権利の性質
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/05 08:10 UTC 版)
使用者は、その雇入れの日から起算して6箇月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない(第39条第1項)。1994年(平成6年)4月の改正法施行により、法制定当初からの「1年間継続勤務」から「6箇月間継続勤務」に要件を緩和した。 さらに1年間、8割以上継続出勤するごとに有給休暇は10労働日に加えて勤続2年6箇月目まで1労働日ずつ加算して付与され、勤続3年6箇月目からは2労働日ずつ加算して付与される。勤続6年6箇月経過時には20労働日に達し、以降は1年間の継続勤務ごとに20日を付与すればよい(第39条第2項)。「8割出勤」を条件としているのは、労働者の勤怠の状況を勘案して、特に出勤率の低い者を除外する立法趣旨であるとしているが(八千代交通事件・最判平成25年6月6日、平成25年7月10日基発0710第3号)、「出勤日数を年休付与の条件とすることはもはや時代遅れともいえる」と学説はこの解釈を批判している。 付与日数は、現行法では具体的に以下の表の通りである。この日数はあくまで法定の最低基準(第1条)であり、これを減ずることはできない。 継続勤務年数0.5年1.5年2.5年3.5年4.5年5.5年6.5年以上法定最低付与日数10日 11日 12日 14日 16日 18日 20日 「雇い入れの日」は雇用開始日から起算する。雇用開始日は本採用の日ではなく、試用期間があったならその試用期間の開始日が雇用開始日である。雇い入れ年月日の判然としない場合、事業者においてこれを確認する義務がある。 「継続勤務」とは、在籍期間をいうため、雇用形態は要件に求められていない。継続勤務かどうかについては、単に形式的にのみ判断すべきものでなく、勤務の実態に即し実質的に判断すべきものである(昭和63年3月14日基発150号、平成16年8月27日基発第0827001号)。したがって、正社員だけではなく非正規社員(派遣社員、契約社員、パートタイマー、アルバイトなど)も、この条件を満たせば例外なく年次有給休暇の権利は法律上当然に成立する。短期間の契約期間が更新され6か月以上に及んでいる場合であっても、雇入れの日から起算して6か月間継続勤務した場合は法に定めるところにより年次有給休暇を付与する必要がある(平成16年8月27日基発第0827001号)。アルバイトを正社員に切り替えたような場合や、会社が解散し権利義務関係が新会社に包括承継された場合には、実質的に労働関係が継続している限り勤務期間は通算される。会社が解散等して権利関係を継続しない別法人に移行した場合には、新たな法人に新規に雇われた扱いとなり、年次有給休暇は継続しない。また私傷病により休職していても、復職した場合は休職期間も継続勤務に含む。会社を退職後、一定期間後に同じ会社に勤めた場合には、退職前の雇用と再度の雇用が継続していると判断される特別な事情がなければ、再度の雇用期間から計算し、通算はされない。派遣労働者については、派遣元の使用者が年次有給休暇を与えなければならない。なお、派遣労働者が派遣元との雇用関係を終了させ新たに派遣先で雇用された場合については、派遣元での在籍期間は派遣先に係る継続勤務として扱わなくても差し支えない。 「全労働日」とは、就業規則その他により労働義務のある日を指す(昭和33年2月13日基発90号)。したがって、総暦日数から所定の休日(休日労働をさせた日を含む)、代替休暇取得日、正当な争議行為の日、公民権の行使・公の職務執行の日(第7条)を除いた日数となる。労働者の責に帰すべき事由によるとはいえない不就労日は、2.に該当する場合を除き、出勤率の算定に当たっては、出勤日数に算入すべきものとして全労働日に含まれるものとする。例えば、裁判所の判決により解雇が無効と確定した場合や、労働委員会による救済命令を受けて会社が解雇の取消しを行った場合の解雇日から復職日までの不就労日のように、労働者が使用者から正当な理由なく就労を拒まれたために就労することができなかった日が考えられる(平成25年7月10日基発0710第3号)。 労働者の責に帰すべき事由によるとはいえない不就労日であっても、次に掲げる日のように、当事者間の衡平等の観点から出勤日数に算入するのが相当でないものは、全労働日に含まれないものとする。不可抗力による休業日 使用者側に起因する経営、管理上の障害による休業日 正当な同盟罷業その他正当な争議行為により労務の提供が全くなされなかった日 「出勤日」には、出勤したとみなす休業日を含む。具体的には、業務上の負傷による休業期間、育児休業(育児介護休業法第5条、平成5年7月1日発基60号)、介護休業(育児介護休業法第11条)、産前産後休業期間(第65条、昭和23年7月31日基収2675号)、年次有給休暇取得日(昭和22年9月13日発基17号)を指す。一方、休日労働をさせた日、生理休暇(第68条)、子の看護休暇(育児介護休業法第16条の2)、介護休暇(育児介護休業法第16条の5)を取得した期間については出勤したものとしては扱われない(第39条第8項)。 「8割以上出勤」について、8割以上出勤しなかった場合は、その年の分は付与されないが、そのことによって付与日数が変わるわけではない。したがって、勤続1年目出勤率8割以上、2年目8割未満、3年目8割以上の労働者に対しては、3年目の有給休暇はゼロ、4年目の有給休暇は12日(11日ではない)となる(昭和22年11月26日基発389号)。 中途採用者が多い等、権利発生日の異なる者が大勢いる場合、事務の煩雑をさけるため年1回の基準日を設けて一斉に付与してもよい(昭和23年3月31日基発513号)。しかし、入社日の違いによって一時的にでも法の定める休暇の基準を下回る労働者が発生してはならない。したがって、勤続1年未満の労働者に対しては、使用者の負担において残余の日数についてはすべて出勤したものとみなして年次有給休暇を与えなければならない。また勤続1年未満の労働者に対して、それまでの期間に出勤率8割以上の者のみに年次有給休暇を与えることは、勤続1年に達し出勤率8割に達した者が年次有給休暇を請求してもそれが与えられないこととなり、違法となる場合がある。 上記を超える日数を労使間で協約しているときは、その超過日数分については、第39条によらず労使間で定めるところによって取り扱って差支えない(昭和23年3月31日基発第513号、昭和23年10月15日基収3650号)。なお、労働基準法上は最低基準日数分と超過日数分との扱いを特に区別していないため、就業規則等で区別して扱う旨を定めていないかぎり、両者は同様に取り扱われるものと推定されると解される。人事院「令和元年度民間企業の勤務条件制度等調査」によれば、有期雇用従業員(労働時間が正社員の4分の3を超える従業員)を雇用する仕組みがある企業のうち、年次有給休暇が雇用当初から付与される企業の割合は20.0%となっている。また、年次有給休暇が雇用当初に付与される企業のうち、「年次有給休暇が雇用当初に付与されるための条件がない」とした企業の割合は82.7%となっている。さらに、有期雇用従業員の年次有給休暇が雇用当初に一律の日数で付与される企業について、その日数をみると、「10日」としている企業の割合が65.4%と最も多くなっている。
※この「権利の性質」の解説は、「年次有給休暇」の解説の一部です。
「権利の性質」を含む「年次有給休暇」の記事については、「年次有給休暇」の概要を参照ください。
権利の性質
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/07 02:47 UTC 版)
個別的および集団的自衛権行使の要件要件個別的集団的必要性 均衡性 攻撃を受けた旨の表明 援助要請 ニカラグア事件判決によると、で示した要件のうちいずれかひとつでも満たさない場合には正当な自衛権行使とは見なされない。 国家の自衛権は、国際慣習法上、すでに19世紀には、自らの権利その他の利益に対する重大な損害を排除するために取ることのできる正当な手段として認められていたといわれるが、主権国家の権利として容認されていたこの自衛権とは、国連憲章にいうところの個別的自衛権である。20世紀、特に第一次世界大戦以降は、この自衛権の行使は次第に、不正な侵害の全てに対してではなく、武力攻撃による権利・利益の侵害に対処する場合に限定して容認されるようになっていき、国連憲章に至ったとされる。個別的自衛権は国連憲章成立以前から認められた国家の慣習国際法上の権利であり、上記の国連憲章第51条において個別的自衛権を「固有の権利」としているのはこの点を確認したものである。 このように個別的自衛権が国際法上も長い伝統を有する概念であるのに対して、集団的自衛権は、国連憲章に現れるまで、国際慣習法上の権利としては論じられたことがないものであった。こうした新たな権利が個別的自衛権と並んで国家の「固有の権利」と位置づけられるに至った背景には、国連憲章第53条において、加盟国が地域的取極に基いて強制行動を取るためには安全保障理事会の許可を得なければならない旨が定められたことに対して、ラテンアメリカ諸国が強い反発を見せたことがあるとされている。 集団的自衛権が攻撃を受けていない第三国の権利である以上、実際に集団的自衛権を行使するかどうかは各国の自由であり、通常第三国は武力攻撃を受けた国に対して援助をする義務を負うわけではない。そのため米州相互援助条約、北大西洋条約、日米安全保障条約などのように、締約国の間で集団的自衛を権利から義務に転換する条約が結ばれることもある。国際慣習法上、相手国の攻撃が差し迫ったものであり他に選択の余地や時間がないという「必要性」と、選択された措置が自衛措置としての限度内のものでなければならないという「均衡性」が、国家が合法的に個別的自衛権を行使するための条件とされる。 1986年、国際司法裁判所はニカラグア事件判決において、集団的自衛権行使のためには上記のような個別的自衛権行使のための要件に加えて、武力攻撃を受けた国がその旨を表明することと、攻撃を受けた国が第三国に対して援助要請をすることが、国際慣習法上要件とされるとした。第三国の実体的利益に対する侵害が存在するか否かという点を要件とするかについては現在も意見の相違がある。つまり、第三国の実体的利益に対する侵害が集団的自衛権行使の要件として必要とする立場では第三国も攻撃を受けた国と同様に単独で個別的自衛権を行使できる場合にしか集団的自衛権行使は認められないとするのに対し、第三国の実体的利益に対する侵害が要件として不要とする立場では集団的自衛権は攻撃を受けた国の武力が不十分である場合に国際平和と安全のため行使される共同防衛の権利であり、第三国の実体的利益への侵害は無関係であるとする。ニカラグア事件国際司法裁判所判決もこれらのうちいずれの見解を採用したものであったのか明確ではない。
※この「権利の性質」の解説は、「集団的自衛権」の解説の一部です。
「権利の性質」を含む「集団的自衛権」の記事については、「集団的自衛権」の概要を参照ください。
- 権利の性質のページへのリンク