日本の女子大学(4年制)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/13 07:30 UTC 版)
「女子大学」の記事における「日本の女子大学(4年制)」の解説
日本の2年制教育機関については「女子短期大学」を参照 日本の女子大学の特色として、大きく次の二点が挙げられる。 第一に、現在日本にある国立の女子大学は奈良女子大学、お茶の水女子大学の二校、公立の女子大学は群馬県立女子大学、福岡女子大学の二校である。明治政府は女子教育の整備に消極的であり、男子のための学校設立は優先され女子のための教育機関は考慮されず後回しにした。その頃、日本では女子教育の先鞭をとったキリスト教各派の宣教師らにより、私立のキリスト教系ミッションスクールの女学校が数多く設立された。具体例として、北から順に、カトリック校では藤女子大学(札幌)、聖心女子大学(東京)、清泉女子大学(東京)、白百合女子大学(東京)、ノートルダム清心女子大学(岡山)など、一方、プロテスタント校としては宮城学院女子大学(仙台)、東京女子大学、フェリス女学院大学(横浜)、東洋英和女学院大学(横浜)、金城学院大学(名古屋)、同志社女子大学(京都)、神戸女学院大学、広島女学院大学、活水女子大学(長崎)などが代表的な女子大学として挙げられ、北から南まで全国に点在している。これらはいずれも伝統のある女子大学であるが、一般的にカトリック系の女子大学よりもプロテスタント系の女子大学の方が歴史が古い。カトリック、プロテスタントを問わず、これらキリスト教系の女子大学の多くは英文学系を中心に、古くから教養(リベラル・アーツ)系の学科が中心であり、大学の規模も概して小規模で、良家の子女用の教養型大学として機能してきた。この点は、韓国にあるアメリカメソジスト系プロテスタントミッションスクールの梨花女子大学(12学部を持つ)が、女子大学としては世界最大規模でありながら、世界的な総合大学として機能しているのとは異なっている。 このほか、女医育成のために医学部が設立された東京女子医科大学、医学系、看護系専門の聖路加看護大学、体育の専門教育を行う日本女子体育大学、東京女子体育大学もある。また、近年は日本の女子大学は語学・文学系に家政系という組合せの学部学科構成を改編し、社会科学系や国家資格(栄養士、看護師、医師、薬剤師)が取得できる実学系の学部学科(栄養学科、看護学科、医学部、薬学部、工学部)の充実が図られている。 第二に、学部・学科構成として、英文学などの語学系や日本文学(国文学)系、教育学、栄養学等を中心とした家政学の学部が多い。他には音楽系の学科なども女子大学に設置されている例が多く、また近年では、福祉や看護学、薬学系の学科を設置する女子大学も増えている。日本女子大学、大妻女子大学、共立女子大学、実践女子大学や椙山女学園大学のような良妻賢母を目指す家政学校を起源とする大学では今も家政系が中心である。 ただし、日本では少子化による大学受験人口の減少や男女共同参画などの影響を受け、女子大学が共学の大学へ改組する事例が相次いでいる。概ね名称から「女子」の文字を取って新校名とする(武蔵野女子大学→武蔵野大学、京都橘女子大学→京都橘大学、天使女子短期大学→四年制に改組して天使大学等)か、部分的な校名変更を行う(文京女子大学→文京学院大学等)場合が多いが、既に存在する大学名と重複してしまう場合には全く新しい名称を付けることもある(鹿児島女子大学→志學館大学等)。また中京女子大学(2010年度から至学館大学へ校名変更)や愛知淑徳大学はその名称のまま共学化している。また、大阪女子大学、広島女子大学、高知女子大学などのように、かつての公立女子大学の多くは近隣の公立大学との吸収合併または統合・再編で共学に移行している。近年では学習院女子大学、大妻女子大学、群馬県立女子大学、女子栄養大学、聖徳大学、昭和女子大学、藤女子大学、東洋英和女学院大学は、大学院についてのみ男女共学としている。このほかに、日本女子大学、フェリス女学院大学、学習院女子大学、白百合女子大学、東洋英和女学院大学、女子栄養大学、聖徳大学、神戸親和女子大学などでは一部の大学院研究科、大学の夜間部や通信教育課程の男女共学を認め、お茶の水女子大学のように論文博士の対象を男性にも拡大するなど、女子大学のまま部分的な共学化を行う大学が多い。 日本では、男女雇用機会均等法により女性の社会進出が促進されたが、概ねバブル期まで民間企業では男性は総合職、女性は一般職で採用し、一定年齢で結婚して退職する場合寿退社を前提とされていたため、とりわけ女子短期大学は一般職で大企業に就職しやすかったこともあり、当時の女性のライフコースに合った女子の進学先として、社会的にも女子受験生当事者やその家族にも好まれる傾向にあった。しかし、1990年代に入ると、バブル崩壊に伴う日本型雇用慣行の変化や経済のグローバル化への対応から、金融、商社、損保、航空など女子学生に人気の高い大手企業を中心に、一般職の採用を手控える動きが起こった。これに伴って一般職という職域が縮小または消滅するようになるが、このことは「女子学生の就職難」としてマスメディアでも大きく取り上げられ、女子学生にも資格取得による安定志向の影響が出始めるようになった。女子の四年制大学への進学率は1990年代半ばを境に短期大学への進学率を上回るようになるが、これは日本の企業の採用システムが変化し始めた時期とほぼ重なっている。 このような時代背景の変化等も関係し、かつては女子大学に併設されている付属の女子高から系列の女子大学にエスカレーター式で進学するのが良家の子女の定番であったが、女子大学の付属高校でも系列の女子大学への進学を希望せず共学の有名大学への進学を希望する生徒も増えている。しかし、近年マスメディアにより女子大学の就職率の良さが紹介され、その影響もあり女子大学の受験者が増加傾向にある。これは女子大学の多くが共学の総合大学とは違い規模の大きすぎない大学であり、就職支援スタッフが学生一人一人を手厚くサポートするので、きめ細かな就職支援が行いやすいという特徴がある。女子大学の中でもとりわけ都内の有名女子大学の就職率は軒並み良く、共学の有名私大よりも有名企業への就職率が高い女子大学もある。 前述の通り、女子大学の創設は、女性は教育の機会に乏しく疎外されており正式な大学に入学できなかったことが理由である(教育の機会均等、女子教育)。教育機関としての女子大学であり続けることを選択した大学の多くは、「女性エリート・リーダーの育成」を目標とした女性の主体性を押し出している(「男性の役割を女性が果たすので決断力がつく」(飯野正子 津田塾大学)「18~22歳の時期に男性が近くにいると依存してしまう」(湊晶子 東京女子大学)など)。また男女雇用機会均等法の中にも、同性間の事象に関する事柄が記載され、ジェンダー平等やLGBTなどの概念が重要になってくるなか、性別の枠では語れない部分も出てきている。「ジェンダー研究」や「女性学」に力を入れている大学が多い。
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