対中東
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/10 16:51 UTC 版)
これまでの中東政策には否定的であり、イラク戦争にも反対してきた。 CNNの番組の中では、次のように述べた。 わかるだろ、あなたがサダム・フセインを好きかしらないが、彼はテロリストを殺していた。テロリストにとってイラクは楽しい場所ではなかった。ところが今や、イラクは「テロリズムのハーバード大学(Harvard of terrorism)」だ。 数年前のイラクを見たらわかる。彼(サダム)が良いやつだったと言うつもりはない。彼はおそろしい奴だったが、今よりもマシだった。"If you look at Iraq from years ago, I'm not saying he (Saddam) was a nice guy. He was a horrible guy but it's better than it is now, 人々は頭を刎ね飛ばされたり、溺れさせられたりしている。今この時、彼らの状態は、かつてなく最低で、サダム・フセインやカダフィの時代より悪い。“People are getting their heads chopped off. They're being drowned. Right now it's far worse than ever [than it was] under Saddam Hussein or Gaddafi, 何が起こったか見てくれ。リビアは大惨事だ。大災害だ。イラクも大災害。シリアも大災害。中東まるごと大災害だ。全部、ヒラリーとオバマの時代に吹き飛んでしまった。“look what happened. Libya is a catastrophe. Libya is a disaster. Iraq is a disaster. Syria is a disaster. The whole Middle East. It all blew up around Hillary Clinton and around Obama. It blew up. 一方で2002年のラジオの中では、「あなたならイラクに侵攻する?」と問われて「するだろうね(Yeah I guess so)」と答えていたので、かつてはイラク戦争を支持していたのではないかという指摘もある。トランプはこの件について、「私は開戦する前から反対派になり、2003年からはっきりと反対しているのだから意味がない」と主張した。 イスラエルを「アメリカの最も信頼できる友」としており、「我々は100%、イスラエルのために戦う。1000%戦う。永遠に戦う」や「イスラエルはユダヤ人の国家であり、永遠にユダヤ人国家として存在することをパレスチナは受け入れなければならない」などと表明するなど、明確にイスラエル寄りの姿勢を示している。2016年7月に行われた共和党大会では、採択された政策綱領で同盟国であるイスラエルとの関係強化が掲げられ、パレスチナに言及した2国家解決案の削除などがされたことから「史上最も親イスラエル的な綱領」と称賛した。大統領就任後も2国家解決に拘らない意向を表明している。大統領選の際もイスラエルで前例のない規模の在外投票を呼びかけるキャンペーンを行った。また、ヨルダン川西岸地区でのイスラエルのユダヤ人入植地の建設を支持しており、自らが掲げるメキシコとの間の壁建設も自身の著書でイスラエル西岸地区の分離壁を参考にしているとしている。トランプ陣営最大の資金援助者はユダヤ人シオニストで有名なシェルドン・アデルソンであった。 1983年にユダヤ民族基金(英語版)から米国とイスラエルの関係への貢献を称えられて表彰されており、2004年にニューヨーク五番街で行われたイスラエルを応援するパレードでグランドマーシャルを務めたり、「Jewish Voice」というメディアから、ユダヤ人の孫の祖父であることをどう感じるかと聞かれて、「私はユダヤ人の孫だけでなくユダヤの娘(イヴァンカ)もいて、とても光栄に思います」と答えており、父や兄など家族もともにユダヤ人コミュニティとの繋がりは深い。父フレッドの友人でもあったイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相とは旧知の仲であり、大統領選に出馬する前の2013年にも再選キャンペーンに「本当に偉大な首相だ」と応援する36秒のビデオメッセージを寄せていた。ただし、ネタニヤフ首相も、イスラム教徒を入国禁止にするというトランプの発言に関しては、発言の数時間後には「イスラエルはあらゆる宗教を尊重する」と表明するなど距離を置き、トランプは予定していたイスラエル訪問を「余計なプレッシャーをかけたくないので大統領になってからする」と延期した。2016年9月25日、トランプはネタニヤフ首相との会談を果たし、イラン核合意やイスラエルへの軍事支援を話し合った他、エルサレムをイスラエルの首都として承認することやパレスチナにイスラエルをユダヤ人国家として受け入れさせることで一致した。大統領選の勝利の際も真っ先にイスラエルと電話協議してネタニヤフは「トランプはイスラエルの真の友人」と祝福するビデオメッセージを寄せ、トランプもネタニヤフを米国に招待した。 イランの核開発問題については合意破棄を「私の最優先事項」と選挙前から訴え、大統領就任後に核合意からの離脱を表明した。 サウジアラビアについては「守りたいが、彼らはいくら負担してくれるんだ?」と発言したが、大統領就任後は初外遊先にイスラエルとともにサウジを選んで日本円にして12兆円の武器売却に署名した。 エジプトについては、「親イスラエルだったホスニ・ムバラク政権を倒してムスリム同胞団を助けた」とオバマの外交政策を批判していたが、大統領就任後はエジプトと北朝鮮の軍事協力関係を理由に支援の中止・延期を通告した。その後、エジプトが北朝鮮との軍事協力関係を断絶したことを受け、支援の再開を表明した。 2017年4月6日、トランプ大統領は、政権発足後初の米中首脳会談の最中、シリアのアサド政権が一般市民に対し、化学兵器を使用したとみなし、地中海に展開していた、アメリカ海軍の駆逐艦2隻より巡航ミサイルトマホーク59発を発射し(シャイラト空軍基地攻撃)、化学兵器使用に関わったとされる空軍基地などを攻撃したと発表した。関係国や国際連合とは連携しない単独行動主義(ユニラテラリズム)に基づく軍事作戦であり、シリア内戦開戦以来アメリカがアサド政権を直接攻撃したのはこれが初であった。この攻撃の際にトランプは「彼をぶち殺そう!やろう。奴らをどんどんぶち殺そう(Let’s fucking kill him! Let’s go in. Let’s kill the fucking lot of them.)」とシリアのバッシャール・アサド大統領の暗殺も指示していたのに対して当時国防長官だったジェームズ・マティスが「我々はそんなことはやらない。もっと慎重にやる」と無視したことがボブ・ウッドワードによって暴露されており、2020年9月にトランプはこの暴露が事実であったことを認めた。また、この時トランプ政権は北朝鮮に対するメッセージでもあることを明言した。同年4月13日、アフガニスタンのISILの拠点に核兵器に次ぐ最大級の破壊力を持つとされる大規模爆風爆弾兵器(MOAB)を初めて実戦投入したことも地下要塞を複数持つ北朝鮮への牽制とされた。 2017年5月20日、大統領就任後の初外遊先にはオバマ政権の対イラン政策でアメリカと関係が緊張したサウジアラビアとイスラエルを選んで中東重視を打ち出し、長女のイヴァンカ補佐官や娘婿のジャレッド・クシュナー上級顧問らも同行した。その直前にはイランへの追加制裁も発表した。現職大統領としては初めて嘆きの壁を訪問し、イランを共通敵としてイスラエルとアラブ諸国の和平を推進する意向を表明した。また、アルカイダやISILと並べてヒズボラとハマースをテロ組織と断じたことでハマスなどから反発を招いた。 2017年10月12日、トランプ政権は2018年12月31日をもって、アメリカ合衆国は国際連合教育科学文化機関から脱退してオブザーバーになる意向を表明したが、理由としては、ユネスコが反イスラエルに偏向していることなどを挙げた。なお、アメリカ合衆国は1984年にも離脱しており、2003年に復帰していた。 2017年12月7日、トランプ大統領はエルサレムをイスラエルの首都として承認し、テルアビブにあるアメリカ大使館をエルサレムに移転することを表明した。 2018年4月13日、トランプ大統領はシリアのアサド政権の関連施設への攻撃を指示し、地中海に展開していた、アメリカ海軍の駆逐艦三隻よりトマホーク約100発を発射し、空爆に戦略爆撃機のB-1も参加させた。また、イギリス軍のトーネードとタイフーン、フランス軍のアキテーヌ級駆逐艦とミラージュ、ラファールも作戦に加わり、イギリスのテリーザ・メイ首相やフランスのエマニュエル・マクロン大統領との電話会談で合同作戦が成果をおさめたという認識で一致した。 2018年12月19日にISILとの戦争に勝利したとしてシリアからのアメリカ軍撤退を表明するも、翌2019年10月にシリアのハサカ県とデリゾール県における油田地帯に残留させることを決定した。 2019年3月25日、シリアのゴラン高原の主権はイスラエルにあるとする文書に署名し、同年6月16日にはゴラン高原の新たな入植地をイスラエルは「トランプ高原」と名付けた。 2019年6月20日、イスラム革命防衛隊によるアメリカ軍無人偵察機の撃墜を受けて対イラン軍事行動を決定するも攻撃10分前になって撤回した。代わりにサイバー攻撃で報復したとされ、24日には最高指導者アリー・ハーメネイー師らに対する制裁措置を発表した。 2019年10月27日、カイラ・ミューラー作戦を実行してISILの最高指導者アブー・バクル・アル=バグダーディーを急襲して自爆に追いやったことを発表した。 2020年1月3日、イスラム革命防衛隊のガーセム・ソレイマーニー司令官を自らの指示で無人攻撃機によって殺害したことを発表した(バグダード国際空港攻撃事件)。また、これに対してイランが報復すればイランの施設52か所を攻撃すると応酬した。 2020年8月13日、イスラエルとアラブ首長国連邦の国交正常化を仲介したとしてアブラハム合意を発表した。同年9月11日、イスラエルとバーレーンの国交正常化を仲介したと発表した。同年10月23日、イスラエルとスーダン暫定政権の国交正常化を仲介したと発表した。 2020年12月10日にはイスラエルとモロッコの国交正常化を仲介し、西サハラに対するモロッコの主権を認めると発表した。
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