軍事的観点
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/31 05:23 UTC 版)
米軍再編計画の中間報告の提出後、2006年1月に琉球新報はフィリピン関係筋情報として、オーストラリアへの配転となっていた当初案(2005年6月関係国で合意したとされる)が、グアムへの振り替えされたことを報じている。 琉球新報によれば、在沖米軍のうち1万人をフィリピンへ4000人、オーストラリアへ6000人配転する案が一度固まったが、豪州配転分はグアム移駐6000人に振り替えられた。当初案が起案された理由はインドネシア・バリ島爆弾事件を起こしたテロ組織が東南アジア諸国に組織拡大を図っているという情報への対処であった。なお、フィリピン配転分は、同国の現行憲法が外国軍駐留を禁止しているため公にはされず、正式な数字にも入っていないと言う。当時米側はグアム移転経費を日本側がどれだけ負担するのかや、移転計画の期限などで不確定要因があったことを気にしていたとされる。 実際その後、日米での負担割合の交渉では日本側が負担割合の低減を求めて事務レベルでは決着しなかった。当時首相だった小泉純一郎は「まとまらないときはまとまらなくてもいい」と防衛庁長官の額賀福志郎に述べていたものの、額賀は小泉を説得して訪米の了承を取り付けた後2006年4月23日ワシントンに飛び、ラムズフェルドと防衛首脳会談を行った。ここでも交渉は一時は決裂寸前までもつれ込んだものの、アプラ基地-アンダーセン基地間の高速道路建設費10億ドルをアメリカが負担する等の譲歩案を飲ませて妥結したとも報じられている。 2006年7月11日、太平洋軍はHHF社にも依頼して具体的な移転内容を纏めた『GIMDP(Guam Integrated Military Development Plan:グアム統合軍事開発計画)』を公表した。 アメリカ合衆国会計検査院(GAO)は2007年にこのグアム移転計画に関する報告書を公表した。その中で軍事的には次のような問題点を指摘している。 (Omission)the U.S. Marines in Guam after the move from Okinawa will depend on strategic military sealift and airlift to reach destinations in Asia that will be farther away than was the case when they were based in Okinawa, Japan. For example, in a contingency operation that requires sealift, the ships may have to deploy from Sasebo,Japan, or another location to transport soldiers and equipment in Guam to the area where the contingency is taking place. In addition, existing training opportunities in Guam are not sufficient to meet the training requirements of the projected Marine Corps force. (前略)沖縄に配備されているときに比べ、グアムの海兵隊はアジアから遠くなり、アジアに進出する際には、戦略的海上輸送や空輸に依存するようになる。訓練で移動する場合も同様である。海上輸送を要する不測事態対処の場合、揚陸艦は将兵と装備を輸送するために、佐世保からグアムに移動し、それから不測事態が発生している地域に向かわなければならない。グアムでは、揚陸艦や輸送艦の停泊施設やシステム・サポートを拡大する必要性が生じる。 — 「Results in Brief」『防衛インフラ:海外基地のマスタープランは改善されているが、国防総省はグアムの米軍増強について、さらなる情報を議会に提出する必要がある』(pdf)p.7 アメリカ合衆国会計検査院 軍事ジャーナリストの福吉昌治はこのGAO報告書を引用しながら次の問題点を指摘している。 海兵隊がグアムと沖縄に分散配備されれば現状以上に揚陸艦との合流が面倒になる 司令部と部隊の分散配置は人間関係にマイナス。作戦を遂行するのは機械ではなく人間 グアムの地上部隊の訓練環境は沖縄より劣る 航空機を退避させねばならないほどの台風が発生し、雨季のスコールで飛行訓練が中止になることがある 地理的には台湾、朝鮮半島より離れ、東ティモール以外は東南アジアの主要係争地に近接する訳でもない アメリカの統治する領域であるため移転計画が完了した以降は日本側の思いやり予算による恩恵を受けられなくなる。 一方、日本本土に比較して、グアム・サイパンの訓練条件が優れていることを評価する向きもある。グアムおよび比較的近傍のサイパンでは訓練時間等の制約が日本国内より緩いからであった。なお、2005年10月に両国政府で合意した「日米同盟:未来のための変革と再編」では、グアムへの移転にあわせ、陸上自衛隊のグアムでの訓練機会の増大も盛り込まれている。 また、アメリカ海軍技術顧問を務めた北村淳によれば、海兵隊の幹部達が語った本音の内幾つかは、日本の防衛分担の軽さを苦々しく思っているというものであった。彼等に言わせれば海兵軍としての総合戦力低下のリスクがある上でそれまでより更に分散した兵力配置を選択したことを挙げ、その補完として沖縄方面への自衛隊の戦力を増強することを求める声があったと言う。 具体的には台湾有事等を想定し、グアム - 沖縄間の移動を円滑に行うための高速輸送艦の増強や、島嶼戦で必要な水陸両用部隊の装備などである。後者については当時陸上自衛隊も防衛大綱の改定を機会に目標を策定し、段階的に対ソ戦が前提だった冷戦時代の編成を改編しつつあったものの、海兵隊関係者の中には、日本本土への着上陸侵攻能力を持つ国家が事実上アメリカ以外無いことを理由に、よりスリム化、海兵隊的戦力への転化を求めるような希望があったとされる。 防衛費についても、ミサイル防衛という新たな脅威が出来したにもかかわらず総額では微減傾向を継続したまま対処してきたことを批判し、海兵隊が担ってきた抑止力を日本が防衛予算を拡大することで肩代わりするよう主張する向きがあった旨が述べられている。同種の主張を行う向きは一部自衛隊OBにもあり、防衛予算については麻生政権の際には2010年度は増加が予定され、先島諸島の防備強化も検討された(政権交代により縮減継続に転換した)。 『産経新聞』は日米の政権党でのグアムに対する認識のずれがある旨を指摘している。アメリカ側については国防次官のミシェル・フロノイ(英語版)が2010年2月に下院軍事委員会で述べた「米軍の訓練の機会と地域における2国間、多国間のパートナーシップを拡大させる拠点」という認識を紹介したのに対して、日本側の政権与党については、自民党議員の発言を根拠に「社民党にとって、グアムは米軍を追い出すための場所なのだ」と紹介している。
※この「軍事的観点」の解説は、「普天間基地移設問題」の解説の一部です。
「軍事的観点」を含む「普天間基地移設問題」の記事については、「普天間基地移設問題」の概要を参照ください。
軍事的観点
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/29 02:12 UTC 版)
インド政府はタージ・マハルはパキスタン空軍の空爆の標的になりやすいと考えており、パキスタンとの緊張が高まった時期には、タージ・マハルに布をかぶせて偽装を行っている。また、容易に偽装できるよう、中央ドームの外壁にフックが打ち込まれている。
※この「軍事的観点」の解説は、「タージ・マハル」の解説の一部です。
「軍事的観点」を含む「タージ・マハル」の記事については、「タージ・マハル」の概要を参照ください。
- 軍事的観点のページへのリンク