おぜ‐こくりつこうえん〔をぜコクリツコウヱン〕【尾瀬国立公園】
尾瀬国立公園
[尾瀬ヶ原]
NHKのラジオ歌謡で「夏の思い出」(江間章子作詞、中田喜直作曲)が放送されたのは、昭和24年である。この年はまた、尾瀬ヶ原の下手にダムを築き、原全面を水没させて貯水池とする構想が論議を呼んだ年でもあった。戦後まだ4年、停電が続く貧しい時代で、尾瀬を知る人もごく少なかった。当時の新聞社説の「電気か、コケの保存か」という見出しからは、この時代の空気の一端を察することができる。
自然保護運動の原点・尾瀬
[ミズバショウ]
日光国立公園に含まれていた尾瀬地域に、その北に続く会津駒ヶ岳と東方の田代山・帝釈(たいしゃく)山地域を加えて平成19年8月に誕生した29番目の国立公園である。新しい国立公園の誕生は、昭和62年の釧路湿原以来20年ぶりである。
福島、群馬、新潟の3県にまたがる尾瀬は、本州最大の高層湿原尾瀬ヶ原、只見川の源流である尾瀬沼と、燧(ひうち)ヶ岳(2,356m)、至仏(しぶつ)山などを含む地域である。静謐をたたえた美しい風景と、多様な湿原植物や北方系昆虫などの生育・生息地としての高い学術的価値を併せ持つ、日本の自然を代表する場所の一つである。
尾瀬ヶ原は標高ほぼ1,400m、東西約6km、南北約1km、面積約760haの湿原である。周辺を山に囲まれた盆地状の地形で高層湿原が高い比率を占め、ヒメシャクナゲ、ナガバノモウセンゴケなどの湿原植物が、また、池塘にはオゼコウホネなどが生育する。エゾイトトンボなど北方系のトンボの種類も多い。湿原を流れる河川の岸には幅の狭い樹林帯(拠水(きょすい)林)がよく発達しており、風景に変化を与えている。尾瀬の水を集めた只見川は、平滑(ひらなめ)ノ滝と落差90mの三条ノ滝を作って奥只見に流れ出て行く。
尾瀬沼は水面標高約1,665m で、燧ヶ岳の噴火によって生まれたせき止め湖である。湖岸の湿原には尾瀬ヶ原と同様にミズバショウやニッコウキスゲの群落が季節を飾り、また、湖面に影を落とす燧ヶ岳がまとまりのよい、すぐれた風景を作っている。
至仏山は尾瀬ヶ原の西にある蛇紋岩質の山で、オゼソウ、ホソバヒナウスユキソウなど希少植物が多い。近年登山者の増加に伴い、登山道の荒廃が植生に影響を及ぼすに至っており、現在東面登山道の下りの利用は禁止されている。
尾瀬の水利権が最初に許可されたのは大正時代であるが、その後昭和初期から40年代まで、電源開発や水利用、さらには道路建設の計画を巡って、幾たびも激しい論議が繰り返されてきた。その意味で尾瀬は、日本における自然保護運動の原点ともいえる場所である。これらの経緯をふまえて、尾瀬の適正な利用の推進や施設の管理運営、環境保全対策などを行うため、平成7年に尾瀬保護財団が設立され、活動している。
なお、尾瀬ヶ原では近年ニホンジカによる湿原植物への食害が発生しており、対策が検討されている。また、御池(みいけ)〜沼山峠間と津奈木〜鳩待峠間でマイカー規制が行われている。
[会津駒ヶ岳]
会津駒ヶ岳と田代山・帝釈山
[田代山]
今回新たに国立公園に編入された会津駒ヶ岳及び田代山・帝釈山地域の山麓から中腹にかけては、自然性の高いブナやオオシラビソの森林が広がる。
会津駒ヶ岳の山頂周辺の幅広い稜線上には湿原が散在し池塘が多く、ハクサンコザクラなどの雪田植生が見られる。また、田代山・帝釈山は福島・栃木県境にあり、田代山の山頂は広さ20haほどの平坦な地形で、キンコウカの多い高層湿原となっている。これらの地域は、尾瀬と景観の同一性、自然環境や利用状況が一体であることなどにより、一つの国立公園として指定されたものである。
関連リンク
- 尾瀬国立公園 (環境省ホームページ)
尾瀬国立公園
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/13 16:06 UTC 版)
尾瀬国立公園 Oze National Park | |
---|---|
![]() | |
指定区域 | 北緯36度55分38秒 東経139度18分58秒 / 北緯36.92722度 東経139.31611度座標: 北緯36度55分38秒 東経139度18分58秒 / 北緯36.92722度 東経139.31611度 |
分類 | 国立公園 |
面積 | 37,222 ha[2] |
前身 | 日光国立公園 |
指定日 | 2007年8月30日 |
運営者 | 環境省 |
年来園者数 | 25万人(2019年)[3] |
事務所 | 関東地方環境事務所 |
事務所所在地 |
〒330-6018 埼玉県さいたま市中央区新都心1-1 さいたま新都心合同庁舎1号館6階 |
公式サイト | 尾瀬国立公園(環境省) |
尾瀬国立公園(おぜこくりつこうえん)は、福島県、栃木県、群馬県、新潟県の4県にまたがる国立公園である。2007年8月30日に日光国立公園から尾瀬地域25,203 ha(現・尾瀬国立公園の67.75%にあたる)を分割し、会津駒ヶ岳、田代山、帝釈山など周辺地域を編入する形で指定された。釧路湿原国立公園以来20年ぶりに新設された29番目の国立公園である。総面積は37,222 haである。
山
沿革
県別面積内訳
関係市町村
2市1町2村
景勝地
ビジターセンター
利用者数は2008年(平成20年)[4]。
センター名 | 設置者 | 所在地 | 利用者数(人) |
---|---|---|---|
尾瀬沼ビジターセンター | 環境省 | 福島県南会津郡檜枝岐村尾瀬沼畔 | 62,486 |
尾瀬山の鼻ビジターセンター | 群馬県 | 群馬県利根郡片品村戸倉中原山898-9 | 136,560 |
その他
本園内にある、群馬県と福島県の県境は自家用車をはじめとする車両の通行が一切できない(国道401号、群馬県道・福島県道1号沼田檜枝岐線を参照)。当園は2021年(令和3年)9月1日発売の260円普通切手に描かれている[5]。
脚注
- ^ “尾瀬国立公園の区域図” (PDF). 環境省. 2012年10月6日閲覧。
- ^ “尾瀬国立公園の公園紹介”. 環境省. 2012年10月6日閲覧。
- ^ “国立公園の利用者数(公園、年次別)” (PDF). 環境省. 2012年10月6日閲覧。
- ^ 環境省自然ふれあい推進室"表II-9 国立公園内ビジターセンター等利用者数"自然公園等利用者数調(2013年3月18日閲覧。)
- ^ “速達料金の引き下げに伴う260円普通切手の発行”. 2022年6月1日閲覧。
関連項目
外部リンク
固有名詞の分類
- 尾瀨國立公園のページへのリンク