犯罪・依存症
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/15 23:58 UTC 版)
大阪市西淀川区では、離婚して生活保護を受ける母子家庭の3人の母(26)(27)(29)がパチンコで負けて生活費が足りなくなると幼い子どもを保育園に預けている間に窃盗を繰り返し、逮捕された事件も起こっている。 福岡県田川市郡地域での生活保護受給者のアルコール、薬物、ギャンブルの依存問題がどのように発生しているかの調査結果では、アルコール問題に該当するケースは53名(10.6%)、薬物問題20名(4.0%)、ギャンブル問題8名(1.6%)で、いずれも一般人口の発生率と比較してきわめて高率である。 かつて江戸川区のケースワーカーで、江戸川中3勉強会を立ち上げ、生活保護の高校等就学費の実現を国に働きかけ、受給世帯の高校進学を後押しした宮武正明は次のように述べている。「親の生活を見て高校進学の希望が持てない子どもの多くは、早い時期から学習意欲をなくして学力不振になり、学力不振のため進学も就職もできない状態が作られ、そうした世帯の多い地域では、結果として不登校・非行が多い地域となって地域が荒廃し、「貧困の再生産」の温床になってきていた。」と述べ、愛知アベック生き埋め殺人事件、大阪中卒少女殺人事件、足立女子高校生コンクリート詰め殺人事件(主犯少年1名は母子家庭生活保護)らの事件が「疾病、貧困、地域環境の貧しさの中で家庭が崩壊するとともに、行政の援護が子どもの世代まで考えられていないことから、地域に貧困が蓄積していく」こととの関連を指摘している。 矯正統計年報2004年によると、全国の新収容者5248人の出身家庭の生活水準では、富裕層2.8%、普通層69.8%、貧困層27.4%となっており、犯罪の度合いが重いほど、貧困世帯出身が多くなっている。 また、全国の単位人口当たりの刑法犯認知件数(2020年度)を地域別に比較すると、平均年収の高低に関わらず概ね横ばいである。これは、平均年収の高い地域ほど、同一年収帯の犯罪率が高いことを示している。 また、同統計2011年度「新受刑者の罪名別 教育程度」によると、新受刑者で最も多かった学歴は「中卒」であり、4割以上を占める。年齢別に見ると、全新受刑者約2万5千人中で、高校進学率が9割を超えた1970年半ばより前に高校進学年齢であった50歳以上を除いても、約1万7千人が「中卒」学歴しか持っていない。一方、大学卒業者はわずか4.5%となっている。 学歴と犯罪にも相関関係があるが、そもそも学力・学歴と貧富の間もまた相関関係にあるため、高校進学が多数の時代の「中卒」の受刑者は子ども時期に知的問題を抱えるか、または貧困ゆえに学力不足や資金不足などで進学できず、結果学歴が無いために適切な就職ができなかったおそれがある。貧困の子どもの世帯の経済状況を向上させることは、将来の犯罪の発生抑止につながる可能性がある。 少年犯罪の現場では次のように報告されている。「A 少年院における年次統計を見ると、それでも、3人~4人に人が貧困世帯であること、平成13年から21年度までの8年間で貧困世帯が約2倍に増加していることが分かります。この背景には、経済不況もあるでしょうが、少年鑑別所・少年院入所少年における母子家庭の増加も影響していると考えられます。」「女性の貧困が子どもの貧困の世襲を招き、そのことが他のさまざまな条件を誘発し、結果として非行に至ったケースは、少年院では数多くあります。」「短期間に転職を繰り返しているB 少年の職歴を見た多くの人は、就労意欲が乏しく、忍耐力がないと非難の目を向けることでしょう。しかし、実際は、本人の非ではない経営縮小による給料不払いや前近代的な雇用関係のなかでの極端な減給が、B 少年だけでなく、中学卒業と同時に働き始めた少年たちに対して日常的に行われている就労環境なのです。」。 2010年4月からの公立高等学校の授業料無償化は中退率の減少と高校の再入学の増加という効果を生み出した。一方で、都内の全日制高校進学率は1970年代に比して減っている状況にある。 2013年7月に広島・呉でおきた少女遺棄では、死体遺棄容疑で逮捕された7人のうち、広島市中区の少女(16)は生活保護費を受給していた。親のネグレクト(育児放棄)が原因とみられるため、単身世帯として直接、受け取っていた。逮捕された未成年者6人の中には、少女以外にも児童虐待を受けていた者がいるとみられている。少女達は接客業で月に100万を稼いでいたとの報道もあるが、その場合収入申告を怠り、不正受給していた可能性もある。 2013年の被保護者調査によると、全国で0~17歳で単身で生活保護を受けている者は422名となっている。養護施設に入るなど何らかの事情を抱えたものである可能性がある。 2013年12月兵庫県尼崎市で中学3年の男子生徒(15歳)を集団で監禁し、わいせつな行為をしたとして、無職の女(43歳)と10代の少年少女が兵庫県警に監禁容疑などで逮捕された。逮捕や児童相談所に通告された少年少女らが女の自宅で集団生活をしていた。女は生活保護を受給しながら、自宅近くでカラオケスナックを経営。少年少女らを働かせていたという。 2014年8月には、愛媛・伊予市で、市営団地の一室の押し入れから無職女性(17歳)の遺体が発見され、体には多数の古いアザも残っていたという。この部屋に住む女性(36歳)と長男(16歳=いずれも無職)ら計4人には、殺人や傷害致死の疑いが向けられているという事件が起こった。被害女性は家出後、事件現場の家族宅に同居していた。 母子家庭で母が精神疾患のため公営住宅に住む生活保護受給の祖母宅で育った17歳の少女は、中学校1年から月2回売春を行い、その住居の先輩後輩もまた歴代売春を行ってきたと語るような地区もある。 6か月の子供を持つ19歳のシングルマザーが母に子供を預け、ワリキリと呼ばれる個人売春をする事例もある。その母もまたシングルマザーで貧困が連鎖するケースがある。2011年にルポの取材を受けたワリキリを行う女性100人のうち、子供がいるのは14人でうち8人が未婚だったという。子供を育て貯金するため、月に約170万円それで稼ぐ者もいる。 犯罪に巻き込まれることもあり、2014年3月には、生活保護受給世帯のシングルマザー(22歳)がインターネットで知ったベビーシッターに子供2人(2歳、8か月)を3月14日から16日までの予定で預け、2歳の子供が殺害されている。事件当時、母親は児童扶養手当を受給しておらず、子どもの父親から養育費は払われていなかったと報道されている。容疑者はシッターとしてこれまでに預かった男児や女児の裸の写真を撮影した疑いがあり、パソコンには複数の児童の裸の写真が保存されていたという。
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