マイクロフォン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/06 07:58 UTC 版)
有線マイクとワイヤレスマイク
信号の伝送を電線で行うものと、電線を使わないものがある。
ワイヤレスマイクとは、信号の伝送を電線で行うのではなく、電磁波(電波、赤外線、可視光線)を用いるマイクである。
ワイヤレスマイク(wireless micorophone)という表現はイギリス英語であり、アメリカ英語ではラジオマイク(radio micorophone)という[4]。 実用化されているのは電波と赤外線によるものである。
電波を用いるものは、日本の電波法令ではラジオマイクと呼ばれる。
赤外線を用いるものは、赤外線ワイヤレスマイク
そのほか、主として日本以外の国にかかわることはワイヤレスマイクをそれぞれ参照のこと。
付加機能
- 音声ON/OFFスイッチ
- 比較的廉価なダイナミックマイクに多く搭載されていて、マイクの音声出力に挿入されるスイッチで音声のON/OFFをおこなう。電源スイッチとは区別されている。OFF時には出力をショートすることによってアンプの入力が解放になることを防ぎ誘導ノイズの影響を受けにくくするが、ON/OFF時にノイズが出やすいので切り替えノイズを問題にする場合はカフボックスを使用したり、ミキシング・コンソールを使用するときはオペレータが使用状態に応じて出力を操作する。不用意にON/OFFすることを防ぐため、スイッチをON状態で固定できる機種もある。ワイヤレスマイクでは電源スイッチが音声のON/OFFを事実上兼ねていることが多い。
- 電源スイッチ
- 電池を内蔵するマイクにおいて回路へ供給する電流をON/OFFする機構。ON/OFF時に大きいノイズを出す場合があり、出力のON/OFFの代用として使用するのは望ましくない。
- PAD
- カプセル以降のアンプに対して過大入力が予想される場合に出力を減衰させる。コンデンサーマイクの場合はカプセルに並列に小容量のコンデンサーを接続することで効果を得る。
- フィルタ
- 不必要な周波数帯域をマイク側で低減させるための機能。多くはローカットであり、機種によっては数段階の切り替えが可能なものもある。
- 指向性切り替え
- カプセルに電圧を与えて制御する方法と物理的にシャッターなどを用いて制御する方法がある。
- 特性が同じダイヤフラムを二つ搭載したステレオマイクでは、MS方式でセパレーションの補正を録音後に行うことが可能で、MS・XY方式のいずれも2系統出力される信号の位相やミックス量の調整次第で録音後に指向性の調整も可能なモノラルマイクとして転用できる。MKH800 Twin(ゼンハイザー)やEHR-T(Ehrlund)、LCT640TS(Lewitt)など録音後の指向性変更・調整に特化したモデルもある。
- 出力インピーダンス切り替え
- 出力トランスの2次側の結線を変更することにより出力インピーダンスを選択できる機種がある(例:ノイマン社の製品など)。無線機用のダイナミックマイクの一部にも見られる。
- PTT(Push To Talk)
- トランシーバー等で送信/受信を切り替えるためのスイッチ。一般には押す/押し下げることにより送信となる。音声のON/OFFと混同しないように注意が必要である。
- デジタル出力
- マイクロフォンにADコンバーターを内蔵し、音声出力をデジタル信号として取り出す物。デジタル入力のミキサーに直接接続することを目的としている。[注 12]
- サスペンション/ショックマウント
- マイクスタンドから伝わる振動をマイクに伝えないようにするための防振装置。マイクの形状に合わせた専用品がメーカーから供給されるのが一般的である。
- ポップフィルター
- スタジオでコンデンサーマイク使用時にマイクの吹かれ防止のために口とマイクの間に挿入する防風フィルター。材質は金属(金網)であったり、ストッキング類似の繊維素材であったりする。
- ウィンドスクリーン/風防
- 吹かれ防止と野外での使用において風切り音を低減させるためにマイクに被せて使用する。材質はスポンジ状の物であったり、目の細かい金網と薄いスポンジを組み合わせた物など各種ある。防水効果を期待して使うものではない。
- ウィンドシールド/俗称 籠 (ソフタイを含む。)
- ガンマイクにおいてマイク全体を収納する風防のこと。手持ち/ブームに装着して強風時の屋外アプリケーションや対象物を追いかける(風切り音が発生する。)場合に使用。
- ウィンドジャマー
- Rycote社の開発した強風対策のための毛皮風防アダプタ。ウィンドシールドやウィンドスクリーンに装着して風防効果を高める。
- アコースティックイコライザー
- DPA社の製品に見られるオプションで、マイクに装着することにより指向特性や高域特性を変化させる。外観は球状であったりコーン型であったりと様々である。
- マイクフラッグ
- 会見用・インタビュー用のマイクなどに用いられるもので、社名や番組名などを表示するためにマイク本体の手元部分に取り付ける付属部品。
特性
- 感度(感度レベル)
- 平面進行正弦波の自由音場にマイクロホンを置いたときの開放出力電圧と自由音場音圧との比。音圧は 1 Pa を基準とし[注 13]、 V/Pa, mV/Pa などで表す(例: 1 mV/Pa)。また、「感度レベル」として基準レベルを 1 V/Pa にとったデシベル表示が行われる(例: -60 dB)。同じ値が dBV/Pa として表記されることがあるが(例: -60 dBV/Pa)、 dBV は対数で Pa は真数であり、表記としては誤りである。
- ダイナミックレンジ
- マイクがどれ位小さい音から大きい音まで歪みなく拾うことができるかをあらわしたもの。単位はdBで最小値と最大値の比率を表現する。
- 周波数帯域(周波数特性)
- マイクがどれ位低い音から高い音まで拾うことができるかをあらわしたもの。20Hz ~ 20kHz ±3dB等と示す。
- 指向特性
- マイクがどの方向の音をよく拾うかをあらわしたもの。正面からの角度と対応する感度を円形のチャートで表現する。指向性による分類で前述。
- SN比
- 信号(Signal)とノイズ(Noise)の比率。単位はdB。この値が大きいほど、ノイズの割合が低く優秀である。値が小さいほどノイズが少ないとみなす「等価雑音レベル」とは異なる。
- ダイナミック型よりコンデンサー型の方が有利で、2018年の時点で値をメーカーが公表した製品に限ればLEWITTの単一指向性マイク"LCT 540 Subzero"が最もノイズが少ないと言える。
- 最大入力許容音圧
- マイクは過大な入力があると歪む。どの程度の入力まで歪まずに耐えるかを示す。例えば140dB S.P.L. at 1kHz, 1%THDとあれば、音圧レベル140dBで高調波歪率が1%である。
- 出力インピーダンス
- 歴史的経緯から 600 Ωのものが一定数あるがやや古い設計で、 250 Ωや 50 Ωなど、もっと低い出力インピーダンスが現代的な設計である。マイクアンプの入力インピーダンスは出力インピーダンスの数倍以上に高くとられる。
- ダイヤフラム
- ダイヤフラムをマイク本体の軸に対してどのように配置されているかや、ダイヤフラムの口径などを示す。軸に対して直角(つまりマイクの横方向)に取り付けられたものをサイドアドレス方式といい、マイクの横から音を拾う。大口径のダイヤフラムを組み込みやすい。軸と同じ方向に取り付けたものをエンドアドレス方式という。ボーカルなどではマイクの軸に向かって発音する。ダイヤフラムは小さくなるが、小型化が可能。
- 自己ノイズ換算レベル
- 消費電力
注釈
- ^ 「マイクロフォン」の方が英語に近いが、『学術用語集 電気工学編』では「マイクロホン」が正式表記になっている。
- ^ 概して口径が小さくなるほど高域の周波数特性が伸び、等価雑音レベルは増加する。コンデンサーマイクでは成極電圧を高くする事で感度を上げ相対的にノイズを低減させる事が可能で、ファントム電源48Vを昇圧する機能を持つCO-100KやC617(Josephson Engineering)といった小口径ダイヤフラムマイクも存在する。
- ^ 2008年にSHUREが買収したCROWLEY AND TRIPP社が実用化。KSM313、353として販売継続されている。
- ^ 特殊な例として、非対称・非円形ダイヤフラムを用い共振を抑制したFlamingo Magic Ear(Violet Design)、非平面ダイヤフラムにより20~50kHzの超音波域に共振周波数を設け、100kHzまでの収音を可能にしたCO-100K(NHK技研とサンケンの共同開発)といった製品がある
- ^ SENNHEISERのMKHシリーズが著名だが商品化は1950年(昭和25年)STAXが既に行っている。同社製品にはやはり「高周波バイアス方式」を応用したレコード針も存在した。参照ページ[1]
- ^ Micro Electronics Mechanical Systemsの略、デジタル出力を持つ製品もある。
- ^ ポータブルレコーダーではファンタム電源に充分な電流を供給出来ないものがあり、消費電流の大きいマイクロフォンを使用した場合瞬間的な大音量が再現出来ない、歪みが増加するなど影響がある。
- ^ 数Hzの超低音も一緒に減衰されるが、ローカットのフィルターが常用される人声収録用途では影響は殆ど無い。ただしダイナミックマイクやリボンマイクでは数Hzのローカットさえ不利とする見方もあり、GRACE DESIGN製プリアンプでは通常のトランス非搭載回路に加えコンデンサーを使わないシグナルパスも設けている。
- ^ DPA4041T2およびS。専用パワーサプライ/プリアンプのHMA5000仕様書(ただし原語版)による。2013年現在製造終了。
- ^ サンケンのWMS-5
- ^ SENNHEISERのAMBEO VR Mic
- ^ コンデンサータイプのマイクと3ピンXLRケーブル1本で通信し、サンプリング周波数384kHzまでのデジタル信号に加えクロック、10Vのファントム電源にコントロール信号まで供給するAES42規格が策定されており、専用デジタルインターフェースと組み合わせる方法でSCHOEPS、NEUMANN、SENNHEISERが製品化。直接入力に96kHzサンプリングまで対応したポータブルレコーダーがAETA、SoundDevicesから発表されており、複数の出力を束ねてマルチチャンネルのデジタル音声を送出するインターフェース単体もNEUMANN、RME製品がある。以上のΔΣ変調に対応しないマイクとは別に、携帯電話や小型ビデオカメラ用の電子部品として小型マイクユニットをシリコンチップに埋め込みアンプとΔΣコンバーターを組み合わせた「デジタルシリコンマイク(3.25MHzPDM)」も流通している。
- ^ 1 Pa=94 dBSPL.
出典
- ^ mouser社カタログ特性例 (PDF)
- ^ https://www.audio-technica.co.jp/microphone/navi/ionic/index.htmlおよび http://tokkyoj.com/data/tk2009-218860.shtml
- ^ a b c d [2]
- ^ Q&A 01:ワイヤレスマイクとラジオマイクの違いは?(特定ラジオマイク運用調整機構)
- 1 マイクロフォンとは
- 2 マイクロフォンの概要
- 3 概要
- 4 用途による分類
- 5 有線マイクとワイヤレスマイク
- 6 取扱い
- 7 ギャラリー
- 8 脚注
固有名詞の分類
- マイクロフォンのページへのリンク