地方による違い
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/29 06:27 UTC 版)
東日本では角焼き餅を入れたすまし仕立て、西日本では丸餅を茹で味噌仕立てにするのが一般的ではあるが、地方による違いがある。 また土地の特産物を入れるなど、地域ごとに特色がある。 明治~大正に全国各地から移住者が来た北海道では、出身地(地域ごとの集団移住の場合は母村という)の作り方を引き継ぎ、近隣地域や近所の家と異なる雑煮が点在している。 海でとれた魚やその加工品を入れるのは岩手県、富山県など海沿いの各地にある。一方、海から遠い山地では野菜を多く使用する。 岩手県の三陸海岸地方では、醤油仕立ての雑煮にクルミをすり潰して作ったタレを添え、このタレに雑煮餅をつけて食す。 宮城県の仙台雑煮は仙台藩の華やかさを伝え、海の幸と山の幸をふんだんに使った豪華さで有名である。 松島湾で取れたはぜの焼き干しで出汁をとる。大根、人参、牛蒡の千切りを引き菜といい、これを冷凍しておく。昔は寒い冬の夜一晩中屋外に出して凍らせたという。それに凍み豆腐、からとり(里芋の茎を干したもの)、セリ、蒲鉾、はらこ等を入れる。餅は焼いた角餅で、醤油・塩・酒で調味する。 千葉県北部と茨城県の一部の下総雑煮は、角焼き餅を入れたすまし仕立てで、鶏肉、大根、人参、里芋、牛蒡、コンニャク、青菜などを入れ具沢山である。東京の江戸雑煮は、具の種類に椎茸、蒲鉾、鳴門巻きが加わるが、具は少なめで、茹でた小松菜と海苔をのせる。千葉県東部も、角焼き餅を入れたすまし仕立てだが、具は人参と油揚げの細切りを少々入れる程度で、ハバノリをたっぷりかけて食べる。 新潟県の越後雑煮は、鮭の頭や身・イクラに、大根、人参、牛蒡、長ネギ、コンニャク、銀杏などを入れ、切り餅を使った醤油仕立ての雑煮である。また、町おこしのためのイベントを開催する。 長野県の信州雑煮は、塩ブリを入れる。能登の塩ブリが飛騨高山を経て運ばれる。餅を茹でてから、大根、人参、里芋、三つ葉を入れ、味噌仕立てにする。なお、長野県の佐久地方雑煮は、素焼きしたウグイの稚魚とセリと焼角餅を入れ、醤油仕立て。 愛知県の雑煮は、削り節と醤油を合わせたすまし汁に、角餅と青菜(名古屋近辺では「餅菜」と呼ばれる小松菜によく似たもの、豊橋近辺では水菜)を入れて煮たあと削り節をかける。 京都の雑煮は、白味噌仕立てで、丸餅は焼かずに炊いておく。アワビ、ナマコ、大根、親イモ、子イモ、昆布、開き牛蒡を入れる。コンブはヨロコブに通じ、親イモは出世、子イモは子孫繁栄、大根は根を張って安定した生活、開き牛蒡は開運を願っている。材料が溶け込みこってりと甘く、京雑煮独特の味である。 奈良県の雑煮は、白味噌仕立てで、里芋、大根、豆腐を入れて白一色にする家庭と、人参を加えて紅白にする家庭がある。関西の他府県と同様の丸餅であるが、焼いて入れるのは奈良独特である。さらに奈良県の雑煮を特徴付けるのは「きな粉雑煮」である。餅を汁から取り出して別皿のきな粉を絡めて食べる。多くの奈良県民には当たり前の食べ方であるので、例えば、寿司に醤油をつけて食べるのを敢えて「醤油寿司」と言わないのと同様、通常は「きな粉雑煮」とは呼ばず、単に「雑煮」と呼んでいる。 島根県や鳥取県の一部では、汁がさらりとしている小豆汁に餅を入れた「小豆雑煮」。ひとつのさやから豆がたくさん採れる小豆に、子孫繫栄を願ったと伝わっている。広い範囲で、すまし汁に出雲を代表する特産品として知られている十六島海苔を載せた雑煮を食べる。一般的には、いりこ、カツオ見昆布で出汁をとる。世界遺産登録・石見銀山のある大田市では、錦糸卵、す巻きかまぼこの細切り、青菜、かつお節、海苔を盛りつけた「五色雑煮」。石見地方では餅、節料理の一品は・豆をのせた素朴な雑煮の「黒豆雑煮」。島根の方言で「元気」を「まめ」と言い、いつまでも元気でいられますようにという願いがこめられている。 徳島県と高知県の県境にある祖谷山では、マイモ(里芋の親芋)と豆腐だけが入ったイリコと昆布の出汁の澄まし汁を食べる。これはこの地では米が育たず餅が貴重品だった事に由来する。また、芋3つの上に、大きく切った豆腐を2つ十文字に重ねて載せるという特徴的な盛り付けをするが、これは平家が戦で刃を交えた様子を表しているといわれ、この見た目から「うちちがえ雑煮」と呼ばれていた。 香川県の一部(東部が中心)では、白みそに餡餅入りの雑煮。しかし、食べる県民と食べない県民の比率は半々であり、好みが分かれる。詳細は「餡餅雑煮」を参照 福岡県とその近隣では、焼きアゴでダシを取り、カツオ菜(高菜の一種)や塩ブリ等が入った博多雑煮を食べる。栗の木の枝の先端だけを削った「栗はい箸」で食べるのが伝統。 長崎県長崎市では、焼きアゴダシのすまし仕立てで、焼いた丸餅、ブリ、鶏肉、蒲鉾、白菜、人参、椎茸、唐人菜(長崎白菜)またはカツオ菜など、具を必ず奇数にして入れる。島原市近隣では具雑煮といって、季節にかかわらず通年食べられる。 熊本県では、鰹と昆布やスルメなどでだしを取り焼かない丸餅を入れ、大根、人参、牛蒡、里芋、椎茸、蒲鉾、三つ葉などが入り肥後野菜の水前寺もやしなども入る。鶏肉かブリ、地域によっては車エビや鯛、牡蠣、蛤などを入れる。 宮崎県では、猪(しし)肉入りの雑煮。 鹿児島県のさつま雑煮は焼きエビを出汁取りと具材に使う。 沖縄県には現在も正月に雑煮や餅を食べる風習はなく、祝時の汁物としてはイナムドゥチや中身汁がポピュラーである。しかし同じ琉球文化圏に属する鹿児島県奄美地方においては比較的普及している。
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