銃弾の種類
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/28 02:03 UTC 版)
鉛弾 むき出しの鉛を使った最も原始的な弾丸。別種の金属による覆いが無いため、摩擦などによって鉛の残滓が銃身内部に付着しやすく頻繁な掃除が必要になり、掃除を怠ったまま連続して射撃を行った場合は銃身内部を痛め銃の寿命を短くする。現在は古式銃の射撃用にわずかに生産されるのみである。黒色火薬を利用する前装銃で主に使われていた。薬莢と一体型のものもある。 散弾(shot) 射出時に、弾薬に内包されている多数の小さな弾丸(子弾という)が飛び出し広範囲に危害を加える。過去には鉛の子弾が主に使われていたが、鉛中毒が一般に認知された今日では鉄の子弾に置き換わり始めている。詳細は散弾銃を参照。 フルメタルジャケット弾(full metal jacket/被覆鋼弾、完全被甲弾) 貫通性が高い通常の弾丸。弾芯が金属(メタル)の覆い(ジャケット)で覆われているメタルジャケット弾の一つ。ボール(Ball)とも呼ばれる。 ほとんどのフルメタルジャケット弾は、弾芯である鉛をギルディング・メタル(真鍮の一種。混合率は銅95%、亜鉛5%)で覆っている。 軍用ライフルでは、目標衝突時の弾頭変形を防ぎ貫通力を高めるため、このフルメタルジャケット弾が使われる。 メタルジャケット弾にはフルメタルジャケット弾(弾頭をギルディング・メタルで完全に覆った弾)の他にパーシャルジャケット弾(弾頭の先端部分以外をギルディング・メタルで覆った弾)があり、パーシャルジャケット弾は、目標に衝突した際に露出している弾頭先端が変形し破壊力を増す構造で、主に大型動物のハンティング用に用いられる。ハーグ陸戦条約第23条の「不必要な苦痛を与える兵器、投射物、その他の物質を使用すること」への抵触を避けるなどの人道上の理由から、軍用弾にはフルメタルジャケット弾が用いられる。 ソフトポイント(soft point) 弾頭先端がギルディング・メタルで覆われておらず、鉛が剥き出しの弾丸。命中すると柔らかい鉛により弾頭が激しく変形・破砕し、目標内部で運動エネルギーを効率的に伝えることにより、致命的なダメージを与える。弾丸が破砕するため貫通力は低い。 貫通力の低さから狙撃時に犯人を貫通した弾丸による二次被害防止のため、主に警察用として利用されている。 ホローポイント(hollow point/JHP) 弾頭がすり鉢のように窪んでいる弾丸。人体などに命中すると、先端がキノコ状に変形(マッシュルーミングという)し、径が大きくなった先端部が運動エネルギーを効率よく目標に伝達して大きなダメージを与える。主に狩猟用として利用されている。 純銀弾(Silver Bullet) 詳細は「銀の弾丸」を参照 銀は価格が鉛やギルディング・メタルより大幅に高いうえ、銃弾としてはコストに見合うメリットがないため、実用の弾丸としては作られていない。銀白色の外見をもつ弾頭としては「シルバーチップ」と呼ばれるものがあるが、これは、アルミニッケル合金を利用したホローポイント弾であり、銀製ではない。 曳光弾(tracer bullet) 発射されると後方に光を曳く、弾道を視認しやすくするための弾丸。トレーサーとも呼ばれる。機関銃などの照準確認用として通常弾に一定の割合で混合され用いられる。飛翔距離と共に内蔵した発火薬が減少して軽くなるため、ある程度の距離を飛翔すると通常弾とは違う弾道を描くので、あくまで目安である。また、射手に残弾量が僅かであることを示す目的で使用されることもある。 一般的には、5-7発に1発の割合で曳光弾が混入される(残数確認の場合は残り5発程度の部分に用い、つまり、弾込めの場合はまず5発の曳光弾を入れてから通常弾を入れる)。限定的な焼夷効果もある。 ゴム弾(rubber bullet) 弾頭を硬質ゴムで作成した弾丸。弾丸の重量やその構造上、有効射程が短く、目標に対して弾丸が貫通することがないので非致死性兵器として、警察や軍隊による暴動鎮圧などに用いられる。 切れ目の有る円筒状で先端にくぼみがあり、発射されると先端のくぼみが受ける風圧で切れ目に沿って十字形に開いて飛翔するタイプ、プラスチックや金属にゴムを塗ることで射程を伸ばしたタイプなどがある。 1970年代からはより安全とされるプラスチック弾(英語版)も登場している。 蝋弾 殺傷力が低いため1908年ロンドンオリンピックでは蝋弾を使用する決闘(Olympic dueling)が非公式競技として行われた。 弾丸受け止め術のトリックとして中空にして脆くした蝋弾を使うことで空包とすることがあった。 エクスプローダー(exploder) ホローポイントのくぼみに銃用雷管や少量の火薬を埋め込み、命中すると炸裂する。殺傷能力の向上を期待されたが、威力の上昇が製造コストの上昇に見合わなかったため、現在では製造されていない。 フランジブル弾 粉体金属(銅、スズなど)を押し固めた弾丸。 人体には貫入するが、壁や柱など固い物質に当たると粉々に砕けるため跳弾しない。屋内戦闘での跳弾防止の他、運行中の航空機内でも使用出来るためスカイマーシャルが犯罪者制圧に利用する。 フレシェット弾(flechette) 矢状の弾体を発射する弾丸。APFSDSに使用されるようなプラスチック製サボを用いて1本の矢を撃ち出すものや、散弾銃の散弾代わりに矢型子弾を詰めたような実包が存在する。 フレシェット弾は、1980年代にオーストリアのステアー社によってACR(Advanced Combat Rifle)(英語版)として試作され、従来のライフル銃を大きく凌ぐ初速と貫通力を実現したが、軽量であるため横風の影響を受け易く、ライフル弾のような命中精度は実現できなかった。 水中銃弾 APS水中銃など用の実包で、水中での弾道特性に配慮した矢状(ただし、矢羽は無い場合が多い)の弾体を発射する弾丸。日没後、夜明け前や薄暗い水中などでの使用に備え、弾道確認のために曳光弾もある。 拡張弾頭(英語版) 命中時に弾頭が裂けることで肉体組織への激しい裂傷と止血しづらい銃創を作る弾丸。体の末端部や腹部に命中しても殺傷力が高まるようになっている。拳銃でも高い威力を得られ、対象物内部で弾丸が止まる可能性が高い(貫通による二次被害の軽減)ことから狩猟用や警察用として利用されている。 19世紀に英領インドのコルカタ近郊、ダムダムにあるダムダム工廠で製造された対人用拡張弾頭が普及していたため、総称として「ダムダム弾([Dumdum bullet)」とも呼ばれる。 戦争遂行には不必要なほどの殺傷力を持つとして、1899年にダムダム弾禁止宣言がなされ、体内で弾頭が変形する弾丸の使用が禁止された。1907年のハーグ陸戦条約第23条5項においては、明示されてはいないが、戦時下でこのような「不必要な苦痛を与える兵器の使用」の禁止が謳われている。 現在でも戦争における使用は禁止されているが、これに拘束されない狩猟や警察などで現在でも多く使用されている。 破片侵襲弾 弾丸全体に切り込みが入っており、命中後に複数の破片に分割する弾丸。目標命中時に対象内部内で炸裂するため、貫通による跳弾を抑止できる。アメリカでは民間向けにも販売されている。 ワッドカッター(wadcutter) 射撃競技用の弾丸。先端が平坦で、紙の標的にパンチしたように丸い穴を開けるため着弾位置の確認が容易である。また、形状が円筒に近いため、他の弾丸に比べて銃身内との接触面積が大きく、より正確な弾頭の中心軸周りの回転が得られ、安定した弾道特性を持つ。 競技射撃には後端が中空になっているため低速域の安定性が高い Hollow Base Wadcutter(HBWC)が使われている。中空で軽いため殺傷能力は低いが、安定した弾道特性等に着目し、弾頭重量を増すことで貫通力を高め、また塞がりにくい円形の傷を与えることで殺傷力を強化したセミワッドカッター(SWC)も開発されており、標的射撃・小型獣の狩猟・護身に対応できることから、.38スペシャル弾など拳銃用の実包が販売されている。 ピストン・プリンシプル弾 薬莢に消音効果を持たせた弾丸。薬莢内部にピストンの役目をする中栓が内蔵されており、燃焼ガスを受け止めた中栓が突き出される事で弾丸を押し出しつつ、ガスを薬莢内部に留める構造を持つ。この構造によって発射音を軽減するが、膨張する燃焼ガスが銃腔全体に広がることで強い推進力を得る通常の弾薬に比べ有効射程が短い。主に特殊部隊の秘密任務用の消音銃に用いられる。 観測弾 内部に撃針と少量の炸薬が内蔵され、命中すると炸裂して白煙を発する弾丸。航空機の搭載機関銃用で、射手に着弾点を示すために用いられた。ドイツ国防軍の狙撃手であったヨーゼフ・アラーベルガーの伝記(邦題『最強の狙撃手』)には、敵味方の双方が地上戦で観測弾を対人用に使っていたとの記述がある。 自動追尾弾 2015年、アメリカ国防高等研究計画局は、動く目標を自動追尾する50口径の銃弾の開発に成功したことを発表している。
※この「銃弾の種類」の解説は、「弾丸」の解説の一部です。
「銃弾の種類」を含む「弾丸」の記事については、「弾丸」の概要を参照ください。
- 銃弾の種類のページへのリンク