コンテナ船 コンテナの荷役

コンテナ船

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/24 05:55 UTC 版)

コンテナの荷役

荷役の流れ

ラッシング・ブリッジにギャングの2人が立っている。甲板上のコンテナは鉄製のバーやターンバックルで固定する。

以下は一般的な荷役を時系列に並べたものであるが、港によって多少異なる。

  1. コンテナターミナルに搬入されたコンテナは、大きさ、種別、向け地別に大まかに分類され、仮置きされる。
  2. 船積みするコンテナごとの種類・向け地・重量などのデータを細かく計算し、本船への積付けプランを作成する。この重要な作業を行う者をプランナーと呼ぶ。
  3. 積付けが決まったら、電話やFAX又は本船が他港に停泊中であればその港の船内荷役会社(ステベ)を通して一等航海士と事前に打ち合わせをし、変更点があれば修正する。これはコンテナ船のスケジュールが分刻みで定められており、荷役当日のトラブルを極力回避するためである。またコンテナヤードではスムーズに船積みできるよう、積みつけプランに基づき仮置きされたコンテナの配置替えを行う。
  4. 本船が着岸すると作業員は速やかに乗り込み、当該箇所のコンテナ固定器具を解除して船卸しの用意に取りかかる。同時に荷役責任者は一等航海士とプランの最終確認および出港時刻などの打ち合わせを行う。この荷役責任者のことをフォアマンとよぶ。
  5. 荷役は通常、船卸しから始められる。岸壁では次々と揚がってくるコンテナの番号、シール番号と外装を検数員がマニフェスト(Manifest、積荷目録)に基づくデータと対査し、問題がなければ専用シャーシに乗せられトレーラーヘッドに引かれてコンテナヤードに搬入される。
  6. ヤード内ではストラドル・キャリアやトランステナーなどの荷役機器によって段積みで蔵置される。また冷凍コンテナや危険品は専用の区画へ蔵置される。
  7. 船積みは船卸しと逆の要領である。ヤード内から船側(せんそく)に運ばれたコンテナは、積付けプランに従って本船に積み込まれる。通常船艙にはセル・ガイドという横ずれ防止用の枠があるので特に強固に固定する必要はないが、上甲板上に積む際には上下のコンテナ同士を「ツイストロック」又は「オートロック」などの器具で固定するほか、1-3段目までのコンテナを「ラッシングバー」「ターンバックル」などの頑丈な器具で厳重に固定する。
  8. 出港時刻は本船が着岸する前に既に決まっていることが多く、定められた時間までに荷役を終わらせて、本船は次の港へと出港していく。

特殊な荷役

RO-RO船

コンテナ船の中にはRO-RO船というものもあり、フェリーのようなランプウェイを備えている。ランプウェイから貨物コンテナを積んだセミトレーラーが船内に入り、トレーラーヘッド(トラクタ)を切り離して後部のセミトレーラー部をそのまま積載するROトレーラ式とフォークリフトなどで積み替えるROコンテナ式がある[5]

RO-RO船は、コンテナ用クレーンを備えていない小規模港湾を結ぶ航路に投入されており、荷役の簡単さと早さからコンテナの末端輸送手段として使われている。

コンテナ化による荷役作業の効率化

ドライコンテナ(扉面)
扉の右上にGLDUで始まるコンテナ番号(ISO 6346)が読み取れる。

荷役を行う荷役作業員はチームを組んで作業を行い、このチームは「ギャング」と呼ばれる。従来型の荷役作業では1ギャングが15名前後で組まれていたが、コンテナ化によって1ギャングは8名程度になり、1名のクレーン操作員を加えても9名で1台のガントリー・クレーンごとでの荷役を行っている。この9名程のチームで1時間に30-35個のコンテナを荷役できる。従来型の荷役に比べて作業員あたりの荷役効率は40倍前後になる。

大型コンテナ船では1度に複数台のガントリー・クレーンを使って荷役を行うのでさらに荷役効率は高まり、このことがコンテナ船の大型化を可能にした。

コンテナの固定

21世紀初頭の現在では、大型フルコン船でコンテナを固定する場合で甲板に相当するポンツーンカバー(ハッチカバー)上の固定は、個々の貨物コンテナ間の上下の四隅を国際規格のツイストロックを挿入・固定した上で、1段-3段をまとめてX型に掛けたラッシング・ロッドによって甲板上に固定される。

20ftコンテナと40ftコンテナの数でいえばほぼ同数であるが、40ftコンテナの方が場所としては多くなる。また、今後も40フィートのものが増えることが予想されるためもあり、全ての船倉を40ftコンテナの搭載に設定しているフルコン船が増えている。これらの船で、20ftコンテナと40ftコンテナを同じ船倉に積付ける場合は、2個分の20ftコンテナの上に40ftコンテナを積んでいく。ただ積んだのでは、40ftコンテナの下の2個の20ftコンテナがジャックナイフのようにくの字にずれる恐れがあるため工夫が必要になる。船倉の底に取り外し可能な「スタッキングコーン」を20ftコンテナの位置に取り付けてその上に20ftコンテナを積んでいく。何段かの20ftコンテナすべての間は脱着式下向きスタッキングコーンでずれを防いでいる。その上の40ftコンテナはセルのレールで固定される。こういった工夫によって20の上に40を積む方法は、「ロッシアンストウェージ」と呼ばれる。


注釈

  1. ^ 2013年順位。1位上海3362 TEU、2位シンガポール3224、3位深圳2328、4位香港2235、5位釜山1769、6位寧波1735、7位青島1552、8位広州1531、7位ドバイ1364、8位天津1301、9位ロッテルダム1162、10位大連1086、11位ポート・クラン(マレーシア)1035、12位高雄994、13位ハンブルク930。28位東京486、横浜289
  2. ^ 傘下に WEC Lines
  3. ^ 傘下に P&O Nedlloyd, Safmarine, SeaLand , Hamburg Süd
  4. ^ 傘下に APL, Neptune Orient Lines, ANL, Comanav, CNC Line, Mercosul Line, and Containerships
  5. ^ 傘下に COSCO Shipping Lines (COSCO), China Shipping Container Lines (China Shipping Group), OOCL (東方海外貨櫃航運公司), Shanghai Pan Asia Shipping, New Golden Sea Shipping, Coheung
  6. ^ 傘下に United Arab Shipping Company, CSAV , NileDutch
  7. ^ 傘下に 日本郵船,商船三井, 川崎汽船
  8. ^ 傘下に Italia Marittima , Uniglory Marine
  9. ^ 傘下に Advance Container Line (ACL), Pacific Direct Line (PDL), Mariana Express Lines Ltd. (MELL)
  10. ^ 傘下に Islamic Republic of Iran Shipping Lines, HDS Lines, Valfajre Eight Shipping Company, Khazar Shipping Company
  11. ^ 傘下に Consortium and X-Press Container Line

出典

  1. ^ a b 池田勝, 「古今(こきん)用語撰」『らん:纜』 1992年 17巻 p.43-46, doi:10.14856/ran.17.0_43、2020年6月19日閲覧。
  2. ^ [Top 50 World Container Ports World Shipping Council]2018年8月30日閲覧
  3. ^ 1995年順位 1位香港1254、2位シンガポール1185、3位ロッテルダム479、4位高雄523、5位釜山450、6位ハンブルク289、7位横浜276
  4. ^ 「海上物流、主役は中国」日本経済新聞2015年4月27日朝刊9面。出典は「世界のコンテナ輸送と就航状況 2014年版」(日本郵船編。日本海運集会所発行)
  5. ^ a b c d e 渡辺逸郎著 「コンテナ船の話」 成山堂書店 18年12月18日初版発行 ISBN 4-425-71371-0
  6. ^ 全長400m 世界最大級コンテナ船が明石海峡に”. 神戸新聞NEXT (2019年3月18日). 2019年6月16日閲覧。
  7. ^ Table 3.1. Container freight markets and rates”. Review of Maritime Transport. 国際連合貿易開発会議. p. 58 (2015年10月14日). 2015年10月閲覧。
  8. ^ PublicTop100”. alphaliner.axsmarine.com. 2022年4月14日閲覧。
  9. ^ 今治造船株式会社 会社概要”. IMABARI SHIPBUILDING CO.,LTD.. 2023年8月17日閲覧。
  10. ^ 韓進重工、世界最大級のコンテナ船を竣工”. nna.ASIA (2018年1月29日). 2018年11月18日閲覧。






コンテナ船と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「コンテナ船」の関連用語

コンテナ船のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



コンテナ船のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのコンテナ船 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS