歴史とガイドラインとは? わかりやすく解説

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歴史とガイドライン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/12 04:10 UTC 版)

ベンゾジアゼピン離脱症候群」の記事における「歴史とガイドライン」の解説

1960年に初のベンゾジアゼピンであるクロルジアゼポキシドホフマン・ラ・ロシュ社より市場出され日本ではコントール、海外ではLibriumの商品名知られる。そのすぐ後にジアゼパムセルシンValium)が登場した。そしてすぐ後の1961年には、ホリスターらが1〜7か月の間でクロルジアゼポキシド使用した入院患者において、不眠症から痙攣発作までの離脱症状報告したこうした1960年代初期報告は、治療用量よりも高用量長期的に使用した後の中止により生じたものであったが、後に治療用量でも離脱症状生じることをいくつかの試験示していった。 世界保健機関は、1961年公布され麻薬規制する麻薬に関する単一条約の後に登場した新たな向精神薬乱用懸念した1971年には向精神薬に関する条約公布されベンゾジアゼピン系ではクロルジアゼポキシドジアゼパム含めた20種以上が指定され、後に登場したものでも国際的に乱用されたものについては追加されていったアメリカでは1975年には、クロルジアゼポキシドジアゼパム規制物質法管理下に置かれた。 ロシュ社は1980年まで非依存性であると主張し続けたが、今日医薬品添付文書明らかに乱用身体依存への注意促している。日本医薬品添付文書でも同様に依存と、不眠から発作までを含めた離脱症状注意し慎重な減量促している。1980年代イギリスヘザー・アシュトンによるベンゾジアゼピン系離脱専門診療所開設される1988年には、英国医薬品安全委員会国内医師処方ガイドライン送付しベンゾジアゼピン系処方は4週間以内にすべきとした1996年には、世界保健機関ベンゾジアゼピン合理的な使用に関するガイドライン出版し処方30日以下にすべきであるとした。この報告書では、具体的な離脱方法としてヘザー・アシュトン論文出典とし、全体の量の50%数日減量できるが、次の25%は数週間までを必要とすることがあり、最後残り25%は6カ月までを要する場合があり、まれに入院要し個々人沿った管理必要性示されている。また半減期が短い薬剤は、長時間型に置換することにも言及している。 2002年には、ヘザー・アシュトンによる『ベンゾジアゼピン-それはどのように作用し離脱するにはどうすればよいか』(Benzodiazepines: How They Work and How to Withdraw)がオンライン入手可能となる。邦訳2012年8月公開され、これは出典論文省略され新たな付記存在する内容としては、離脱管理するために長時間型のジアゼパム置換しジアゼパムが10mgになるまで週あたり残り10%減量するといった、1996年世界保健機関よるものよりさらにペース落とした方法紹介されている。 国内外診療ガイドライン比較すれば以下のようになる2012年の日本うつ病学会うつ病診療ガイドラインは、そもそも軽症うつ病では安易な薬物療法選択避け姿勢優先されているが、薬物療法抗うつ薬基本とし、ベンゾジアゼピン併用するとしても単剤かつ必要最小限とし、常用依存注意すべきとしている。 2013年の日本睡眠学会による診療ガイドラインでは、多剤併用によりさらなる有効性があるというよりは副作用頻度高めるのでできるだけ避け臨床常⽤量を超える使用絶対に避け、休する場合複数離脱症状呈する患者2040%とされ、漸減法などを⽤いて慎重に減量し、例として1〜2週間ごとに1/4錠ずつ減量し問題なければこのように続行するなど時間をかけることが必要とされている。さらに、⻑期間、⾼⽤量多剤併⽤離脱症状危険因⼦であり、2錠以上あるいは2種類上である場合には緩やかな減量必要だとしている。 この診療ガイドライン医師向け解説では、単に1〜2週ごとに服用量の25%ずつ減薬するのが標準的であると書かれ「1錠の1/4」という情報消去されている。多剤では半減期が短いものを先に減量するのが望ましく、単剤の超短時間作用型である場合には長時間型に置換してもいいとされる。この診療ガイドライン睡眠薬離脱症状出現率の論拠は、非ベンゾジアゼピン系ゾピクロン(アモバン)の7.5mgかゾルピデム(マイスリー)の10mgを3カ月使用した後に徐々に減量した場合のものである説明のある通り非ベンゾジアゼピン系薬剤は、受容体サブタイプに対してより選択的に作用することで抗不安作用少ないといった改良され睡眠薬であり、依存と離脱症状の点において古いベンゾジアゼピン系よりも改良され利点がある。睡眠薬での懸念抗不安薬とは異なり長年わたった投薬からの急なは、低用量においてさえも、痙攣発作起こすなど非常に悲惨で危険となりうるため、低力価長時間型の薬剤使用し、特に何年使用した場合には数カ月わたって漸減すべきである2007年英国国立薬物乱用治療庁臨床ガイドラインでは、明らかに依存症状がある場合にはジアゼパム等価用量置換し減量開始し治療用量の場合には、はじめにジアゼパムで2〜2.5mg減量し症状出ればおさまるまで維持し2週間ごとに1日用量8分の14分の1から10分の1の間)で減量するとしている。 2012年コロンビア大学嗜癖物質乱用国立センターThe National Center on Addiction and Substance Abuse at Columbia University)による様々な薬物嗜癖についての科学的根拠精査は、ベンゾジアゼピンのような中枢神経抑制剤からの離脱は、アルコールにおける発作せん妄似た症状により一部では致死的となる場合があり、離脱症状一般的には1014日だが半年程度持続することもあるため、数週間から数カ月わたって漸減すべきであり、選択肢としてクロルジアゼポキシドクロナゼパムのような長時間型の薬剤処方することもあるとしている。 アメリカ精神医学会APA)による2009年パニック障害ガイドラインでは、主とする治療薬抗うつ薬となるが、初期ベンゾジアゼピン使用して身体依存注意して2〜3か月をめどとし、中止は2〜4カ月わたって週に10%減量超えないように漸減中止するイギリスでは『英国国民医薬品集』(British National Formulary)にて漸減推奨している。英国国立医療技術評価機構NICE)の2004年不眠症診療ガイドラインでは、処方は4週間限度とし、かつベンゾジアゼピン慢性的使用者1030%が身体的依存生じ半数離脱症状経験する記されている。 イギリスでは、フルニトラゼパム(サイレース、ロヒプノール)はNHSブラックリスト載っており国民保健サービスでは処方できないアメリカで医薬品として認可されておらず、国際的にも、1995年には他のベンゾジアゼピンよりも強い乱用傾向のため向精神薬に関する条約スケジュールIIIへと規制が1段階昇格している。 対照的に日本ではフルニトラゼパム利用可能である上に、厚生労働省研究において、睡眠薬基準フルニトラゼパム等価換算しているし、2010年精神科における2534名の処方歴から実際に26.3%と最も多い比率処方されている。睡眠薬/抗不安薬ジアゼパム等価換算し、1剤では平均8.6mg、同様に2剤で17.3mg、3剤で25.8mg、4剤で38.1mg、5剤は48.6mg、6剤以上では72.1mgである。多剤併用では、高力価のベンゾジアゼピン使用や、3剤以上とですでに高用量となっている場合注意が必要である。 ジアゼパムでは30〜40mgからの中止によってせん妄痙攣発作生じやすい。アルコールなどの併用除外してベンゾジアゼピン依存症だと同定され108人のうち高用量から突然断となった12%(13人)にせん妄痙攣生じせん妄10%11人)、痙攣が3%(3人)である。別の調査では、ベンゾジアゼピン一年上の使用者離脱反応として、7%に精神病症状、4%にてんかん発作生じている。 『精神障害の診断と統計マニュアル第5版DSM-5)には、ジアゼパム換算して15mgの「少量ママ〕」でも、か月にわたり毎日服用していれば離脱生じることが報告されており、換算40mgでは臨床的離脱症状起こしやすく、100mgではせん妄痙攣を、よりおこしやすいことが記載されている。 明確に用量からの離脱言及したものは、上述したヘザー・アシュトンの『ベンゾジアゼピン』や、2007年英国国立薬物乱用治療庁臨床ガイドラインや、2012年英国精神薬理学会(BAP)の物質使用障害に関する科学的根拠に基づくガイドライン、また2009年世界保健機関による薬物依存離脱の管理のための臨床ガイドラインがある。 『ベンゾジアゼピン』はジアゼパム換算して100mgを超えるケースにも詳細に言及し、またもっとも遅い減量ペースであるが離脱症状長期化するのを避けることに焦点当てているためである。 イギリス国民保健サービス臨床ガイドラインでは、ジアゼパム換算して30mg以上はごくまれにしか処方されるべきでなく、離脱目的として短期間に限るべきとしている。ジアゼパム換算して50mg以上のような非常に高用量場合専門家による評価必要だとしている。 英国精神薬理学会のものは、単に長期的に処方され治療用量の依存と、高用量となりがちな処方薬誤用違法な乱用を伴う依存区別し後者先に治療用量に減量することが目的であるとしている。その具体的な手法には言及していない。ジアゼパム換算して30mgの高用量は滅多に処方されるべきではないとし、この量は非常に高用量となったベンゾジアゼピンからの離脱痙攣予防するのに十分な量であるためである。 世界保健機関ガイドラインは、ベンゾジアゼピンは数週間依存形成し離脱症状重症度変動激しいため離脱尺度による計測推奨できないとしている。また、最も安全な離脱の管理法は、用量徐々に減量することであるとし、このことで離脱症状軽減し発作発症予防できる。換算超えて最大40mgまでの等価用量ジアゼパム1日3等分して投与し置換して、4〜7日続け安定化させる。その後は、低用量と元が40mg以上だった高用量とに漸減計画分かれこれに従って1〜2週間ごとに減量していき、症状には波があるので症状弱まるまで現行の用量維持するとしている。(最大でも40mgの高用量ジアゼパムアルコール離脱の管理においても適切な量である) 長時間型のジアゼパム置換し、昼、朝、夜の順で減量し減薬していく方法は、ヘザー・アシュトンの『ベンゾジアゼピン』と世界保健機関診療ガイドラインとで共通し、夜を最後に回す理由アシュトンによれば睡眠の為である。この2つ参考にすれば減量幅やペース個々症状重症度合わせて変化するだろうが、おおよそ以下のような手順である。 朝昼晩合計ジアゼパム換算短時間型A100% 短時間型A100% 中間型B100% 20mg 短時間型A100% 短時間型A100% 中間型B50%ジアゼパム5mg 20mg 短時間型A100% 短時間型A100% ジアゼパム10mg 20mg ジアゼパム5mg ジアゼパム5mg ジアゼパム10mg 20mg ジアゼパム5mg ジアゼパム2.5mg ジアゼパム10mg 17.5mg ジアゼパム5mg ジアゼパム10mg 15mg ジアゼパム2.5mg ジアゼパム10mg 12.5mg ジアゼパム10mg 10mg ジアゼパム7.5mg 7.5mg ジアゼパム5mg 5mg 夜10mgのみとなってからの減量幅はアシュトンの『ベンゾジアゼピン』では1mgずつ、また13症例例示されている。米国NPO離脱支援団体 (英語)では、微量づつ減量していくマイクロテーパリング法(英語) (日本語)を紹介している。 『精神科救急のすべて』(Handbook of Emergency Psychiatry)は、救急医療におけるものだが、ベンゾジアゼピンを含む鎮静催眠剤離脱アルコール同様の処置が必要であるとし、バルビツール酸系フェノバルビタール置換や、ベンゾジアゼピン系クロルジアゼポキシドクロナゼパムへの置換候補として挙げ1日服用量をフェノバルビタール等価換算し1日3分割して投与する方法紹介している。しかし、すでに見てたように通常ベンゾジアゼピン系において用いられるのはバルビツール酸系ではなくベンゾジアゼピン系である。 2007年イギリス薬物依存臨床ガイドラインは、重篤離脱症状呈し対処されていない患者は、症状緩和のために用量増加させる必要があるかもしれないとしている。 他の様々な薬物併存しケース治療の科学的根拠比較については、英国精神薬理学会のガイドライン言及している。『精神科救急のすべて』は、アルコール違法薬物含めた併存し離脱における救急状態について、実際救急医療に基づき言及している。精神科多剤大量処方によって複雑な多剤処方となっている場合減量について、笠陽一郎の『精神科セカンドオピニオン』に様々な事例紹介されている。

※この「歴史とガイドライン」の解説は、「ベンゾジアゼピン離脱症候群」の解説の一部です。
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