機動部隊捷号作戦要領
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/18 13:09 UTC 版)
第一、一般作戦方針⑴、皇国の興廃を決すべき戦局に際し、機動部隊は連合艦隊の作戦指導に基づき、神厳なる統帥に徹し全員大義に殉じ国防の完遂を期す ⑵、機動部隊の作戦は友軍(基地航空部隊など)と緊密に協力しつつ、所定の決戦正面に於いて、敵艦隊及び攻略部隊を撃滅し敵侵攻企図を破砕するにあり、このため各部隊は急速戦力の充実に努め、練成及び新兵器新戦術の実用化を促進する ⑶、決戦正面は我が本土、南西諸島及び台湾を経て比島に至る海域及び状況により小笠原群島海域を含むものとし、その決戦区分は次の通りとする ●決戦区分機動部隊は捷一号、捷二号及び捷三号の本州西半部作戦に於いて、現配備の全力を挙げて決戦に参加する。 本州東半部、小笠原群島、捷四号作戦においては機動部隊は状況の許す限り大部又は一部が参加し、パラオ方面・春地区面など枢要地攻防戦に於いては戦況によりこれに参加する場合がある ⑷、我戦備の進捗の関係上8月下旬までは敵機動部隊に対しては、特令のない限り主に第一第二遊撃部隊が作戦を実施する。この場合の作戦は連合艦隊捷号作戦要領に基づき各遊撃部隊指揮官所定とする。状況により第一遊撃部隊指揮官の統一指揮とすることもあり。9月以降の作戦は本職の指揮の下、第二四兵力部署(後述)により作戦す ⑸、各部隊は警戒を厳にして所定地点に待機し、友軍協力のもとに方策をつくして敵情偵知に努める。敵の来攻を察知し、敵の侵攻方面及びその上陸企図を有することが判明すれば、機を逸せず出撃あるいは前進基地に進出、所定の作戦に従事する ⑹、第一遊撃部隊の作戦は、機動部隊本隊と同一作戦海面に道中、またはその戦略的行動を特に統制指揮するを要する場合の他は、一般に捷号作戦要領に基づき指揮官所定とする。 第二、具体的作戦方針○捷一号、捷二号作戦イ、友軍の作戦基地航空部隊は、はじめは敵機動部隊の初動攻撃を回避しつつ、第5.6.7各基地航空部隊など、集中可能の全航空兵力を以て進出、敵攻撃部隊の近接を待ち、その上陸前日又は当日を期して敵機動部隊並びに攻略部隊への総攻撃を行う。 先遣部隊(潜水艦部隊)は全力を挙げて邀撃、守備部隊は敵を水際で撃滅するに務め、敵が上陸した場合は飛行場戦力使用を死力を尽くして阻止する ロ、機動部隊の作戦⑴、第一遊撃部隊敵が上陸企図を有することが判明次第出撃し、ブルネイ又は比島中北部に進出、補給の上敵攻略部隊の上陸時に上陸地点に到達するを目途に進発する。我基地航空部隊の索敵圏内を航行し、基地航空部隊の総攻撃に策応して敵機動部隊の攻撃を排しながら進撃、まず我を阻止せんとする敵水上部隊と決戦してこれを撃滅したのちに、上陸地点にて敵船団並びに上陸軍を攻撃撃滅する。 ⑵、機動部隊本隊第一遊撃部隊に呼応して出撃し、敵機動部隊を北東に牽制して第一遊撃部隊の突入を容易にし、敵機動部隊の一翼に対して攻撃を加える。敵補給部隊の動静が明らかになり、かつ奇襲攻撃に成算がある場合には、これを撃滅する ハ、敵が春地区およびパラオ占領後、比島南部に来攻する場合⑴、第一遊撃部隊は基地航空部隊の戦果並びに敵機動部隊の動静に応じて、好機を捉えて敵上陸地点に突入する ⑵、機動部隊本隊は第一遊撃部隊の行動と策応して、敵機動部隊の一翼、もしくは補給部隊に対して攻撃を加える。 ○捷三号作戦(略) ○捷四号作戦(略) 第三 兵力部署一、第一兵力部署 第一兵力部署部隊名指揮官兵力主要任務機動部隊本隊 小沢治三郎 第三艦隊・第一航空戦隊(雲龍欠)・第三航空戦隊・第四航空戦隊 一、訓練 整備二、特令により一部作戦参加 第一遊撃部隊 栗田健男 第二艦隊第十戦隊(一部欠)・最上、秋津洲 一、敵機動部隊及び上陸兵団撃滅二、海上機動兵団輸送又は護衛三、海上交通保護四、訓練整備 第二遊撃部隊 志摩清英 第五艦隊第十一水雷戦隊第六十一駆逐隊(涼月欠)・雪風、扶桑、山城 一、敵機動部隊及び上陸兵団撃滅二、海上機動兵団輸送又は護衛三、海上交通保護四、訓練整備 注、本部署は8月下旬までとし、特令を以て第二兵力部署に移行する 二、第二兵力部署 第二兵力部署指揮官部隊名所属部隊兵力主要任務小沢治三郎 甲部隊 機動部隊本隊 第一航空戦隊(雲龍欠) 一、敵機動部隊及び上陸兵団撃滅二、海上機動兵団輸送又は護衛三、海上交通保護四、訓練整備 大林末雄 乙部隊 第三航空戦隊 松田千秋 丙部隊 第四航空戦隊 志摩清英 第二遊撃部隊 第五艦隊・第二一戦隊・第一水雷戦隊第十一水雷戦隊第六十一駆逐隊最上 栗田健男 第一遊撃部隊 第二艦隊第十六戦隊第十戦隊(駆逐艦2欠)扶桑、山城、秋津洲 注1、特令により、8月下旬頃本兵力部署に移行す 注2、捷号作戦緊迫すれば、特令により第三兵力部署に移行す 三、第三兵力部署 第三兵力部署指揮官部隊名所属部隊兵力主要任務小沢治三郎 乙部隊 機動部隊本隊 第三航空戦隊第五艦隊・第二十一戦隊の駆逐艦2欠・第21駆逐隊欠第十一水雷戦隊第六十一駆逐隊最上 一、敵機動部隊及び上陸兵団撃滅二、海上機動兵団輸送又は護衛三、海上交通保護四、訓練整備 松田千秋 丙部隊 第四航空戦隊第二十一戦隊の駆逐艦2第十一水雷戦隊より駆逐隊1第21駆逐隊 栗田健男 第一遊撃部隊 第二艦隊第十六戦隊第十戦隊(駆逐艦2欠)扶桑、山城、秋津洲 注、本兵力部署は8月下旬以降捷号作戦に於いて、主に本隊航空機動戦実施中に適用する 四、第四兵力部署 第四兵力部署指揮官部隊名所属部隊兵力主要任務小沢治三郎 乙部隊 機動部隊本隊 第三航空戦隊第十一水雷戦隊第六十一駆逐隊最上 一、敵機動部隊及び上陸兵団撃滅二、海上機動兵団輸送又は護衛三、海上交通保護四、訓練整備 隼鷹艦長 丙部隊 航空母艦「隼鷹」「龍鳳」六三四航空隊の大部分第十一水雷戦隊より駆逐艦3 一、航空機動戦二、水上戦闘部隊推進援護 栗田健男 第一遊撃部隊 第二艦隊第十六戦隊・第十戦隊(駆逐艦2欠)扶桑、山城、秋津洲 一、敵機動部隊及び上陸兵団撃滅二、海上機動兵団輸送又は護衛三、海上交通保護四、訓練整備 待機部隊 出撃不能の各部隊艦 一、訓練整備二、待機 補給部隊 編成は別令 注、本兵力部署は8月下旬以降捷号作戦に於いて主に本隊水上戦闘実施中に適応する 第四 戦法第一航空戦隊兵力完整迄の機動部隊の戦術実施要領を概ね次の通り区分する。特令なければ甲戦法とする 各戦法区分戦術実施要領備考甲戦法 一、機動部隊本隊は集結し機動作戦を行う二、第一遊撃部隊は特令なき限り所定の作戦を実施する 第一遊撃部隊は捷一号二号作戦に於ける場合を示す 乙戦法 一、機動部隊本隊は二隊に分離し機動作戦を行う。支隊をもって牽制機動せしめ、本隊の作戦を用意にする二、第一遊撃部隊は特令なき限り所定の作戦を実施する 上記に同じ 丙戦法 一、本隊及び第一遊撃部隊は合同して機動作戦を行う二、第一遊撃部隊は特令なき限り所定の作戦を実施する 丁戦法 機動部隊本隊の中で支隊を編成して牽制機動を行い全作戦を用意ならしめる他は丙作戦に同じ 戊戦法 飛行隊の大部は陸上基地より、爾後の兵力は海上機動作戦に依り行動する 第五 航空戦(略) 第六 作戦要領一 各部隊決戦前各戦機に応ずる作戦要領 各部隊決戦前各戦機に応ずる作戦要領情況GF号令機動部隊号令機動部隊作戦要領友軍の作戦要領機動部隊我予期決戦正面に近接するを偵知する場合 捷○号作戦警戒、又は捷○号作戦及び捷△号作戦警戒 一、兵力部署の変更(要するとき)二、指示兵力の待機(要するとき)三、「捷○号作戦警戒」又は「捷○号作戦及び捷△号作戦警戒」 一、敵機動部隊の来攻を偵知し機動部隊指揮官が要すれば㋑ 本隊兵力部署を作戦に応ずる部署に変更する㋺ 本隊中、待機完成所要時間大なる部隊の待機を短縮する二、「捷○号作戦警戒」の令あれば、本隊及び第一第二遊撃部隊は次の通り作戦準備を完成させる㋑ 各隊20ノット4時間待機とし、出撃準備を完成させる㋺ 機動部隊本隊集合位置を桂島泊地とする㋩ 要すれば出撃及び警戒に更なる泊地に転錨する㋥ 出撃予定航路を所要の向に通報し要すれば一部兵力をもって内線部隊対潜哨戒に協力させる 一、基地航空部隊㋑所命の飛行哨戒実施㋺予期正面所在飛行機の分散避退㋩隣接基地航空部隊の転進準備二、守備部隊・自衛警戒を厳にし、水上哨戒線の配備を強化する 敵の攻略企図判明したる場合 一、捷○号作戦発動二、出動下令 「捷○号作戦発動」 一、本隊及び第一第二遊撃部隊㋑20ノット2時間待機とする㋺要すれば出撃に便成一に転錨し、一部兵力を以て出撃予定航路に対する内線部隊の対潜掃討に協力する二、特令を以て各部隊出撃「捷号作戦配備につく 一、基地航空部隊㋑敵機動部隊動静の偵知㋺隣接基地航空部隊の転進移動集中開始二、先遣部隊所定の邀撃配備につく 注1、捷号作戦に於いて基地航空部隊のみ発動する場合は連合艦隊司令部より、「基地航空部隊捷号作戦発動」を下令する 注2、状況により所要の号令を以て、又は特令を以て一部兵力を発動することもあり 二 決戦要領㋑本隊出撃時より、攻撃開始時に至る行動要領を別紙記載の通り予定し、出撃前航路本隊攻撃開始時位置を敵情に応じこれを決定する。攻撃開始位置到着時期は日の出前一時間と標準する ㋺乙戦法丁戦法に於いて牽制作戦に任ずべき支隊は、第三第四兵力部署による丙部隊を充当し、その行動を指示する ㋩各部隊進撃に際しては、極力対潜対空警戒を厳にするとともに割れの行動の全般的企図の秘匿に努める。但し乙戦法丁戦法に於いて牽制に任ずべき支隊は、方策を尽くして敵機動部遺体を予期作戦海面に導入するものとす ㋥本隊の作戦は、その兵力量に鑑み前半作戦に於いては航空機動戦を主とし、後半は兵力部署の変更により水上戦闘を主とする ㋭丙戦法、丁戦法にあっては接敵序列の定るところにより、本隊は母艦群として第一遊撃部隊はその前衛として機動するを例とする。第一遊撃部隊は航空戦の第一撃に策応、敵に近接機を逸せず水上戦闘に転移するものとする ㋬水上戦闘に転移したら、各遊撃部隊は指揮官所定の突入作戦を行い、母艦群は本職指揮のもとに全力を挙げてこれを援護する。状況により第二遊撃部隊を第一遊撃部隊指揮官の指揮下に入れることあり ㋣母艦の行動的と混沌のあるときは、機を逸せず行動を友軍特に基地航空部隊に速やかに通報するものとす
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