セクハラ・レイプ・脅迫をめぐる報道
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「ハーヴェイ・ワインスタイン」の記事における「セクハラ・レイプ・脅迫をめぐる報道」の解説
2017年10月5日にニューヨーク・タイムズの記者、ジョディ・カンター(英語版)とミーガン・トゥーイー(英語版)が、ハーヴェイ・ワインスタインによる女優や部下に対する数十年に及ぶセクシャルハラスメントを告発する記事を発表(報道に至るまでの取材経過についてはジョディ・カンター、ミーガン・トゥーイー『その名を暴け #MeTooに火をつけたジャーナリストたちの闘い』古屋美登里訳、新潮社、2020年7月にまとめられている)。同月、ワインスタイン社から解雇された。一連のセクハラ報道に対して、ジェニファー・ローレンスやメリル・ストリープ、ジュディ・デンチ、ジェシカ・チャステインらハリウッドの関係者が厳しく非難するコメントを発している。グレン・クローズは本件に関して発したコメントの中で、ワインスタインがセクハラを行っているという噂が長らく業界内に存在していたことを証言している。同月10日には、ワインスタインにレイプされたと訴える女性たちの証言が『ザ・ニューヨーカー』上に掲載された。11日、ワインスタイン・カンパニーは彼を非難するコメントを重役陣の連名で発表した。12日には、ワインスタインが当時未成年の女優に飲酒を勧めた上でセクハラ発言を行ったとの告発が報じられた。また、ジェーン・フォンダは今回の報道の1年ほど前にワインスタインがセクハラを行っている事実を把握していたとインタビューで述べた。フォンダはその事実をすぐに公にしなかったことを後悔しているとも語った。なお、リンジー・ローハンはワインスタインを擁護するビデオコメントを自身のInstagramに投稿したが、その後すぐに削除している。 ワインスタインは代理人を通して「ハラスメントに関する一連の報道は虚偽である」という声明を発表した。こうしたワインスタインの姿勢に対し、弟のボブは「兄の後悔の念と被害者への謝罪の言葉は空虚なものです。」「兄は自らを世界有数の嘘つきであると証明してしまいました。兄は助けを求めているというよりも、むしろ他者を非難しているように見えます。兄の主張は何から何まで不誠実です。」と厳しく批判する一方、「兄に必要な助けがあることを祈っています。」と述べている。 セクハラやレイプを告発した女性たちに対するバッシングがネット上を中心に発生した。特にイタリアではバッシングが深刻なものとなり、新聞が「性行為は合意の上だったに違いないのだから、ワインスタイン氏は被害者を身体的に傷つけたわけではない。もし何かあったのだとしても、オーラルセックスを強要してくれた彼に感謝すべきでしょう。」と記事内で述べたり、ヴィットーリオ・スガルビ(英語版)元下院議員が「ワインスタイン氏こそ真の被害者である」と発言したりした。これが原因で、被害者の一人がイタリアからドイツに移住しなければならない事態となった。 ワインスタインは妻(当時)のジョージナ・チャップマンが経営するブランド、マルケーザの服を着用することを女優たちに強要していたとも報じられている。ワインスタイン・カンパニー配給の『トランスアメリカ』(2005年)で主演を務めたフェリシティ・ハフマンは「マルケーザの服を着ないならば、俺はお前の賞レースキャンペーンをやらんぞ」と脅迫されたと証言している。 ワインスタインは民主党の支持者として多額の資金援助を行っていたこともあって、今回の一件は政界を巻き込む騒動にまで発展した。バラク・オバマやヒラリー・クリントンらが相次いでワインスタインを批判するコメントを公表している。また、共和党選出の大統領であるドナルド・トランプは「ワインスタイン氏と知己になってから久しいが、こういう話を聞いても驚かない。」「彼の行動は不適切なものだった。」と述べた。 2017年10月12日、英国映画テレビ芸術アカデミーはワインスタインの会員資格を一時停止すると発表した。14日、映画芸術科学アカデミー(AMPAS)が理事会を開催し、評決の結果「ワインスタインを団体より追放する」ことを決定して発表した。 ワインスタインをめぐる一連の報道がワインスタイン・カンパニー(TWC)に与えた影響も大きなものとなった。2017年10月9日、AppleはTWCと共同で製作する予定だったエルヴィス・プレスリーの伝記ドラマへの関与を打ち切ると発表した。12日、出版社のアシェット(英語版)がTWC傘下のワインスタイン・ブックスとの提携関係を解消したと報じられた。13日、Amazonはデヴィッド・O・ラッセルが手掛ける予定だったTWC製作のテレビドラマシリーズの発注をキャンセルすると発表した。18日、チャニング・テイタムはマシュー・クイック(英語版)の小説『Forgive Me, Leonard Peacock』の映画化をTWCと共同で進めていたが、その計画を一時中断するというコメントを出した。後にテイタムはTWCとの絶縁を宣言した。 ワインスタインの騒動が興行や賞レースに影響を及ぼす可能性が出てきたため、彼の名前をクレジットから外す動きが出ている。10月8日、映画『エジソンズ・ゲーム』のクレジットからワインスタインの名前が削除されるとの報道があった。25日、『ウインド・リバー』と『フェリシーと夢のトウシューズ』、『チューリップ・フィーバー 肖像画に秘めた愛』のクレジットからワインスタインの名前とTWCのロゴが消されることになったと報じられた。 ワインスタインのセクハラ報道以降、他の映画関係者によるセクハラの告発も相次いで行われた。この動きはワインスタイン効果(en:Weinstein effect)又は#MeToo運動と呼ばれている。アマゾン・スタジオズのロイ・プライス(英語版)社長(当時) や『バグジー』で知られる脚本家のジェームズ・トバック、映画監督のブレット・ラトナー、俳優のケヴィン・スペイシー、ダスティン・ホフマンが過去にセクハラを行ったと告発されている。MeToo運動の影響は映画界だけではなく政治の世界にも波及した。11月1日には過去のセクハラ行為を理由にマイケル・ファロン(英語版)英国防相が辞任するに至った。また、労働党の幹部にレイプされたという告発も出ている。タイム誌は2017年のパーソン・オブ・ザ・イヤーにセクハラ・性犯罪の告発者を選んだ。 2017年12月7日、ミラ・ソルヴィノは『ハリウッド・レポーター』のコラムで「ワインスタインの性的強要を拒絶したことが、自分のキャリアに悪影響を与えたのではないか」という主旨のことを述べた。15日、ピーター・ジャクソンがソルヴィノの主張を裏付けるような証言をした。1998年、ジャクソンはワインスタイン率いるミラマックスの出資を受けて『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズの製作を進めていたが、その際、同社から「以前に散々な目に遭ったので、アシュレー・ジャッドとミラ・ソルヴィノは起用しないように」と言われたのだという。ジャクソンはその要求の裏にあった真実について知らなかったと述べつつも、結果的に2人のキャリアを損なったことについて謝罪している。翌日、テリー・ツワイゴフもジャクソンと同様の証言をした。 2018年2月11日、ニューヨーク州司法省はワインスタインに対して、ワインスタイン・カンパニーの女性従業員を暴行し、従業員を殺害すると脅迫したとして提訴した。またこれらの不法行為から従業員を守らなかったとして、同社や弟で最高経営責任者のボブも訴えられた。 ワインスタインは、2018年5月25日にニューヨーク市警により、強姦などの容疑で逮捕・訴追された。100万ドルの保釈金を支払い釈放されたが、パスポートを没収され、GPS追跡装置の着用を義務付けられている。またニューヨーク州とコネチカット州以外の地に赴くことを禁止された。 2019年に出版されたローナン・ファローの著書「Catch and Kill」では、ワインスタインが、密かに契約を結んだ出版社による偽装取材や元イスラエル諜報員による特殊技能のチーム等を通じてセクハラ被害者の情報を入手し、周辺調査により被害者のスキャンダルを入手したうえで、脅迫や買収によって自らのスキャンダル潰しを行おうとしたり、スキャンダルを調査しているメディアに圧力をかけるなどしていたと告発している。 2020年3月11日、ニューヨークの裁判所は、ワインスタインに対しレイプと性的暴行の罪で禁錮23年の刑を言い渡した。 2022年6月8日、イギリス検察当局は1996年8月にロンドンで女性に対し2件の暴行を行った容疑でワインスタインを起訴した。
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