2011年問題 (日本のテレビジョン放送)
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一部での移行延期
東日本大震災による被災3県での移行延期とその問題
2011年3月11日に発生した東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)による被害に伴い、同年4月、総務省で被災3県(岩手・宮城・福島)での地上アナログ廃止を延期する方向で調整し[43][44]同年4月20日に正式に発表され、後に岩手・宮城・福島における地上アナログテレビ放送終了期日は「2012年3月31日」とすることが正式決定された。
被災地に存在するテレビ・ラジオの放送設備では親局はすべて稼動しているが一部の中継局が被災しており、テレビ中継局63箇所(茨城23、宮城20、岩手16、山形2、福島2)とラジオ中継局2箇所(福島2)が停波中(同年3月15日10時現在)と総務省より同年3月15日に公表された[45]。また震災によって地上デジタルテレビ放送の普及活動が停止している他、被災地域では難受信地域の共同アンテナの損壊や流失が起きており、これに伴う措置として総務省は7月24日に予定されていた地デジへの全面移行を岩手・宮城・福島の3県については半年から1年延期する方向で調整を開始[46]、前述3県や関東地方、長野県で被災しデジタル・アナログ共に視聴できなくなった世帯や施設に対しては地デジ難視対策衛星放送を見られる様にした[47]。
デジアナ変換
アナログ再放送継続に関する暫定処置として、ケーブルテレビや光放送(フレッツ・テレビなど)では2015年3月31日[注 16]までアナログテレビでも地上波が視聴できるようにセンター施設が受信したデジタル放送の信号をアナログ放送の形式に変換し、有線放送等で再放送を実施していた。使用されるチャンネル番号はほとんどのケースでアナログ時代に使用されていたチャンネル番号をそのまま引き継いで再送信された。
経緯
2009年1月、2011年のアナログ放送停波に伴いケーブルテレビ局を通じデジタル放送をアナログ変換し再送する暫定的措置(いわゆるデジアナ変換)を国の予算編成で検討。2009年12月1日、デジタル放送推進協会はこの暫定措置について2015年3月31日までを期限とするとした[48]。このことはテレビ画面でも画面外のテロップで警告された。
2010年5月14日にはeo光テレビ(ケイ・キャット)[49]で、また2010年9月7日にはオプティキャスト(現・スカパーJSAT)がフレッツ・テレビ(及びスカパー!光(現:スカパー!プレミアムサービス光)、光パーフェクTV!)のサービスを提供する地域でそれぞれデジアナ変換サービスを展開すると発表した[50]。
2010年7月14日より四国のケーブルテレビ会社がデジアナ変換を開始[51]。なお、これにより、アナログ放送停波よりも前に(たとえばアナログ放送にもかかわらずコピーワンスが掛かるなどの)後述の注意事項に係る事象が発生することとなった。
なお、沖縄県の平成新局である琉球朝日放送は、2009年に宮古島・石垣島等の先島諸島(宮古列島・八重山諸島地域)に中継局がなく、デジタル用の新中継局としてようやく開局したが[52]、地上波アナログ放送の終了が迫っており、アナログの中継局を局として開局しなかったため、地元ケーブルテレビ局の宮古テレビ・石垣ケーブルテレビがそれぞれ中継局開始当初からデジアナ変換(レターボックス16:9)として再放送を行った。
国は「早期に対策を完了させる」との方針で臨んでおり、期限当日まで放送が継続させる保証は無い状況で実施された。実際に福井県の美方ケーブルネットワークでは、2011年7月24日に開始したばかりのデジアナ変換を、同年8月31日に早々と終了させており、各ケーブルテレビ会社も国の求めによりデジタルプランへの移行を促した。前倒しで終了する局がある一方、3月末日が第18回統一地方選挙の知事選期間中に当たり、途中で打ち切ることは公職選挙法上も問題となることもあって[53]4月中まで延期する局があったため[54]、予定から一ヶ月遅れた2015年4月30日までに特に混乱なく終了した[55][56]。
実施していたケーブルテレビ局は 総務省ウェブサイト[57]を参照。
特性
- 4:3サイズのテレビで受信する場合はレターボックス16:9になる。また4:3サイズで製作されるCMなど一部も強制レターボックスとなるため、テレビの設定によっては超額縁放送の状態となる。
- 画質はハイビジョンではなく標準画質に変換される。また、従来のアナログ直接受信や地デジチューナー経由で見るのと比べると画質がかなり劣化する。
- マルチ編成はメイン映像(第1映像)のみ視聴可能。
- データ放送・EPGは使用できない。テレビのEPGなどはデータがない旨が表示され、使用できない。またアナログ放送用のネットEPGサービスも終了されるので、使用できない[58][59]。
- Gコードは新聞・雑誌各社では掲載を2011年7月23日で終了したため、それでの録画予約も基本的にできない。ただし、インターネットのYahoo!テレビに限っては2013年末までGコードが収録された。
- HDDレコーダー(またはBD/DVD一体型)を使用した場合は地上デジタル放送のコピー制御と同等の制御信号をアナログ波にも送信する (CGMS-A) ことから原則コピー・ワンスになり、ダビング10には非対応である。
- マルチ音声はメイン音声(第1音声)のみ再生され、5.1サラウンド放送はステレオにダウンミックスされる。
- 文字多重放送(字幕放送)は表示できない。
- 一部のVHSデッキに搭載しているCMカット機能やCMスキップは使用できない。
- NHK Eテレの時報での自動時刻修正(『ぴったりクロック』や『ジャストクロック』)機能が使用できない[注 17]。
- 一部のアナログテレビチューナー搭載パソコンではCGMS-Aの仕様の関係で使用できない機器もある[60]。
- 画面外(黒帯)にデジアナ変換である旨が常時表示される(表示しないケーブルテレビ局もある)。表示方法は、画面右上に「デジアナ変換」と表示するのが基本だが、単に「デジアナ」と表示したり画面左上に表示したりとケーブルテレビ局によって様々。
ケーブルテレビにおけるBSデジタルのアナログ放送
2024年6月現在でも西軽井沢ケーブルテレビ[61]、CATV軽井沢[62]ではBSデジタルをアナログ変換したチャンネルを継続中である。
注釈
- ^ 地上デジタル音声放送は2011年3月に試験放送を終了した後、本放送を見送る形で計画は中止され、AMラジオ放送に関しては地アナ放送廃止で空いたVHF-LOWバンドを利用したFM補完放送の促進へと方針転換された。
- ^ アメリカ合衆国では2009年6月13日に停波したが、それに先立ちデジタル対応テレビへの買い換えが困難な低所得者層に対しデジタルTV変換コンバータ購入用としてUS$40のクーポンを配布した。日本もこれに見習ったものである。しかしながら、地上デジタル放送への移行に受像機の変更だけでなく、地域や建物次第では新たなアンテナ設備(工事費を含めて数万円)も必要となるがこのことは「デジタルへの移行」自体よりさらに少数の理解しか得られていない。実際、「デジタルへの移行」は何となく理解して新しい受像機に買い換える時に「地上デジタル放送対応」製品を購入したもののアンテナその他までには理解が及ばず、実際には従来のアナログ放送を新しい受像機で受信しているだけなのにも拘らずデジタル放送を視聴していると信じ込んでいる例も報告されている。
- ^ 岩手県では宮城県、福島県とともにアナログ放送終了が延期されたが放送範囲内でテレビ受信に関して直接の被害がなかったことから、そのまま2011年7月24日をもって閉局した。
- ^ 一例としては、アナログ放送は共聴設備でしか受信できないのに地上デジタル放送は受信できるため、自腹でUHFアンテナと工事をしてくれる家電量販店などの業者を頼まなければならないというもの。
- ^ 東日本大震災のため、2011年3月11日から4月23日までは自粛していた。
- ^ 「岩手、宮城、福島では、アナログ放送の終了が延期になりました。」のアナウンスと広告テロップが挿入された。
- ^ NHKは常時、民放は夜7時から11時台までの番組の冒頭にそれぞれ表示していた。
- ^ NHKの4:3製作番組と14:9サイズの放送を継続する大河ドラマ、民放におけるCMやテレビショッピング、4:3製作された放送局に著作権のない外部制作番組、独立UHF局における再放送番組を除く。
- ^ 沿岸部にあるCATV局の津波被災、地デジ共同受信設備の津波による流失、被災者支援に時間を割かれ地デジ普及活動が困難であることなどによる。なお、岩手・宮城・福島の地上波テレビ放送局にはアナログ機器維持管理のための費用を半額補助することにしている。
- ^ 佐渡島の高千局のリパックは2012年10月15日に実施された。
- ^ 茨城が2012年3月30日、徳島・山口が2012年8月31日、秋田が2012年12月28日、岩手・熊本が2013年2月28日、島根が2013年3月15日を以て、ブロック拠点へ統合された。また宮城は2012年5月1日より「東北」へ名称変更された。
- ^ NHKでの進行フォーマットは2011年7月24日に被災県以外で放送されたものと同じだが、進行は仙台局の谷地健吾(2011年7月24日放送分は鈴木菜穂子)が担当した。
- ^ テレビ放送完全デジタル化によって空いた従来のアナログテレビ帯域は、普及が著しく電波容量が逼迫している携帯電話などの用途へ転用されることが国の方針により決定された。(アナログとの混信防止のため)地デジが暫定的に使っている53〜62ch帯(60MHz分)はアナログテレビ放送が終了すればVHFと共にTV以外の用途へ転用され、地デジTVチャンネルは13〜52chのローバンド(低域)帯及びミッドバンド(中域)帯へ集約される(53~62ch帯を使っている地上デジタル中継局はアナログ終了後に一部局のチャンネル変更あり)。よって東日本大震災被災県(岩手・宮城・福島)における地上デジタル化(アナログ放送終了)猶予期間は最長でも2012年7月24日までしか設定できなかった。完全地上デジタル化の猶予期間中は岩手・宮城・福島3県の地上波テレビ局(NHK盛岡・IBC・TVI・MIT・IAT、NHK仙台・TBC・OX・MMT・KHB、NHK福島・FTV・FCT・KFB・TUF)に対してアナログテレビ放送維持に必要な機器(テレビマスター及び各送信所にある送信機器・アンテナ)保守管理費用の一部を総務省が助成することとした。
- ^ これまでアナログTV電波を送出していた電波塔のうち(地デジ送信塔が従来のアナログとは別の場所に設置、中継局統廃合により地デジ中継局設置非該当、施設老朽化などの理由で)地デジ・AMラジオ・FMラジオ・マルチメディア放送の送信設備と自社・他社による無線中継基地のいずれも引き続き持たない施設は殆どが解体されている。なお従来の地アナTV電波送信塔は各局が個別に設置していた場合が多かったが、地デジTV電波塔は当該地域にある各局が(中継局一カ所毎に)一つの塔・局舎を共用し、そちらへ各局送信アンテナを集中取付する方式を採用(NHKと民放全局の共同使用またはNHK単独使用・民放全局共同使用のパターンがほとんどである)。これにより従来のアナログ時代より建設費・保守管理費の大幅削減が可能となった。
- ^ アナログ放送の番組終了ブルーバックの後に10秒間のブラックバックが表示され、事実上それにテロップ表示した形。
- ^ ケーブルテレビ局によっては、前倒しで終了した局がある一方、4月中まで延期した局もあった。
- ^ もっとも、デジタル完全移行によりNHK Eテレにおける時報の放送も2011年7月23日正午(高校野球地方大会中継を行った一部地域除く)が最後だった。
- ^ 2000 - 2003年に発売されたBS・110度CSデジタルチューナーは搭載している(最初期は110度CSなし)が、地上デジタルチューナーは搭載していない機器を含む。
- ^ ただし、携帯用の小型テレビなどで外部AV入力や外部アンテナ入力を備えない物は継続使用ができない。
出典
- ^ シニア層は要注意!これからが本番「地デジ詐欺」にだまされるな! 日経トレンディネット 2006年6月20日
- ^ 北海道池田町・いけだ議会だより かけはし(平成23年1月15日発行分)
- ^ 岩手県盛岡市・ウェブもりおか『テレビ都南廃止のお知らせ』(2007年4月2日掲載)
- ^ 岩手県盛岡市・ウェブもりおか『テレビ都南の廃止に関するQ&A』(2007年4月2日掲載)
- ^ 集合住宅での地上デジタル放送対策は?【地デジ再入門2】- デジタル - 日経トレンディネット
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- 2011年問題 (日本のテレビジョン放送)のページへのリンク