船
『銀河鉄道の夜』(宮沢賢治) ジョバンニやカムパネルラたちが乗る銀河鉄道に、12歳ほどの女児と6歳ほどの男児、そして彼ら姉弟の家庭教師である青年が乗って来る。青年は「氷山にぶつかって船が沈んだのです。救命ボートに乗客全員は乗れませんでした」と説明する。やがて汽車は、サウザンクロスに停車する。青年と2人の子供はここで汽車を降り、天上へ向かう。
『タイタニック』(キャメロン) 1912年4月。2千2百人を乗せた豪華客船タイタニックが、イギリスからアメリカへ向けて処女航海に出る。名家の娘ローズが船尾から投身自殺しようとするのを、貧乏画家の青年ジャックがとめ、それがきっかけで2人は恋に落ちる。夜、タイタニックは氷山に衝突し、沈没する。ローズは救命ボートに乗らず、ジャックと行動をともにし、2人は海に投げ出される。ジャックは、浮かぶ板切れの上にローズを乗せ、自らは極寒の海に力尽きて死ぬ〔*ローズは救助され、その後、百歳を越える長寿を保った〕。
『歴史は夜作られる』(ボーゼージ) アメリカの海運王ヴェイルは妻アイリーンを熱愛し、新造の客船を「プリンセス・アイリーン」と命名する。アイリーンはヴェイルの嫉妬深さを嫌い、恋人ポールとともに「プリンセス・アイリーン」に乗船し、去って行く。ヴェイルは怒り、航海時間の新記録を作る名目で、濃霧の大西洋を全速力で航行せよ、と船長に電話で命ずる。船を氷山と衝突させて、3千人の乗客をまきぞえにアイリーンとポールを殺そうと考えたのである。「プリンセス・アイリーン」は氷山に衝突し、人々は死を覚悟する。しかし隔壁が浸水を防ぎ、船は沈没を免れる。
『ポセイドン・アドベンチャー』(ニーム) 豪華客船ポセイドンが、海底地震による大津波を受けて転覆する。船は真っ逆さまになり、甲板が海中に沈んで船底が海上に出る。乗員乗客たちは、床から天井に落下して死ぬ。助かった人々も、爆発と浸水のために命を落とす。牧師スコットたち男女10人が、船底部分まで登り、救助を待とうとする。途中で3人が力尽き、スコットも皆を救うために自らの身を犠牲にして、6人が生き残る。
『クオーレ』(アミーチス)6月「遭難」 リヴァプールからイタリアへ向かう貨物船に、ともに12歳の少女ジュリエッタと少年マリオが乗り合わせる。ジュリエッタは父母に会いに行くのであり、孤児のマリオは遠い親戚の所へ送られるのだった。嵐が来て、船は沈没しかける。救命ボートに何人かが乗り移り、あと1つだけ席がある。マリオはジュリエッタをボートに乗せ、自分は船と一緒に海に沈んでいく。
『氷点』(三浦綾子)「台風」 昭和29年(1954)9月26日。旭川の辻口病院院長・辻口啓造は、京都での学会に出かけるため、青函連絡船・洞爺丸に乗船する。台風による荒波で、洞爺丸は函館港内で横倒しになり、浸水する。「救命具の紐が切れた」と言って女が泣くので、外国人宣教師が自分の救命具を与える。千数百人が水死するが、辻口啓造は砂浜に打ち上げられて助かった。
*昭和22年(1947)9月20日、青函連絡船・層雲丸の転覆→〔人数〕9の『飢餓海峡』(水上勉)。
『蟹工船』(小林多喜二) 大正末~昭和初期。漁夫・雑夫・水夫・火夫など乗組員300~400人、3千トン近い蟹工船・博光丸が、帝国海軍の駆逐艦に護衛され、ロシア領海を侵しつつ蟹漁をする。非情な漁業監督浅川の下での過酷な労働で、死者まで出るにおよび、乗組員たちは団結してストライキを決行する。しかし浅川は無電で駆逐艦を呼び、ただちに銃剣を持った兵たちが来て、ストライキの指導者9人を連行する。漁夫たちは、帝国海軍が自分たちの味方ではなかったことを知る。
『戦艦ポチョムキン』(エイゼンシュテイン) 1905年。戦艦ポチョムキンの水兵たちが反乱を起こし、艦長や将校たちを海に放り込む。ポチョムキンはオデッサの港に数日間停泊し、オデッサの市民も水兵たちと一緒に「専制政治打倒」を叫ぶ。政府軍の兵たちが現れ、市民たちを次々と銃撃する。ポチョムキンはこれに対抗して、政府軍司令部を砲撃し、破壊する。政府から反乱鎮圧のために艦隊が派遣されるが、彼らはポチョムキンを攻撃せず、合流する。水兵たちは歓呼する。
★5.船の発明。
『猿の草子』(御伽草子) 昔、黄帝が逆臣蚩尤(しゆう)を滅ぼそうとしたが、蚩尤は遥かな海の彼方にいるので、攻めることができなかった。ある時、池水に柳の一葉が浮かんでいるのを見て、臣下貨狄(かてき)が船を発明した。黄帝は船に乗って海を渡り、「れい山の岡」で蚩尤を殺した。
『自然居士』(能) 秋の末頃、嵐に散った柳の一葉が水に浮かび、その上に蜘蛛が落ちた。蜘蛛は葉に乗ったまま、風に吹かれて汀に寄った。貨狄がこれを見て、船を発明した。黄帝は船に乗って烏江という海を渡り、逆臣蚩尤を滅ぼした〔*『藤栄』(能)に同話〕。
★6.たらい舟。
お弁の滝の伝説 佐渡の海女少女お弁が、柏崎の男と夫婦約束をする。毎晩、お弁は大きなたらいに乗り、佐渡から柏崎まで49里の海上を、岬の常夜灯を目当てに通う。男はだんだん気味悪くなって、ある夜、灯火を消してしまう。お弁は方角がわからなくなり、暴風が起こって、たらい舟は転覆する。お弁の死骸は海岸の滝に漂着し、以後そこを「お弁の滝」と呼ぶようになった(新潟県柏崎市)。
『水の中のナイフ』(ポランスキー) 中年夫婦がヒッチハイクの青年をヨットに乗せ、湖で遊ぶ。夫は青年に敵意を持ち、妻は青年に好意的である。青年の持つ大型ナイフを夫が隠したので、青年は怒り、夫と殴り合う。ナイフも青年も湖に落ち、沈んで行く。夫は警察に知らせようと、泳いで岸へ向かう。その後に青年が姿を現わし、妻と青年はヨット上で関係を持つ。妻は岸辺で青年を下ろしてから、ヨットを船着場へつける。そこには、何も知らぬ夫が待っている。
『自己犠牲』(安部公房) 救命ボートに乗る「私(医者)」とコック長と2等航海士が、それぞれ「自分の肉を食ってくれ」と申し出て、議論になる。やがて2等航海士が他の2人に食料を提供すべく自殺し、ついでコック長が「私」の食料となるために自殺する。75日の漂流の後に生還した「私」は、遭難前より3キロ肥っていた。
★8.船の中の一人が、海に入る。
『古事記』中巻 ヤマトタケルの船が走水の海(=浦賀水道)を渡る時、その海峡の神が荒波を起こした。船はぐるぐる回って、先へ進むことができない。后オトタチバナヒメが「私があなたの代わりに海へ入りましょう」とヤマトタケルに告げて、海に沈んで行く。海は静かになり、船は前進可能になった〔*『日本書紀』巻7景行天皇40年是歳に類話〕。
『椿説弓張月』続編巻之1第31回 鎮西八郎為朝以下主従30余人が、2艘の船で肥後から京へむけて出帆する。しかし船は南へ流され、激しい風雨のために転覆しそうになる。為朝の妻・白縫がヤマトタケルの故事にならい、我が身を海神に献じて嵐を鎮めようと、入水する〔*それでも荒波はおさまらず、為朝は死を覚悟するが、讃岐院(=崇徳院)の神勅を受けた天狗たちが飛来し、船を進めてくれた〕。
★9.船の中から一人を選んで、海に入れる。船の外へ追いやる。
『兵庫船』(落語) 明石の浦を帆かけ船が行く。鱶(ふか)が波を逆立てて、船を沈めようとする。船に乗る人々が各自の菅笠を投げ入れると、16歳ほどの娘の菅笠が沈んだ。人々は「鱶はあの娘に魅入ったのだ」と言って、娘を海に入れようとする。船客の1人に蒲鉾(かまぼこ)屋の親爺がおり、出刃包丁をかまえて鱶を叱りつける。鱶は恐れて逃げ去る。
*手拭いを投げ入れて、海に入れる人を決める→〔影〕3bの『ふかと影』(昔話)。
『聊斎志異』巻9-348「孫必振」 孫必振が船で長江を渡った時のこと。強風と雷で船が揺れ、乗り合わせた人々は恐れた。雲の中に金の鎧の神が立ち、「孫必振」と金字で書いた牌(がく)を下に向けて示す。船内の人々は、「孫必振が天の咎めを受けているのだろう。巻き添えはごめんだ」と言って、傍の小舟に彼を追いやる。孫必振が小舟に乗り移ってふりかえると、今まで乗っていた船が転覆していた。
*海に入れる人をくじ引きで決める→〔くじ〕2aの『ヨナ書』。
★10.沈んだ舟と沈まなかった舟。
『古今著聞集』巻3「政道忠臣」第3・通巻82話 大江匡房が大宰の権帥(ごんのそち)の任期を終え、道理で取った物(=正当な所得)を舟1艘に積み、非道で取った物(=不正な所得)をもう1艘に積んで、上京した。途中で道理の舟は海に沈み、非道の舟は無事に京へ着いた。大江匡房は「世はすでに末世だ。人は正直ではだめなのだ」と言った。
船と同じ種類の言葉
「船」に関係したコラム
-
株式の投資基準とされるPBR(Price Book-value Ratio)とは、時価総額が株主資本の何倍かを示す指標のことで、株価純資産倍率とも呼ばれています。PBRは、次の計算式で求めることができ...
- >> 「船」を含む用語の索引
- 船のページへのリンク