第6巻: フェーブル&リフレクション
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「サンドマン (ヴァーティゴ)」の記事における「第6巻: フェーブル&リフレクション」の解説
1話完結型の短編集で、収録作の一部は後の展開の伏線となっている。特に The Song of Orpheus はメインストーリーの核心を占めている。同作は初め単発号『サンドマン・スペシャル』で発表された。短編のうち4編は Distant Mirrors の名がつけられた連作で、いずれも「王であることの意味」をテーマとしており、題名は月の名から取られている。また3編の短編は Convergence の名でまとめられており、いずれも異なる時代、異なる文化の登場人物が互いに物語を語る形を取っている。劇中劇のテーマは第8巻で再び扱われる。そのほか、宣伝用の特別誌『ヴァーティゴ・プレビュー』第1号に収録された掌編 Fear of Falling が収録されている。 Fear of Falling 新作の上演を控えた舞台演出家はその結果を恐れ、高い岩山の頂に立つ夢を見る。そこから飛び降りれば、途中で目を覚ますことができなければ本当の死が待っている。しかしドリームは第3の道があると教えて彼を突き落す。 Distant Mirrors – Three Septembers and a January 1859年9月、事業に失敗して全てを失ったジョシュア・ノートンは絶望の淵にあった。エンドレスのディスペアは兄ドリームにゲームを持ちかける。ノートンをドリームの領域に引き込み、妹たち(ディスペア・ディザイア・ディリリウム)の手に渡さずにいられるか? ドリームはノートンに一つの夢を与えた。ノートンは新聞社に即位宣言を送りつけると、無一文ながら皇帝として振舞い始め、サンフランシスコの名物男として愛されるようになる。 ディリリウムはノートンが自らの狂気の支配を逃れていることを認める。「あの人は気が狂ってるけど … だから正気でいられるの」ディザイアは伴侶となる女性を餌にして誘惑するが、はねつけられる。やがてノートンは雨の道端で行き倒れるが、デスが彼を迎えるときまで、ディスペアは彼に触れることができなかった。 本作で屈辱を味わわされたディザイアは、ドリームに親族の血を流させることを誓う。これが前後の巻の出来事につながっている。 タイトルは当時製作中だった映画 Four Weddings and a Funeral(フォー・ウェディング)から取られたもので、作中で描かれた4つのシーンを意味している。 Distant Mirrors – Thermidor 1794年、イギリス貴族ジョハンナ・コンスタンティンはドリームから「家庭の事情」に関する依頼を受ける。彼女は熟練の間諜でもあり、かつてドリームの知己を得ていた。コンスタンティンは第一共和政下のフランスに潜入し、首だけとなって生き続けるドリームの息子オルフェウスを救い出すが、サン=ジュストによって捕縛される。尋問に現れたロベスピエールは理性のみに基づく社会の建設を目指しており、生首をデカダンスと迷信の産物として破壊しようとする。コンスタンティンはオルフェウスの歌によって彼らを無力化して脱出する。その翌日、テルミドールの9日にロベスピエールは失脚する。生首はナクソス島の僧侶に返還された。 Convergence – The Hunt 東欧風の森で暮らす「一族」(狼男)の若者ワシーリーは、行き倒れたジプシーから珍奇な行商品を手に入れる。その中には公爵の末娘の肖像画が入ったロケットがあった。ワシーリーは公爵の城を目指して旅立ち、魔女バーバ・ヤーガやドリームに貴重な品々を渡す代わりに姫君の寝室まで送り届けてもらう。彼は絵の通り美しい姫君を見つめ、寝ぼけまなこで名を問う彼女にロケットを返すと、そのまま踵を返した。年月を経て、ワシーリーは森で一族の精悍な女性と出会い、長い狩りの末に優しく組み伏せて睦み合う。 老いたワシーリーから物語を聞かされた孫娘は憤慨する。古いおとぎ話にかこつけて、一族以外の男性との交際を禁じられるのは我慢ならなかった。しかし物語の真の教訓は、夢の女性を目の当たりにした彼の胸の内だった。 Distant Mirrors – August AD7年、老齢のローマ皇帝アウグストゥスは乞食に身をやつして道端に座り、扮装の師である侏儒の役者ルキウスに自らの人生を物語る。アウグストゥスが若年のころに大叔父ユリウス・カエサルから虐待を受け、彼への憎悪を抱えていたことが明かされる。自身も残虐な行為に手を染めつつローマの統治者の座についたアウグストゥスは、二通りの予言の存在を知る。一つの予言では、ローマ帝国の支配は地球の隅々に及び、一万年間続く。別の予言では数百年後に帝国は滅ぶ。彼はドリームの啓示に従い、一介の乞食となることでローマの神々の(特に神格化されたカエサルの)目を逃れ、自らの死後にローマ帝国が衰退するよう画策するのだった。 Convergence – Soft Places マルコ・ポーロは元帝国を目指す旅の途上、ロプ砂漠で道に迷う。彼が踏み込んだのは、現実とドリーミングの狭間にあり、時間が可塑性を持つ「柔らかな場所」だった。そこで彼は未来に知り合うはずのルスティケロ・ダ・ピサとともにさまよい、人格を持った夢の風景である「水夫の楽園」の焚火に行き合う。水夫の楽園はポーロを始めとする探検家が未踏破地を埋めていくことで「柔らかな場所」が失われると非難する。二人と別れたポーロは別の時代のドリームによって現実に送り返される。 本作は最終巻に収められた短編 Exiles と関連がある。 The Song of Orpheus この巻の中心となる作品。物語の大筋はギリシアのオルフェウス神話に基づくが、本シリーズのキャラクターが取り入れられている。 オネイロス(ドリーム)とカリオペの息子オルフェウスは、叔父オレスロス(ディストラクション)の助言により伯母テレウテ(デス)から不死の命を授かり、死んだ花嫁エウリュディケーを救出するため冥界に向かう。ドリームはこの探索行に何の助力も与えず、ただ運命を受け入れるよう強いたため、息子から絶縁されることになった。オルフェウスは救出に失敗し、後にマイナデスによって五体を引き裂かれ、首だけになって生き続ける。死を与えてくれるよう願う息子に対し、ドリームは冷たく「お前の生死はお前だけのものだ」と告げる。彼は首を僧侶の一団に託し、二度と息子と会わないことを誓った。 Convergence – The Parliament of Rooks 「ドールズハウス」で妊娠中だったリタ・ホールから生まれたばかりのダニエル・ホールが主役となる。ドリーミングの住人であるカインとアベルの兄弟にイヴを加えた3人は、迷い込んだ赤ん坊のダニエルに物語を聞かせることにする。カインはミヤマガラスの群れが執り行う「議会」の謎について語り、イヴは自らを含めたアダムの3人の妻について語る。アベルは自分たちが語り部としてドリーミングに住みついた事情をおとぎ話として語る。アベルが口を滑らせて謎の答を明かしてしまったため、カインは激怒し、いつものように兄弟殺しを再現し始める。 本作のペンシラー、ジル・トンプソンが日本のキャラクターを参考に描いた子供版のデスとドリームは人気となり、スピンオフシリーズが出された。 Distant Mirrors – Ramadan カリフのハールーン・アッ=ラシードが治めるバグダードは数々の驚異に満ち、輝かしい繁栄を誇っていた。しかしカリフはこの世の無常を知っており、自らの都市がいつか滅びて忘れられることを恐れるあまり、夢の王(ドリーム)にバグダードを売り渡し、その代わり現在の完璧さを永遠に保つよう願った。カリフははるかに色褪せた市街で目を覚ます。取引のことは彼の記憶から消えており、ドリームが抱えるガラス瓶の中のミニチュア都市に心を惹かれながら去っていく。 老人はそこで物語を止める。伝説のバグダードは物語の中に封じられ、それゆえに永遠となったのだった。戦火を受けて瓦礫の山となった現代のバグダードにおいて、聞き手の少年は空腹を忘れて目を輝かせる。 ゲイマンが書くコミックブックのスクリプトは、コマ割りやコマごとの構図、背景、色の指示までを含む詳細なものである。しかしこの号では、古典小説の翻案を得意としていた作画家P・クレイグ・ラッセル(英語版)の希望により、散文の物語形式で書かれた。この号はオリジナルシリーズの中で最大の販売部数(25万部)を記録し、ファンや批評家からも高い評価を受けた。
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