胸骨
胸骨
【英】:Sternum
胸郭前壁正中部にある縦長の偏平骨で、胸骨柄、胸骨体、剣状突起からなる。胸骨柄は最も側頭にあり、不整六角形を呈す。上縁正中部の浅い陥凹部が頚切痕で、この外側下方で斜め上方に向かう浅い陥凹部が、鎖骨関節面に対する鎖骨切痕である。鎖骨切痕は下方では左右の幅が尾側ほど狭くなり、下縁で胸骨体と軟骨結合によって連結している。胸骨体は縦長の長方形を呈し、下方でやや幅が広い。内面は比較的平滑であるが、外面は分節的に発生した名残として、横走する隆起線が肋骨切痕に対応して数本認められる。胸骨柄と胸骨体の外側縁の浅い陥凹部が、第1~第7肋軟骨に対する肋骨切痕である。第1肋骨切痕は鎖骨切痕の下方にあり、第2肋骨切痕は胸骨柄と胸骨体との連結部で両方にまたがっている。第3肋骨切痕以下は胸骨体にあるが、第5肋骨切痕以下では下方ほど間隔が狭くなる。第7肋骨切痕は剣状突起上端部に接している。剣状突起は胸骨体下縁に接する細長い小部で、一部が軟骨で、形は不定である。胸骨柄と胸骨体(胸骨柄結合)および胸骨体と剣状突起(胸骨瞼結合)の軟骨結合部は、年齢とともに骨化する。胸骨柄結合部は前方にやや突出し、胸骨角をなす。頚切痕外側部で時に見られる小骨が胸上骨である。ギリシャ語のsternon(男性の胸)に由来する。
胸骨
胸骨
胸骨
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/08/24 13:21 UTC 版)
骨: 胸骨 | |
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人の胸骨の位置(赤い部分)
ヒトの胸骨の後ろ側の面
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名称 | |
日本語 | 胸骨 |
英語 | sternum |
画像 | |
アナトモグラフィー | 三次元CG |
関連情報 | |
MeSH | Sternum |
グレイ解剖学 | 書籍中の説明(英語) |
胸骨(きょうこつ、英語:sternum)は人においては胸郭前面の正中部にある扁平骨であり、上から胸骨柄・胸骨体・剣状突起の3部からなる[1]。
造血器官
成人は胸骨には腸骨に次いで大量の骨髄が存在し、血液の20~30%程度は胸骨で作られる。
胸骨骨折

胸骨骨折(英語:fracture of the sternum、ドイツ語:Sternumfraktur)は胸郭骨折の1つである。ほとんどの場合は直達外力によって発生し、骨折部位としては胸骨柄、胸骨体の境界部に多く発生する。頻度は高くなく、交通事故の際に運転者がハンドルで前胸部を強打するなどして生じることが多い。
- 症状
- 治療
胸郭内内臓損傷の合併がない場合には絆創膏固定、バストバンド固定を3、4週間施す。転位が大きく、呼吸、循環に支障が認められる場合は手術療法を行う。
動物の胸骨
胸骨の一つの大きな役割は前肢の基部骨格、つまり肩帯と体幹部の結合である。肩帯は肩胛骨・前烏口骨・烏口骨の3つ、あるいは肩胛骨・鎖骨・烏口骨の3要素からなるが、これらの接点に前肢の基部が結合し、前烏口骨、あるいは鎖骨の部分に胸骨が結合する。こうして前肢は肩帯・胸骨・肋骨を経て脊椎骨と結びついている[2]。胸骨は前肢を動かす筋肉の付着箇所としても重要であり、運動において前肢の役割が大きい動物ほど胸骨は大型化する傾向がある[2]。
胸骨は脊椎動物の四肢動物のうち、主に有羊膜類に見られる。広義の両生類である迷歯類は胸骨の存在した化石証拠が得られていない。これは迷歯類が胸骨を持たなかったか、あるいは軟骨性であったため保存されなかったと考えられている。現生の両生類では無尾類(カエル)でのみ胸骨が発達する。有尾類の胸骨は小さく分離しており、マッドパピーでは軟骨の結節として、サンショウウオでは胸骨片として存在する。無足類(アシナシイモリ)は胸骨の痕跡が確認されていない。現生の両生類は陸上生活を送る中で、常時生じる機械的圧力に対する応答として、それぞれ独立に胸骨を獲得した可能性がある[2]。
爬虫類の胸骨にも多様性が見られる。鱗竜類のヘビは胸骨を持たず、肋骨を靭帯で接続しているため、肋骨を大きく展開することが可能である。一方で同じく鱗竜類に属するトカゲは高い敏捷性を持ち、盾状の頑強な軟骨あるいは置換骨性の胸骨で前肢帯を固定している[2]。主竜類に近い位置に置かれるカメは胸骨を持たず、繊維性靭帯や軟骨により腹側で前肢帯を結合している[2]。主竜類のワニは1枚の単純な軟骨板で形成された胸骨を持つ。ワニの胸骨は前側で前烏口骨と付着し、後側では石灰化した繊維性膜として腹肋と癒合する[2]。

絶滅した主竜類のグループである翼竜や非鳥類型恐竜にも胸骨は存在しており、特に飛翔能力を持つ翼竜の胸骨は巨大化している。恐竜はアーケオプテリクスの段階ではまだ胸骨が発達していなかったが、鳥類は飛翔筋の付着する竜骨突起が発達し、翼竜との収斂進化を遂げている[2]。
哺乳類の胸骨は一連の胸骨片から構成されており、爬虫類の胸骨と比べて幅が狭い。最後位の胸骨片は剣状突起を持ち、軟骨あるいは置換骨で構成されている。クジラのような海棲哺乳類は胸骨片同士が癒合して相対的に小型の胸骨を形成しており、関節する肋骨は陸棲哺乳類と比べて少なくなっている[2]。
脚注
参考文献
- 原著 森於菟 改訂 森富「骨学」『分担 解剖学1』(第11版第20刷)金原出版、東京都文京区、2000年11月20日、19-172頁。 ISBN 978-4-307-00341-4。
関連項目
外部リンク
- 胸骨 - 慶應医学部解剖学教室 船戸和弥
「胸骨」の例文・使い方・用例・文例
- 胸骨骨折は、自動車事故で発生しやすい。
- 胸骨または胸骨に接続されていない
- 胸骨に接合していない肋骨
- 浮動肋骨は、胸骨と接続されていない
- ジュラ紀から白亜紀のスズメほどの大きさの化石鳥で、竜骨の付いた胸骨と、退化した尾を持つ
- 飛翔筋をつけるための竜骨を持つ胸骨を持つ鳥
- ゴビ砂漠で見つかった、鳥のように結合した手根骨と竜骨胸骨、そして恐竜のものに似た長い尾がある、七面鳥の大きさの長い脚を持つ7500万年前の化石
- くる病による胸骨の突出に特徴的な胸の奇形がある
- 胸骨の、胸骨に関する、または、胸骨の近くの
- 鳥の胸骨上にあるものやえんどうの花の結合した花弁によって形成されるような、竜骨または背骨の形をしたさまざまな構造
- 飛ぶ鳥の胸骨の中央にある隆起
- 肩甲骨と胸骨を結ぶ骨
- 人間の脊椎から胸骨(および脊椎動物の類似の骨)へと延びる湾曲した24の骨のアーチの1つ
- 胸骨の広い中心部
- 胸骨の上部
- 胸骨の3つの部分の中で最も小さい
- 胃の上、または、胃の周りの領域(胸骨の直下)
- 横隔膜と胸骨に付着する心膜の硬い最も外側の層
- 胸骨のすぐ下の正中線にあるわずかなくぼみ(一撃がみぞおちに影響を与えうる)
- 頭蓋、脊柱、胸骨、助骨を含む骨格の一部
胸骨と同じ種類の言葉
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