院内肺炎とは? わかりやすく解説

院内肺炎

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/07 05:00 UTC 版)

胸部x-rayによる肺炎 A: 正常 B: 右肺に異常な影がみられる肺炎

院内肺炎(いんないはいえん、Hospital-acquired pneumonia(HAP)、 nosocomial pneumonia)とは、 患者の入院後、少なくとも48〜72時間後に発症した肺炎を指す。これは市中肺炎と区別される。 通常はウイルスではなく、細菌感染によって引き起こされる[1][2]

院内肺炎は尿路感染症に次いで2番目に一般的な院内感染であり、全体の15〜20%を占める[1][2][3] 。院内感染において中で最も一般的な死因であり、集中治療室(ICU)での主な死因である[1][3]

院内肺炎の罹患によって、1-2週間のさらなる入院が必要になる[1][3]

兆候と症状

胸部X線に新規または進行性の浸潤が見られ、さらに以下に該当する[3]

  • 発熱 > 37.8 °C (100 °F)
  • 化膿性
  • 白血球増加 > 10,000 cells/μl

種別

診断

鑑別疾患は以下となる。

管理

生命予後因子(IROAD) 肺炎重症度規定因子 MRSA保有リスク
  • 悪性腫瘍または免疫不全状態
  • 酸素飽和度>90%の維持にFiO2>35%を要する
  • 意識レベルの低下
  • 男性70歳以上、女性75歳以上
  • 乏尿または脱水
  • CRP≧20mg/dl
  • 胸部X線写真の陰影が一側肺の2/3以上
  • 長期(2週間程度)の抗菌薬の投与
  • 長期入院の既往
  • MRSA感染やコロニゼーションの既往

上記IROADが3項目以上該当すれば重症群(C群)とする。2項目以下ならば、肺炎重症度規定因子による評価を行い、ひとつでも該当すれば中等症群(B群)であり、該当がなければ軽症(A群)となる。

A群の治療
セフトリアキソン(CTRX ロセフィン®)やスルバクタム/アンピシリン(SBT/ABPC ユナシン®)やバニペネム/ベタミプロン(PAPM/BP カルベニン®)などが用いられる。
B群の治療
単剤投与としてはタゾバクタム/ピペラシリン(TAZ/PIPC ゾシン®)、イミペネム/シラスタチン(IPM/CS チエナム®)、メロペネム(MEPM メロペン®)が用いられる。誤嚥や嫌気性菌の関与が疑われない場合はセフェピム(CFPM マキシピーム®)を用い、誤嚥、嫌気性菌の関与を疑う場合はセフェピムCFPM マキシピーム®)にクリンダマイシン(CLDM ダラシンS®)を併用する。原則併用療法としてはセフタジジム(CAZ モダシン®)とクリンダマイシン(CLDM ダラシンS®)の併用を行う。
C群の治療
B群の治療にアミカシン(AMK アミカシン®)やシプロフロキサシン(CPFX シプロキサン®)を併用する。
MRSAが疑われる場合
バンコマイシン(VCM 塩酸バンコマイシン®)、テイコプラニン(TEIC タゴシッド®)、リネゾリド(LZD ザイボックス®)、アルベカシン(ABK ハベカシン®)を併用する。
ESBL産出菌が分離されたとき
カルバペネム系が第一選択となる。

治療効果判定

症状の改善は通常72時間以内に認められるため、急激な増悪を認める場合以外は3日間は抗菌薬は変更しない。緑膿菌など耐性傾向が強い菌をのぞいて初期抗菌薬が有効であれば治療期間は7~10日間とされている。また治療開始後3日以上経過して改善がなければ抗菌薬の変更を考慮する。

高齢者への対応

一回投与量は体格で調節し、投与間隔は排泄機能で調節する。

補助療法

肺炎の補助療法としてはステロイド免疫グロブリンG-CSF、血液浄化法、好中球エラスターゼ阻害薬などが知られている。

ステロイド

肺炎に対しては解熱、および全身状態の改善、ガス交換機能の改善、線維化抑制、抗ショック作用、過剰なサイトカイン反応の抑制、副腎不全の改善があるとされている。ニューモシスチス肺炎での有効性は立証されている。

免疫グロブリン

肺炎に対しては液性免疫の改善、毒素やウイルスの中和、オプソニン作用による好中球の貪食作用の亢進などがあるとされている。重症感染症に対しては適正な抗菌薬を併用したうえで免疫グロブリン1回5g/day分1を3日間使用するといった方法が示されている。

脚注

  1. ^ a b c d e Mandell's Principles and Practices of Infection Diseases 6th Edition (2004) by Gerald L. Mandell MD, MACP, John E. Bennett MD, Raphael Dolin MD, ISBN 0-443-06643-4 · Hardback · 4016 Pages Churchill Livingstone
  2. ^ a b c The Oxford Textbook of Medicine Archived 2006-09-23 at the Wayback Machine. Edited by David A. Warrell, Timothy M. Cox and John D. Firth with Edward J. Benz, Fourth Edition (2003), Oxford University Press, ISBN 0-19-262922-0
  3. ^ a b c d Harrison's Principles of Internal Medicine Archived 2012-08-04 at the Wayback Machine. 16th Edition, The McGraw-Hill Companies, ISBN 0-07-140235-7
  4. ^ Table 13-7 in: Mitchell, Richard Sheppard; Kumar, Vinay; Abbas, Abul K.; Fausto, Nelson (2007). Robbins Basic Pathology: With STUDENT CONSULT Online Access. Philadelphia: Saunders. ISBN 978-1-4160-2973-1  8th edition.

関連項目

さらに読む

外部リンク


院内肺炎

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/25 02:19 UTC 版)

気道感染」の記事における「院内肺炎」の解説

詳細は「院内肺炎」を参照 入院48時間以降出現した肺炎を院内肺炎(HAP)という。基礎疾患存在耐性菌確率が高いことから治療難航しやすい。IROADによる生命予後因子肺炎重症度規定因子MRSA保有リスクによって重症度決定される重篤場合ステロイド免疫グロブリン用いられる

※この「院内肺炎」の解説は、「気道感染」の解説の一部です。
「院内肺炎」を含む「気道感染」の記事については、「気道感染」の概要を参照ください。

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