権利の全部が他人に属する場合
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/20 22:59 UTC 版)
「担保責任」の記事における「権利の全部が他人に属する場合」の解説
旧561条は権利の全部が他人に属する場合の担保責任について定めていた。無過失責任であり売主の過失は不要である(通説・判例。大判大10・6・9民録27輯1122頁)。 契約解除権 上の場合において給付義務者(売主)がその権利を相手方(買主)に移転できない場合は、相手方(買主)は契約の解除ができる(旧561条前段)。催告は不要である。移転不能か否かは社会観念・取引通念によって判断される。また、移転不能は原始的不能に限らず後発的不能でもよい(大判大10・11・22民録27輯1978頁、最判昭25・10・26民集4巻10号497頁)。 買主に帰責事由があるときは解除権は認められない(通説・判例。最判昭17・10・2民集21巻939頁)。相手方(買主)が権利者から直接目的物の権利を譲り受けたために給付義務者(売主)が給付義務を履行できなくなったときは相手方(買主)に解除権は認められない(大判昭17・10・2民集21巻939頁)。 損害賠償請求権 相手方(買主)は目的物が他人の権利であることを知っていたときは損害賠償の請求をすることができないが、知らなかった場合には損害賠償を請求できる(旧561条後段)。解除権と併せて行使しうる(通説)。 期間制限 旧561条の担保責任の期間制限については特に定められていなかった。一般には旧563条の場合と異なって権利が他人に帰属するものであることの立証は容易であり、権利行使期間を短期間に限定する必要がないことが理由とされる。しかし、このような説明については説得的な正当化とはいえないとの指摘もあった。期間制限について特に定めがないことから、一般原則に従って10年の消滅時効(167条1項)にかかるとされていた。 善意の売主の保護 給付義務者(売主)が他人の権利であることを知らなかった場合(善意)は、給付義務者(売主)が契約を解除できる(旧562条)。ただし、先に述べた通り、この旧562条は善意の売主の保護のための規定であり、厳密には担保責任について定めた規定ではない。 なお、他人物売買において追奪担保責任と債務不履行責任は互いに成立要件に差異があることから要件を満たす限りいずれを主張することもできるとされていた。また後発的不能の場合に売主に帰責事由がある場合には、旧561条の担保責任のほか債務不履行責任を追及しうるとされていた(最判昭41・9・8民集20巻7号1325頁)。
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