地理的要件
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/11 05:35 UTC 版)
1992年署名の欧州連合条約第O条(現在の第49条)では、欧州連合の原則を尊重するヨーロッパの国は加盟を申請することができるとうたわれている。欧州連合の拡大に関してヨーロッパ以外の国については言及されていないが、モロッコの加盟申請却下の決定とイスラエルとの密接な関係を「完全な加盟資格を有していないだけ」 (just short of full membership) としていることから、ヨーロッパ以外の国は欧州連合に加盟し得ないことがわかる。しかしヨーロッパの定義についてはさまざまなものがあり、ある国がヨーロッパの国であるかどうかの判断は欧州委員会や、より重要なものとしては欧州理事会でなされる。ヨーロッパであるか否かの欧州連合内部の分別は、まったくというものではないが、欧州評議会の分別に類似している。ヨーロッパであるかどうかについてキプロスの事例でいくつか議論が起こっており、キプロス島は地理的にはアジアに属しているが、広範な分野において歴史的にも、文化的にも、政治的にもほかのヨーロッパ諸国との関係が強く、このことから地理的な位置とは関係なく、キプロスはヨーロッパの国と考えられることが多い。またヨーロッパ以外にある加盟国の領域についても欧州連合の領域とすることがあり、たとえば南アメリカ大陸にあるフランス領ギアナはフランスの海外地域圏として欧州連合の領域に含められる。グリーンランドは北アメリカ大陸に含まれる地域の一部と考えられているが、1973年にデンマークの海外郡として欧州経済共同体に加入したものの、自治権を得た4年後の1983年に住民投票を実施して共同体から離脱している。 トルコは国土の3%にあたる東トラキア地方が地理的にヨーロッパに含まれていることから、トルコ自体もまたヨーロッパの国とすることができるかについて議論が盛んに行われている。既存の加盟国がトルコの加盟手続きを進めることに不満を抱いているが、これは国民の90%以上がムスリムである国がヨーロッパのアイデンティティであるキリスト教の基本的な考え方に従うことができるのか疑問に感じているという意見がある。このほかにもトルコに対して障害となる経済や政治に関する多くの争点がある。欧州連合は2005年10月3日にトルコ政府と加盟協議を開始しているが、同日採択されたトルコの加盟協議に関する枠組み文書では、加盟協議の過程は公開され、また事前に先行きの保障はできないとされている。 拡大を推し進めようとするものの多くは、アレクサンドロス3世からオスマン帝国までのアナトリアとヨーロッパの間での歴史には広範囲にわたって関連性があり、地理的な議論というのは本質的なものではないと主張している。 非ヨーロッパの国は加盟国になりえないとされているが、そのような国も国際協定によって欧州連合とのさまざまな交流による恩恵を受けている。欧州共同体や加盟国が一体的に、あるいは個別的に第3国との協定を結ぶことに加えて、欧州近隣政策をはじめとするより具体的な協力関係も発展している。欧州近隣政策は欧州連合と地中海沿岸諸国との関係枠組みとなっていたバルセロナ・プロセスに替わって打ち出されたものであり、バルカン西部における安定化・連合プロセスや欧州経済領域とは異なるものである。ロシアは欧州近隣政策の対象ではなく、別の枠組みの中で協力関係を構築している。これらのことから欧州近隣政策は近い将来における欧州連合の境界線を画定するものとして認識されうるものになる。
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