スチル写真
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スチル写真(スチルしゃしん、英語: still picture, still photo(graphy))、もしくは、単にスチル(still)とは、動きのない静止画のこと[1][2]。スチール写真と表記されることもある。
スチルとムービー
語義
スチルは、動きのある「活動写真」、いわゆる映画などを指すシネ(cine)、シネマ(cinema)、ムービー(movie)に対する語で、動きのない写真のことである。通常、ある一瞬を1枚の画像に撮影したものであるが、長時間露出や、連続写真(ストロボスコープによるもののような)もスチルである[注釈 1]。一般に単に「写真」と言えばスチルのことを指しているのがもっぱらではあるが、後述の映画制作上の用語であるとか、「電子スチルビデオカメラ」[注釈 2]といった用例はある。
機材の話題で、シネ用とスチル用という分類があるものがある。代表的なものは三脚の雲台であろうか。シネ用であればスムーズにパン操作ができることはほぼ必須であるが、スチル用であればそれは求められない。あるいは、シネ用雲台は縦画面(縦位置)に切り換える必要がない(いわゆる2 way、二軸)のに対し、スチル用雲台なら縦画面・横画面を切り換えられる(3 way、三軸)機能を持つ。
スチルとスティール
英語での発音は [stɪl] であり、自然な音訳はスティルまたはスチルとなる。しかし、スチールと音訳することもあり、以下の国語辞典はスチールを項目としている。
- スチルなし
- 『新明解国語辞典 第6版』(三省堂)、『日本国語大辞典 第2版』(小学館)、『日本語大辞典 第2版』(講談社)、『大辞泉』(小学館)
- スチルは空項目でスチールへ参照
- 『広辞苑 第5版』(岩波書店)、『デジタル大辞泉(大辞泉オンライン版)』(小学館)[3]、『大辞林 第2版』(三省堂)[4]
また以下の英和辞典はstillの訳語にスチールを使っている。
映画のスチル写真
映画制作の用語でのスチル写真とは映画の宣伝や広報の素材として用いられる写真である[1][7]。通常は映画の撮影フィルムのフレーム(一コマ)を引き伸ばしたものではなく、上映用のコマとは別にシーンの撮影終了時または同時並行で専門のスタッフが撮影を行う[7]。この場合、映画のスタッフクレジットは「スチル」「スチール」と表記され、スタッフの呼称はスチルカメラマンである。
映画製作において、この写真が作品の製作に直接関与することはない。もっぱら宣伝用として、ポスター、雑誌、新聞などのメディアで使用するものである。また、初期のスチル写真は撮影所で組織化された専属スタッフやカメラマン、もしくは撮影所近辺の写真館の撮影技師らが撮影していた。これらの写真は配給会社を通して映画館や出版社に配られ、宣伝材料として用いられた。
デジタルミラーレスカメラの登場以前はスチルカメラマンの使用機材は一眼レフカメラが定番だったため、プラスチックハードケース等を改造した特製の防音ケース[注釈 3]に入れたカメラを用いるか、望遠レンズを用いることで同時録音の妨げにならないように撮影する技術が求められた。騒音にシビアな場合、リハーサル中に撮影したり、本番とは別に[注釈 4]、撮影する役者に本番時と同じポーズを取らせ、(必要に応じて)撮影風景を再現して撮影するなどする。(前述のように)映画自身の撮影フィルムから抜き出すことで、本番中の撮影を避けることもあった。
2020年代ではデジタルミラーレスカメラが主流になりつつありシャッター音など動作音がほとんど鳴らないため、防音ケースの使用はみられなくなっている。
映画館にこれらのスチル写真を配るということは減ってきているが、雑誌などでのタイアップなど宣伝材料としての活躍の場は多い。劇場で配布・販売されるパンフレット類はもちろんであるが、公開に合わせて写真集などの関連書籍を作ることが多くなってきており、写真家に依頼することも増えてきている。
脚注
注釈
- ^ とは言え、写真術が「ある一瞬」を切り取れるようになったのは、説によっては1000年以上もあるカメラ・オブスクラの歴史から見ればそう古いことではない。日本では、水雷の爆発による水煙を写真に撮って江崎礼二が「早撮りの江崎」と評判になったのが1884年(明治17年)のことである。
- ^ これの場合、成立上、銀塩写真が静止画から動画に発展したのとは逆に、電子写真は動画用のビデオカメラから派生するような形で「電子スチルビデオカメラ」が生まれている、という事情もある。
- ^ サウンド・ブリンプという。水中カメラ用の密閉ケース(水中ブリンプ[8][9])も用いられた。
- ^ 撮影スケジュールを邪魔しないよう、通常は本番の後にスチル写真を撮った。
出典
- ^ a b 「怪獣アイテム豆辞典」『東宝編 日本特撮映画図鑑 BEST54』特別監修 川北紘一、成美堂出版〈SEIBIDO MOOK〉、1999年2月20日、150頁。ISBN 4-415-09405-8。
- ^ 三輪健太朗『マンガと映画』NTT出版、2014年、304頁
- ^ スチル、デジタル大辞泉、コトバンク
- ^ スチル Excite辞書
- ^ still コトバンク
- ^ still Excite辞書
- ^ a b 『写真空間3 特集 レクチャー写真論!』青弓社、2009年、129頁
- ^ “ボレックス R16B カメラ用 ブリンプ(1962-1975)”. NHK放送博物館. 2024年2月28日閲覧。
- ^ “映画・映像 業界用語辞典 「水中ブリンプ」”. 東京映画映像学校. 2024年2月28日閲覧。
関連項目
スチール写真
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/02 10:17 UTC 版)
主役の勝新太郎と準主役の仲代達矢、三島由紀夫、石原慎太郎の4名が全員大映京都撮影所に出揃った6月初旬に、宣伝用の写真撮影が行なわれたが、その際に、『炎上』などのカメラマンを務めた宮川一夫が三島を応援するために突然やって来た。 名カメラマンとして一目置かれている宮川一夫が見学に来たことで、現場のスタッフの雰囲気が引き締まったという。宮川は、三島のメイキャップのチェックなどをした。 スチール写真には、向かって右から仲代達矢、勝新太郎、石原裕次郎、三島由紀夫が撮影所の玄関前で居並び、侍として前を凝視しているものや、その直前に撮影所から出て来たばかりで、右から勝、仲代、三島、石原が笑顔で談笑しながら並んで歩いているものもある。 勝、裕次郎、三島がそれぞれ単独で刀を構えているポスター写真も撮影された。また、映画本編の撮影現場でのスナップ的な写真もある。 参考文献となった原作小説『人斬り以蔵』の作者の司馬遼太郎は、武市半平太役の仲代達矢の顔について、「仲代達矢氏が武市半平太になっている。スチールをながめていると仲代氏の顔はスパニッシュなところが武市に似ている」とコメントしている。 映画宣伝用ではないが、三島が個人的にアルバムとしてまとめて五社監督に贈って、五社の死後にその遺族が保管していた写真(約20枚)もあり、2017年(平成29年)10月12日の京都国際映画祭で初公開される運びとなった。写真は撮影現場で侍姿の三島が勝新太郎や石原裕次郎と休憩中に談笑しているものなどである。
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