あ・ぶ【浴ぶ】
読み方:あぶ
[動バ上二]「あびる」の文語形。
あぶ【×虻/×蝱】
読み方:あぶ
双翅(そうし)目アブ科の昆虫の総称。ハエより大形で、体は黄褐色、複眼は大きい。雌には人畜から吸血するものがある。ウシアブ・メクラアブなどがあり、また、近縁のツリアブ・ミズアブ・ムシヒキアブなどを含めていうこともある。《季 春》「—翔(か)けて静臥の宙を切りまくる/誓子」
あぶ【阿武】
安封
名字 | 読み方 |
安封 | あぶ |
アブ
(あぶ から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/25 03:53 UTC 版)
アブ | ||||||||||||||||||
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アブ属の1種 Tabanus sp.
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分類 | ||||||||||||||||||
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下目 | ||||||||||||||||||
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アブ(虻・蝱)は、昆虫綱ハエ目(双翅目)ハエ亜目(短角亜目)の名称である。その範囲や定義は完全には一致しないが、広義にはおおよそ、廃止された分類群である直縫群 Orthorrhapha[1]、もしくはそれにやや異同のあるグループ[2][3]をアブと呼ぶ。後者は基本的に、和名に「アブ」とつく種のグループと一致するが、このグループは直縫群と大半が一致するものの完全には一致しない。
狭義にはアブ科の総称とする[2][1]が、狭義のアブについては科記事を参照されたい。
呼称
漢字の「虻」と「蝱」は同字の異字体で、「蝱」が本字ともされる。
「あぶ」は春の季語である。
害虫としてのアブ
ウシアブ、およびイヨシロオビアブなどのメスは、吸血害虫として忌み嫌われている。蚊と違い、噛んだ(正確には皮膚を口器で切り裂いた)瞬間にチクッというような痛みがあるため、吸血されたことがすぐにわかる[4]。個人差があるが、刺されると一般的に強いかゆみがある。アレルギーがある場合、化膿し水ぶくれができることがある。ムシヒキアブ科、ことにシオヤアブは脊椎動物にも向かっていく反面、幼虫も成虫も他の虫(アブラムシなど)を積極的に捕食することから益虫としての面も持つ。
分類
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ハエ亜目の分類の概略[5][6]。 環縫群以外は全て直縫群。 |
直縫群
資料によっては、「アブ」を直縫群 Orthorrhapha(直縫短角群 Brachycera Orthorrhapha)に等しく定義する[1]。
直縫群は解剖学的に定義すれば、触角が比較的短い仲間(短角亜目)のうち、羽化の際に蛹の背中が縦に割れるグループである。蛹の"縫い目"が真っ直ぐであるとの意味で「直縫短角群」あるいは「直縫群」として、前方が円形に開く環縫短角群(ハエ)と区別される。アブ科のほか、ムシヒキアブ科、ツリアブ科、ナガレアブ科、ミズアブ科など多様な科が含まれる。また、名前に「〜アブ」と付かずに「〜ハエ」と付くオドリバエ科やアシナガバエ科などもこのグループに入り、解剖学的定義からはこれらもアブの仲間である。
ただしこの特徴は、共有原始形質、つまり、原始的な特徴が保持されているにすぎず、直縫群に含まれる各科はそれほど(ハエ亜目であるという以上には)近縁ではない。すなわち、直縫群は側系統であり現代の系統分類では認められない。
ハエという名のアブ、アブという名のハエ
上述のオドリバエ科などとは逆に、ハナアブ上科(ハナアブ科 + アタマアブ科)など、「〜アブ」と付きながら直縫群(大半がアブ)ではなく、環縫群(大半がハエ)に入るものがある。このようなわかりにくい「アブ」と「ハエ」の交錯は、そもそも虻や蝿という語には厳密な分類の概念などなく、単に見た目の感じで使い分けられてきたものであることと、そのような見た目の感じと近代的な解剖学的特徴とが必ずしも一致しない場合があることに起因している。
一般に「〜アブ」と名の付くものを見れば、「どこかしらハチに似た風貌を持つハエ目の昆虫」を指して「アブ」と呼んでいるらしいことがわかる。そしてそれらの多くが直縫短角群に属しているため、この群のものをまとめて広義でアブと呼ぶのである。具体的には、ツリアブ科には丸々としたハナバチ類に非常によく似たものがあり、逆にほっそりとしてヒメバチにそっくりなものもある。やはり広義のアブであるムシヒキアブ科にも同様にハナバチやヒメバチの擬態と思われる例が見られる。
ところが、これと同様の現象がハエ(環縫短角群)であるハナアブ科にも見られ、その多くがミツバチなどのハナバチ類に擬態すると同時に、一部の種群はヒメバチに似た細身となっている。ハエでありながら「ハナアブ」という名が付いたのは、このようなハチに似た(あるいは広義のアブに似たとも言えるが)外見からである。ハナアブが系統的にはハエの仲間であることを示すため、例えば「シマハナアブ」「オオハナアブ」を、「シマハナアブバエ」や「オオハナアブバエ」として、最後にやや強引に「ハエ」を付した図鑑も過去にあったが、結局はこれらの和名は定着しなかった。
逆に、系統上では広義のアブであるにもかかわらず、オドリバエ科やアシナガバエ科に「ハエ」と名が付いたのは、彼らがあまりハチに似ておらず「ハエのような外見」だからである。「ハエのような外見」とは、それらの名が付いた昆虫を見れば、「体が比較的が短く、あまりハチに似ていないハエ目の昆虫」のことを言うらしいことがわかる。そのため細長いものが多いカやガガンボの仲間(ハエ目・長角亜目)であっても、あまり細くない体をしているものにはチョウバエなどの和名があり、これもカの仲間であることを示すため「〜チョウカ」の和名で掲載した図鑑もあったが、「〜アブバエ」と同様に定着はしなかった。
科
複数の文献を参照し「アブ」とされることがある科を、Tree of Life Web Project の分類に従い列挙する[5][6]。
- ミズアブ下目 Stratiomyomorpha
- パントフタルムス科 Pantophthalmidae
- ミズアブ科 Stratiomyidae
- キアブモドキ科 Xylomyidae
- キアブ下目 Xylophagomorpha
- キアブ科 Xylophagidae
- アブ下目 Tabanomorpha
- アナアブ科 Vermileonidae ※単型下目とする説もあるが、アブ下目に含めることとする[7]。
- シギアブ科 Rhagionidae
- タマユラアブ科 Pelecorhynchidae
- Oreoleptidae
- ナガレアブ科 Athericidae
- アブ科 Tabanidae
- ハエ下目 Muscomorpha
- ツリアブモドキ上科 Nemestrinoidea
- コガシラアブ科 Acroceridae
- ツリアブモドキ科 Nemestrinidae
- ムシヒキアブ上科 Asiloidea
- ムシヒキアブ科 Asilidae
- Apsilocephalidae
- Evocoidae
- マドアブ科 Scenopinidae
- ツルギアブ科 Therevidae
- ムシヒキアブモドキ科 Mydidae
- アピオケラ科 Apioceridae
- ツリアブ科 Bombyliidae
- Apystomyiidae
- オドリバエモドキ科 Hilarimorphidae
- オドリバエ上科 Empidoidea ※和名に「アブ」なし
- ハナアブ上科 Syrphoidea ※ 環縫群
- ツリアブモドキ上科 Nemestrinoidea
出典
- ^ a b c 篠永哲 (2009), “アブ”, in 下中直人, 世界大百科事典, 2009年改定新版, 平凡社
- ^ a b 高橋弘 (1987), “アブ”, in 相賀徹夫, 日本大百科全書 18 (初版 ed.), ISBN 4-09-526018-1 2. 分類。ハエのように動作が敏捷でないものとし、例として、直縫短角群の多数の科と、ハエ下目のアタマアブ科・ハナアブ科を挙げている。
- ^ 広辞苑「あぶ【虻・蝱】」。アブの例としてウシアブ(アブ下目アブ科)・ミズアブ(ミズアブ下目ミズアブ科)・ヒラタアブ(ハエ下目ハナアブ科)を挙げている。
- ^ “ホーム>お家の虫を判定する>アブ”. アース製薬 害虫駆除. 2023年8月7日閲覧。
- ^ a b Wiegmann, Brian M. and David K. Yeates. 2007. Brachycera. Version 29 November 2007 (under construction). http://tolweb.org/Brachycera/10500/2007.11.29 in The Tree of Life Web Project, http://tolweb.org/
- ^ a b Tree of Life Web Project. 2008. Cyclorrhapha. Version 05 February 2008 (temporary). http://tolweb.org/Cyclorrhapha/10471/2008.02.05 in The Tree of Life Web Project, http://tolweb.org/
- ^ Wiegmann, Brian M.; Tsaur, Shun-Chern (2000), “Monophyly and Relationships of the Tabanomorpha (Diptera: Brachycera) Based on 28S Ribosomal Gene Sequences”, Annals of the Entomological Society of America 93 (5): 1031-1038, doi:10.1603/0013-8746(2000)093[1031:MAROTT]2.0.CO;2
参考文献
- 木野田君公 『札幌の昆虫』北海道大学出版会、2006年、ISBN 4-8329-1391-3。
あぶ
出典:『Wiktionary』 (2021/10/10 14:58 UTC 版)
発音
名詞:虻
あぶ【虻、蝱】
関連語
翻訳
- アイスランド語: kleggi (is) 男性
- アイルランド語: creabhar (ga) 男性, creabhar capaill (ga) 男性
- アストゥリアス語: tabánido (ast) 男性
- アゼルバイジャン語: göyün (az)
- アフリカーンス語: perdevlieg (af)
- アラビア語: نُعَرَة (ar) 女性
- アルーマニア語: davan (rup) 男性, tãun (rup) 男性, bumbar (rup) 男性, streclji (rup) 女性
- アルメニア語: մոզ (hy)
- イタリア語: tafano (it) 男性
- イド語: tabano (io)
- インドネシア語: pikat (id)
- ウェールズ語: pryfyn y gweryd (cy) 男性
- ヴェステルボッテン語: brems (gmq-bot) 男性
- ヴェネツィア語: tavàn (vec) 男性
- ウクライナ語: ґедзь (uk) 男性
- ウズベク語:
- 英語: horsefly (en)
- エストニア語: parm (et)
- エスペラント: tabano (eo)
- オック語: tavan (oc) 男性
- オランダ語: daas (nl) 通性, brems (nl) 通性, paardevlieg (nl) 女性, paardenhorzel (nl) 通性
- カザフ語: сона (kk)
- カタルーニャ語: tabànid (ca) 男性
- カビル語: aggug (kab)
- ガミララーイ語: baanduu (kld)
- ガリシア語: moscardo (gl) 男性, mosca caíña (gl) 女性, tabardo (gl) 男性, tabán (gl) 男性
- カンナダ語: ತೊಣಚೆ (kn)
- ギリシア語: αλογόμυγα (el) 女性
- キルギス語: көгөөн (ky)
- グルジア語: მაწუხელა (ka)
- ケチュア語: tak'a (qu)
- 古ノルド語: kleggi (non) 男性
- サハ語(ヤクート語): күлүмэн (sah)
- サモギティア語: bimbals (sgs) 男性
- シチリア語: tavana (scn)
- スウェーデン語: broms (sv) 通性
- スコットランド語: cleg (sco)
- スコットランド・ゲール語: creithleag-nan-each (gd) 女性
- スコルト・サーミ語: puär (sms)
- スペイン語: tábano (es) 男性, tabánido (es) 男性
- スロヴァキア語: ovad (sk) 男性
- スロヴェニア語: obad (sl) 男性
- スワヒリ語: pange (sw)
- スンダ語: piteuk (su)
- セルビア・クロアチア語:
- ソルブ語:
- タイ語: ฑังส (th), เหลือบ (th)
- タガログ語: kabayo-lipad (tl)
- タジク語: хармагас (tg), kӯрмагас (tg)
- チェコ語: ovád (cs) 男性
- チェロキー語: ᏓᎦᎦ (chr)
- 中国語:
- 朝鮮語: 등에 (ko)
- 低地ドイツ語:
- テルグ語: జోరీగ (te)
- デンマーク語: klæg (da) 通性
- ドイツ語: Bremse (de) 女性
- トルコ語: atsineği (tr)
- ナヴァホ語: tłʼézhii (nv), łį́į́ʼ bitsísʼná (nv)
- ノルウェー語:
- ノルマン語: taon (nrf) 男性
- バイエルン語: Brejm (bar)
- バシキール語: күгәүен (ba)
- バスク語: ezpara (eu)
- ハンガリー語: bögöly (hu)
- フィンランド語: paarma (fi)
- フェロー語: kleggi (fo) 男性
- アルピタン語: tavan (frp) 男性
- フランス語: taon (fr) 男性
- フリウリ語: tavan (fur) 男性
- ブルガリア語: ко́нска муха́ (bg) 女性
- ブルトン語: moui (br) 女性 (集合名詞), mouienn (br) 女性, boui (br) 女性 (集合名詞), bouienn (br) 女性
- ヘブライ語: זְבוּב הַסּוּס (he) (zvuv hasus) 男性
- ベラルーシ語: сляпень (be) 男性
- ペルシア語: خرمگس (fa) (xar-magas)
- ベンガル語: ঘোড়া মাছি (bn)
- ポーランド語: bąk (pl) 男性
- ポルトガル語: mutuca (pt) 女性, tavão (pt) 男性, moscardo (pt) 男性
- マケドニア語: ко́њска му́ва (mk) 女性
- マプン語: pikot (sjm)
- マラヤーラム語: പോന്ത (ml)
- マリ語:
- マレー語: pikat (ms)
- ラテン語: tabānus (la) 男性
- ラトヴィア語: dundurs (lv) 男性
- リトアニア語: sparvos (lt) 男性
- リンブルフ語: sjeldaes (li), staekvleeg (li) 女性
- ルクセンブルク語: Beel (lb) 女性
- ルーマニア語: tăun (ro) 男性
- ロシア語: сле́пень (ru) 男性
動詞
あぶ【浴ぶ】
- 浴びる。
バ行下二段活用 | ||||||
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語幹 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 |
あ | べ | べ | ぶ | ぶる | ぶれ | べよ |
虻
蝱
「あぶ」の例文・使い方・用例・文例
- 職にあぶれる,失業中である
- 中途半端な少しの知識はあぶないものだ;生兵法は大けがのもと
- 火あぶりにされる
- いやぁ!あきちゃんのチャイナ、可愛かった。あぶなく、理性のタガが外れるとこだった。
- 彼は濡れた服を火にあぶってかわかした。
- 彼は「あぶない」と叫んだ。
- 濡れたタオルを火であぶる。
- 私はあぶなく車にひかれる所だった。
- 今日は仕事にあぶれた。
- それは油であぶられた。
- あぶない橋は渡りたくない。
- あぶく銭を稼ごうとする開発業者たちよ。
- あぶく経済がはじけた.
- 火あぶりにされる.
- 《諺》 得やすいものは失いやすい, 「あぶく銭は身につかない」.
- あぶら肉.
- あぶらをたっぷり使って揚げ物をする.
- 脂(あぶら)のしみ.
- 暗礁だ!, あぶないぞ!
- (ベーコンなどの)しまになっている脂身(あぶらみ)と赤身.
- >> 「あぶ」を含む用語の索引
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