新改訳とは? わかりやすく解説

新改訳聖書

(新改訳 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/24 22:03 UTC 版)

新改訳聖書
正式名称 New Japanese Bible
略称 新改訳
旧約聖書
出版時期
1970年
新約聖書
出版時期
1965年
完全版
出版時期
1973年
著者 舟喜順一松尾武名尾耕作
原文 旧約聖書:『ビブリア・ヘブライカ・シュトットガルテンシア』(ドイツ聖書協会)及び『ビブリア・ヘブライカ・クインタ』(ドイツ聖書協会)
新約聖書:『ネストレ・アーラント(校訂本第28版)』(ドイツ聖書協会)及び『ギリシア語新約聖書(第5版)』(聖書協会世界連盟)
対象年齢 成人
改訂版 第2版(1978年)、第3版(2003年)、2017(2017年)
出版社 いのちのことば社
著作権状態 いのちのことば社、新日本聖書刊行会
部数 1000万部以上
ウェブサイト 新日本聖書刊行会
はじめに、神が天と地を創造された。
神は、実に、そのひとり子をお与えになったほどに世を愛された。それは、御子を信じる者が、ひとりとして滅びることなく、永遠のいのちを持つためである。

新改訳聖書』(しんかいやくせいしょ)は、日本聖書刊行会より発行された聖書で、原語(ヘブライ語ギリシア語)からの日本語翻訳聖書のひとつ。旧約聖書新約聖書の両方を含み、カトリック教会第二正典と呼ぶ外典を含まない66巻の書からなる。1970年初版発行、1978年第2版発行、2003年に差別語等を見直した(例えば「らい病」をヘブライ語の原音に近い「ツァラアト」に変更した)第3版が刊行された。また、全面的な改訂作業を行い、新日本聖書刊行会訳『聖書 新改訳2017』として2017年10月にいのちのことば社より発行された[1][2][3]

概略

新改訳聖書は新改訳聖書刊行会が翻訳、日本聖書刊行会が発行、いのちのことば社が発売した。

日本聖書刊行会では、新改訳の特徴として、「聖書を『誤りなき神のみことば』と確信する42名の翻訳者による委員会訳」などとしている。また、新改訳聖書刊行会では、特徴として、「聖書を『誤りなき神のみことば』と告白する福音主義の立場に立つ委員会訳であること」、「特定の神学的立場に傾かないで、言語的に妥当であるかを尊重すること」などとする。

日本聖書協会刊行の口語訳新共同訳などと並んで、日本において多く用いられている代表的な訳である。1970年発行以来30年間で、1千万冊を超える新改訳聖書が頒布された。「新改訳」とは文語訳聖書の「改訳」に対する敬意から付けられた名前である。

特徴

  • 文語訳、口語訳聖書の伝統的固有名詞を継承している。
  • 翻訳者の解釈を理解しやすくするために欄外注に他の書簡の参照箇所や、<別訳><直訳><異本><原語>(ヘブル語アラム語ギリシア語)等を明記している。
  • 敬語の簡素化がはかられている。
  • 旧約聖書において、神の御名を太字の「」で表し、その他の通常使われる「主」と区別している。
  • 「燔祭」「素祭」などを「全焼のいけにえ」「穀物のささげ物」など、わかりやすい表記にしている。
  • 新約聖書はネストレの校訂本二十四版、旧約聖書はキッテルのビブリア・ヘブライカ七版に基づく、42名の翻訳者による翻訳である。
  • 新改訳聖書の正式英語名はNew Japanese Bibleとなっている。
  • 本文批評は新アメリカ標準訳に準拠することになっていたが、旧約は日本語訳の方が早く進んだため、マソラに沿った[4]
  • 英語訳聖書の新国際版聖書 (NIV) とのバイリンガル聖書が発行されている。ただし、NIVから訳されたわけではない。
  • 第一人称、平仮名の「わたし」は神とイエスに用い、漢字の「私」をその他の人間に用いることで、聖書本文における会話がどちらの言葉かを判別できるようになっている。

経緯

戦後、日本聖書協会より発行された口語訳聖書の翻訳方針が、やや自由主義神学的であったことから、福音派を中心に、神やキリストの権威を弱めているという不満が起こった。しばしば見られる「であろう」という表現は曖昧であるという批判や、またこのリベラルな傾向は当時発行された英語聖書の改訂標準訳聖書 (RSV) に追随するものだという批判もあった。そのため福音派の団体である日本プロテスタント聖書信仰同盟 (JPC) は代表を送り、説明と訂正を求めたが、当時の日本聖書協会総主事都田恒太郎は応じなかった。この経緯から聖書信仰に立つ聖書学者の翻訳になる新改訳聖書が発行された。

1961年11月21日、新改訳聖書の翻訳のために、福音的な諸教派の協力を要請して、新改訳聖書刊行協力会が28名によって形成された。

1962年K.マクビティ、堀川勇らによって、新改訳聖書刊行会が組織された。1962年から翻訳作業が開始され、1965年に新約聖書が、1970年に旧約聖書が出版された。新約の翻訳主事は松尾武で、旧約の翻訳主任は名尾耕作、編集主事は舟喜順一であった。発行に際して新アメリカ標準訳聖書(NASB)を発行する米国ロックマン財団(The Lockman Foundation)の財政的支援を受け、翻訳方針もNASBを踏襲するものであった。ロックマン財団の献金額は総必要額の46%におよび、献金は1966年8月まで行われた。

歴史

  • 1962年 新改訳聖書翻訳開始。
  • 1965年5月に日本聖書刊行会設立。
  • 1965年11月 新約聖書完成。
  • 1970年6月 旧約聖書完成。
  • 1978年 改訂第2版発行。
  • 2003年 改訂第3版発行。
  • 2017年 第4版にあたる新改訳2017発行。

著作権上の争議

発刊後、ロックマン財団と新改訳聖書刊行会の間で著作権上の争議が発生した。ロックマン財団は自身に著作権があると主張し、また実際に「(c)Lockman1963, 1965, 1968, 1970」という表記が1987年まで続けられていた。裁判は1996年に和解が成立し、日本側がロックマン財団に多額の和解金を支払い、和解金支払い完了まではTEAM(宗教法人ゼ・エバンゼリカル・アライアンス・ミッション日本同盟基督教団))が、2003年以降2007年末まではいのちのことば社が著作権を持ち、新改訳聖書刊行会が著作者人格権を持つことが確認された。

ちなみに、2016年時点では、1965年に発行の新約聖書初版については、著作権が切れている。

原訳者と研究員

新約聖書

旧約聖書

国語顧問

新改訳2017翻訳編集委員会

出典:「法人の概要」 - 一般社団法人日本聖書刊行会

第一期翻訳編集委員

(2011年4月1日 - 2013年3月31日)

旧約

新約

第二期翻訳編集委員

(2013年4月1日 - 2016年3月31日)

翻訳編集委員長

旧約主任

新約主任

日本語主任

翻訳編集委員

ISBN

2017

小型スタンダード版
ISBN 978-4-264-03725-5
中型スタンダード版
ISBN 978-4-264-03721-7
大型スタンダード版
ISBN 978-4-264-03727-9
大型版
ISBN 978-4-264-03730-9
バイリンガル[旧新約] (A5、標準英語訳対照)
ISBN 978-4-264-04019-4
ISBN 978-4-264-04026-2
バイリンガル[新約] (A5、標準英語訳対照)
ISBN 978-4-264-04020-0
ISBN 978-4-264-04027-9

第三版

バイブル mini (B7) 引照・注なし

新約聖書 詩篇・箴言付もあり。

B-40bn ブラウン
ISBN 978-4-264-03203-8
ISBN 978-4-264-02577-1
B-40iv アイボリー
ISBN 978-4-264-03205-2
ISBN 978-4-264-02579-5
B-40bg ベージュ
ISBN 978-4-264-03204-5
ISBN 978-4-264-02578-8
BK-49cy 革装チャイ
ISBN 978-4-264-02582-5
BK-49ch 革装チョコ
ISBN 978-4-264-02581-8

小型 (A6) 引照・注付

BI-30
ISBN 978-4-264-03206-9
ISBN 978-4-264-02003-5
BIK-39 折革装
ISBN 978-4-264-03202-1
ISBN 978-4-264-02006-6

中型 (B6) 引照・注付

BI-20
ISBN 978-4-264-03207-6
ISBN 978-4-264-02001-1
BI-20E えんじ
ISBN 978-4-264-03208-3
ISBN 978-4-264-02018-9
BIK-29 折革装 黒
ISBN 978-4-264-03209-0
ISBN 978-4-264-02005-9
BIK-29E 折革装 えんじ
ISBN 978-4-264-03415-5
ISBN 978-4-264-02017-2

大型 (A5) 引照・注付

BI-10
ISBN 978-4-264-02002-8
BIK-19 折革装
ISBN 978-4-264-02004-2

大型 (A5) 引照・注なし

B-10
ISBN 978-4-264-02000-4

目的志向

B-34 文庫
ISBN 978-4-264-02580-1
バイリンガル (A5、新国際訳対照)
ISBN 978-4-264-02318-0
注解・解説つき
注解・索引・チェーン式引照付 (A5)
ISBN 978-4-264-02382-1
BIBLE navi (バイブルナビ) 解説・適用付 (B5)
ISBN 978-4-264-02871-0
FIREBIBLE (ファイアーバイブル) (B5変形)
ISBN 978-4-88703-122-7

旧約聖書 (A6)

OI-30
ISBN 978-4-264-02016-5

新約聖書

SA-20 伝道版 (B6)
ISBN 978-4-264-02011-0
SS-20 聖画入 (B6)
ISBN 978-4-264-02010-3
EW-30 和英対照 (A6、新欽定訳)
ISBN 978-4-264-02015-8
SH-67 大型 (A4) 分冊 並装
ISBN 978-4-264-02019-6
SH-68 大型 (A4) 分冊 上製
ISBN 978-4-264-02575-7
新約聖書 詩篇付
SP-30 小型 (A6)
ISBN 978-4-264-02009-7
SP-20 中型 (B6)
ISBN 978-4-264-02008-0
SP-10 大型 (A5)
ISBN 978-4-264-02007-3
新約聖書 箴言付
SC-20 記念用 (B6)
ISBN 978-4-264-02576-4
ISBN 978-4-264-02014-1
新約聖書 詩篇・箴言付
SPP-40 バイブル mini (B7)
ISBN 978-4-264-02583-2
ポケット新約聖書 (B7)
ISBN 978-4-264-02012-7
革装 (B7)
ISBN 978-4-264-02013-4

第二版

スタンダード版

NBD-22 黒
ISBN 978-4-264-01118-7
NBD-22E 赤
ISBN 978-4-264-00445-5
NBD-22W 白
ISBN 978-4-264-00447-9
小型スタンダード版
NBC-31 聖地
ISBN 978-4-264-00818-7
NBC-31B バラ
ISBN 978-4-264-00819-4
折革装スタンダード版
NBK-29B 黒
ISBN 978-4-264-00459-2
NBK-29E 赤
ISBN 978-4-264-00461-5
NBK-29W 白
ISBN 978-4-264-00460-8

チェーン式

注解・索引・チェーン式引照付 (A5)
ISBN 978-4-264-00488-2

ホームバイブル

NBK-05 革装
ISBN 978-4-264-00462-2
NBK-06 革装
ISBN 978-4-264-00719-7
NBS-05 合成革装
ISBN 978-4-264-00449-3

大型 4分冊セット

NBH-62
ISBN 978-4-264-00661-9

旧約聖書

NOC-31
ISBN 978-4-264-01127-9
旧約聖書分冊
NBH-64 大型聖書分冊1 創世記〜ルツ記
ISBN 978-4-2640-0834-7
NBH-65 大型聖書分冊2 Iサムエル〜雅歌
ISBN 978-4-264-00835-4
NBH-66 大型聖書分冊3 イザヤ書〜マラキ書
ISBN 978-4-264-01531-4

新約聖書

NNA-22 伝道版
ISBN 978-4-264-00456-1
NNP-22 絵入り
ISBN 978-4-264-00451-6
EWB-40 英和対照
ISBN 978-4-264-01335-8
NPPK-49 折革装
ISBN 978-4-264-00463-9
NBH-67 大型
ISBN 978-4-264-00837-8
新約聖書 詩篇付
NPD-21 黒
ISBN 978-4-264-00453-0
NPD-21E 赤
ISBN 978-4-264-00605-3
NPC-35R 赤
ISBN 978-4-264-00676-3
NPC-35WG グレー・ビニール装・小見出し付
ISBN 978-4-264-00888-0
新約聖書 詩篇・箴言付
NPP-45 紺・ビニール装・小見出し付
ISBN 978-4-264-00455-4
水色・ビニール装・小見出し付
ISBN 978-4-264-01533-8

脚注

  1. ^ 生まれ変わる聖書・新改訳 ニュースレター Vol.1”. 新日本聖書刊行会 (2015年5月15日). 2015年11月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年1月29日閲覧。
  2. ^ 聖書 新改訳2017 ニュースレター Vol.2” (2015年11月). 2015年11月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年1月29日閲覧。
  3. ^ 聖書 : 引照・注付 新改訳2017国立国会図書館サーチ。2025年5月15日閲覧。
  4. ^ 新改訳聖書刊行会『聖書翻訳を考える(続)』

参考文献

関連文献

  • 『聖書の和訳と文体論』藤原藤男 キリスト新聞社、1974年 ISBN 4-87395-063-5
  • 『聖書翻訳を考える-「新改訳聖書」第三版の出版に際して』新改訳聖書刊行会 いのちのことば社、2004年10月 ISBN 4-264-02315-7

関連項目

外部リンク


新改訳

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/01/28 08:24 UTC 版)

松尾武 (牧師)」の記事における「新改訳」の解説

1959年日本プロテスタント宣教百年記念聖書信仰運動契機として、『口語訳聖書』 (1955年日本聖書協会刊行) に代わる新し聖書求める声が高まった1960年2月33日に創立され日本プロテスタント信仰同盟は、聖書翻訳特別委員設けて15人の委員選出した委員議長松尾武選ばれ1960年4月8日第1回会議学生キリスト教会館で行われた東京恩寵教会1960年4月25日行われた第2回会議において「新し翻訳聖書要望する教派団体呼びかけて、その代表者たちと合同会議開き聖書翻訳ついての具体的な立案をすること」が決められた。 1961年2月20日松尾常葉隆興堀川勇ら聖書翻訳特別委員の代表は、日本聖書協会の総主事都田恒太郎らと日本聖書協会会見した日本聖書協会は、学問的な根拠があればとの条件会見応じた松尾が「口語訳はどのテキスト使用されたか」と質問したが、日本聖書協会メンバー誰も答えられず、学問的な対話はできなかった。また、改訂要請にもまったく答えなかったので、別の新し聖書翻訳目指すことになった1961年3月に、米国のアムプリファイド聖書発行者であるロックマン財団代表者から、新アメリカ標準訳聖書 (NASB) と並行する日本語訳聖書刊行打診受けたK・マクビティが、『詳訳新約聖書』の翻訳業携わっていた松尾舟喜順一堀川勇、牧瀬雄吉が、3月27日から山晴館にこもって検討したその結果新し日本語訳聖書計画立案することになった1961年9月25日松尾舟喜順一羽鳥明堀川勇、牧瀬雄吉らがコミッショナーになり、ロックマン財団との間に協定結んで新改訳聖書刊行委員会設立した堀川新改訳聖書刊行委員会の総主事専任して、1961年『新改訳聖書』翻訳準備のために、協力団体形成翻訳者選定のために、新改訳聖書刊行協力会創立された。常葉隆興会長になった松尾は、新約翻訳主任選ばれ、『ガラテヤ人への手紙』の翻訳者選ばれた。1962年8月20日翻訳作業開始された。 松尾1967年3月に新改訳の完成見ない死去する常葉隆興名尾耕作らが遺志受け継ぎ1969年10月完成した

※この「新改訳」の解説は、「松尾武 (牧師)」の解説の一部です。
「新改訳」を含む「松尾武 (牧師)」の記事については、「松尾武 (牧師)」の概要を参照ください。

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