地理的表示保護 (PGI) に商標が似ているとされた例
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/12 01:10 UTC 版)
「原産地名称保護制度」の記事における「地理的表示保護 (PGI) に商標が似ているとされた例」の解説
以下の例は新たに登録された商標と保護された地理的表示 (PGI) が対立した例である。新たに登録が申請された商標がすでに登録された地理的表示に似ているとされた。何をもって“似ている”とされるのかを示す事例の一つである。 「トスコロー (TOSCORO)」という商標が欧州連合知的財産庁 (EUIPO: European Union Intellectual Property Office) に申請され、2003年11月17日に登録された 。ところが、PGIトスカーナ保護・促進共同体 (Consorzio per la tutela dell’olio extravergine di oliva Toscano IGP) が、オリーブオイルについて保護された地理的表示 (PGI) である「トスカーノ (TOSCANO)」によく似ていて紛らわしいという理由で、欧州規則No 2081/92に基づきこの商標登録は無効であると申し立てた。これをうけてEUIPOは2013年11月29日にその登録を、ニース協定の定める第29類(オリーブオイルが含まれる)と第30類(ドレッシングなどが含まれる)について取り消した。これを不服とする商標「トスコロー」の所有者はEUIPOに不服を申し立てたが聞き入れらなかった。EUIPOの再審査部門は第29類に含まれるオリーブオイルにおいて、PGIの「トスカーノ (TOSCANO)」との類似性を認めたからである。そのため商標「トスコロー」の所有者はEUIPOを相手取って、オリーブオイルについて商標が有効であると認めるように欧州第一審裁判所に訴えを提起したのである。 この裁判でも主要なポイントになったのは欧州理事会規則 No 2081/92の13条 (1) (b) 項に使われている“喚起 (evocation)”という言葉である。欧州裁判所は、“喚起(evocation)”という語で意味する概念は、製品を指すために使用された用語が保護された名称の一部を含み、その結果として、消費者がその製品の名前を前にしたときに消費者の頭に浮かぶイメージが、保護されている用語で示される製品のイメージであるような場合を含んでいる、とした。 一方、商標「トスコロー」の所有者は、「トスコロー」と「トスカーノ」ではアクセントの場所が違うので全く違って聞こえる、と主張した。しかし、裁判所は過去の判例を引用して、 消費者は単語を見たときに最初の部分(この場合は“tosc”)により注意を払うものであること。 どちらの名称も同じ文字“o”で終わっていること。 7文字のうち5文字が共通で、しかもどちらも3シラブルで構成されていること。 を指摘し、それらを根拠とした類似性に関するEUIPOの再審査部門の判断を支持した。 この判決により、EUIPOが商標同士の類似性を判断する基準が商標と保護された地理的表示 (PGI) の類似性を判断する基準となることが裁判所によって確認され、また、商標を登録しようとするものは既存の商標だけでなく保護された地理的表示 (PGI) や保護された原産地呼称 (PDO) にも注意をしなければならないことがになることが示されたということになる。
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