対空防御
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/03 05:51 UTC 版)
「建造時に航空攻撃を考慮していなかったので撃沈された」という説が見られる。しかし、同時期に建造された空母・空母艦載機や陸上攻撃機の想定戦術から見ても、当時は機動艦隊による航空勢力が戦闘の中心となることは予想されていなかった。計画当時、戦艦の使用は制空権下で行うことを前提としており、全体の性能バランスを崩すような過剰な水中防御を要求しなかった。日本海軍の防空に関する取り組みは、電子装備や戦闘システム全体のソフト的研究開発でアメリカ海軍より遅れていたが、アメリカ以外の国に劣るものではなかった。また戦争中の航空機の進歩が著しく、それに対応する対空兵装も大きな変貌を遂げており、それはアメリカ海軍のアイオワ級についても同じことである。 なお、松本喜太郎は実際の沈没状況については「われわれが予想していた以上に沈みにくかったことはたしかである」と述べている。福井静夫は、「結果からいえば魚雷と爆弾に対する防御力を強化すべきだったが、開発時の用兵思想下では極めて慎重かつ堅実に設計されており、当時の工業技術の最高標準を示した」と述べた。三菱重工と旧海軍関係者がまとめた「戦艦武蔵建造記録」では『よくぞここまで耐えたが、あえて指摘すれば間接防御の強化が必要』とし、沈没原因を復原力を失ったことによる横転としている。牧野茂は、絶対的不沈艦などありえないと前置きした上で、「味方に航空兵力が存在する戦闘で相対的不沈艦とすることは望ましく、大和型戦艦はおおむねその成果を達成した」と評した。つまり航空戦力が戦闘の中心になることは設計時に想定されていなかったが、航空防御の強化はなされており、多くの魚雷や爆弾に対する防御力も持っていた。仮にアメリカ海軍のアイオワ級戦艦が大和や武蔵と同等の航空勢力の攻撃を受ければやはり沈没は免れなかったと考えられる。
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