紀伊浪(きいろ)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/17 02:20 UTC 版)
かつて不良界で近畿最弱とも云われた最南端の街“紀伊”を、たったの七人で統一し強豪にのし上げた伝説的な喧嘩師集団。メンバーは左胸に『紀伊浪紋』と呼ばれる刺青を入れている。2011年3月、チームのリーダー・八坂勝男の離脱により突如として解散、メンバーの行方も雲散霧消して以降、紀伊の街は再び弱体化し、周囲の街から狙われる存在となってしまっている。 矢沢 正次(やざわ しょうじ) 本作の主人公。23歳。かつての『紀伊浪』七番。チーム解散から5年後の現在は、地元・ワカヤマの自動車教習所で教員として勤務をしている。 中学の頃は、世間のあらゆる不条理とそれに対して何もできない自分に憤りを募らせ、髪を金髪に染め上げて喧嘩に明け暮れる毎日を送っていたが、のちに盟友となる八坂勝男との出会いを経て明るさと笑顔を取り戻す。勝男のチーム『紀伊浪』に加入し仲間と共に様々な伝説を作るが、勝男の突然のトウキョウへの上京による離脱で『紀伊浪』は解散、地元を捨てる形となった勝男に失望し絶縁してしまう。 社会人となり立派な“元ヤン”となった今は、かつての刺々しさは鳴りを潜め、『紀伊浪』のことも思い出となり平凡な日々を過ごしていた。しかし、突如舞い込んできた勝男の事故死の報せを発端として、愛する地元・紀伊の危機的状況を知り、葛藤の末に「一生変えられない己の生き方」を受け入れ、再び不良の世界に身を投ずることを決意する。その後、勝男が密かに抱いていた「不良全国制覇」の志と真意を知ることとなり、彼の遺志を継ぐ形で『紀伊浪』の復活を宣言、「不良界の天下統一」に名乗りを上げる。 ”薩摩“に乗り込んだ際に五大老の陸王が死亡し、村雨も瀕死になったことで勝男の死には何か裏があることを感じ、仕事を辞めて真相を探すことを決意するが、校長の厚意で長期休職という形にしてもらっている。 その裏表のない人柄と規格外の強さで仲間や後輩の信望を集めているが、時おり周囲が脱力するほどの天然ボケを発揮することもある。地元への愛着は強く、水戸に遠征するまでは紀伊から一歩も外に出たことが無かったほどである。喧嘩においては、相手の急所を確実に撃ち抜く「一撃必殺」の打撃を武器とする。 終盤、Pファイルを狙う才原を追って尾張に赴き、銀次や仲間たちと協力して才原を追い詰め、銀次の生き様と最期を見届けた。最終回では元々勤めてた自動車教習所の教員に復職した。 村上 辰(むらかみ たつ) かつての『紀伊浪』二番。現在は、警察官となり地元の交番に勤務している。かつては勝男と共に『紀伊浪』を結成した中心メンバーであった。 警察官になった理由は、勝男の「警察の制服が似合いそう」という何気ない一言と、いずれ『紀伊浪』が復活した時にはその力になれるという思惑があったからである。だが、“元ヤン”であることから職場では真面目な勤務態度を評価してもらえず、それどころか先輩連中から陰湿なパワハラを受けている。そんな毎日に耐えぬく中で徐々に不良であった己の過去を蔑み、「不良のままでは社会では生きていけない」と考えるようになり、街の不良を徹底的に駆逐・更生させる“死神”と呼ばれる存在になってしまった。 正次とは再会後に考え方の相違から衝突するが、その後、心の奥底に今もくすぶる『紀伊浪』への思いと「自分を貫くこと」の大切さに気づき、正次と行動を共にすることを決意する。勝男の真意を知った際には、かつてその意を汲み取れなかった自分自身を悔い、涙を流した。 硬派な見た目に反して開けっぴろげな性格をしており、いたずら好きな一面もある。苦手な食べ物は納豆で、酒に弱い。高所から飛び降りてもビクともしない強靭な肉体の持ち主で、喧嘩においては得意の柔道を生かした投げ技を使う。 薩摩にて陸王の死に居合わせたことにより、一度は“不良戦国時代”から降りる。しかし、銀次の帰郷を受けて正次と合流することを決意、仲間たちと共に最後の戦いに臨み、銀次の生き様と最期を見届けた。 真木 聖(まき ひじり) かつての『紀伊浪』六番。モデルや俳優を連想させるルックスで、クールな雰囲気を身にまとったイケメン。紀伊の人間であるが、標準語を話す。 幼少期は関東で暮らしており、覚醒剤中毒の両親の下で虐待を受け続ける暮らしを送っていた。その末に両親が金欲しさに自身を小児性愛者に売り飛ばした際、両親ごと返り討ちにした過去がある。 『紀伊浪』解散後は、いわゆるブラックビジネスに手を染めていたが見切りをつけ、稼いだ金を使ってしばらく諸外国を放浪していた。勝男の死と時を同じくして紀伊に戻り、彼の葬儀には匿名で大金を寄付して盛大な会場を用意させた。葬儀場での正次との再会と共闘を経て、仲間に加わる。 普段は飄々とした振る舞いを見せる頭脳派で「喧嘩は技能と駆け引き」と考えており、『“紀伊”の白豹』と呼ばれた程の身体能力と格闘センスが武器。しかし、ひとたびスイッチが入れば見る者を戦慄させるような「エグい喧嘩」を展開するなど、底の知れない人物。 薩摩にて陸王の死に居合わせたことにより、一度は“不良戦国時代”から降りる。しかし、銀次の帰郷を受けて正次と合流することを決意、仲間たちと共に最後の戦いに臨み、銀次の生き様と最期を見届けた。 安藤 秀政(あんどう ひでまさ) かつての『紀伊浪』五番。サングラスを掛け、サイド部分を剃り上げた特徴的なリーゼントヘアーをしている。前歯の一部が欠けている。 覚醒剤中毒の母親の元で育ち、不良となるが、そんな母親の姿を反面教師としたことと、正次たち『紀伊浪』メンバーとの絆もあって、人としての道を踏み外すことは無かった。 『紀伊浪』解散後は、「トウキョウでビッグになる」という夢を抱いて上京し、悪質訪問販売やオレオレ詐欺を生業とした会社で、そうとは知らずに営業マンとして働く。やがて会社の正体に薄々気づくものの、良心の呵責と自分の夢との折り合いをつけられずにズルズルと勤めてしまっていた。正次たちと再会後、とある場所で社長の沼瀬から覚醒剤の取引を指示されたことで遂に目が覚める。駆けつけた正次たちの助力もあって沼瀬を成敗し退社、トウキョウでの生活に終止符を打つことを決め、水戸へ向かう正次たちの一行に加わる。水戸を制し帰郷後は、新たな職を探しつつ正次の家に居候しており、ラップにハマるようになったが仲間たちからの評価は良くない。 要領は悪いが、人懐っこい笑顔と純粋な心を持つ好漢で、仲間への想いも人一倍強い。喧嘩の素質に恵まれており、闇雲に拳を振り回してもなぜか当たってしまうという「天性の当て勘」を持つ。 薩摩にて陸王の死に居合わせたことにより、一度は“不良戦国時代”から降りる。しかし、銀次の帰郷を受けて正次と合流することを決意、仲間たちと共に最後の戦いに臨み、銀次の生き様と最期を見届けた。最終回ではラッパーとしてデビューしたらしく、CDも発売している模様。 畑中 元(はたなか げん) かつての『紀伊浪』四番。坊主頭で、筋骨隆々の体躯の持ち主。スキットルに入れた酒をいつも持ち歩いている。 中学の頃よりその喧嘩の強さで一目置かれる存在であったが、純粋で朴訥すぎる性格が災いして孤立し、周囲からは喧嘩の時のみ頼られ利用され、結局は裏切られるという孤独な日々を過ごしていた。そんな経緯もあり他人に心を閉ざしていたが、勝男との出会いによって本当の仲間も得られ、『紀伊浪』解散後は「人のためになることをする」という勝男との約束もあって自衛隊に入隊した(“薩摩”の幹部である、陸王強平ともそこで出会っている)。しかし、恩人で心の支えでもあった勝男の死により茫々たるショックを受け目標を見失い、自衛隊を退職。ワカヤマに帰り、なし崩し的に悪徳代議士・神原のボディーガードに納まっていた。その後、かつての仲間であった正次との邂逅により自分を取り戻し、自らの拳で神原を成敗した後は勝男の夢を叶えるべく、正次・聖と共に薩摩に乗り込むことを決めた。 「悪は許さない」という確固たる信念を持つ、無骨な正義漢。普段は吃音で口下手だが、激昂すると饒舌な話口調に変わる。正次から「解体用の鉄球」と喩えられるほどの重く強力なパンチを持つ。 薩摩にて陸王の死に居合わせたことにより、一度は“不良戦国時代”から降りる。しかし、銀次の帰郷を受けて正次と合流することを決意、仲間たちと共に最後の戦いに臨み、銀次の生き様と最期を見届けた。 八坂 勝男(やさか かつお) かつての『紀伊浪』一番。黒髪を後ろで一つ結びにしている。早くに両親と死別し、児童養護施設『紀州つばさ園』で育つ。義侠心あふれる性格で、正次の喧嘩に助太刀したことをきっかけに親友となり、彼の母親からも実の息子のように思われていた。 『紀伊浪』結成の中心人物であり、彼が突如としてトウキョウへの上京を決めたことでチームは解散への道をたどる。その際、正次からは地元を捨てた人間と見なされ、絶縁されてしまう。それから5年が経ち、帰郷直後に真夜中の紀津峠(きつとうげ)でバイク事故に遭い死亡する。 のちに、実はトウキョウへは行っておらずキョートで『平成の五大老』の一人となっていたこと、帰郷後に『紀伊浪』を再結成し“不良戦国時代”に名乗りを上げようとしていたことが明らかとなる。真意を隠したまま紀伊を去ったのは、ヤクザとの抗争に仲間を巻き込むまいとした彼なりの配慮であった。 竜崎より預かっていた“七献宝樹”の一つである『瑪瑙の刀(めのうのかたな)』は、遺志を継いだ正次の手に渡る。 日野 銀次(ひの ぎんじ) かつての『紀伊浪』三番。長髪の持ち主で、長らく仲間たちに姿を見せていなかった。 『紀伊浪』時代はイケイケな性格とサイド部分を染め上げたリーゼントヘアの持ち主で、特に正次と仲が良かったが、いつしか”紀伊“の外に勢力を広げることに拘るようになり、近隣の高校やチームを無差別に吸収しようとしていたため、勝男とは度々衝突していた。その頃から仲間たちの前に顔を出すことも少なくなっていったと正次たちは回想しており、『紀伊浪』解散後の動向は誰も知らなかった。 それ以降の詳細は「その他の主要人物」の項を参照。
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