掃除機 掃除機の概要

掃除機

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/25 08:57 UTC 版)

概要

現在では電気式が一般的なので、その方式のものは電気掃除機ともいう。電気を使わない手動式のものもある。

方式
様々な方式(タイプ)がある。
広く使用されている方式は、送風機により負圧(陰圧)を作りだして床などのやゴミを吸引し、エアフィルターで埃・塵・ゴミ類と空気を分離し、ゴミだけを容器内に回収するタイプである。陰圧を用いるタイプは英語では「vacuum cleaner ヴァキュームクリーナー」などと呼んでおり、その影響で日本語でも「真空掃除機」と呼ぶことがある。あくまで陰圧であり真空ではないが、JIS Z 8126(真空用語)にあるように、工学的には「通常の大気圧より低い圧力の気体で満たされた空間の状態」を真空と呼ぶこともあるので必ずしも間違いではない。
簡易的な構造のものでは、負圧や吸引を利用せず、回転ブラシ等でゴミをかき集めるだけの機種も存在する。→#方式
歴史
最初の(非電気式の)真空掃除機は1868年に米国のアイヴス・マガフィーによって発明され、最初の電気式掃除機は1901年イギリスのヒューバート・セシル・ブースによって発明された。→#歴史

歴史

Nilfiskの掃除機(1920年)

初期の発明と改良

世界最初の真空掃除機は、1868年シカゴのアイヴス・マガフィー(Ives W. McGaffey)によって発明された。原理は、手でレバーを引いて負圧を作り出し、その力によってノズルからゴミを吸い取り容器に溜めるという簡単なものであった。彼は1869年6月8日にこの特許を取得し、ボストンにあるカーペット清掃会社に売り込むことに成功した。こうして誕生した世界最初の真空掃除機がシカゴとボストンで発売されたが、当時としては$25もする高価なものであり、ノズルをゴミに当てながらいちいち手でレバーを引くのが面倒という欠点のため、やがて市場から姿を消していった。

1876年、ミシガン州グランドラピッズのメルヴィル・ビッセルは妻のためにカーペット上のおが屑を掃除するための掃除機を作った。間もなく、Bissell Carpet Sweepers として製品化。メルヴィルが1889年に亡くなると、妻のアンナが社長となり、当時最も強いビジネスウーマンと呼ばれるようになった。1899年、電動機駆動の掃除機をジョン・サーマンが発明した。Bissell 社は今も掃除機を含む掃除用品のメーカーとして存続している。

最初の電気式真空掃除機は、1901年にイギリスのヒューバート・セシル・ブース(Hubert Cecil Booth)が発明したもので、布フィルターを備えていた。彼は列車の座席から塵を吹き飛ばす装置のデモンストレーションを目にし、塵を吸い取った方がずっと役立つと考えた。そのアイデアを試すため、彼はレストランの椅子の上にハンカチを広げ、それを自分の口で吸いつけ、さらに塵を吸い付けてみた。塵がハンカチの下面に集まったのを見て、彼はそのアイデアがうまくいくと確信した。ブースは Puffing Billy と名付けた大きな装置を作った。石油を使った内燃機関を動力源としていたが、後に電動機を使うようになった。掃除すべき建物の前まで馬で引いていったという。ブースは British Vacuum Cleaner Company を創業し、その後数十年に渡って発明の改良を行った。家庭用掃除機の市場では後述するフーバー社の製品に負けたが、産業市場に活路を見出し、工場や倉庫で使う業務用機種を生み出していった。ブースの会社は気送管の会社 Quirepace Ltd. の一部門となって存続している[要出典]

1905年、イングランドバーミンガムにある Walter Griffiths Manufacturer が人力の掃除機の特許を取得した。これは運搬や収納が容易で、1人の人間(召使など)がのような仕掛けを操作し、それを動力として着脱可能な柔軟なパイプを通してゴミを吸い上げる方式である。パイプの先には様々な形状のノズルを装着できる。形状としては現代の家庭用掃除機によく似ている。

ニュージャージー州の発明家 David T. Kenney は1903年から1913年までに9件の特許を取得し、アメリカでの電気掃除機産業の基盤を築いた。ブースが自身の発明のアメリカでの特許を申請したのが、Kenneyの競合する特許が成立した後で、ブースがアメリカで特許権を主張できなくなったためである。1919年に創設された Vacuum Cleaner Manufacturers' Association の会員資格は、Kenneyの特許のライセンス供与を受けていることだった。

最初の家庭用の電気掃除機は1905年、アメリカのチャップマン・アンド・スキナー社から売り出された。ただしこれはポータブル型ではあったが重さが92ポンド(約40キロ)もあった。

そして、1907年、オハイオ州学校用務員をしていたジェームズ・マーレー・スパングラーは、扇風機と箱と枕カバーを使って電気掃除機を発明した。これがアップライト型掃除機の原型である。スパングラーのデザインは、単に吸引するだけでなく、大きめのゴミを集めるための回転ブラシを備えていた。スパングラーは自身で発明を商業化する資金がなかったため、1908年6月2日に取得した回転ブラシの特許を、彼のいとこの夫W・H・フーバーに売却した。フーバーは革製品などを販売する Hoover Harness and Leather Goods という会社を経営しており、自動車の発明によって売り上げの落ちつつある革製品以外の新商品を求めていた。フーバーは Electric Suction Sweeper Company と社名を変え、1908年に最初の機種 'Model O' を70ドルで発売した。これが初の商業用モデルとなった。欧米では フーバー 社は今でも電気掃除機を含む家庭用掃除用品メーカーとして存続しており、イギリスでは電気掃除機を”vacuum cleaner"ではなく"hoover" と呼ぶことが一般的であり、また掃除機をかけることも "hoover" という動詞で表したりする。

1910年、P・A・フィスカーは Nilfisk と名付けた掃除機の特許を取得した。ヨーロッパ初の電気掃除機である。フィスカーの掃除機は17.5kgの重量で、人1人でも何とか使用可能だった。その会社は現在も Nilfisk として運営されている。

日本で発売された最初の電気式真空掃除機は、芝浦製作所(東芝の前身)が1931年に発売したアップライト型(ホウキ型と呼ばれていた)だった(写真)。

第二次世界大戦後

1960年の広告

登場からしばらくの間、電気掃除機はぜいたく品だった。しかし第二次世界大戦後、中流階級でも一般的になっていった。特にじゅうたんを多用する西洋で先に一般化した。世界の他の地域では木やタイルの床が一般的で、掃除機を使わなくともほうき雑巾モップで十分掃除できたためである。

日本では、進駐軍家族団地「ワシントンハイツ」における電化製品メンテンス工事を、特別調達庁 (SPB) から請け負っていた東京の太平興業が、米国製品を参考に1949年に自社開発、秋葉原等で販売を開始した。しかし当時の日本家屋のほとんどは畳と板間であり、上記のとおりわざわざ高価な掃除機を購入するまでもなく「はたき」や「箒」でゴミを家の外に掃き出す方が簡単で早かったため、電気掃除機は殆ど普及しなかった。しかし、1960年代に団地ブームが起こると、下層階への近所迷惑のため家の外にゴミを掃き出すことが難しくなり、ほうきの簡便さが半減するようになった。また、団地を含む新しい住宅には洋室が取り入れられ、ほうきでは掃除しにくい絨毯も流行した。この絨毯の毛の中に溜まったホコリによってノミが大量発生することもあったため、電気掃除機の優位性・必要性が高まり、一般家庭に普及し始めた。

初期の電気掃除機は、使い捨てではない布フィルターなどが使われていたため、ゴミ捨ての際には大量のホコリが舞い、またフィルターや集じん袋を水洗浄をしないと吸引力が回復しないなどの面倒が多く、敬遠する人も多かった。しかし、紙パック式掃除機の日立・CV-8500が1980年(昭和55年)に発売されると、使い捨ての紙パックフィルターによってゴミ処理に関する問題が一気に解決されたため、さらに多くの家庭に普及していった。

1990年代になると家庭用の機種においてもサイクロン式掃除機が増えてきた。その原理は古くから知られており、1928年からサイクロン式掃除機を製造していた会社もある。近年のサイクロン式掃除機は、1985年にイギリスのデザイナージェームズ・ダイソンが工業用粉体分離器にヒントを得たものである。このアイデアに感銘を受けたシルバー精工がライセンスを取得して製造・販売に乗り出すなど、当初から日本でも高く評価された。1993年にイギリスダイソンの1号機 DC01 が200ポンドで発売されると、やがてイギリスで最も売れている掃除機ブランドとなった。

1997年にはミノルタロボット型掃除機の「ロボサニタン」を発表。製品化には至らなかったが、メディアで報じられ清掃業者などから反響があった[注 1]。そして2000年代になると、ルンバなどに代表される製品化された家庭用ロボット掃除機が登場するようになった。その他、健康志向の高まりを受け、排気が従来に比べ綺麗で、空気清浄機代わりにもなる掃除機や、排気の風圧で本体が宙に浮く掃除機なども登場している。


注釈

  1. ^ 1997年ミノルタが病院内清掃ロボ「ロボサニタン」を発表 [1]。技術はフィグラ社に継承され、2005年に愛知万博に出展し、2009年にエフロボクリーンとして製品化された。
  2. ^ 無名メーカー製の格安モデルも存在するが、こちらは安い代わりに品質が悪いため注意が必要である。
  3. ^ スイーパーは掃除機全般を指す英語であるが、日本では特に乗用型清掃機に用いられている。道路の清掃が専門の路面清掃車はロードスイーパーと呼ばれる。

出典







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