2021年2月〜3月の間、相次いで引き起こした4回のトラブル
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「みずほ銀行」の記事における「2021年2月〜3月の間、相次いで引き起こした4回のトラブル」の解説
2021年(令和3年)2月28日(日曜日)より3月12日(金曜日)の僅か13日間で、当行はそれぞれ原因の異なるシステムトラブルを4回連続で引き起こした。なお、当行と同じ勘定系システム「MINORI」を用いているみずほ信託銀行では、これらのトラブルは発生していない。 金融庁は、当行が僅か13日間で4回のシステムトラブルを相次いで引き起こした事態を重くみて、当行と親会社のみずほフィナンシャルグループに対し立ち入り検査、検査結果を踏まえ行政処分を検討する予定である。 当行は、3月12日に藤原弘治頭取が記者会見をした。このなかで藤原頭取は「原因究明と再発防止が、私に課せられた最大の責任だ」と述べ、引責自任を否定した。また、全国銀行協会の次期会長(2021年4月から2年)に就任予定である、みずほフィナンシャルグループの坂井辰史社長については「次期会長職を務めていく」と述べ、会長の就任辞退、社長職の辞任を否定した。 当行の親会社であるみずほフィナンシャルグループは、3月17日のニュースリリースにおいて、4月1日に予定していた当行の藤原弘治頭取の会長就任及び加藤勝彦常務の頭取就任を、当行が発生させたシステム障害に対応するため取り消すと発表した。なお加藤勝彦常務は、代表取締役副頭取になる。 当行の親会社であるみずほフィナンシャルグループの坂井辰史社長は、3月17日午後5時から都内で記者会見を開いて、障害の原因究明や再発防止策の策定について説明した。責任の取り方については「原因究明や再発防止策の策定後に適切に考えたい」と述べたのみ。4月に予定されていた坂井辰史社長全国銀行協会の会長への就任については「就任を見合わせる方向で相談したい」と表明。取消となった4月1日の当行の頭取交代人事については「加藤氏が頭取になるのは基本的な方向感だ」と述べ、交代は既定のままで時期の延期であることを示唆した。報道によれば、トラブルについて、坂井社長が公の場で説明するのは、これが初めてである。なお、全国銀行協会の会長については、3月18日に、全国銀行協会から公式に「みずほフィナンシャルグループの坂井社長より、足元の度重なるシステム障害の原因究明と改善対応策に専念するため、全銀協会長への就任は当面の間見合わせるとの申し出があった、来年度の体制については、4月1日に坂井社長へ交代することを内定していたが、全銀協の現行体制を当面維持する」と発表があり、三毛会長(三菱UFJ銀行頭取、4月からは三菱UFJフィナンシャル・グループ会長)が4月以降も続投することになった。 2021年2月28日に引き起こしたシステムトラブル 2021年(令和3年)2月28日(日曜日)、定期預金に絡むデータ更新作業に伴い、ATMとインターネットバンキングにおける一部取引が利用不可となるシステムトラブルを発生させた。ATMより通帳やキャッシュカードが戻らず備え付けの電話もつながらない深刻な被害も多数発生させた。みずほ以外のATM利用で生じた手数料は後日返金とする報道されているが、当行Webサイトでは「本件に関して代替手段により発生した費用についてはお取引店か下記問い合わせ先にご相談ください」と発表しており、自発的返金は行うとの表明はなく、相談後の対応についても何ら明らかにしていない。また日本経済新聞によれば、「28日夜の段階で説明の記者会見は開いていない」、「記者が支店に取材に行った際、利用者が『4時間以上待たされているのに誰も来ない』という状態であった」。 当行は、3月1日午後6時に、本店で記者会見を行い、5395台のATMの80%にあたる4318台に障害が発生し、預金通帳やキャッシュカードがATMからとりだせなくなった件数は合わせて5244件と公表した。なお、この報道では「システム障害の影響でコンビニなどのATMを使った利用客には、かかった手数料を全額返金するほか、ATMに残っていた預金通帳などの返却を進めていく」としているが、当行Webサイトの記載は、2日12時30分の段階で「ご相談ください」のままであった)。J-CASTトレンドの報道によると、「1日にみずほ銀行の広報担当者に取材したところ、いずれも一律で定められたものは存在しないという。利用者からの相談の中で適宜判断していくとした。」となっている。また公式ウェブサイトで「後日弊行よりご連絡、ご返却をいたします(他行キャッシュカードは、当該他行経由でご返却となります)」とあるだけでいつ返却するかの明示はなく、他行のカードは他行経由としている。またトラブルの原因について「定期預金のデータ移行の45万件に月末の取り引きの25万件が重なり、システムの一部に負担が生じオーバーフローした」と藤原頭取が説明」しており、「(システムの)キャパシティーが不十分だったことが今回のトラブルを引き起こした」とも説明した。経営責任については「最優先事項は顧客へのおわびと安定稼働だ。経営責任は当然ながらある。しっかり受け止めていきたい」と発言したが、日本経済新聞の報道した一問一答には、それ以上の具体的な進退等については掲載されていない。なお、藤原頭取は、2021年3月末で頭取を退任して4月1日からみずほ銀行会長になることが内定していた。 時事通信の報道によると、2月27・28日の両日、一定期間取引のない定期預金(不稼働定期預金)の口座のデータを45万件ずつ移行する作業を実施した。ただ、28日は通常の取引が集中し、システムの容量がオーバーした。定期預金の積み立てなど通常の取引量が多い月末に、システムを増強せずに臨時のデータ移行作業を行った「想定の甘さ」があった。これだけなら定期預金の取引不能件数であり当初463件であった。しかし、2019年に導入した新システムの「自衛機能」により、基幹システムがATMとの連携を一部遮断しATMの処理速度が低下。取引の異常を検知したATMが、カードや通帳を次々と飲み込む事態となった。ATM備え付けの電話からの問い合わせで警備員が駆けつけるが、休日ということもあり、人員不足で同時多発的な被害への対応が不能となった。 3月8日時点の当行Webサイトでは、頭取名で「ATMにキャッシュカード、通帳等が取り込まれたお客さまにつきましては、できるだけ早くお手元にお届けできるよう、お一人ずつ弊行よりご連絡・ご返却を進めて」とし、手数料についても「後日返金」を記載した。ただしいつまでとは記載がない。またトラブルの原因、具体的な対策の記載はなく、「システム、またその運用における要因も含め検証し、再発防止策の策定・徹底」と述べた。 取り込んだ通帳・キャッシュカード(5244件)の約2割が2日時点で、未返却であるとともに、顧客と連絡が取れなかったり、警備会社に保管中のカードや通帳の回収に時間がかかっている。返却完了の時期は未定と報道された。報道された説明によれば、「顧客と連絡が取れなかったり、警備会社に保管中のカードや通帳をみずほが回収する時間がかかったりしている返却完了の時期は未定である」。返却状況については、3月4日時点ででは、3日までの状態で1割の500件ほど未返却である。報道では、理由として「一部に連絡が取れない顧客がいるなど」としている。 金融庁は3月2日夜、銀行法に基づき報告徴求命令を当行及び親会社のみずほフィナンシャルグループに出し、原因や再発防止策などの報告を今月末までにするように命じた。金融庁のWebサイトの報道発表資料には、この件の掲載はない。 3月4日、読売新聞、時事通信は、「みずほ銀行は4日、2月28日に発生させた現金自動預払機(ATM)の大規模障害について、デジタル通帳への移行に向けた口座情報の移し替え作業が原因の一端だったと明らかにした。」と報じた。時事通信の報道では「通常のデータ更新作業25万件にデジタル口座へのデータ移行作業45万件が重なり、基幹システムの容量不足に陥った。」とあり、また読売新聞は「2月28日に全国各地で発生した大規模な現金自動預払機(ATM)の障害は、今年1月に導入した「デジタル通帳」へ預金などのデータを移行する作業の中で発生したことを明らかにした」として定期預金のデータ移行は無関係のような報道となっている。件数的には、定期預金に絡むデータ更新作業よりデジタル通帳への移行に向けた口座情報の移し替え作業の件数が多いが障害に寄与の度合いは明らかではない。また、当行が明らかにしたとしているが、当行Webサイトでは一切言及はなく、「2月28日に発生した定期性預金のデータ更新作業に起因するシステムトラブル」のままである。また、3月1日の頭取の記者会見で、この「デジタル口座へのデータ移行作業」については言及がないが、銀行がこの時点で把握していなかったか、把握しても頭取には情報が伝わっていない若しくは隠蔽したかは明らかでない。 当行は、3月6日の当行Webサイトでは「99%超のお客さまに、ご返却の対応を取らせていただきました」と初めて当行Webサイトで返却状況を告知した。手数料の返金については、「後日返金」としており、いまだに返金していないことを明らかにした。 3月5日、朝日新聞は、遠藤正之・静岡大学情報学部教授(金融情報システム)のインタビューを掲載した。このなかで遠藤は、 なぜ取引が集中する月末に作業をしたのか 本体の勘定系システムを守るためにATM取引を制限した運用は妥当だったのか カード取り込みへの対応は顧客本位だったか と3つの課題を指摘し、いずれも顧客本位でないことに問題があると述べた。 3月9日、朝日新聞は、年度末に作業を行った理由について、みずほ幹部が「時期を決めた当初の考え方は、印紙税(が理由)だった」とも打ち明けたと報道した。。紙の通帳は印紙税が年200円かかるが、この基準は4月。3月までに減らすと税額を抑えられる目算であり、約2400万の口座のほぼ半数が、数年後に切り替わると見込み、単純計算で年24億円の印紙税軽減となる。 2月28日に引き起こしたシステムトラブルに伴い、当行のキャッシュカードで他の金融機関のATM等を利用した場合に発生した手数料の返金を、3月16日から3月18日にかけて行うと、3月15日に当行Webサイトで告知された。 3月25日の報道によると、みずほ銀行は、2月28日と3月3日に発生したシステム障害で現金自動預払機(ATM)に通帳などがのみ込まれた人に「おわびの品」として5千円分のクオカードを届けることを決め、藤原弘治頭取が「これまで同様のご愛顧を」と呼び掛ける文書を添え、順次配布している。 2021年3月3日に引き起こしたシステムトラブル 2021年(令和3年)3月3日(水曜日)19時58分、ハードウエアの不具合によりシステムセンター間のネットワーク瞬断が発生するシステムトラブルを発生させた。3分後の20時1分に復旧したが、28拠点29台のATMがこの影響で停止し、僅か3日前に引き起こしたシステムトラブルと同様、ATMより通帳やキャッシュカードが戻らない深刻な被害を29件発生させた。当行の公表によると「2月28日に発生した定期性預金のデータ更新作業に起因するシステムトラブルとは別の要因」であると発表した。小規模のトラブルだが、僅か3日前に引き起こしたシステムトラブルと同様、ATMより通帳やキャッシュカードが戻らない深刻な被害を連続して発生させたこともあり「みずほ銀行、またもシステム障害」、「みずほ銀行 またATM一時障害 最大3時間使えず」、「みずほ銀行また障害 ATM29台一時停止、カード戻らず」と報道された。 このトラブルでATMに取り込まれたカードや通帳については、時事通信は、4日午前10時時点で過半が返却されたと報道した。当行は、3月6日に「カード返却等のお客さま対応も完了」と発表した。 3月3日に引き起こしたシステムトラブルについても、金融庁は銀行法に基づき報告徴求命令を出した。 2021年3月7日に引き起こしたシステムトラブル 2021年(令和3年)3月7日(日曜日)午前9時ごろから、カードローンのプログラムの更新作業に伴い、一部でエラーを関知した。この影響で、インターネットバンキングやATMで定期預金の一部取引ができなくなったが、同日午後1時30分頃に復旧した。当行によると「9名のお客さまの取引不成立を検知、既に個別にご連絡のうえ対応。ATMでは、お客さまがお困りの場合に備え、各拠点には行員を待機させ、個別に対応いたしました。なお、不成立となった取引はない。」としている。 3月7日に引き起こしたシステムトラブルについても、金融庁は銀行法に基づき報告徴求命令を出した。なお、これについては各報道とも、3日と7日のものについて11日(一部12日)にまとめて報道している。同じ日に命令したか、別の日であったかは各報道に具体的な命令の日がなく不明である。 2021年3月11日から12日に引き起こしたシステムトラブル 2021年(令和3年)3月11日(木曜日)午後11時40分ごろ、データセンターのハード機器に障害が発生し、バックアップ機能への切り替えにも失敗し、送金の処理ができなくなった。送金の集中処理が完了したのは12日午後7時45分ごろだった。全国各地の支店などで、企業間の海外送金の一部に遅延が生じなど、約300件に影響が出た。12日に当行が発表したと各報道が伝えた。日経新聞は、影響の詳細について「企業が国内にある取引先の口座にドル建てで振り込む場合、依頼を受けた銀行は午後1時までに振込先の銀行にデータを送信する必要がある。今回の障害でデータの送信が完了したのは午後6時。振り込みが翌日付となれば、企業間の取引で実損が出る恐れがある。みずほ銀行は当日付にできるよう相手方の銀行と調整する。」と解説した。 影響の詳細は、3月15日に当行Webサイトで告知された。これによると「国内他行向けの送金263件について、当日付の送金ができない状況」であった。 なお当行は、このシステムトラブルによる送金遅延は計500億円に上ったと発表している。 6月14日、今回当行で相次いだATMなどのシステム障害について調べていた第三者委員会の報告書の概要が分かったと伝えられた。システム自体に根本的な欠陥はなく、人員配置や設定面で運用が未熟だったことが原因と結論付ける。顧客対応の不十分さが問題を深刻化させたことも指摘する。同月15日にも報告書を公表する予定と共同通信が報道した。報告書は、6月15日にみずほフィナンシャルグループより発表された。なおみずほ銀行HPでは、この発表を受けて、株式会社みずほ銀行におけるシステム障害にかかる原因究明・再発防止についてを発表したが、みずほ銀行HPからは報告書へのアクセスはリンクを含め一切なく、利用者が、みずほフィナンシャルグループにアクセスするしかない状態である。 またこれに関連して、みずほフィナンシャルグループ取締役社長 坂井辰史が、報酬月額の50%減額×6ヶ月、みずほ銀行取締役頭取 藤原弘治が、報酬月額の50%×減額4ヶ月などの役員処分がされたが、やはりフィナンシャルグループHPでのみ公表されている。 なお、藤原頭取が同年6月末で退任することが報じられていたが、再発防止に取り組む観点から当面の間続投することを6月15日に明らかにした。
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