字通り「世界最強」であった。その反面重量があり(69.8t)機動性は低く、駆動系の信頼性も低かった。
本車は紛う事なき「世界最強の虎」で有ったが、その出現はあまりに遅く、なおかつ数が少なすぎたため、殆ど戦況に影響を与えることが出来なかったのが惜しまれる。
なお、米軍からはキングタイガー、英軍からはロイヤルタイガーと呼ばれた。
余談だが、その重量から、戦後も破壊されたTiger2の撤去ができず(Tiger2を牽引するには、もう一台Tiger2が必要、と言われている)、今も野ざらしとなった無残なTiger2をドイツ国内で見かけることが出来る。
【スペックデータ】
乗員 5名 全長 10.28m 車体長 7.38m 全高 3.09m 全幅 3.75m 重量 69.8t 懸架方式 トーションバー方式 最大速度 38km/h(整地)
20km/h(不整地)エンジン マイバッハ HL230 P30ガソリンエンジン(水冷V型12気筒 700hp(520kW)) 行動距離 170km(整地)
120km(不整地)武装 KwK 43 L/71 88mm砲×1基(84発)
MG34 7.92mm機関銃×3挺(うち1挺は対空用)装甲 180mm(ポルシェ100mm)傾斜10°(砲塔前面)
80mm 傾斜20°(砲塔側面・後面最大)
150mm 傾斜50°(車体前面最大)
80mm 傾斜25°(車体側面・後面)
40mm(車体上面・下面最大)
VI号戦車
VI号戦車(ろくごうせんしゃ、Panzerkampfwagen VI、パンツァーカンプ(フ)ヴァーゲン ゼクス)は、ナチス・ドイツが第二次世界大戦時に使用した重戦車である。
概要
VI号戦車と呼ばれる戦車には、I型とII型の2種類の戦車が存在し、それぞれティーガーI・ティーガーIIと呼ばれる。この2種は、当時の世界最強の戦車の1つとして評価されている。ティーゲル戦車と表記されることもある。英語読みでは、タイガー戦車と表記される。
開発当時、ドイツ国防軍は赤軍のT-34戦車に苦戦を強いられていた。ドイツ軍はそのことを受けて元々対空用として製造された8.8cm高射砲を対戦車砲として戦車に搭載し、VI号戦車が誕生した。
当時のドイツ軍戦車の中で最も巨大だった本車は、総統アドルフ・ヒトラーのお気に入りとなった。以後、終戦までVI号戦車は使用され続けた。しかし、重量が当時の水準からすると非常に重かったため、変速機や足回りなどのトラブルが多く稼働率は低い水準にとどまり、また、構造の弱い橋や道路の通行が困難だったり、複雑な設計が量産性を妨げた。しかし、その大火力・重装甲はそれらの欠点を補ってあまりあるもので、当時まともに対抗しうる他国製戦車は存在しなかった。
I型(Sd Kfz 181)

1937年に陸軍兵器局から開発指示のあった35t級戦車に由来する。ヘンシェル社はこれに基づきDW I・DW IIと呼ばれる戦車を試作した。さらに、1938年9月9日にVK3001として提示された仕様に基づきVK3001(H)が試作される。この車両がVK3601(H)・VK4501(H)と発展してVI号戦車となる。一方、ポルシェ社は1939年からVK3001(P)の開発を開始し、VK4501(P)(俗に言うポルシェティーガー)へと発展した。ちなみに、フェルディナント・ポルシェの設計したVK4501(P)はエンジンで発電して電動モーターを駆動する事で変速機を廃するという鉄道では実績のある方式(ガスエレクトリック式)だったが、如何せん信頼性に乏しい代物だった。
2社による設計が比較された結果、ヘンシェル社の製品が採用され、ポルシェ博士の設計した物は採用されなかった。ただし、製造は前倒しで始まっていたため、その車体はエレファント重駆逐戦車として利用された。また、エレファント大隊の指揮戦車として実戦参加したポルシェティーガーも存在する。
従来のドイツ戦車のデザインを踏襲しつつも、重厚な装甲とともに56口径8.8cm砲という高射砲を元にした強力な砲を採用し、対戦車・対陣地戦闘に威力を発揮した。また、I型の初期のものには、橋を渡らずに渡河する場合のために潜水装置が付いていた。
接地圧の低下のために設計された幅の広い履帯を装備したまま貨車に乗せるとトンネルを通過することができないため、鉄道での輸送時は一番外側の転輪と外側から2番目の転輪およびフェンダーを外し、輸送用のために設計・製造された幅の狭い履帯を装備することとなった。また、転輪は当初は外周にゴムタイヤが付いていたが、後期型(およびII型)ではソ連戦車のものを参考にしたゴム内蔵式の鋼鉄製転輪が使用された。これは、鉄の部分が直接履帯に当たるため音が煩くなるが、ゴム部品の消耗を抑えることができた。
アメリカ軍のM4 シャーマンの前面装甲を2,000m超の距離から貫通でき、逆にM4の75mm砲では接射でも打ち抜かれない前面装甲を持っていた。同様にイギリスやソ連の大半の戦車にも圧倒的な優位を誇っていた。そのため、連合軍では「タイガー戦車を相手にする時は必ず3両以上の戦車で迎撃する事」と言われていた程である。
II型(Sd Kfz 182)

英語での俗称の「キング・タイガー」(Kingtiger)がドイツ語に逆輸入され、ケーニヒス・ティーガー(Königstiger, 王虎。独語での原意は「ベンガルトラ」)とも呼ばれる。71口径8.8cm砲を搭載。垂直面で構成された車体を持つI型と異なり、パンターの車体同様にソ連戦車で実用化された傾斜装甲を採用している。ポルシェ型向けにクルップ社で設計され、先行して部品の製造が行われ、ヴェクマン社で組み立てられた砲塔を持つ初期生産型50両と、ヘンシェル型向けに同じくクルップ社で設計された砲塔を持つそれ以降の生産型がある。ポルシェ型向け砲塔は前面・側面が丸みを帯びており、砲塔前面においてショットトラップ(跳弾が車体上面を直撃する)を生じる危険性があった。
同時期に開発が進められ、この車体を延長して固定式戦闘室に12.8cm砲を搭載したヤークトティーガーが製造されている。
登場作品
文献
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- エゴン・クライネ、フォルクマール・キューン(共著)、富岡吉勝(訳)『ティーガー 無敵戦車の伝説 1942-1945』大日本絵画、1991年、ISBN 4-499-20563-8
- オットー・カリウス(著)、菊池晟(訳)『ティーガー戦車隊 第502重戦車大隊 オットー・カリウス回顧録』大日本絵画、1995年、ISBN 4-499-22653-8
関連項目
- 6号戦車のページへのリンク