ジェンダー研究
ジェンダー研究
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/15 01:33 UTC 版)
どの性別の人間がBDSM実践者に多いかという研究や、BDSMの役割(トップやボトム)の割合に関する研究のような、性差やBDSMでの役割の差に関する実証的研究はあまりない。 BDSMや性倒錯に対するよくある誤解の1つとして、女性が男性よりもマゾヒズム的役割を担う傾向にある、というものがある。Roy Baumeister(2010)の研究では、女性よりも男性のマゾヒストが多く、女性優位よりも男性優位の方が少なかった。このような研究から、BDSMにおいて性別やマゾヒズム役割について決めつけてはならないということが示唆される。こうした誤解が生じた理由の一つとして、女性性に関する社会的・文化的な固定観念が挙げられる。マゾヒズムは、男性の女性化や女性の超女性的な衣装などのような活動を通じて、ある種のステレオタイプ的な女性的要素を強調することもある。しかし、こうした服従的なマゾヒズム役割の傾向を、ステレオタイプな女性役割と結びつけて解釈するべきではない。また、多くのマゾヒズムのスクリプトにはこうした傾向は含まれていない。 またEmily Priorによれば、女性マゾヒストのなかには伝統的な従属的役割を実践しているように見える人もいるかもしれないが、BDSMで女性たちは、支配的役割と服従的役割どちらにおいても、自らの性的アイデンティティを通じて個人的能力を表現したり経験したりすることができる。2013年にPriorはマゾヒストを自認する女性たちにインタビュー調査を行ない、彼女たちが自らの性的アイデンティティとフェミニストとしてのアイデンティティとの間に矛盾を感じているかどうかを尋ねた。Priorの研究によれば、彼女たちはほとんど矛盾を感じておらず、実際にはむしろフェミニストとしてのアイデンティティが自らの服従的な性的アイデンティティを支えていると感じていた。彼女たちにとって服従的な性行動や性的アイデンティティは、場合によってはむしろ個人的、性的、感情的なニーズを満足させるようなものである。Priorは、たとえ服従的な性的アイデンティティがフェミニズムの理想から外れていると思われるときでも、第3波フェミニズムはBDSMコミュニティの女性たちに、自らの性的アイデンティティを充分に表現するための場を提供していると主張している。
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