ヤマモガシ科とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > ヤマモガシ科の意味・解説 

ヤマモガシ科

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/11/24 07:04 UTC 版)

ヤマモガシ科
ハゴロモノキ Grevillea robusta
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 双子葉植物綱 Magnoliopsida
亜綱 : バラ亜綱 Rosidae
: ヤマモガシ目 Proteales
: ヤマモガシ科 Proteaceae

ヤマモガシ科学名:Proteaceae)は双子葉植物で、75から80、1600ほどからなる。現在は特に南アフリカとオーストラリアで多くの種が栄えている。日本にはただ1種、ヤマモガシ(Helicia cochinchinensis Lour.)が野生し、東南アジアから西南日本まで分布する。ヤマモガシ科は南米南アフリカインドオーストラリアニューカレドニアニュージーランドなどに分布するが、これらはかつてのゴンドワナ大陸の一部である。またニュージーランド南島白亜紀石炭中から多くのヤマモガシ科の花粉が見つかっていることなどから、本科はゴンドワナ大陸で発展した(ゴンドワナ植物)と考えられる。

形態

いずれも常緑で、ほとんどが木本、一部は草本。は両性で、花被(がくと花弁の区別はない)は筒状で先が4裂し、それぞれに雄蕊が1つずつつく。雌蕊は1つで子房上位、堅果などの果実となる。花序は総状・穂状・頭状など。

本科植物は一部を除いて必須栄養素であるリンの欠乏に対してを特殊な形状に変化させることで知られる。この根は土壌中に有機酸を分泌し植物が通常利用できない形態のリンを溶解し吸収しておりリンに乏しい環境でも生育できるようになっている。この根は当初本科の学名Proteceaeからプロテオイド根(英:proteoid root)と呼ばれていたが、ヤマモモ科クワ科マメ科モクマオウ科に属する一部の種にも同じ目的で同じような形態に根を変化させるものが知られるようになったのでクラスター根(英:cluster root)と名前が変更された。日本のヤマモガシもこの構造の根を持つ[1]。同じように根の働きを強化するものとして、菌類と根の共生形態である菌根、マメ科などを中心に知られる根粒などが知られるが、クラスター根を形成するヤマモガシ科やマメ科ルピナス属には菌根や根粒を作るものが知られていない[2][3]

生態

乾燥地に適応し生育する者が多い。

山火事が頻発するオーストラリアに分布するものを中心に、本科のいくつかの種の果実は山火事の強熱を受けることで開いて中の種子を散布するという仕組みをもつものがある。山火事直後に散布され発芽することで、周囲の植生が壊滅した中で太陽光や栄養分を独占し、土壌中の病原菌も熱で殺菌され枯死しにくいなどの利点があると考えられている。同じような生存戦略を持つ植物は火災が多発する地域を中心に他にも存在し、オーストラリアに分布するヒノキ科や、北米や地中海周辺に分布するマツ科マツ属など針葉樹にも知られる。また、本科では果実の構造以外にも樹皮を厚くし防火性能を高めたり、地下部に栄養を蓄え萌芽更新能力も高くすることで、地上部が焼損しても速やかに芽を出して再生するなどの適応を見せる種も多く知られる。

多くの昆虫がヤマモガシ科を利用している。日本産のヤマモガシはサツマニシキ(Erasmia pulchella)という美しい蛾の幼虫の食草として知られる。

人間との関わり

プロテアProteaバンクシアBanksiaマカダミアMacadamiaなどの属を含む。マカダミア(マカダミアナッツ)は食用にするために栽培され、他にも観賞用に多くの種が栽培される。

分類

ヤマモガシ科の系統は最近まではっきりせず、独立のヤマモガシ目とされたりしていた(クロンキスト体系ではグミ科も入れたが、花の形が見かけ上似ていることによる)。近年の分子系統学研究から、スズカケノキ科ハス科が同じ系統に入ることがわかった(形態的類似点はあまりない)。下位分類は下記のようにいくつかの亜科単位を認めるとする研究者が多い。

Subfamily Bellendenoideae

下記の一属から成る単型の亜科である。

  • Bellendena
和名未定の属。タスマニアの高山地帯に分布するBellendena montana(現地名mountain rocket, 山のロケットの意味)一種だけが知られる単型の属である。

Subfamily Persoonioideae

下記の2連5属から成る

Tribe Placospermeae

  • Placospermum

Tribe Persoonieae

  • Toronia
ニュージーランドに分布するToronia toru一種だけが知られる単型の属である。
  • Garnieria
ニューカレドニアに分布するGarnieria spathulifolia一種だけが知られる単型の属である。種小名spathulifoliaは「ヘラのような葉」という意味。
  • Acidonia
Acidonia microcarpa一種だけが知られる単型の属である。種小名microcarpaは「小さい果実」という意味。後述のPersooniaに含めると考える研究者もいる。
  • Persoonia
オーストラリアに分布。花は総状花序で果実は核果である。現地名はgeebungsやsnottygobbles

Subfamily Symphionematoideae

  • Agastachys
Agastachys odorata一種だけが知られる単型の属である。現地名はwhite waratah
  • Symphionema
オーストラリア大陸南東部とタスマニアに局所的に2種が知られる。

Subfamily Proteoideae

incertae sedis (所属連不明)

以下の5属は連(tribe)における所属先が不明である。

  • Eidothea
オーストラリアに2種が知られる。樹高40m以上になる高木種。現地名nightcap oak(ナイトキャップ地区のカシの意味)
  • Beauprea
ニューカレドニアに10種程度が知られる。アフリカに分布する種類と近いという。
  • Beaupreopsis
  • Dilobeia
  • Cenarrhenes
  • Franklandia

Tribe Conospermeae

Subtribe Stirlingiinae
  • Stirlingia
Subtribe Conosperminae
  • Conospermum
  • Synaphea

Tribe Petrophileae

  • Petrophile
  • Aulax

プロテア連 Tribe Proteeae

Faurea
アフリカ大陸南部およびマダガスカル島に15種程度が知られる。属名Faureaは南アフリカの兵士かつ植物学者であった William Caldwell Faure (1822-1844)に因む。

Tribe Leucadendreae

Subtribe Isopogoninae
  • Isopogon
Subtribe Adenanthinae
  • Adenanthos
レウカンデンドロン亜連 Subtribe Leucadendrinae

Subfamily Grevilleoideae

incertae sedis(所属連不明)

以下の2属は所属する連(tribe)が不明である

  • Sphalmium —
  • Carnarvonia

Tribe Roupaleae

incertae sedis(所属亜連不明)

以下の4属は亜連(subtribe)単位における所属が不明である。

  • Megahertzia
  • Knightia
  • Eucarpha
  • Triunia
Subtribe Roupalinae
  • Roupala
  • Neorites
  • Orites
Subtribe Lambertiinae
  • Lambertia
  • Xylomelum
Subtribe Heliciinae
  • Helicia
本科植物のうち日本に唯一分布するヤマモガシ(山茂樫 Helicia cochinchinensis)が含まれる。
  • Hollandaea
Subtribe Floydiinae
  • Darlingia
  • Floydia

バンクシア連 Tribe Banksieae

Subtribe Musgraveinae
  • Musgravea
  • Austromuellera
バンクシア亜連 Subtribe Banksiinae
オーストラリアに分布。特徴的な細長い花を付ける。

Tribe Embothrieae

Subtribe Lomatiinae
  • Lomatia
Subtribe Embothriinae
  • Embothrium
  • Oreocallis
  • Alloxylon
  • Telopea
Subtribe Stenocarpinae
  • Stenocarpus
  • Strangea
Subtribe Hakeinae
  • Opisthiolepis
  • Buckinghamia
  • Hakea
  • Grevillea
  • Finschia

マカダミア連 Tribe Macadamieae

マカダミア亜連 Subtribe Macadamiinae
  • マカダミア属 (学名 Macadamia
Macadamia integfifoliaの種子がマカダミアナッツである。
  • Lasjia
  • Nothorites
  • Panopsis
  • Brabejum
Subtribe Malagasiinae
  • Malagasia
  • Catalepidia
Subtribe Virotiinae
  • Virotia
  • Athertonia
  • Heliciopsis
Subtribe Gevuininae
  • Cardwellia
  • Sleumerodendron
  • Euplassa
  • Gevuina
  • Bleasdalea
  • Hicksbeachia
  • Kermadecia
  • Turrillia

脚注

  1. ^ 山内大輝ら.(2015)日本産ヤマモガシ(ヤマモガシ科)のクラスター根の発見. 植物研究雑誌90(2), pp103-108.
  2. ^ 和崎淳(2006)クラスター根形成による植物の養分獲得戦略. 化学と生物44(6), pp420-423.
  3. ^ 丸山隼人・和崎淳(2017)低リン条件で房状の根を形成する植物の機能と分布-低リンストレスに対する植物の適応機構-. 化学と生物55(3), pp189-195.doi:10.1271/kagakutoseibutsu.55.189

関連項目

外部リンク


「ヤマモガシ科」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「ヤマモガシ科」の関連用語

ヤマモガシ科のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



ヤマモガシ科のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのヤマモガシ科 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS