アイアイエー島
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アイアイエー島(古希: Αιαίη / Αιαία、古代ギリシア語ラテン翻字: Aiaíē / Aiaía、ラテン語: Aeaea)は、ギリシア神話に登場する地名で、魔女キルケーが住むと言われる島である。長母音を省略してアイアイエ島とも表記される。
位置

ホメーロスの『オデュッセイア』の地理学はいくぶん辻褄が合わず、文字通りに受け取るには神話的すぎるのだが、後の古代ローマの著述家たちは、アイアイエー島は、イタリア西海岸、ローマから南に約100kmの位置にある、チルチェーオ岬のチルチェーオ山(Mount Circeo, ラテン語:Mons Circeius)であるという見解を持った。実際には小さな半島であるが、周りを囲む沼地や海のため、島のように見えたのかも知れない。あるいは、ハリカルナッソスのディオニュシオスの著書によれば、その本が書かれた時代(紀元前1世紀)には既にそこは半島だったが、ひょっとしたらホメーロスの時代には、浜辺か砂の半島のある島だったのが、一般の地質学的変化によって徐々に本土とくっついたのかも知れない。
地元の人々は岬にある洞窟の1つを「Grotta della Maga Circe(キルケーの洞窟)」と呼んでいる。
アイアイエー島を去る前に、オデュッセウスはキルケーから地下世界に行く方法を教わった。「船がオーケアノスの海を越えたら、早すぎる実を落とした高いポプラと柳の林のある、ペルセポネーの国の肥沃な海岸に着くでしょう。そこに船を着け、ハーデースの闇の住処へとまっすぐに進むのです」[1]
アイアイエー島の場所については、他にもさまざまな説がある。
たとえばロバート・グレーヴスはその著書『ギリシア神話』の中で、アイアイエー島は北アドリア海に浮かぶ、ポー川河口に近い、ロシニ島だと言っている。
ティム・セヴェリンは『The Ulyssess Voyage』の中で、イオニア海のパクシ島(Paxi)がアイアイアエー島だとしている。
イマン・ウィルケンスは『Where Troy Once Stood』の中で、ライン川、マース川、スヘルデ川が作る三角州にあるサーウンダイヴァラント(Schouwen-Duiveland)がアイアイエー島だと主張している。
異名としてのアイアイエー
アイアイエーという名前は、ギリシア神話の中でさまざまなキャラクターの異名として使われている[2]。
- メーデイア。メーデイアの父アイエーテースが統治する国Aeaからの派生[3]。
- キルケー。アイエーテースの姉妹[4][5][6]。
- キルケーの息子テーレゴノス[7]。
- カリュプソー。イタリアとシチリアの間の海峡にある小さなアイアイエー島に住んでいたと言われる[8][9]。
脚注
- ^ 『オデュッセイア』x.505.
- ^ Schmitz, Leonhard (1867), "Aeaea (1), (2) and (3) Archived 2007年9月6日, at the Wayback Machine.", in Smith, William, Dictionary of Greek and Roman Biography and Mythology, vol. 1, Boston, pp. 23
- ^ ロドスのアポローニオス、iii. 1135
- ^ ホメーロス『オデュッセイア』、ix. 32
- ^ ロドスのアポロニウス、iv. 559
- ^ ウェルギリウス『アエネーイス』、iii. 386
- ^ Acaeus, Propert. ii. 23. § 42
- ^ Pomp. Mela, ii. 7
- ^ Propert. iii. 10." 81
アイアイエー島
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/16 00:42 UTC 版)
オデュッセウスはトロイアーからの帰路の航海で、魔女キルケーの住むアイアイエー島にたどり着いたとき、生き残った部下を2つの隊に分け、一方の隊を自分が指揮し、もう一方をエウリュロコスに指揮させて、島内を探索した。エウリュロコスの隊にはオデュッセウスのお気に入りの部下ポリーテースもいた。エウリュロコスたちは島内を探索するうちにキルケーの館を発見した。そこでポリーテースたちがキルケーに話しかけると、キルケーは彼らを快く館に招き入れるふりをして、毒入りの葡萄酒を飲ませ、魔法で豚に変えて、さらに家畜小屋に押し込んた。エウリュロコスは1人だけ館の外に留まっていたが、仲間たちに起きた悲劇を見て、慌てて逃げ帰って報告した。このときエウリュロコスの心は悲しみで満たされ、気ばかり焦ってなかなか話すことができなかった。ようやく話すことができたのは、仲間たちが姿を消し、一向に館から出てこないということだけであった。話を聞いたオデュッセウスはエウリュロコスにキルケーの館まで案内を命じたが、エウリュロコスはオデュッセウスにすがりついて、一刻も早くこの島から去るべきだと懇願した。仕方なくオデュッセウスは1人でキルケーの館に向かい、ヘルメース神から薬草モーリュを授かり、キルケーの魔法を打ち消して部下を救い出した。 その後、キルケーの客人となったオデュッセウスが仲間を呼びに戻ってきて、「仲間たちならキルケーの館で飲み食いしておるぞ」と言うと、他の者たちは納得したが、エウリュロコスだけは「なぜわざわざ災難に遭いに行こうとするのだ、我々はキルケーに動物に変えられて、あの大きな館の番をすることになるにちがいない。キュクロープスに殺された者たちも、もとはと言えばオデュッセウスの所業が原因なのだぞ」と言って船から動こうとしなかった。オデュッセウスはその言葉を聞くと怒って、剣でエウリュロコスの首を切りたい思いに駆られたが、部下たちになだめられて思いとどまった。エウリュロコスはというと、オデュッセウスの怒りを恐れたため、結局はともにキルケーの館へと向かった。
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