インターネット検閲とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > ウィキペディア小見出し辞書 > インターネット検閲の意味・解説 

ネット検閲

(インターネット検閲 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/26 09:09 UTC 版)

国境なき記者団によるネット検閲の評定
  青:検閲なし
  黄:多少検閲あり
  赤:国境なき記者団の監視対象(厳しい検閲を実施)
  黒:大変厳しい検閲を実施

ネット検閲(ネットけんえつ、: Internet censorship)は、インターネットイントラネットウェブ電子メールなどのネット上の情報を対象とした政府機関による検閲を指す。エドワード・スノーデン等の情報提供により、チョークポイント海底ケーブルが収束しているのを利用し地球規模で検閲が行われていることが分かっている。検閲にかかった情報は、ウェブサイトへの掲載を禁止・削除するかウェブサイトをブロッキングして拡散を防ぐ。

概要

オフラインでの検閲とは別に扱われることが多いが、問題点は同様である。主な違いはオンラインの方が国境を容易に越えやすい点にある。ある情報を禁止する国の住民は、別の国のウェブ上でその禁止されている情報を得られる場合がある。逆に、ある資料を管理する政府が市民がその資料を閲覧するのを妨げる場合には、その政府が世界中のインターネットサイトを監視するなどして外国人をも制限する効果を持つことがある。

しかしながら、インターネットの基本的な分散的な技術によりインターネット上の情報の検閲を達成するのは非常に困難である。

国連の見解

2016年7月、国連人権理事会は市民がインターネットにアクセスする権利は基本的人権だとする決議を採択した。主に表現の自由をめぐって、オフラインで保障されている権利は当然ながらオンラインでも保障されるべきとの国連のスタンスが、同決議により改めて強く示された。

この決議は法的拘束力を持たないため、宣言の内容を強要することはできない。しかし、インターネットへのアクセスを故意に規制している国に対する牽制になるだろうと説明があった[1]

オンラインで配信されている情報へのアクセスを政府が意図的に遮断したり妨害したりする措置を非難するという条項に対しては、複数の国が猛反対。その文言を削除すれば、同決議に賛同してもよいとの姿勢が示された。反対した国は中国ロシアサウジアラビア南アフリカインドなど[2]

よくモニター監視されるウェブサイト

当然ながら政府からの公式発表は少ないが、新聞マスコミなどでの事件報道を参考にすれば、次のようなサイトがモニター監視の対象になっていると思われる。

各国の状況

アラブ首長国連邦でのネット検閲の例。政府がアクセスを禁じているウェブサイトの閲覧がブロックされている。

ネット検閲の程度は国によって大きく異なる。民主主義国では一般的に検閲が行われることは少なく、あっても犯罪や暴力、反社会的行為に関わる情報の取り締まりといったもののみに限られ、国民は情報にアクセスし、公の議論に参加することがおおよそ可能である。対照的に、全体主義に代表される自由権が限られた政治体制を執る国家では言論を統制し、反対意見を抑圧するためにネットへのアクセスに厳しい制限を課す傾向が強い。特に選挙や抗議活動などの重要なイベントの際には、検閲をコミュニケーションを制限し、政治や社会問題に関する議論を妨げる手段として利用している。

「インターネットの敵」

2006年11月、国境なき記者団はネット検閲反対のキャンペーンを立ち上げるのにあたって、インターネットの検閲や接続遮断をしているという「インターネットの敵[注 1]13カ国を発表した。その13カ国は次の通りである。

なお、ネット検閲を実施している国家はここで挙げられたものが全てというわけではない。

検閲事例

政府の公権力により、インターネット上での情報開示に検閲が行われている事例は次のとおり。

  • 中華人民共和国では「网络审查」(網絡審査)という名目でネット検閲が行われ、「グレート・ファイアウォール」と呼ばれるシステム(中国のネットと国外の「反中国的サイト」とを隔てるファイアウォール)を設け、世界で最も大規模なサイバー検閲システムを構築した[3][4]サーチエンジンでも特定の言葉の検索結果に対してフィルタリングが行われる(→グレート・ファイアウォール及び中国のネット検閲を参照)。
  • オーストラリアニュージーランド教育観点。オーストラリアは汚職をもみ消そうともした。
  • ミャンマーでは個人によるウェブ接続やメール送信は認められず、検閲済みのサイトで構成されたミャンマー・ワイド・ウェブなるものが設けられている。現在は企業に一部開放しており、メールは政府による検閲が行われている。2021年にはミャンマー軍によるクーデターに対する抗議活動が行われる中、インターネット接続が一時遮断されTwitterFacebookInstagramなどが利用できなくなった他[5][6][7]Wikipediaも検閲された[8]
  • キューバでは許可のないインターネットの使用は違法とされている。許可を得られる例の大半は医師であり、医師の近隣住民が海外へのメール送信を依頼するが、キューバ政府はこれを制限しようとした。
  • チュニジアでは(ポルノサイト、メールサービス、転送サービスなど)数千のウェブサイトがブロックされ、FTPP2Pの利用が禁じられている。(技術的にプロキシに利用されるポートが封鎖されている。)
  • シリアでは政治的な理由から幾つかのウェブサイトの閲覧を禁止しそれらにアクセスした市民を逮捕した。
  • 大韓民国では「情報通信網利用促進及び情報保護等に関する法律」により政府・情報通信倫理委員会がISPに対して強大な監督指導権限を有しており、朝鮮民主主義人民共和国に共感的と看做される様々なサイトへの接続を認めないように命令した。この他、日本の韓国支配を肯定したり、竹島(韓国名・独島)が日本の領土であることを肯定する記述を含む21の「親日サイト」や5つのコミュニティが「反愛国的」との理由で強制的に削除されたケースも存在する[9][10][11]。2012年8月下旬に大韓民国放送通信委員会が親日サイトを制裁することを決め、削除や接続遮断などの言論統制を行っている。2012年9月5日には親日サイトを作った13歳の少年が逮捕された[12]
  • イスラム国家の多くではインターネット接続は政府の管理下にあり、「不道徳」とされるサイトのアクセスをブロックしたプロキシを経由して行われる。この中には露骨なポルノサイトのみならずセクシャリティなどに関する議論、議論が行われるブログのホスト、女性の下着のネット販売を含む女性の裸に関する記述のあるサイトなども含まれ、またイスラム教と他の宗教を比較するサイトや政治的に微妙であったり、議論のある話題などもブロックされている。
  • トルコでは、「政治的な理由」によってYouTubeなどのGoogle関連サイトを含む、約3700の外部サイトへのアクセスが政府によってブロックされている[13]Googleグループ#ブロックも参照。 さらに2013年6月、反政府抗議運動を抑え込むためにTwitterとFacebookまで利用制限するに至った[14]。2017年4月には、ウィキペディアへのアクセスも完全に遮断した(2017年トルコのウィキペディア閲覧制限[15]
  • アラブ首長国連邦では国内単一のプロバイダであるエティサラットを通じてセキュアコンピューティングの手法で(すべてのサイトが62のカテゴリに分類され)強制的に検閲されポルノや政治的に微妙なものなど、UAEの道徳観に反すると思われるものはブロックされる。
  • シンガポールではメディア開発庁(MDA)はインターネット行動規範(Internet Code of Practice)の遵守と自主規制および自社制度を促している[16]。3つの主要なプロバイダによって提供されるインターネットのサービスは治安、国防、人種や宗教間の調和、公衆道徳への脅威となる材料を含むサイトを規制しブロックしており、また警察にはオンラインの通信を傍受する強い権限が与えられている。2005年に3人がブログで反マレー人反イスラムなど人種差別を煽動する書込みをしたとして逮捕・起訴され、うち中華系男性2人が扇動防止法違反の容疑で懲役を受けた[17]。ブログで教師を中傷する学生を訴えるという教職員組合による警告など、法的対応による脅威が増えることによる萎縮効果が議論された。
  • モロッコでは2006年3月にLiveJournalなどの多くのブログサイトへのアクセスをブロックした。
  • タイでは非合法活動の表現を規制するために多くの労力が払われた。タイが管轄するDNSサーバの管理やプロキシの管理によりポルノ、薬物の使用、ギャンブルが厳しく禁じられている。また王室批判は不敬罪で処断される。これによりそれらウェブサイトはアクセス困難になっている。政府はネット検閲を回避する方法を論じたサイトをもブロックした。
  • ロシアでは裁判所がYouTubeに政治的な動画をアップロードしたプロバイダからのYouTubeへの全てのアクセスを遮断するよう命じた[18]ウラジーミル・プーチン政権下でネット規制は強化されており、2017年にはLINEが使用不可となった。ロシアのSNS「テレグラム」は利用者間通信の暗号解読鍵の当局への提供を拒否したことから、2018年4月に遮断され、首都モスクワで抗議集会が起きた。このほかテロリズム対策を理由として、ネット事業者が利用者情報と全ての通信記録をロシア国内のサーバに保存するよう義務付ける法律が2018年7月から適用される[19]

規制事例

法的規制により、インターネット上の情報開示に何らかの制限が加えられている事例は次のとおり。

脚注

注釈

  1. ^ : Enemies of the Internet
  2. ^ 但し現在では「予備軍」に格下げされている。

出典

  1. ^ 後藤大地. “2016/7/7 国連人権理事会、インターネットにおける人権に関する決議を可決”. マイナビニュース. 株式会社マイナビ. 2019年2月1日閲覧。
  2. ^ 湯木進悟. “2016年7月21日 政府によるネット検閲や遮断は想像以上に多い…中国、ロシアにインドや南アフリカも”. ライブドアニュース. 株式会社LINE. 2019年2月1日閲覧。
  3. ^ "Inside China", Miles Yu, Washington Times, 8 February 2012.
  4. ^ "2012 Internet Enemies:China"Archived 19 August 2014 at the Wayback Machine., Reporters Without Borders, 12 March 2012.
  5. ^ クーデター勃発のミャンマーでインターネットが一時遮断される、バイデン大統領は制裁に言及”. GIGAZINE (2021年2月2日). 2021年2月20日閲覧。
  6. ^ Internet disrupted in Myanmar amid apparent military uprising” (英語). NetBlocks (2021年1月31日). 2021年2月20日閲覧。
  7. ^ Singh, Manish (2021年2月6日). “ミャンマーの新軍事政権がFacebookに続きTwitterの遮断も命令” (英語). TechCrunch Japan. 2021年2月20日閲覧。[リンク切れ]
  8. ^ Confirmed: #Myanmar has blocked all language editions of the Wikipedia online encyclopedia, part of a widening post-coup internet censorship regime imposed by the military junta 📚 Network data show restriction in effect on major providers. 📰 Report: https://t.co/Jgc20OBk27 https://t.co/qstGEefO4E”. Twitter (2021年2月19日). 2021年2月20日閲覧。
  9. ^ 大韓民国における反愛国サイトの排除 Archived 2006年1月2日, at the Wayback Machine.
  10. ^ 「植民地時代は韓国にとって祝福」…21の親日サイトを摘発 2005年11月01日19時10分 中央日報日本語版
  11. ^ 「独島は日本領土」などネットの親日コミュニティーを閉鎖 2005年03月17日18時00分 中央日報日本語版
  12. ^ 「竹島は日本の領土」と書き込んだ「親日派」韓国13歳の少年検挙 J-CASTニュース 2012年9月7日
  13. ^ トルコ大統領、自国のネット規制をツイッターで非難 2010年 06月 14日 12:39 JST ロイター(REUTERS)
  14. ^ イスタンブールの反政府抗議運動勃発で、政府がFacebookとTwitterを利用制限か”. Tech Crunch Japan (2013年6月3日). 2013年6月3日閲覧。
  15. ^ トルコ、ウィキペディアへの接続遮断 「同国中傷の情報源に」 2017年4月30日 CNN
  16. ^ https://www.jetro.go.jp/world/qa/04S-140103.html
  17. ^ http://www.clair.or.jp/j/forum/pub/docs/423.pdf
  18. ^ Google、ロシア地裁のYouTube遮断決定に懸念を表明 2010年08月04日 13時13分 更新 佐藤由紀子 ITmedia
  19. ^ 【プーチン支配】露 強まるネット規制/人気SNS遮断/監視「中国並み」懸念も『読売新聞』朝刊2018年5月4日(国際面)。
  20. ^ 米国での著作権保護
  21. ^ ブラジルの利用者登録 Archived 2007年12月22日, at the Wayback Machine.
  22. ^ (宮島理)ネット危険地帯第50回:「ブロッキング」と「フィルタリング」の2つのネット規制の流れ
  23. ^ 広島市が青少年と電子メディアとの健全な関係づくりに関する条例を制定
  24. ^ a b c エジプト政府、ネットと携帯電話を全面遮断 Japan Business PRESS
  25. ^ a b エジプト政府がインターネット接続を遮断、ソーシャル・メディアの利用を阻止 IDG Computerworld Global 2011年01月31日
  26. ^ 30年前の名作ロックアルバムのせいで英国でWikipediaがアクセス遮断」ITmediaニュース2008年12月09日 08時34分、「英国でのWikipedia遮断問題、IWFのブラックリストからの削除で落着」ITmediaニュース2008年12月10日 13時16分 公開

関連項目


インターネット検閲

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/26 16:48 UTC 版)

中国の人権問題」の記事における「インターネット検閲」の解説

中国政府検閲による情報操作香港・マカオは除く)を行っており、政府にとって不利益があると認識した報道規制している。グレート・ファイアウォール等の検閲システム利用し反政府同盟国朝鮮民主主義人民共和国中傷するウェブページ閉鎖、または回線切断させる処置をとり続けている。2004年11月には違法インターネットカフェ1600店余を摘発しネット上で政府非難する自国人を逮捕しメール文章検閲内容として規制されている。 2006年時点で、GoogleYahoo!マイクロソフトなどの企業政府の検閲協力し中国国内での言論の自由奪っているとして、国際的に人権団体等が非難している。2006年6月には中国インターネット人口1億2300万人達すなどネット文化進展にともない中国政府ネット規制システムバージョンアップさせている。 一方でそうした検閲規制回避するためのシステム一部配布されているといわれる(傲游など)。 中国農村民衆は、諸外国政府に対してどのような見解持っている把握出来ない状況となっている。 しかし、ネットメディア発展した都会では、諸外国からの批判について情報を得ることがある程度可能である。 諸外国からの批判接した都会の人々反応は様々で、諸外国批判同調するケースもあれば、逆に愛国心に火をつけられるケースもある。 2004年には韓国人議員らが脱北者に関する記者会見中国国内行おうとした際、中国政府により強引に記者会見解散させられることがあった。 諸外国の報道機関は、中国政府に対して報道の自由保障されていない」として非難したが、中国政府は「これが中国の文化である」と主張した反日活動(さらに、チベット問題北京五輪対すフランス姿勢抗議する2008年の反仏運動や、1999年中国大使館誤爆事件の際の反米運動)など中国人民族主義排外主義的な活動への中国政府関与については見解別れる中国政府日中関係への影響国際的イメージ悪化懸念し反日活動過激化扱いかねているとの見解もある。現在においても中国政府取り締まり日々強化しており、毛沢東鄧小平の時代のような報道規制情報規制言論統制目指していると見られている。 天安門事件時のリーダー一人王丹は「民主化人権を巡る状況は、天安門事件当時より悪い。事件以前政府批判民主化人権議論出来た。いまや人々当局弾圧恐れて何も出来ず、何も言えない」と2011年6月語っている。

※この「インターネット検閲」の解説は、「中国の人権問題」の解説の一部です。
「インターネット検閲」を含む「中国の人権問題」の記事については、「中国の人権問題」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「インターネット検閲」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「インターネット検閲」の関連用語

インターネット検閲のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



インターネット検閲のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのネット検閲 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの中国の人権問題 (改訂履歴)、スウェーデン漫画判決 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS