地理的表示ブランドの登録をめぐる問題とは? わかりやすく解説

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地理的表示ブランドの登録をめぐる問題

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/05 03:06 UTC 版)

八丁味噌」の記事における「地理的表示ブランドの登録をめぐる問題」の解説

産品の名称(地理的表示GI)を知的財産として登録し保護する制度である「特定農林水産物等の名称の保護に関する法律」が2014年6月25日制定された。この「地理的表示保護制度」の登録をめぐり、岡崎市老舗2社が外されたことが現在大きな波紋呼んでいる。 2015年 2015年6月1日同法施行される同年カクキューまるや八丁味噌の2社で構成される八丁味噌協同組合」(以下、岡崎2社)と、名古屋市中区栄事務所を置く「愛知県味噌醤油工業協同組合」(以下、県組合)の2つ団体地理的表示登録(GI登録)を申請した申請内容以下のとおり申請者申請日生産地範囲名称八丁味噌協同組合 2015年6月1日 岡崎市八帖町 八丁味噌、HATCHO MISO 愛知県味噌醤油工業協同組合 2015年6月24日 愛知県 八丁味噌 GI管轄する農林水産省文書によれば、県組合構成する43社のうち、八丁味噌製造しているのは「盛田」(名古屋市中区)、「イチビキ」(同市熱田区)、「中利」(半田市)、「佐藤醸造」(あま市)、「ナカモ」(清須市)、「野田味噌商店」(豊田市)の計6社とされる2016年 農林水産省は、「岡崎市八帖町以外でも『八丁味噌』は製造されている」「昭和初期には『八丁味噌』の文字を含む商標が県組合会員の企業により登録されていた」などの理由により、岡崎2社に対し、「岡崎市八帖町」と限定している生産地を「愛知県」に変更できないか打診した2017年登録され製法は、県内豆味噌造れ全て八丁味噌を名乗れ内容で、今の枠組みには参加できない」と不満をあらわした岡崎2社は農水省折り合えないと判断。同省は岡崎2社に取り下げ2017年6月12日にするよう要請6月14日岡崎2社は申請取り下げたGIガイドラインには「産地関わる利害関係者合意形成が必要」とあることから、岡崎2社は、同省は県組合申請拒絶すべきとの意見書提出したカクキュー早川右衛門社長は「申請取り下げれば、愛知県味噌醤油工業協同組合申請認められない思った」と述べた6月15日、県組合GI申請公示される同年12月15日農水省は「愛知県味噌醤油工業協同組合」を八丁味噌生産者団体としてGI登録した。ここに至り、同省は、「八丁味噌は、いわゆる名古屋めし』の代表的な調味料として定着し愛知県特産品として広く認知されているものである」との県組合主張認定した同年12月妥結した欧州連合EU)との経済連携協定EPA)では、八丁味噌含め輸出をにらむ全国48品目保護される。しかし登録から外れた岡崎2社は、EPA発効後、EU加盟国八丁味噌を名乗れないこととなった。また国内でもマーク使えない結果となった農水省EUに「ステンレスおけで人工的に加温し、3カ月即席熟成させたものも八丁味噌である」と公表2018年 2018年1月26日NHKなどの報道により、岡崎2社がGIの登録から外れたことが明らかとなった生産量半分超を占めとされる岡崎2社は「県内生産地域広げ製法基準緩くすれば、品質保て顧客だますことになる」と主張。国へ不服申し立てする構え見せた農水省取材に「不幸な結果となったが、海外偽物から守るため登録を優先した」と説明した同年1月30日斎藤健農林水産大臣会見行い認定した枠組み追加申請すれば同2社も地理的表示保護制度対象になるとの認識示した同年3月14日岡崎2社は不服審査請求を同省に申し立てた同日愛知12区選出重徳和彦衆議院議員取材応じ、「2社が県組合加入すれば八丁味噌名乗ることはできると農水省は言うが、本末転倒だ。地域の特性活かし伝統的な生産方法によって特別な品質維持する名産品保護するという制度の趣旨反している」と述べた同年3月16日政府閣議で、岡崎2社が県組合加入するか、生産者団体として追加申請して認められればGI表示ができるとの答弁書決定した同年3月22日岡崎市議会本会議で、利害関係者合意形成を国が指導調整するように求め意見書案を全会一致可決続いて3月27日内田康宏市長加藤義幸議長農林水産省訪れ礒崎陽輔副大臣議会可決され意見書提出した内田記者団に「2社の追加登録しか方法がない」と見解述べたヨーロッパ中でもGI歴史長いフランスでは対象産品科学的な調査をし、他地域では簡単にまねできない製法などの独自性があるかを専門機関審査する。ところが日本には専門調査機関がないことから、複数生産者間で製法などに異論があった場合は、当事者間調整するよりほかはない。この点が現行制度不備だ識者関係者指摘する愛知学院大学関根佳恵准教授八丁味噌登録問題につき、「実質的に世界中どこでもつくれる産品GI認定した認めたのは驚きGI根幹にあるテロワールTerroir)を無視している」と批判し、「農水省は本気で国内農業振興につなげるつもりなら、原材料規定追加設けるべきだ」と提案した全国味噌工業協同組合連合会統計によれば2017年味噌出荷量は約41トンそのうち大豆と塩、水のみを原料とする八丁味噌に関しては、岡崎2社は1,000トン、県組合600700トン生産実績があるという。 2019年 2019年2月GI法改正。「先使用権」が制限されGI対象組合製品でないと、岡崎2社の製品2026年には八丁味噌と名乗れないことになった言い換えれば2026年以降八丁味噌という名称を商品使用したい場合は「GI認定受けていない」という表示つければ販売できるということになった同年8月岡崎2社は、行政不服審査法に基づき総務省設置される第三者機関行政不服審査会」に対し主張書面提出同年9月27日行政不服審査会は、農水省決定対し現時点では妥当でない」との答申書出した。同省が下した八丁味噌は『名古屋めし』の代表的な調味料として愛知県内定着している」との認定について、「これを裏付ける具体資料見当たらない」と述べた2020年 農林水産省は、専門的な見地から調査検討を行うため、「『八丁味噌』の地理的表示登録に関する第三者委員会」を設置委員会の構成メンバーは、茨城大学教授荒木雅也弁護士池本誠司大阪市立大学教授小林哲慶應義塾大学専任講師のデサンモーリス・グレッグ、東京農業大学教授前橋健二の5人。 2020年3月25日から12月8日にかけて、第三者委員会審議が4回開かれた2021年 2021年3月12日、登録取消し求めた行政不服審査請求について、農林水産省第三者委員会岡崎2社の請求退け報告書をまとめた。同委員会は県組合側の販売実績や、県の特産品として定着していることなどを理由に登録の合法性認めた。「八丁味噌は『名古屋めし』の代表的調味料」との見解についても、妥当だと述べた。それとともに老舗(2社)側の製法景観含めた伝統的文化として後世引き継がれるべきで、老舗側もGI登録に加わったうえで『元祖八丁味噌』を名乗るなど、差別化する手はあるのではないか」と提言した同年3月19日農林水産省請求棄却する裁決出した岡崎2社は2026年以降法的に八丁味噌の名称を使えなくなるため、提訴する意思示した同日衆議院議員重徳和彦野上浩太郎農相面会し元祖だけが3年以上もGI外れている状態はおかしい」と抗議。さらに3月22日岡崎市役所訪れ中根康浩市長対し請求棄却について経過伝え意見交換した。 同年9月17日、「まるや八丁味噌」が、GI登録された「八丁味噌」をめぐり、農林水産省に登録取消し求めて東京地裁提訴した。「カクキュー」は提訴していない。県組合担当者はこうした事態対し、「2社が八丁味噌独占するのはおかしい。つきのといっても、岡崎2社でもは違う。県組合岡崎2社が違うように、岡崎2社同士でも味覚成分分析の結果は違う。麹を作るのは自動だ。(我々との違いは)木桶入れて石を積むのが伝統製法であることくらいだ」と述べている。 2022年 2022年6月28日、「まるや八丁味噌」がGI登録の取り消し求めた訴訟で、東京地裁は、行政事件訴訟法定める6カ月提訴期間過ぎていたとして、訴え却下した判決は「八丁味噌製造地域昭和初期には県全域に及び、社会でも認知されていた」と認定。さらに中島基至裁判長判決文で「まるや八丁味噌制度上、2026年までは『八丁味噌』の名称を使用することが可能で、その後も、地域ブランド登録されたものとは異なることがわかるような記載をすれば『八丁味噌』の表示使えるため、救済必要性もない」と述べた7月4日まるや八丁味噌控訴する方針明らかにした。

※この「地理的表示ブランドの登録をめぐる問題」の解説は、「八丁味噌」の解説の一部です。
「地理的表示ブランドの登録をめぐる問題」を含む「八丁味噌」の記事については、「八丁味噌」の概要を参照ください。

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