種実類 利用

種実類

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/05/09 14:25 UTC 版)

利用

食用

さまざまなナッツ
栗を用いたケーキ
ナッツを用いたチョコレート
ピーナッツバター
ヒマワリの花と果実、ヒマワリ油

ナッツの利用として最も大きなものは、種をそのまま食用とすることである。ただしまったく加工をせずにそのまま食されることは多くなく、多くは種皮・殻を取り除いて乾燥させたものが食用とされる。その後、砂糖油脂などを用いて調味加工されたものもある。

加工されたナッツは、菓子として、またとともにとして食べるほか、砕いてサラダなどのトッピングとして食べられることも多い。アーモンドやココナッツは、スライスしてフライの衣としても使用される。

ナッツは製菓材料としてもきわめて重要であり、チョコレートクッキーなどに混ぜて、あるいはそのままのナッツにチョコレートをかけるなどして使用される[20]。アーモンドをペースト状にしたプラリネは、洋菓子の重要な材料の一つである。ヘーゼルナッツのペーストとチョコレートを合わせたジャンドゥーヤなど、ナッツペーストとチョコレートの組み合わせは相性がよく多用される。製菓材料としては、アーモンド粉と砂糖を混ぜ合わせたマジパンなども重要である。

ナッツを使用した菓子は、ナッツと蜂蜜砂糖を主体としたやわらかいヌガーや、ナッツパイに蜂蜜をしみこませた中東で非常によく食べられるバクラヴァ、そのままのアーモンドを糖衣でくるんだドラジェ、クリを砂糖漬けにしたマロングラッセなど、それこそ無数に存在する。いずれも、ナッツの香ばしさや歯触りと甘味とを組み合わせた菓子である。和菓子においても、栗粉餅はすでに室町時代の文献にその名がみられ、江戸時代には栗羊羹も出現するなど、古くから製菓材料として用いられてきた[21]。クリをペースト状にした栗餡はよく使用される材料であり、饅頭などに使用される。クリのほか、クルミも歯触りや香ばしさからアクセントとして使用される。

アーモンドやココナッツは、すりつぶしてミルク状にし、ミルクと同様の使用法で使用することができる。アーモンドミルク飲料としての役割が大きく、豆乳と同じような扱いを受ける。特に動物性の食品を一切食さないベジタリアンにとっては、アーモンドミルクはまさしくミルクの代わりとして利用される。これに対し、ココナッツミルクは飲料として使用することもあるが、どちらかといえば食材としての役割のほうが大きい。ココナッツミルクは東南アジア諸国など多くの熱帯諸国において基本的な食材の一つとなっており、ココナッツミルクを使用した料理が非常に多く存在する[22]。利用法としてはミルクと基本的には同じで、料理にコクとまろやかさを与えるために使用される。

油糧

ピーナッツもすりつぶして多用されるが、この場合はミルクではなくそのまま固体のバター状にして、ピーナッツバターとして使用される。ピーナッツバターが最も多用されるのはアメリカであり、そのままパンに塗るスプレッドとして使用されるのが一般的である[23]。ピーナッツバターは日本では砂糖を入れて甘く味付けしたものが主流であるが、日本以外では無糖のものが一般的である。また、ピーナッツバターは中華料理アフリカ料理において調味料としてよく使用される。脂肪を多く含んでいるものは植物油原料ともなる。種実類およびその関連のものからとれる油の中で最も数量が多いのは、大豆油を除けばヒマワリ油、そしてピーナッツオイルである。ピーナッツオイルは19世紀には主要な油糧作物として盛んに栽培され、西アフリカセネガルなどでは主要作物の一つに成長した。

ココナッツオイルもやや重要である。ココナッツ(ココヤシの胚乳)はそのままナッツとするほか、乾燥させてコプラとし、食用油や工業原料とする[22]。産業の少なく育つ作物も少ない南太平洋諸国、とくに環礁からなる島々においては、このコプラ生産は貴重な現金収入となってきた。

世界の油脂生産の上で大きな役割を果たすナッツは上記の4種で、工業用や食用油を目的として広く栽培され、特にヒマワリやピーナッツは油糧作物としての役割が大きい。1997年から1998年の世界の植物油生産において、大豆油は1位、ヒマワリ油は4位、ピーナッツオイルは5位を占めている[24]。2003年においては、大豆油が3101万トンで1位、ヒマワリ油が860万トンで4位、ピーナッツオイルが444万トンで5位、ココナッツオイルが320万トンで8位となっていた[25]。このほかに、ペカン油マカダミア油などといったナッツ由来の油の種類は多く、多方面に使用される。

その他

このほか、ナッツのうちクリトチのようにデンプンを主成分とするものは、穀物を安定的に入手することのできない非農耕社会や山村においては主食として大きな役割を果たしてきた[26]


注釈

  1. ^ a b ただしクルミペカンの果実の構造は典型的な核果とは異なる点があるため、狭義の核果とはされないこともある[10]
  2. ^ 同属の近縁種のものを含めてヒッコリーともよばれる[19]

出典

  1. ^ a b c d e f 日本食品標準成分表2020年版(八訂)”. 文部科学省. 2022年5月19日閲覧。
  2. ^ 豆類(種実) Pulses”. 農林水産省. 2022年5月20日閲覧。
  3. ^ a b c d e f ナッツ. コトバンクより2022年5月20日閲覧
  4. ^ a b ナッツ類 Tree nuts”. 農林水産省. 2022年5月20日閲覧。
  5. ^ ケン・アルバーラ著 田口未和訳 (2016). ナッツの歴史. 原書房. pp. 13–14. ISBN 978-4562053261 
  6. ^ Stuppy, W. (2004). Glossary of Seed and Fruit Morphological Terms. Seed Conservation Department, Royal Botanic Gardens, Kew, Wakehurst Place. pp. 1–24 
  7. ^ a b nut”. Merriam-Webster Dictionary. 2022年5月6日閲覧。
  8. ^ a b 清水建美 (2001). 図説 植物用語事典. 八坂書房. pp. 96–108. ISBN 978-4896944792 
  9. ^ 巌佐庸, 倉谷滋, 斎藤成也 & 塚谷裕一 (編) (2013). “堅果”. 岩波 生物学辞典 第5版. 岩波書店. p. 415. ISBN 978-4000803144 
  10. ^ a b c d e f Armstrong, W.P.. “Fruits Called Nuts”. Wayne's Word. 2022年5月6日閲覧。
  11. ^ 和泉秀彦・三宅義明・舘和彦 (編著). 栄養科学ファウンデーションシリーズ 5 食品学. 朝倉書店. p. 84. ISBN 978-4-254-61655-2 
  12. ^ 斎藤新一郎 (2000). 木と動物の森づくり. 八坂書房. p. 18. ISBN 978-4896944600 
  13. ^ 新版 食材図典 生鮮食材篇: FOOD’S FOOD. 小学館. (2003). p. 302. ISBN 978-4095260846 
  14. ^ 食本成分データベース”. 文部科学省. 2022年5月19日閲覧。
  15. ^ 斎藤新一郎 (2000). 木と動物の森づくり. 八坂書房. p. 30. ISBN 978-4896944600 
  16. ^ 邑田仁 (2017). “ハス科”. In 大橋広好, 門田裕一, 邑田仁, 米倉浩司, 木原浩 (編). 改訂新版 日本の野生植物 2. 平凡社. p. 214. ISBN 978-4582535396 
  17. ^ 米倉浩司 (2016). “ヒシ属”. In 大橋広好, 門田裕一, 邑田仁, 米倉浩司, 木原浩 (編). 改訂新版 日本の野生植物 3. 平凡社. pp. 260. ISBN 978-4582535334 
  18. ^ 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 (2012). “ヒシの仲間”. 草木の種子と果実. 誠文堂新光社. p. 129. ISBN 978-4-416-71219-1 
  19. ^ ペカン. コトバンクより2022年5月21日閲覧
  20. ^ 「ナッツの歴史」p145 ケン・アルバーラ著 田口未和訳 原書房 2016年8月27日第1刷
  21. ^ 「栗の文化史 日本人と栗の寄り添う姿」p154-155 有岡利幸 雄山閣 2017年2月25日初版発行
  22. ^ a b 「オセアニアを知る事典」平凡社 p112 1990年8月21日初版第1刷
  23. ^ 「マメな豆の話」p141 吉田よし子 平凡社 2000年4月20日初版第1刷
  24. ^ 「マメな豆の話」p177 吉田よし子 平凡社 2000年4月20日初版第1刷
  25. ^ 「新訂版 食用油脂入門」(食品知識ミニブックスシリーズ) p83 日本食糧新聞社 平成16年10月29日発行
  26. ^ 「基礎から学ぶ 森と木と人の暮らし」pp16-17 NPO法人共存の森ネットワーク企画 鈴木京子・赤堀楠雄・浜田久美子著 農山漁村文化協会 2010年3月10日第1刷
  27. ^ 「人類史の中の定住革命」p125 西田正規 講談社学術文庫 2007年3月10日第1刷
  28. ^ 「人類史の中の定住革命」p185 西田正規 講談社学術文庫 2007年3月10日第1刷
  29. ^ 「栗の文化史 日本人と栗の寄り添う姿」p26-29 有岡利幸 雄山閣 2017年2月25日初版発行
  30. ^ 「世界の食用植物文化図鑑 起源・歴史・分布・栽培・料理」p242 バーバラ・サンティッチ、ジェフ・ブライアント著 山本紀夫監訳 柊風舎 2010年1月20日第1刷
  31. ^ 「世界の食用植物文化図鑑」p238 バーバラ・サンティッチ、ジェフ・ブライアント著 山本紀夫監訳 柊風舎 2010年1月20日第1刷
  32. ^ 「世界の食用植物文化図鑑」p245 バーバラ・サンティッチ、ジェフ・ブライアント著 山本紀夫監訳 柊風舎 2010年1月20日第1刷






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