カタツムリ
英語:snail
カタツムリ(英: snail)とは、軟体動物門腹足綱(ふくそくこう)有肺亜綱(ゆうはいあこう)に属する、陸に生息する巻貝を指す通称である。カタツムリという語は日常的に使われているが、あくまで通称であり、特定の分類群の正式名称ではない。なお、カタツムリの別称として「マイマイ」が挙げられるが、これは学術用語である。
カタツムリは漢字では「蝸牛」と表記し、「かぎゅう」や「でんでんむし」とも読む。「蝸牛」という漢字は、カタツムリがうずを巻いた殻、そして牛のような角を持っていることに由来すると考えられている。
カタツムリという語は、陸に棲む貝類の中でも特に触覚の先に目があり殻に丸みがあるものを指すことが多いが、厳密な定義は定められていない。一般的なカタツムリは背に巻いた殻を持ち、殻の中には内臓が収まっている。カタツムリは湿った状態でないと生きていけないため、体からは粘液を分泌しながら活動する。気候により活動に支障が出る場合は、殻の中に体を引き込み殻の口に粘膜の膜を張って乾燥から身を守る。
カタツムリの殻と体は一体であるため、体と殻を無理に引き離したり、殻が大きく破損したりした場合は死んでしまう。殻を持たない陸生巻貝の総称は「ナメクジ」といい、カタツムリの一種に分類される。ナメクジはカタツムリの殻が退化してその形になったものであり、カタツムリが殻から出てきてナメクジになるというようなことはない。
カタツムリは地方ごとに生息する種類が異なり、日本国内だけでも600~800種程度生息するとされている。
か‐ぎゅう〔クワギウ〕【×蝸牛】
読み方:かぎゅう
1 かたつむり。
2 内耳の一部で、カタツムリの殻状をした聴覚にたずさわる器官。基底膜などによって三つに仕切られ、人間で2回転半ほど巻き、中は内リンパで満たされている。底部は内耳道に面し、伝わってきた音を受ける神経の終末が分布する。渦巻き管。蝸牛殻。
かぎゅう〔クワギウ〕【蝸牛】
かた‐つぶり【蝸=牛】
かた‐つむり【蝸=牛】
読み方:かたつむり
《「かたつぶり」の音変化》腹足綱有肺亜綱に属する陸生の巻き貝のうち、大形のものの総称。殻は螺旋(らせん)形で右巻きが多く、殻から頭や胴の一部を出して移動。頭に二対の触角を備え、長いほうの先端に目がある。湿気を好み、木の新葉や野菜を食べ、梅雨期に土中に産卵。まいまい。まいまいつぶろ。でんでんむし。かぎゅう。《季 夏》「今朝見れば夜の歩みや—/太祇」
でんで‐むし【蝸=牛】
でんでん‐むし【蝸=牛】
カタツムリ
生物の名前総称など: | オランウータン オルトミクソウイルス科 カエル カタツムリ カブトガニ カメ類 カリフラワーモザイクウイルス |
かたつむり 【蝸牛】
蝸牛
蝸牛
蝸牛
蝸牛
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/19 05:10 UTC 版)
蝸牛 | |
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![]() ヒトの内耳(右側が蝸牛) | |
![]() 蝸牛の断面図 | |
英語 | Cochlea |
器官 | 感覚器 |
神経 | 聴神経 |
蝸牛(かぎゅう、cochlea)とは、内耳にあり聴覚を司る感覚器官である蝸牛管(cochlear duct)が納まっている、側頭骨の空洞である。蝸牛管を指して「蝸牛」と言うこともある。この名は、哺乳類においては蝸牛がカタツムリ(蝸牛)に似た巻貝状の形態をしていることによる。なお、蝸牛はかたつむり管、あるいは渦巻管(うずまきかん)とも呼ばれる[1]。
蝸牛管の内部は、リンパ液で満たされている。鼓膜そして耳小骨を経た振動はこのリンパを介して蝸牛管内部にある基底膜 (basilar membrane) に伝わり、最終的に蝸牛神経を通じて中枢神経に情報を送る。 解剖学的な知見に基づいた蝸牛の仕組みについての説明は19世紀から行われてきたが、蝸牛が硬い殻に覆われているため実験的な検証は困難であった。1980年代ごろよりようやく生体外での実験が本格化したものの、その詳細な機構や機能については依然謎に包まれた部分がある。
構造

ヒトの蝸牛はおよそ 2 巻半ほどに渦巻いた骨で覆われた閉じた管を形成しており、管を伸ばせば長さはおよそ 3 cm ほど、中耳側の基部の太さはおよそ 2mm ほどである。 蝸牛内部は渦巻く方向に沿って膜で仕切られた 3 つの区画、前庭階 (scala vestibuli)、中央階 (scala media)、鼓室階 (scala tympani) からなっている。 このうち、前庭階と鼓室階は蝸牛管の先端にあたる頂部でつながっており、共に外リンパ (perilymph) で満たされている。 対して、中央階はイオンの能動輸送 (active transport) によってカリウム・イオンに富んだ内リンパ (endolymph) で満たされている。 そのうえ、中央階は外リンパよりも相対的に 80 mV ほど高い電位を保っている。
前庭階の基部には卵円窓(または前庭窓, oval window)という小さな穴があり、これを通じて中耳のあぶみ骨 (stapes) は前庭階の外リンパへと振動を伝えることができる。 対応して一方の鼓室階の基部にも正円窓(または蝸牛窓, round window)と呼ばれる小さな穴が空いており、外リンパが振動で移動することを助けている。

中央階と鼓室階を区切る膜が基底膜であり、前庭階と中央階を分ける膜はライスナー膜(Reissner's membrane)と呼ばれる。 基底膜は奥にいくほど幅広くかつ柔軟になっており、基部より頂部の方が 2 桁程曲げやすく、基部から頂部に至るほどより低い音に対応する固有振動数を持つ。 基底膜の中央階側にはコルチ器 (organ of Corti) と呼ばれる繊細で堅牢に構成された小さな器官が整然と配列されている。 コルチ器の上部には内有毛細胞と外有毛細胞と呼ばれる 2 種類の有毛細胞が蝸牛管に沿って規則正しく並んでおり、ヒトでは片耳で内有毛細胞が 3,500 ほど、外有毛細胞が 15,000 から 20,000 ほど存在する。 コルチ器上部には屋根のように蓋膜 (tectorial membrane) が覆いかぶさり有毛細胞それぞれから突き出した不動毛(聴毛, stereocilium)の束の先端と接するような位置にある。
このうち内有毛細胞が振動の情報を神経パルスへと変換する一次感覚受容器である。 蝸牛のラセン状の中心軸である蝸牛軸 (modiolus) には数多くの蝸牛神経節(ラセン神経節、spiral ganglion)があって、内有毛細胞とシナプス結合を形成している。 これらの神経細胞の軸索は蝸牛神経 (cochlear nerve) を形成し延髄と橋にまたがるいくつかの蝸牛核 (cochlear nuclei) へと投射する。 興味深いことに、内有毛細胞より数の上ではるかに勝る外有毛細胞は逆に延髄のオリーブ (olive) から遠心性の神経繊維を受け取っている。
機構
フォン・ベケシの進行波モデル
蝸牛管の機構について説明する最も素朴な見方は、それをピアノの弦のようにみなすことである。 すなわち周波数順に並んだ弦それぞれが入力に応じて共振し神経へと情報を伝えるのだとする。 実際、19 世紀にヘルムホルツは基底膜をそれぞれ異なる固有振動数をもつ繊維の集まりのように表現するモデルを提出していた。
こうした見方は1960年になってハンガリー出身のアメリカの生物物理学者フォン・ベケシ (Georg von Békésy) により流体力学的相互作用を考慮した基底膜を伝わる進行波としてのより精緻なモデルで置き換えられた。 あぶみ骨から蝸牛の基部の液体に伝えられた純音の振動は流体の流れを作り出して基底膜を揺らしながら頂部へ向かって波として伝わる。 この振動は周波数に応じたある距離までしか到達しない。 入力が高い音なら振動はわずかしか伝わらず、低い音なら先端の方まで振動が及ぶ。 この限界の距離の少し前で基底膜の振動は最も大きくなり、異なる音の高さの純音はそれぞれ基底膜の蝸牛管に沿った異なる位置で振動パターンを作り出す。 このモデルではこのパターンが純音の神経反応と対応するとみなされるが、これは各位置に固有振動数を対応づける点ではピアノのモデルと大きくは違わない。
内有毛細胞による神経活動への変換
基底膜の振動はその上にあるコルチ器へと伝わり、蓋膜との間の相対的なずれによって内有毛細胞の不動毛の束をごくわずかに曲げることになる。 これによって不動毛の細胞膜にある機械的に動作する特殊なチャネル (TRPA 1) が開閉し内リンパからのカリウムの流入量が制御される。 これは内有毛細胞の膜電位の数 mV ほどの変動をまねく。 さらにこの変動は電位依存性のカルシウム・チャネル (voltage-gated calcium channel) から流入したカルシウム・イオンを通じてシナプス小胞 (synaptic vesicle) の放出をまねき、聴神経へと情報を伝達する。
蝸牛増幅器
現在、実際の蝸牛管の機構をうまく表すにはこれ以外にいくつかの非線形 (nonlinear) の効果を無視し得ないことが明らかになっている。 例えば、音圧レベルおよそ 30〜90 dB SPL の 1000 倍の圧力の違いに相当する広い範囲にわたり、基底膜の振動の速度は数倍しか異ならない。 このことは基底膜が線形のフーリエ変換器のようなものではなく、非線形能動フィルターであるとみなさなければならないことを示している。
こうした非線形の機構としては蝸牛増幅器 (cochlear amplifier) とも呼ばれる巧妙なエネルギー散逸を伴う機械的フィードバック回路が考慮されている。 蝸牛は電子工学における再生回路のように働き、この仕組みによってはっきりしていなかった外有毛細胞とコルチ器の機能的役割が明確になった。 外有毛細胞も内有毛細胞と同じく不動毛のずれによって膜電位を変化させるがこれは信号として伝えられるのではなく運動細胞として外有毛細胞自体の長さを変化させている。 これは細胞膜にある電位依存性のタンパク質モーター (motor protein) によるものと考えられ、外有毛細胞のみに密集して存在するプレスチン (prestin) と名付けられたタンパクがそれであろうと考えられている。 外有毛細胞はこれにより最大で 20 kHz 以上もの周波数で振動でき、これは生体内の他の運動細胞よりはるかに高速な動作である。 有毛細胞が実際、基底膜を伝わる進行波の動きを変化させていることは、1991年に初めて実験的に示され、またこの振動によって上の非線型性を説明するモデルが提出されている。
また、液体の相互作用と蝸牛増幅器の効果を考慮した場合、基底膜の振動は隣接する周波数領域を抑制するようにはたらくと推測され、これは周波数の選択性を上げる効果をもつことが示唆されてきた。 一方で動物実験では、音声のような音に対して聴神経が固有振動数が大きく異なっているものでも同じような反応をすることが報告され聴神経がむしろ広い周波数に反応することが示唆されている。 これらの一見矛盾する報告は、蝸牛の役割を純音に対する反応の重ね合わせとして記述できる線形な特性を持つものとしてではなく、音の生物学的に意味のある特徴を適切に選択するような非線形の効果をもつものとして記述せねばならないことを示唆している。
耳音響放射
通常、感覚器官とは外界の刺激を受動的に受け取り中枢神経へと伝達するものであるが、蝸牛増幅器の概念はこの見方を覆すものであった。 実際、1978年にイギリスのケンプによって蝸牛が音を受動的に知覚するだけでなく、自ら小さな音をたてていることが明らかとなっていた。 これは何の刺激がないときにも、外部からの刺激への反応としても現れ、耳音響放射 (じおんきょうほうしゃ、otoacoustic emission, OAE) と呼ばれている。 適切な周波数の違いを持つ 2 種の純音を重ね合わせた刺激に対しては、それらとは別の周波数に非線形の効果による反応が表れることも明らかになっており、これは特に新生児に対する聴覚検査として臨床上も有用である。 この耳音響放射も蝸牛増幅器の活動によるものであると考えられている。
参考文献
- Bear, M.F. et al., Ch. 11 “The Auditory and Vestibular Systems” in Neuroscience: Exploring the Brain, 3rd ed., 2006, Lippincott Williams & Wilkins, ISBN 0781760038.
- Nobili, R. et al., “How well do we understand the cochlea?”, Trends Neurosci. 21 (1998) 159–167, DOI 10.1016/S0166-2236(97)01192-2
脚注
関連項目
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外部リンク
蝸牛
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/02 03:06 UTC 版)
耳が捉えた音波は鼓膜を介して前庭窓から膜迷路を振動させる。蝸牛はカタツムリの殻に似たらせん状の管が蝸牛軸に2巻き半巻いた形を持つ。らせん管の断面は、前庭球形嚢と繋がる蝸牛管を挟んで前庭階と鼓室階という外リンパで満たされ蝸牛頂部で繋がった2つの空洞がある。蝸牛管の底には高さが伸びた上皮細胞によって作られた有毛細胞を持つラセン器(コルト器)が形成されている。膜迷路の振動は外リンパを介し、根元の穴(前庭窓・卵円窓)を通って前庭階内部に伝わる。そして蝸牛先端で鼓室階へ抜け、最終的に蝸牛窓(正円窓)で消える。この一連の振動は間にある蝸牛管に満たされた内リンパ液を揺らし、ラセン器の毛細血管に感知される。
※この「蝸牛」の解説は、「耳」の解説の一部です。
「蝸牛」を含む「耳」の記事については、「耳」の概要を参照ください。
蝸牛
「蝸牛」の例文・使い方・用例・文例
- 蝸牛が角をひっこませる
- 蝸牛角上の争い
- 骨硬化症で失われた聴力を回復するために、蝸牛に新しい窓をつくる外科手術
- 蝸牛の基底膜
- 耳の蝸牛の、またはそれに関するさま
- 蝸牛のインプラント
- コルチ器を支える蝸牛にある膜
- 迷路受容体と蝸牛を含む内耳の感覚構造物
- 蝸牛殻の中央の円錐の骨が多い柱
- 蝸牛殻に導く窓
- 音を蝸牛に伝達する鐙状の小骨
- 蝸牛管の静脈
- 前庭器官の有毛細胞と蝸牛の有毛細胞を供給する複合知覚神経
- 蝸牛殻から大脳皮質側頭葉への聴覚路沿いの一連の処理センターの最後として働く神経構造
- 口紅蝸牛という貝
- 食用にする蝸牛
- 蝸牛という軟体動物
- 蝸牛殻という,内耳の器官
- 蝸牛という,内耳の一部
蝸牛と同じ種類の言葉
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