運用構想
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/27 02:35 UTC 版)
「ドイッチュラント級装甲艦」の記事における「運用構想」の解説
本級の建造当時、ドイツ(ヴァイマル共和政)の仮想敵国はポーランドとその同盟国であるフランスであった。1924年頃にポーランドは2隻の高速巡洋艦と6隻の駆逐艦、12隻の水雷艇と12隻の潜水艦による艦隊を計画しており、またフランスは装甲巡洋艦2隻と巡洋艦4隻、駆逐艦4隻と潜水艦3隻の派遣をポーランドに公約していた。この結果、ドイツ海軍は「東方の高速部隊」と「西方の低速重装甲艦隊」の二種類の敵に備えねばならなくなった。新造艦艇の排水量が1万トンに制限されている中で、ドイツ海軍は沿岸防御艦(海防戦艦)を建造するか、外洋で行動可能な重巡洋艦を建造すべきか、選択をせまられた。要求仕様の中で砲戦力と高速力を優先し、軽量化のために装甲重量を敢えて犠牲にした設計を追求したのが本級の骨子である。 折しも前弩級戦艦ブラウンシュヴァイク級のプロイセン(英語版、ドイツ語版)が代艦年数に達した。プロイセンの代艦枠を埋める艦として仮称「装甲艦A(Panzerschiff A)」として設計が開始された本級であるが、建造当初のコンセプトは「バルト海の制海権を確保する」ものであった。つまり、ソ連海軍のみならず、北欧バルト4国(スウェーデン・ノルウェー・フィンランド・デンマーク)の海防戦艦らに打ち勝って、バルト海での海上交通路を維持することを目的としており、本来ならば大西洋に打って出る性質の物ではなかった。そのため、本級の設計は試行錯誤の連続であった。 通商破壊戦はドイツ海軍の国防上の使命であり、質量ともに英仏海軍に大きく劣る中で構想上は十分考慮された。しかし、英国との全面戦争は当面不可能であり、ヴァイマル時代のドイツ軍の戦略はあくまでも陸上に主眼が置かれ、海軍は陸軍が停戦に至る局面を現出させるまでの時間稼ぎ以上の役割はなかった。 建造前の諸プランを見れば、明らかに弩級艦クラスを想定した性能が求められていることがわかる。本級は攻撃力では海防戦艦を優越し、弩級戦艦に対しても複数で当たれば勝てる程度の戦闘力が与えられている。そして、複数で当たるための迅速な展開を可能とする高速巡航能力も与えられた。 建造に至るまで数々の試案が検討された。以下はその試案と廃案の理由である。 基準排水量1万トン、38cm連装砲塔2基、15cm連装砲塔2基、8.8cm高角砲2門、舷側装甲200mm、22ノット →主砲のサイズが条約違反。 基準排水量1万トン、21cm連装砲塔4基、8.8cm単装高角砲4門、舷側装甲80mm、32ノット →21cm砲では火力が低すぎる。以後は12インチ(30.48cm)砲前後で設計。 30.5cm連装砲塔3基、10.5cm単装高角砲3門、舷側装甲200mm、21ノット →海防戦艦であり弩級艦にはあらゆる面で対抗不能。 30.5cm連装砲塔2基、15cm連装砲塔3基、8.8cm連装高角砲3基、舷側装甲150mm、24ノット →機動性は向上したが、主砲門数が公算射撃が困難な門数である。後に索敵機の搭載も考慮する。 採用案:28cm三連装砲塔2基、12.7cm連装高角砲4基、舷側装甲100mm、航空機2機と射出機1機、28ノット なお、海軍側からは本級は「政治によって造られた艦」で「弩級戦艦に砲力で、巡洋艦に速力で劣る艦」と、就役前から酷評された。そのために仮称「装甲艦B(Panzerschiff B)」(後のアドミラル・シェーア)では24cm砲9門の装甲巡洋艦として検討されたが、結局その設計もドイッチュラントを踏襲した。 しかし、完成した艦の性能に列強諸国は注目した。基準排水量1万トンの制限下(実際は超過)で、第一次大戦時のドイツ主力艦と同等の28cmを搭載する三連装主砲塔を2基も持ち、ディーゼル機関を採用したことで機関重量の軽量化を果たしたことができた。特にフランスはこの航続距離の長さを警戒し、本級がフランス本国と西アフリカ、西インド諸島との連絡線を攪乱(かくらん)することを恐れた。このためフランスはドイッチュラント級への対処を目的として、議会に戦艦「ダンケルク級」を建造する口実を得た。 イタリアはフランスの新戦艦に対抗するために、練習艦任務に就いていた弩級戦艦「コンテ・ディ・カブール級」と「カイオ・ドゥイリオ級」を当座の間に合わせとして近代化大改装を行い、次いで本命として超弩級戦艦「ヴィットリオ・ヴェネト級」2隻を建造した。イギリスは廃艦の危機にさらされていた巡洋戦艦「フッド」と「レナウン級」2隻の近代化改装を行う予算案が通った。 さらに世界中で中型戦艦のブームが巻き起こり、高速戦艦の整備に拍車がかかった。日本海軍も「列国海軍造艦術進歩の現状」の中で独立した項目を立てて紹介している。ともかく、これら一連の建艦競争の発端になるほど、本級のコンセプトは列強軍備の隙間を的確に突いたものだった。 本級は平時に北欧バルト4国やフランス=ポーランド同盟、ソ連への抑止力になることにその存在意義があった。しかし、ナチス・ドイツによる再軍備宣言により国防軍 (Wehrmacht) に改編されたドイツ海軍 (Kriegsmarine) は、全面戦争に準備不足のまま突入した。その状況下、本級の長大な航続力と強力な砲備はエーリッヒ・レーダー元帥の「巡洋艦作戦」とあいまって、戦争初期の段階でイギリスの植民地と本国の海上補給路に大きな混乱をもたらした。
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運用構想
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 08:03 UTC 版)
特攻兵器を全面的に投入していた日本陸軍・海軍では、特攻兵器に対し、資材節用と威力増大を求めていた。キ115の場合、突入撃速の増大による連合軍艦艇の対空防御火砲の突破・直掩戦闘機の突破・特攻機命中時の威力増大という複数の効果を狙い、突入時に翼を切り、速力・命中力・威力を上げる用法を採用している。海軍航空本部は、桜花、秋水と共に本機を大量配備する予定だった。
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