WBS
「WBS」とは・「WBS」の意味
「WBS」はビジネスのプロジェクトマネジメントの手法や貿易の現場で企業が用いる独自の用語、テレビ番組のタイトルなどで使われる各語の頭文字を取った略語である。語の頭文字を取って英語を略す時には、大文字が使われることが多い。・ビジネス用語の「WBS」
プロジェクトマネジメントの用語としての「WBS」は、「work breakdown structure」の各語の頭文字を取った略語で「作業分解構造」という意味だ。「WBS図」とも言う。「作業分解構造」はプロジェクトのスケジュール管理に使われ、プロジェクトを細かい作業ごとに分解したうえで表にして管理する手法である。
「作業分解構造」の表を作成するには、まずプロジェクトの達成に必要なメンバーを集めて「プロジェクトの要綱」や「作業マニュアル」などの資料を作成する必要がある。次に作成した資料を活用しながら、プロジェクトの要件と定義、それぞれの段階を確認する。各段階のことを「フェーズ」と呼ぶ。たとえば「ケーキを焼く」というプロジェクトがある場合には、「材料の準備」「スポンジを焼く」「デコレーション」などがフェーズとなる。プロジェクトの達成要件を定義したらフェーズを細かいタスクに分解し、必要ならさらに細かく分解して担当者を割り当てる。先の例で言えば「材料の準備」というフェーズは、「卵黄と卵白を分ける」「小麦粉を計る」「使用する器具の準備」などの項目に細分化される。さらに細かく分けるなら「使用する器具の準備」の中に「ボールの準備」や「泡だて器の準備」などが入る。分解された作業の担当と期限を設定して、スケジュール表にしたものをガンチャートと呼ぶ。ガンチャートを作成することでタスクの前後関係や期限が明確になり、タスクが全体に与える影響を理解できるようになる。「作業分解構造」と言う場合には、「作業分解構造」の表とガンチャートを合わせたものであることも多い。
「作業分解構造」では、一から作成しなくてもテンプレートを利用することが可能である。この場合の「テンプレート」とは「表の形式を整えた、すぐに利用できるひな型」のことだ。インターネット上から無料でダウウンロードできるものもある。プロジェクト管理のツールとしては、SAP(エスエーピー)が提供する「PS(Project System)モジュール」がある。SAPはドイツに本社を置き、「ERPパッケージ(統合業務パッケージ)」などのソフトウェアを扱う会社である。「ESP」は「Enterprise Resource Planning」の省略形だ。SAPが提供するソフトウェアを「SAP」と呼ぶこともある。PSモジュールを使って「WBS」の要素を登録したり、プロジェクトの予算・費用実績を管理したりすることが可能である。
「作業分解構造」の最大のメリットはプロジェクトの全体像を視覚的に捉えるとともに、チームのメンバーと共有できることである。各作業を端的に理解でき、「完了」「未完了」が明確になる。作業の抜けや無駄な作業を発見でき、あらかじめリスクのある個所も知ることができる。コストの見積もりが可能になり、プロジェクトの終了後には過去の事例として保存し、以後のプロジェクトに活かすことができる。「作業分解構造」は企業内部のプロジェクトだけでなくエンジニアの開発タスクに利用したり、商業プロジェクトのプランを立てたりするなど多くの仕事で活用できる。
・国家試験でも出題された「WBS(作業分解構造)」
「IT(Information Technology)パスポート試験」は平成21年から情報処理技術者試験の1つとして追加された国家試験で、経済産業省所管の情報処理推進機構(IPA)が実施・認定する。「iパス」と省略される。「iパス」に合格することで、学生や社会人が備えておくべきITに関する基礎的な知識が証明できる。多くの企業はIT化され、事務職や営業職でもITの知識やコンプライアンスが求められる。「iパス」は企業や省庁の採用に活用され、大学でも入試優遇制度や単位認定などの取り組みが行われていることから、就職や大学の入学試験にも役立つ。「作業分解構造」という意味での「WBS」は「iパス」の用語として使われており、「令和3年春期」では問54に「WBS」の語を含む問題が出題されている。
・貿易分野での「WBS」
「Wan Hai Lines Limited(ワンハイラインズ株式会社)」は、台湾の海上運送の会社である。略語はWHとなる。WHが採用している燃油サーチャージは、「Wan Hai Bunker Surcharge」であり「WBS」と呼ばれている。国際海事機関のMARPOL条約に基づく船舶からの硫黄酸化物(SOx)排出量の規制強化に伴って、 0.50%の低硫黄燃料の採用のために2019年11月1日から導入された。燃料の価格がトン当たり400ドルを超えると課徴され、50ドルごとに料率が設定されている。燃料の価格は、直近3か月の香港(60%)とシンガポール(40%)市場の平均価格から算出される。
・テレビ番組での「WBS」
1988年からテレビ東京系列で放送されている経済ニュース番組、「ワールドビジネスサテライト」の略称も「WBS」である。サイトのロゴでは「WORLD BUSINESS SATELLITE」が使われている。日本で最も長く続く経済ニュースで、モットーは「一歩先を照らす経済ニュース」である。2021年の春に大幅リニューアルされ23時からの放送が、月曜日から木曜日までは22時から22時58分まで、金曜日は23時から23時58分までとなった。メインキャスターはテレビ東京の大江麻理子アナウンサーと、佐々木明子アナウンサーが務める。解説は日本経済新聞社、論説主幹の原田亮介キャスターと同じく日本経済新聞、編集委員の滝田洋一キャスターなどである。
・社名の略称の「WBS」
ラジオ局「WBS和歌山放送ラジオ」を運営する株式会社和歌山放送も、商号の英語表記を「Wakayama Broadcasting System」として略称に「WBS」を採用している。インターネットのサイトにある会社の概要では略称として「WBS」と大文字で書かれているが、ロゴには小文字の「WBS」を使っている。昭和34年に、和歌山県を対象として開局された。略称が、創業時の「WBC」から「WBS」に変更されたのは昭和54年である。平成23年に和歌山県がFM送信所を整備し和歌山放送が運用することとなったため、AMとFMの両方に送信所を持っている。「県民の、県民による、県民のためのラジオ局」を標榜し、地域密着型の放送を展開するため田辺白浜と新宮の両放送局に独自のスタジオを設け、平日の昼間の「つながるワイド」枠では和歌山・田辺白浜・新宮で異なる番組を放送している。
「WBS」の読み方
「WBS」が「work breakdown structure」と「ワールドビジネスサテライト」、「株式会社和歌山放送」の意味で用いられている場合は「ダブリュー・ビー・エス」と読む。「Wan Hai Bunker Surcharge」の省略形の読み方については、WHは特に示していない。「WBS」の熟語・言い回し
「WBS」の熟語・言い回しには次のようなものがある。WBSテンプレートとは
「WBSテンプレートとは」は熟語でも言い回しでもない。「WBSのテンプレート」について、インターネットで調べる際の検索用語だと考えられる。この言葉は、「WBS」「テンプレート」「とは」の3語で構成されている。この「WBS」は「work breakdown structure」の意味で用いられていると推測される。「作業分解構造」については1章で述べた。「テンプレート」についても同様である。「とは」は格助詞の「と」と、係助詞の「は」が結びついた連語だ。連語は、2つの語が結びついて1つの単語と似た働きをする語である。ここでの「とは」は、定義や命題などの主題を示す働きを持っている。本来は「とは」のあとに定義や命題などの主題が続く文となるが、「WBSテンプレートとは」は「WBSのテンプレート」の定義や命題などの主題を探すための用語であることから、「とは」で中断された文となっている。
1章でも触れているが、テンプレートを利用することで初期の立ち上げや「WBS」の設定を簡素化できる。会社ですでに使用しているテンプレートがある場合は、他のプロジェクトとの連携や記入漏れを防ぐために既存のテンプレートの利用がおすすめである。
ダブリュー‐ビー‐エス【WBS】
WBS
読み方:ダブリュービーエス
別名:作業分解図,作業分割構成,ワークブレイクダウンストラクチャー
WBSとは、プロジェクトマネジメントで利用される計画手法の一種で、プロジェクトにおける作業を細かい単位に分割し、階層構造などで管理する手法のことである。
WBSでは、最初に必要な作業の洗い出しを行い、可能な限り細分化し、それぞれの作業について必要なコストや人員配分を割り出す。これによって、作業全体の把握や各作業の体系的つながりの把握を行うことができ、進捗管理や計画の調整に関する精度を向上させることができる。
WBSにおいて細分化された、作業の要素は、ワークパッケージなどとよばれている。また、WBSとワークパッケージから作成されたプロジェクト遂行のための組織関係図がOBS(Organization Breakdown Structure)と呼ばれている。
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