rsウイルスとは? わかりやすく解説

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アールエス‐ウイルス【RSウイルス】

読み方:あーるえすういるす

respiratory syncytial virus》かぜの原因ウイルスの一。冬期流行し2歳までにほとんどの子供が初感染する。感染力高く免疫ができにくいため繰り返し感染するが、感染回数多くなるほど症状軽くなるワクチン特効薬はなく、対症療法中心

[補説] 新生児乳幼児感染する細気管支炎肺炎中耳炎などを引き起こし重症化することもある。乳幼児突然死症候群SIDS)の原因一つとも考えられている。


RSウイルス (あーるえすういるす)

赤ちゃん気管支炎細気管支炎原因となるウイルスの一つです。お母さんからもらった抗体免疫)がきかず、生後1か月未満赤ちゃんでも感染。せきやゼイゼイした呼吸など、ようすがおかしいと思ったらすぐ小児科受診しましょう

RSウイルス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/24 02:55 UTC 版)

RSウイルス
RSウイルスの電子顕微鏡像
分類
レルム : リボウィリア Riboviria
: オルソルナウイルス界 Orthornavirae
: ネガルナウイルス門 Negarnaviricota
亜門 : ハプロウイルス亜門 Haploviricotina
: モンイウイルス綱 Monjiviricetes
: モノネガウイルス目 Mononegavirales
: ニューモウイルス科 Pneumoviridae
: オルソニューモウイルス属 Orthopneumovirus
: ヒトオルソニューモウイルス Human orthopneumovirus

RSウイルス: respiratory syncytial virus)は、ニューモウイルス科オルソニューモウイルス属に属するRNAウイルスの一種。学名はヒトオルソニューモウイルスHuman orthopneumovirus[1]、直訳して呼吸器合胞体ウイルスとも[2]

遺伝子配列は決定されていて、A型とB型の2つの型に分類できる。ウイルス株間での差違は大きい。

環境中では比較的弱いウイルスで、凍結からの融解、55°C以上の加熱、界面活性剤エーテル次亜塩素酸ナトリウムを含む塩素系消毒薬などで速やかに不活化される[3]。呼吸器感染に際して、隣接する細胞の細胞膜を融合させ多核の巨細胞様の構造物を形成し、これを合胞体またはシンシチウム(syncytium, pl. syncytia)という。

臨床像

RSウイルスは、成人で免疫不全の有る場合や乳幼児では劇症化し気管支炎肺炎などの原因になることもある[4]。感染症法でRSウイルス感染症は五類感染症(定点把握)とされている。感染により発症する宿主は、ヒトチンパンジーウシで、無症状のヤギなどからも分離される。

日本では、11月から1月にかけて冬期の流行が多く報告され、熱帯地域では雨期の流行が多いとされている。乳幼児の肺炎の約50%、細気管支炎の50〜90%を占めるとの報告がある[3]。1歳までに50〜70%以上の新生児が罹患し、その1/3が下気道疾患を起こすと報告されていて、3歳までにほぼ全ての小児が抗体を獲得する[3]。母親からの抗体では、感染が防げない。くり返し感染発症しながら徐々に免疫を獲得する[5]ので再発しやすく、徐々に軽症化する。

生後4週未満では感染頻度は低いが、感染し発症した場合に呼吸器症状を伴わない非定型の症状となることも多く、誤診および発見の遅れにつながることがある。更に生後4週未満では、突然死(乳幼児突然死症候群)につながる無呼吸が起きやすいことも報告されており、注意が必要である。生後6ヶ月以内で最も重症化するといわれる。1歳以下では中耳炎の合併もみられる。発熱、鼻汁、咳など上気道炎症状の後、細気管支炎や肺炎などの下気道症状が出現してくることがある。

感染力および増殖力は強く、飛沫と接触感染の両方で感染し、発症前の潜伏期にも周囲の人を感染させる。小児は症状が消えてから1〜3週間後も感染力を失わない[5]。このため保育園や学校、病院の入院病棟、老人ホーム、家庭内などでの集団感染へつながりやすい。治療薬も存在しないため通常は症状抑制や栄養補給などの支援療法しかなく(ただし米国ではC型肝炎向けの抗ウイルス製剤が吸引薬として認可されている)、院内での集団感染においてはコホーティングや遠隔個室移送などの隔離策が採られる。眼および鼻などの粘膜からも感染すると考えられていて、通常の鼻と口を覆うマスクでは効果はないとされている[3]

以上の特性から、患者とともにいる家族や医療従事者や園児、生徒らのうち、スキンシップや付近同席や看病など、患者への至近接近や同室、接触があった者およびその時間の長かった者が、重度の気管支炎やインフルエンザ様症状をおこすことがある。これは医学的常識として、キャリア本人の病原となる病原数よりも、咳などで随時まき散らされる(キャリア体内で増殖した=随時生産された)病原数のほうが時間に比例して増加していくため同室内では次第に多くなっていくためであり、これが施設内集団感染へつながり[3]、これは気密性の高い密室および施設で空調が効いているような環境では顕著である。ゆえに通常の屋外での空気感染では学童以上、青年や成人がたとえ発症しても通常感冒のみにとどまる。

  • 2〜5日の潜伏期の後、39°C程度の発熱鼻水など
  • 通常1〜2週間で軽快
  • 呼吸困難等のために0.5〜2%で入院が必要(酸素補給、気管拡張、点滴などで支援)

診断

病原体診断は呼吸器分泌物より、PCR法による遺伝子検出か免疫クロマトグラフィー法などによりウイルス抗原を検出する。しかし、年長児の再感染では有意な検査結果を得られない場合もある。

日本では「チェックRSV」「ラピッドテスタRSV-アデノ」などの免疫クロマトグラフィー法を用いた迅速診断キットが実用化されている。

日本におけるRSウイルス感染症患者の報告数は、2011年9月までは入院患者のみが迅速診断キットの保険適用対象となっていたが、2011年10月以降は外来患者も保険適用の対象となったため[6]、それ以前の報告患者数は感染の実態を正確に反映していない[7]

治療

対症療法が主体となる。

発症抑制

重篤な下気道疾患の発症抑制を目的として、分子標的治療薬の一つである、抗RSウイルスヒト化モノクローナル抗体製剤のパリビズマブを用いる。
商品名が「シナジス」であることから、RSウイルス感染症が流行する秋から春にかけて、月1回の筋肉内注射を継続して行うため、小児科に「シナジス外来」が開設される[8]

ワクチン

「アブリスボ(ファイザー)」「アレックスビー(グラクソ・スミスクライン)」「エムレスビア(モデルナ)」の3種類が日本で承認済みであり、いずれも主に60歳以上の高齢者を対象としている[9][10]

RSウイルス感染症に対するワクチンの開発は長年続けられてきたが、グラクソ・スミスクラインが開発したアレックスビーは、60歳以上の成人を対象とし、重症RSウイルス感染症に対して94%、有症状感染症に対して83%の有効性を示す。ファイザーのアブリスボも同様に60歳以上の成人を対象とし、重症症状に対する有効性は86%、有症状疾患に対しては67%と報告されている[11]

2023年5月、アメリカ食品医薬品局(FDA)はアレックスビーとアブリスボの2種類のRSウイルスワクチンを初めて承認した[12][13]。その後、欧州や日本でも順次承認が進み、グラクソ・スミスクラインが開発したアレックスビーは2023年9月、日本で初めて60歳以上を対象としたRSウイルスワクチンとして承認された[14][15]。アレックスビーは2024年11月に日本で50 - 59歳の基礎疾患を有する成人にも適応が拡大された[16]

ファイザーが開発したアブリスボは、2023年5月にアメリカで高齢者向けとしてFDAの承認を受け[13]、同年8月にはアメリカと欧州で妊婦への適応(母子免疫による新生児・乳児の予防)も承認された[17][18]。日本では2024年1月に妊婦への適応が承認され[19]、2024年3月には60歳以上の成人への適応追加が承認された[20]

モデルナが開発したmRNAワクチン「エムレスビア」は、2024年5月に米国で承認され[21][22][23]、2025年4月には日本でも承認が了承された[10][24]

脚注

  1. ^ Virus Taxonomy: 2019 Release”. 国際ウイルス分類委員会 (ICTV). 2020年5月10日閲覧。
  2. ^ https://www.southernnevadahealthdistrict.org/ja/Health-Topics/respiratory-syncytial-virus-viral-respiratory-disease-rsv/
  3. ^ a b c d e RSウイルス感染症 国立感染症研究所感染症情報センター
  4. ^ デジタル大辞泉の解説”. コトバンク. 2018年2月12日閲覧。
  5. ^ a b RSウイルスによる気道感染症およびパリビズマブ(シナジス)について 横浜市衛生研究所 感染症・疫学情報課
  6. ^ IDWR 2012年第34号<注目すべき感染症>RSウイルス感染症 国立感染症研究所
  7. ^ 13週連続で過去5年間の最高値を更新 RSウイルス感染症が早くも流行中 日経メディカルオンライン 記事:2008年10月17日 閲覧:2012年12月13日
  8. ^ シナジス外来(季節限定) 日本医科大学付属病院
  9. ^ GSK gains approval in Japan for extended indication of RSV vaccine”. PharmaceuticalTechnology (2024年11月25日). 2025年4月24日閲覧。
  10. ^ a b RSウイルス用mRNAワクチンを了承、コロナ以外で初 厚労省部会”. 日本経済新聞 (2025年4月21日). 2025年4月24日閲覧。
  11. ^ RSV Vaccines Are Nearly Here after Decades of False Starts - Decades of failed attempts have given way to several successful vaccines and treatments for the respiratory disease RSV”. Scientific American. 2023年4月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年4月13日閲覧。
  12. ^ "FDA Approves First Respiratory Syncytial Virus (RSV) Vaccine" (Press release). U.S. Food and Drug Administration (FDA). 3 May 2023. 2023年5月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年5月3日閲覧
  13. ^ a b “US FDA approves Pfizer's RSV vaccine”. Reuters. (2023年5月31日). https://www.reuters.com/business/healthcare-pharmaceuticals/us-fda-approves-pfizers-rsv-vaccine-2023-05-31/ 2023年6月1日閲覧。 
  14. ^ GSK、60歳以上を対象としたRSウイルスワクチン「アレックスビー筋注用」発売開始のお知らせ” (2024年1月15日). 2025年4月24日閲覧。
  15. ^ RSウイルス、変わる予防…ワクチン・予防薬が相次ぎ承認、後続も開発活発”. AnswersNews (2024年4月23日). 2025年4月24日閲覧。
  16. ^ Japan expands RSV vaccine approval for adults 50-59”. Investing.com (2024年11月22日). 2025年4月24日閲覧。
  17. ^ RSV Vaccine Guidance for Pregnant Women”. CDC (2024年8月30日). 2025年4月24日閲覧。
  18. ^ ABRYSVO RSVpreF RSV Vaccine”. Precision Vax (2025年4月2日). 2025年4月24日閲覧。
  19. ^ アブリスボ®筋注用 [組換えRSウイルスワクチン(母子免疫) 製造販売承認を取得 ~RSウイルスに対する国内初の母子免疫ワクチン~]”. ファイザー (2024年1月18日). 2025年4月24日閲覧。
  20. ^ RSウイルスワクチン『アブリスボ®筋注用』発売 ~新生児および乳児、60歳以上のRSウイルス感染症をともに予防するワクチン~”. ファイザー (2024年5月31日). 2025年4月24日閲覧。
  21. ^ Mresvia- respiratory syncytial virus vaccine suspension”. DailyMed (2024年5月31日). 2024年6月16日閲覧。
  22. ^ Mresvia Respiratory Syncytial Virus Vaccine, mRNA (mRNA-1345)”. U.S. Food and Drug Administration (2024年5月31日). 2024年6月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年6月2日閲覧。
  23. ^ "Moderna Receives U.S. FDA Approval for RSV Vaccine Mresvia" (Press release). Moderna. 31 May 2024. 2024年5月31日時点のオリジナルよりアーカイブ。Accesswireより2024年5月31日閲覧
  24. ^ モデルナ製RSワクチン承認へ 60歳以上、mRNA利用”. 共同通信 (2025年4月21日). 2025年4月24日閲覧。

関連項目

外部リンク


RSウイルス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/03 01:25 UTC 版)

風邪」の記事における「RSウイルス」の解説

小児発症原因病原体として最多であり、気管支炎肺炎起こしやすい。乳幼児重症になる場合もある。冬の感染が多い。

※この「RSウイルス」の解説は、「風邪」の解説の一部です。
「RSウイルス」を含む「風邪」の記事については、「風邪」の概要を参照ください。

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