ろくろ首 ろくろ首の「実話」の信憑性

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ろくろ首

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/21 07:14 UTC 版)

ろくろ首の「実話」の信憑性

実際に首が伸びるのではなく、「本人が首が伸びたように感じる」、あるいは「他の人がその人の首が飛んでいるような幻覚を見る」という状況であったと考えると、いくつかの疾患の可能性が考えられる[27][28]。例えば片頭痛発作には稀に体感幻覚という症状を合併することがあるが、これは自分の体やその一部が延びたり縮んだりするように感じるもので、例として良くルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』が挙げられる(不思議の国のアリス症候群)。この本の初版には、片頭痛持ちでもあったキャロル自らの挿絵で、首だけが異様に伸びたアリスの姿が描かれている[27](ただし後の版や、ディズニーのアニメでは体全体が大きくなっているように描かれている)。一方、ナルコレプシーに良く合併する入眠時幻覚では、患者は突然眠りに落ちると同時に鮮明な夢を見るが、このときに知人の首が浮遊しているような幻覚をみた人の例の報告がある[29]

夢野久作の小説『ドグラ・マグラ』においては、登場人物の正木博士が「ロクロ首の怪談は、夢中遊行(睡眠時遊行症)状態の人間が夜間、無意識のうちに喉の渇きを癒すために何らかの液体を飲み、その跡を翌朝見つけた人間がそれをロクロ首の仕業であるとした所から生まれたものである」という説を立てている。

酷使された末に腺病質となって痩せ衰えた遊女が、夜に灯油を嘗めている姿の影が首の長い人間に見え、ろくろ首の話のもとになったとする説もある[14]

見世物(奇術)としてのろくろ首

兵庫県姫路市姫路ゆかたまつり2010年)での「ろくろ首」の人形

内幕と等身大の人形(頭はない)を利用した奇術であり、現代の分類でいえば、人体マジックに当てはまるものである。ネタの内容は、内幕の前に着物を着せた人形を正座させ、作り物の長い首を、内幕の後ろで体を隠し、顔だけを出している女性の本物の首と、ひもで結ぶ。後は内幕の後ろで体を隠している女性が、立ったり、しゃがんだりすることによって、作り物の首を伸ばしたり、縮めたりして、あたかもろくろ首が実在するかのように見せる。明治時代雑誌で、このネタばらしの解説と絵が描かれており、19世紀の時点で行われていたことが分かる[30][注 1]。当時は学者により、怪現象が科学的にあばかれることが盛んだった時期であり、ろくろ首のネタばらしも、そうした時代背景がある。大正時代においても寺社の祭礼や縁日での見世物小屋で同様の興行が行われ、人気を博していた[14]

海外の人体マジックでも似たものがあり、落ちた自分の頭を自分の両手でキャッチするものがある(こちらはデュラハンの見世物として応用できる)ことから、同様の奇術が各国で応用的にアレンジされ、見世物として利用されたものとみられる。なお、飛頭系の妖怪も幻灯機を用いた奇術で説明がつけられる(暗がりならなおさら悪戯でも可能な話である)。こうした奇術の応用は、現代では特撮に用いられることがある。

脚注

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注釈

  1. ^ 滑稽新聞社発行の雑誌「絵葉書世界」(雑誌とは言っているが、絵葉書の画集)の中に「見せ物の内幕」と題し、ろくろ首の仕掛けを暴く絵がある。絵師は、なべぞとあり、切手を貼る所には、驚いている少年が描かれている。

出典

  1. ^ 鳥山石燕画図百鬼夜行』などは「飛頭蛮(旧字体: 飛頭蠻)」に「ろくろくび」のルビを当てる
  2. ^ 村上健司編著『日本妖怪大事典』角川書店〈Kwai books〉、2005年、356頁。ISBN 978-4-04-883926-6
  3. ^ a b 今野 1981, pp. 86–88
  4. ^ a b 井之口他 1988, p. 520
  5. ^ a b Yahoo! 辞書”. Yahoo! JAPAN. ヤフー株式会社. 2007年1月24日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2008年1月22日閲覧。
  6. ^ a b c d e f g 多田 2000, p. 159
  7. ^ 阿部主計『妖怪学入門』雄山閣、2004年、115頁。ISBN 978-4-639-01866-7
  8. ^ a b c 篠塚訳著 2006, pp. 76–78
  9. ^ a b c 柴田 2005, pp. 30–36
  10. ^ a b 著者不詳「曾呂利物語」『江戸怪談集』中、高田衛編・校注、岩波書店岩波文庫〉、1989年、13-15頁。ISBN 978-4-00-302572-7
  11. ^ 柴田 2008, pp. 704–705.
  12. ^ 山岡元隣古今百物語評判」『続百物語怪談集成』山岡元恕編 太刀川清校訂、国書刊行会〈叢書江戸文庫〉、1993年、12-13頁。ISBN 978-4-336-03527-1
  13. ^ 佐藤成裕「中陵漫録」『日本随筆大成』第3期 3、早川純三郎編輯代表、吉川弘文館、1976年、354頁。ISBN 978-4-642-08580-9
  14. ^ a b c d 笹間 1994, pp. 27–29
  15. ^ 柴田 2008, p. 702.
  16. ^ 『鳥山石燕 画図百鬼夜行』稲田篤信・田中直日編、高田衛監修、国書刊行会、1992年、64頁。ISBN 978-4-336-03386-4
  17. ^ ゲゲゲの鬼太郎第三部・第96話「高熱妖怪ぬけ首」”. (C) UKYOH.. 2016年5月7日閲覧。[リンク切れ]
  18. ^ a b 京極夏彦「妖怪の形について」『妖怪の理 妖怪の檻』角川書店BOOKS〉、2007年、386頁。
  19. ^ a b 十返舎一九「列国怪談聞書帖」『十返舎一九集』棚橋正博校訂、国書刊行会〈叢書江戸文庫〉、1997年、246-248頁。ISBN 978-4-336-03543-1
  20. ^ 柴田 2008, pp. 700–701.
  21. ^ 多田克己『幻想世界の住人たち』IV、新紀元社Truth In Fantasy〉、1990年、264頁。ISBN 978-4-915146-44-2
  22. ^ 柴田 2008, pp. 701–702.
  23. ^ 「口承文芸」『旧静波村の民俗 岐阜県恵那郡明智町旧静波村』鈴木孝司他編、東洋大学民俗研究会、1971年、191頁。NCID BA5494848X
  24. ^ 巻山圭一「家・屋敷に出る妖怪」『長野県史』民俗編 2巻3号、所三男他編纂、長野県、1989年、100頁。NCID BN00168252
  25. ^ 岡市二洲「怪談茨木附近」『郷土研究上方』3巻33号、上方郷土研究会、1933年9月、 34頁、 NCID AN00045163
  26. ^ 水木しげるカラー版 続妖怪画談岩波書店岩波新書〉、1993年、152-153頁。ISBN 978-4-004-30288-9
  27. ^ a b 古谷 2006, pp. 304–308
  28. ^ Lafcadio Hearn(ラフカディオ・ハーン)のKwaidan(怪談)と神経内科疾患(2).神経内科. 2006; 64(4): 429-434.
  29. ^ 中村希明.怪談の科学.ブルーバックス.東京:講談社; 1988. p14-133.
  30. ^ 富田昭次 『絵はがきで見る日本近代』 青弓社 2005年 ISBN 4-7872-2016-0 p.131


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