権利の一部が他人に属する場合
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/20 22:59 UTC 版)
「担保責任」の記事における「権利の一部が他人に属する場合」の解説
旧563条は売買等の有償契約の目的である権利の一部が他人の権利であるため、給付義務者(売主)がその部分の権利を相手方(買主)に移転できない場合の担保責任について定める。移転不能の意義は旧562条の場合と同じである。 代金減額請求権 相手方(買主)はその不足する部分の割合に応じて代金の減額を請求できる(旧563条第1項)。代金減額請求権は本質的には契約の一部解除である。客観的価格の均衡が成立すべきであり代金減額請求において相手方の善意・悪意は問わず、売主の帰責事由も不要である。代金を支払済の場合にも返還請求しうる。 契約解除権 残存する部分のみであれば相手方(買主)がこれを買い受けなかったときは、善意の買主は契約を解除できる(旧563条第2項)。悪意の買主は移転不能を予期しえた立場にあることから解除権は認められていなかった。 損害賠償請求権 相手方(買主)は、権利の一部が他人の権利であることを知らなかった場合のみ、損害賠償を請求できる(旧563条第3項)。 期間制限 買主が善意であったときは事実を知った時から、悪意であったときは契約の時から、それぞれ1年以内に行使しなければならないとされていた(旧564条)。ここでいう「事実を知った時」とは相手方(買主)が給付義務者(売主)の担保責任を追及しうる程度に確実な事実関係を認識するに至った時点をいう(最判平13・2・22判時1745号85頁)。ただし、相手方(買主)が事実を知るに至った場合であっても、その責めに帰すことのできない事由によって給付義務者(売主)が誰か知らない場合には、その売主を知った時となる。 判例によれば、この期間内に裁判外で権利を行使すればそれによって生じる請求権はそこから一般の消滅時効10年にかかるという(大判昭10・11・9民集14巻1899頁、最判平4・10・20民集46巻7号1129頁)。しかし、このような解釈は法律関係の早期の安定という観点から担保責任の期間を短期にしている民法の趣旨を没却するものであるとの批判があり、学説には、この期間は除斥期間であるとする説、除斥期間でかつ裁判上の請求を要するとする説、消滅時効の時効期間で権利行使の結果として発生する権利もこの時効期間にかかるとする説などの諸説がある。担保責任によって生じる損害賠償請求権にも消滅時効の規定の適用があり,この消滅時効は買主が売買の目的物の引渡しを受けた時から進行すると解するのが相当であるとした判例がある(最判平13・11・27民集55巻6号1311頁)。
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