安全性・危険性
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「福島の原子力発電所と地域社会」の記事における「安全性・危険性」の解説
後述するように、吉原公一郎のような反対派から対応策の不備を指定されていた福島県庁は1980年9月、原子力対策室から主任主査が1名、原子力産業会議の主催でヨーロッパの視察を行った。報告記事では、環境モニタリングは年1回実施しているものの、常時監視するためのテレメータシステムを採用しているサイトは無く、発電所と立地町村役場との安全協定に相当するものも結ばれていなかった旨記載されている。この背景として視察先の(西側)各国の立地自治体には「原子力発電所はもともと安全である。安全な施設に対してそこまでする必要はない」という考えが根底にあるという。そのため「安全対策、とくに周辺地域の監視体制については日本の方がはるかに進んでいるという印象を強く受けました」としている。 なお、大熊町でも1980年代初頭当時に反対運動家がシンポジウムを開催するなど一定の活動がみられたが、これには町からも参加し、平行線に終わることが多かったが議論を行っていた。遠藤は『経営コンサルタント』のインタビューに対して半減期の解釈に関する説明を例示し「私は少なくとも原発は安全だという理解は深めています。絶対安全だとは言いませんけどね」と応じている。また、当時地元のシンポジウムに呼ばれた反対派の学者も「原子力は絶対に危険だ」とは決して言わず、放射能の長期的な影響にウェイトを置いた説明をしていたという。 ただし、東京電力企画部副部長の宅間正夫(当時)は、1982年、『政経人』でのインタビューで、BWRを採用していることを理由に「非常に運転し易い原子炉で、スリーマイル事故のようなものは本質的に起こりえない」と述べ、原子炉の1ヶ所集中立地のメリットとして共用設備の有効活用を挙げながら「送電ももちろん、発電所の中に変電所をつくり、まとめて一気に送っている。ただ、この送電線が事故や地震などでいっぺんにやられないかという心配があると思うが、今の技術から言って、変電所や送電線は一寸した地震には十分耐えられるし、故障しても直ちに保護装置でその波及を防ぐといった設計になっている。これは原発に限らず電源が集中的に固まっているところの送電設備や変電設備は、「保護システム」が非常に高度に出来ているので、いっぺんに全部やられるということはほとんどありえない」などとその根拠を述べている。 1986年にはチェルノブイリ原子力発電所事故が発生した。しかしこの時は大半の町民に危機感が共有されることはなく『エネルギーフォーラム』の記者は「町民は「遠い国の出来事」と受け止めている」と表現している。また、大熊町長・遠藤正は「あの日から一週間ほど町民の反応を見ていたが、問い合わせは一件もなかった。わが国の原発が安全だと信じ込んでいるのか、それともあきらめなのかははっきりしないが…」と述べている。 1989年1月に発生した福島第二3号機再循環ポンプ事故は、地元にて発生した事件であるためチェルノブイリより遥かに小規模な事故であるにも関わらず反響は大きかった。一例として大熊町議会では「住民と地方自治体参加の災害対策を確立し、住民に周知徹底すること」「根拠の無い安全宣伝はただちにやめ、安全・災害対策の予算を充実すること」などを指摘する議員もおり、町長は申入れの実施や広報協会の例会で反映すると答弁した。 『政経東北』1999年11月号では福島県の旧国名が岩代であった事実を指し、岩盤が強いための地名で災害が少ないと言われていたが、実際には字感から来た誤解であり「比較的地震や台風被害の少ない土地柄」に過ぎず、災害保険の掛け金が全国最低ランクではあるものの、地震災害を受けてこなかったわけではないとして、過去の事例を挙げ、県内原子力発電所の存在についても当時の安全宣伝を踏まえつつ、懸念を残している。
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安全性・危険性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/12 14:39 UTC 版)
反応の停止 核融合反応は核分裂反応と違って反応を維持するのが技術的に大変困難であり、あらゆる装置の不具合や少しの調整ミスが自動的に核融合反応の停止に結びつき、簡単には反応を再開出来ない。これはむしろ安全にとっては良い特性であり、現在の核分裂を使った商業用原子炉の根本的な危険性とは無縁である。 放射性廃棄物 核融合反応で発生する中性子は、核融合炉壁及び建造物を放射化する。放射化された核融合炉周辺の機械装置や建物が安全に本来の機能を発揮出来るような設計が求められる。たとえばITERにおいては2万トンの低レベル放射性廃棄物を発生させると推測されている(東海発電所の廃止措置に伴う物と同程度の量)。今後建設されるそれらの建物はすぐに廃棄できず既存の原子炉と同様30年程度の冷却期間が必要だと予想される。地層処分などの問題は現在の原子炉と同じ様に、費用の問題や環境汚染対策が必要である。 古くなったダイバータやブランケットは定期的に放射性廃棄物として発生するのでこれらの処理も必要となる。これらの発生頻度を最小化する部材技術の開発が求められる。また、三重水素の燃料化プロセスでも放射性廃棄物への配慮が必要となる。 三重水素の放射性 三重水素は放射性物質であり正しく管理される必要がある。特に環境への漏洩阻止は重要である。三重水素は容易に通常の水素と置き換わるので、漏洩した場合には三重水素を含む水や有機物が自然界で生じ、これらは生物の体内に容易に取り込まれる。三重水素水が生物に取り込まれた場合、通常の水と化学的な相違点は僅かであるため特定の臓器などに蓄積されたり体内で濃縮されたりする事はほとんどなく、通常の水と同じように排出される。生物が三重水素水を取り込んだ場合に半分が排出されるまでの時間(生物学的半減期)は、人の場合10日から14日程度とされる。また、三重水素を含む有機物を取り込んだ場合には、その有機物に見合った蓄積性と濃縮性を示す。ただし、三重水素は拡散しやすいため一点に留まらず、また水素が地球上に遍在するために三重水素が環境に放出されても希釈が早く、生物濃縮なども受けにくい。このため、特定の食品などに濃縮されることなどは考えにくい。 三重水素の核兵器への転用 三重水素は初期の核融合爆弾にも用いられたが、後に、入手性/取り扱いともにより容易な重水素化リチウムを原料として使用するテラー・ウラム型水素爆弾が使用されるようになったため、わざわざ三重水素が水爆に利用されることは考えにくい。また、現在の技術では核融合爆弾の起爆には原子爆弾を用いる外に手段が無いため、既存の核保有国以外が製造することは容易ではない。ただし、重水素とトリチウムのD-T反応を利用して原子爆弾の威力を増すブースト型核分裂兵器やD-T反応で放出される中性子をもちいる中性子爆弾の原料として利用される。また、通常の放射性物質同様、三重水素を原料にした汚い爆弾は容易に作ることができるがエネルギーが低いため皮膚すら貫通できず、他の材料を使った汚い爆弾に比べると実害は少ないとされる。 運転中の放射線 核融合炉の運転中はプラズマから強烈な中性子線が放射されるため、様々な防護措置をとってもある程度漏れることが予想されている。現状、ITERで予定される運転中の放射線は、敷地境界で1年間に約0.1ミリシーベルト以下と自然放射線の10分の1に当たる量である。 超伝導電磁石 超伝導電磁石とそれを支える構造支持体は運転中に連続して大きな力を受け続け、起動や停止時にはその変化に応じた力学的ストレスを受ける。また異常に応じて磁力を突然切る場合は、瞬間的に大きな変化に耐えねばならず、中性子を浴び続ける構造支持体が脆化しても支えきれるだけの安全度を確保することが求められる。
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