万朶隊全滅とは? わかりやすく解説

万朶隊全滅

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/23 07:57 UTC 版)

万朶隊」の記事における「万朶隊全滅」の解説

12月18日佐々木最後となる9回目出撃命令下された佐々木出撃するカローカン飛行場には司令官富永見送り訪れているが、富永日ごろ粗食と、特攻隊を見送る精神的負担デング熱による高熱で、心身ともに消耗しきったやつれたであった富永出撃する作戦機見送りに非常な熱意示して何よりも優先しており、この日も体調不良構わず見送りにやってきたものであった富永取材する従軍記者に「新聞記者諸君佐々木幽霊じゃからのう。そのつもりで話を聞いてくれ」などと笑顔軽口たたいていたが、富永に対して悪感情抱いていなかった佐々木はその軽口富永好意受け取った。この日は「鉄心隊」の残存1機(長尾熊夫曹長) との出撃となったが、長尾機は、操縦誤って第4航空軍司令部の列に突っ込んだ富永らはあやうく難を逃れたが、その様子を見ていた若い搭乗員らは「あの爆弾参謀消し飛ばせよかった」と報道班員同盟通信社記者口々に呟いていたという。記者たちはこれまでも、特攻隊員と酒を呑んだときに「参謀部隊長信用出来ぬ、ただ(富永司令官だけは俺たち気持をわかつてくれると思ふ」という話を聞いており、富永対す信頼厚さ参謀指揮官対す不信感実感していた。 やがて、佐々木出撃時間となり、離陸する佐々木富永軍刀振りかざしながら佐々木がんばれ佐々木がんばれ。」と激励した今まで富永温情のある扱い受けていると考えていた佐々木は、わざわざ軍司令官自分激励してくれている素直に感激してキャノピー開けると富永向けて敬礼している。佐々木最後まで富永に対して悪意持っておらず、2015年鴻上尚史取材に対して「(富永に対して悪い印象は)ないんですよ。握手している」と答えている。結局佐々木最後の出撃となったこの日は、機体エンジン不調により引き返したが、カローカン飛行場帰還したときには富永はおらず佐々木そのあと高熱出して寝込むこととなった佐々木引き返したが、「鉄心隊」の長尾機はミンドロ島まで飛行し上陸作戦支援中のPTボート隊に突入して「PT-300」を撃沈したこの頃佐々木マニラ設けられ特攻隊員寝起きする「航空寮」と名付けられ兵舎生活していたが、そこに飛行第75戦隊から特攻隊員志願した若桜隊」の池田伍長らが入ってきた。第75戦隊これまで各地戦場通常戦術で多大な戦果挙げてきており、特攻志願したとは言え池田らの心境は複雑で、隊員同士毎日死生観について語り合っていたという。池田佐々木数度特攻出撃しながら通常攻撃戦果挙げて帰還していることを知ると、毎日佐々木部屋通って佐々木話し込むようになったが、佐々木は「死んで神様になっているのに、何で死に急ぐことがあるか、生きられれば、それだけ国のためだよ、また出撃するさ」とたんたんと話していたという。 フィリピン到着時に不時着し重傷負っていた沢邦夫軍曹も「万朶隊」に復帰しており、12月20日に、「若桜隊」と「万朶隊」の佐々木沢に出撃命じられたが、佐々木高熱下がっておらず、出撃できる体調ではなかった。その様子を見たある将校が「貴様仮病だろう」と佐々木言い放ち、それを聞いた佐々木が「軍神生かしておけないものなぁ」と寂しそう笑っているのを池田は目にしたが、そのことによって池田特攻重圧から解き放たれて「命のある限り戦おう」と心に誓ったという。結局、この日は佐々木池田出撃することなく沢が「万朶隊最後の1機として「若桜隊」の余五郎伍長いっしょに九九式双発軽爆撃機」で出撃した。しかしわずか2機の出撃であったので、この日アメリカ軍損害はなく、沢も未帰還となり、この出撃陸軍期待背負って編成された「万朶隊」は戦果挙げるともなく事実上全滅した。 「若桜隊」の池田12月21日に3機編隊組んで出撃レイテ湾中型軍艦目指し急降下したが、ここで心が動揺してそのまま突っ込まず普段訓練してきたときのように約500mの高度で爆弾投下し機首引き上げるとそのまま戦場退避して帰還している。後日戦隊長土井からの事情聴取に「思わず訓練時のように爆弾投下ボタン押してしまった」と釈明したのち、池田身柄第4航空軍司令部預けられたが、富永池田再出撃命じことはなく、池田無事に終戦迎えている。 同じ12月21日には、隼で編成された「殉義隊」が、ミンドロ島への物資輸送任務終えてレイテ島帰還途中輸送艦隊を捕捉した。殉義隊の「隼」1機は、戦車揚陸艦「LST-460」上空旋回したのち、45度角度急降下すると、あたかも甲板上にいた艦長J・B・マックドレン大尉真っすぐ目指してくるような針路突入した。マックドレンが慌てて伏せると、「隼」はその上通り過ぎて艦橋命中した命中する直前に「隼」を操縦していた特攻隊員機体から投げ出されて、遺体一部艦上落下してきたという。爆弾爆発火災生じて火だるまとなったアメリカ兵泣き叫ぶといった地獄絵図になったが、まもなく艦は沈んでいったので、多くアメリカ兵海上投げ出された。「LST-749」には2機の「隼」が突入、その躊躇ない突進乗艦していたアメリカ軍士官は「特攻機真っすぐ突っ込んできた。その態度には、ためらいなどの気配は全然見られなかった。そのパイロットはただ真っすぐ突進してきた」と驚愕している。「LST-749」も沈没し、2艦で100名以上のアメリカ兵戦死し多数負傷者出た12月30日には先日フィリピン到着したばかりの「進襲隊」が出撃した。「進襲隊」は熊谷飛行学校宇都宮飛行学校教官助教官ばかりを集めた精鋭部隊であり、第4航空軍期待大きかった富永は「菊水隊」での失敗反省活かして出撃迎撃戦闘機避けるために日暮れとした。「進襲隊」の「九九式襲撃機」は、指揮官久木元延少尉機以下わずか5機での出撃であったが、進襲隊はその高い操縦技術遺憾なく発揮して巧み攻撃でわずか4分間という間に4隻のアメリカ軍艦船次々と突入したまた、突入する際も訓練通り艦艇の重要部分に突入しており、駆逐艦「ガンズヴォート(英語版)」には艦の中央部分命中し船体にかつて応急修理要員経験したことのないレベル重篤損傷被り適切なダメージコントロール沈没逃れるのがやっとであった水雷母艦オレステス魚雷艇補給艦) (英語版)」にも中央部分突入し、艦は大破炎上して航行不能となり大量死傷者出し、どうにか沈没逃れると、他の艦に曳航されてアメリカ本土帰還し以後終戦まで戦線復帰することはできなかった。また、航空燃料40,000バレルディーゼル油23,000バレル満載したタンカーポーキュパイン艦隊給油艦)(英語版)」に対しては、少しでも特攻効果上げるため、まずは上甲板爆弾投下したあと、そのまま機体ごと突入した爆弾爆発喫水線大穴開けると、特攻機航空燃料により発生した火災が「ポーキュパイン」の積載燃料引火し、あまりの猛烈な火災となって消火することが困難となったので、「ポーキュパイン」は大量燃料積載したまま処分された。駆逐艦プリングル」にも大きな損害与えて修理のために戦線離脱させたが、「プリングル」はこのあと沖縄戦特攻によって沈没している。この4隻合計アメリカ軍243名もの大量死傷者を被らせたが、出撃5機のうち4機命中という高い有効率であって、「進襲隊」は期待違わぬ大戦果を挙げた。さらに、富永は「進襲隊」の高い操縦技術期待して特攻出撃前の12月27日飛行場攻撃通常任務命じていたが、その攻撃ミンドロ島ヒル飛行場容量1,000バレルのガソリンタンクの爆破にも成功しており、大量燃料損失この後連合軍進攻計画大きく狂わせたが、マッカーサーによれば、特に大量航空燃料損失が、航空作戦大きな影響及ぼしたということであったミンドロ島で、富永指揮する特攻機多大な損害被った司令官のストラブルは「自殺機がひとたび突撃開始したら、猛烈かつ正確な射撃以外は、何ものもこれを阻止することはできないこうした種類航空攻撃と戦うためには、緊密な相互支援が必要である」と報告している。

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