東日本大震災・福島第一原発事故に関する記述
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/27 08:31 UTC 版)
「美味しんぼ」の記事における「東日本大震災・福島第一原発事故に関する記述」の解説
『ビッグコミックスピリッツ』2014年22・23合併号に掲載された「美味しんぼ 第604話 福島の真実その22」で、山岡や海原ら登場人物が福島第一原子力発電所に取材に行った後、疲労感を覚えたり原因不明の鼻血を出したりするなど体調の異変を訴え、実際の前福島県双葉町長である井戸川克隆が「福島では同じ症状の人が大勢いますよ。言わないだけです」と語る場面が描かれた。これに対して読者から「風評被害を助長する内容ではないか」との批判が寄せられ、スピリッツ編集部は「雁屋の実体験に基づいた表現を尊重したが、風評被害を助長するような意図はない」との声明を出した。これ以前にも雁屋は自身のブログ上で同様の投稿をしており、この件に関して「私は自分が福島を2年かけて取材をして、しっかりとすくい取った真実をありのままに書くことがどうして批判されなければならないのか分からない」と語っている。後に「責任は全て私にあり、スピリッツ編集部に抗議するのはお門違い」とした。 ただし井戸川が体験したという鼻血問題のメディア提示はこの作品が初出ではない。2012年4月25日参議院の憲法審査会に町長の井戸川は参考人として招致されており、出席した自民党議員の山谷えり子は審査会の最後に、雑誌に掲載されていたというほぼ同一の井戸川の意見を引用し、政府に「双葉郡民は憲法上の国民ではないのか」と対策を迫っているが、この際の雑誌掲載や国会での意見引用に関しては政府も自民党も県も双葉町も一切問題としていない。 一方、双葉町は2014年5月7日に小学館に対して抗議文を提出し、抗議文中において双葉町に対する公的な取材は全くなかった旨を示している他、同町に一部の読者から「福島の農産物は買わない」「福島に住めない」などといった苦情のメールが寄せられ、「県民や町民への差別を助長させかねない」と述べている。同日、福島県のサイトにも抗議文が公開された。 環境大臣の石原伸晃は翌9日の記者会見で鼻血と原発事故の因果関係を否定した上で、『美味しんぼ』の描写によって風評被害を呼ぶことはあってはならないと述べた。 さらにこの続編(5月12日発売号)で、井戸川が主人公らに対しこの鼻血について「(福島第一原発で)被ばくしたからですよ」と説明する件があるほか、福島大学の准教授の荒木田岳が除染作業の経験を基にして「福島を広域に除染して、人が住めるようにするだなんてできないと思います」と述べる場面が描かれた。これに関連して福島県は「『美味しんぼ』において、作品中に対する特定個人の見解が、恰も(あたかも)福島の現状そのものであるような印象を読者に与えかねないとする表現があり、県内外の多くのみなさん方に不安と困惑を生じさせており、福島県としても大変危惧しております。」との見解を示した。更に同県知事・佐藤雄平は同日の会見で「登場人物が"福島県内には住むな!!"とする場面について、風評被害を助長するような印象で残念だ」と述べている。スピリッツ編集部はこちらについても「雁屋の意向を尊重し掲載した。騎西高校に避難した方が登場するが、鼻血と疲労の話とは関係ない。特集記事を25号に掲載するのでそれまで待って欲しい」と声明を出している。福島大学の荒木田が作中で述べたことについては、福島大学側では「個人の見解で、大学としての見解ではない」と公表している。 上記2014年5月12日発売号において、被災した3県のがれきなどの廃棄物の処分を行っていた大阪市でも舞洲などの焼却場付近で約8割が健康不安を訴えているとする旨の表現が掲載された。当時の同市長・橋下徹は「漫画でもやりすぎ。作者が取材に基づいているといってるので、事実なら根拠を示すべき」と述べている。 日本放射線影響学会はこの問題について「成人で最も低い線量で現れる影響は、睾丸への被ばくによる一時的不妊で、しきい線量は100 mGyと推定されています(国際放射線防護委員会2007年勧告, ICRP Publication 103)。これより低い線量の被ばくでは、鼻血や全身倦怠を含めて臨床的に観察可能な放射線が直接原因となる身体的影響は報告されていません。」と説明している。 なお環境省では2014年5月8日より、これらの事柄に関して省としての見解を示したページを公開している。 ビッグコミックスピリッツ編集部は、5月19日発売予定号で「ご批判、お怒りは真摯に受け止めて、表現のあり方を今一度見直していく」とする見解を示すとともに、福島の真実編が終了する次号から本作は一時休載に入ることを発表した。本作は元々1つのシリーズが終了する区切りで休載期間が入ることが過去何度もあったが、今回の休載も本問題発生以前より予定されていたことであり、原作者の雁屋哲も同月22日のブログで「休載は去年から決まっていた」と説明している。雁屋によると、福島の真実編は元から単行本2冊分(24話)で終わると決まっており、5月19日発売号の第24話までで予定通り終了したという。第22話が問題となり、読者から「圧力に負けないで勇気を持って書き続けて欲しい」との声が多く届いたが、その時点で既に原稿は最後まで出来上がっていたため「圧力に負けようにも負けようがなかった」と明かしている。 実際に鼻血が増加したか否かについては、第三者による以下の報告がある。2011年11月に岡山大学、広島大学、熊本学園大学のグループが共同で行った疫学的統計を元に、公表された報告書では、双葉町において、体がだるい、頭痛、めまい、目のかすみ、鼻血、吐き気、疲れやすいといった症状が他地域に比して明確に多かったとあり、熊本学園大の中地重晴教授は調査結果を2013年8月に双葉町に報告しているとの見解を示している。 また、2012年3月14日参議院の予算委員会において、自民党の熊谷大は3カ月間に延べ469名もの児童に鼻血を含む内科的症状が発生した旨が記載された、宮城県南地域に位置する小学校の保健だよりを示し、環境大臣の細野豪志に医学的対策を要求している。 一方、2014年5月30日には片山さつきが自民党環境部会で福島県相馬地方(相馬市、南相馬市、新地町、飯舘村)で行われた「住民の健康状態に関するアンケート結果」を公表。アンケートは「相馬地方市町村会」と「相馬郡医師会」に「事故前と比較して鼻血が出るようになったという症状を訴えた人がいたか」と聞いたもので、相馬地方市町村会では、2011年度に計8,695人、2012年度に計11,710人、2013年度に計11,705人の健康診断を行った結果、「鼻血が出るようになった」と回答した人はゼロであった旨を報告している。 なお、雁屋は「福島編」完結後に行うと告知していた一連の問題に関する取材の申し込み、抗議への対応など、自身の見解の表明延期をブログで明かした。雁屋は2014年5月22日付けのブログで「現在海外におり、個別の取材には対応できない。日本への帰国は早くとも7月末になる」とコメントしている。 2014年12月10日に発売された当作品の単行本・第111巻「福島の真実2」では、主人公が鼻血を出す場面こそ残されているが、問題となった被ばくとの因果関係のセリフなど約10か所以上が差し替えられた状態で発売され、一例としては医者が山岡に対して「福島の放射線と、この鼻血とは、関連付ける医学的知見がありません。」としたところが「お話の様子からでは、原発見学で鼻血が出るほどの線量を浴びたとは思えません。」と修正されている。また、巻末に編集部からの脚注として「表現意図をより明確にするために、登場人物のせりふを一部修正しています。」との訂正文と、放射能の影響などについての注意書きを掲載した。 雁屋は2015年2月に単行本『美味しんぼ『鼻血問題』に答える』を遊幻舎より出版。「福島の環境であれば、鼻血を出す人はいる」「私が伝えたのは真実です。『風評』ではありません」と述べており、『美味しんぼ』単行本の表現を修正したのは「証言者を守り、誤解を防ぐため」としている。なお、この本を出版している遊幻舎は、雁屋が自身の子育て本を出版するために設立した出版社で、同書は小学館とは無関係なので同書への意見は遊幻舎へ送るよう主張している。
※この「東日本大震災・福島第一原発事故に関する記述」の解説は、「美味しんぼ」の解説の一部です。
「東日本大震災・福島第一原発事故に関する記述」を含む「美味しんぼ」の記事については、「美味しんぼ」の概要を参照ください。
東日本大震災・福島第一原発事故に関する記述
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/31 23:58 UTC 版)
「そばもん ニッポン蕎麦行脚」の記事における「東日本大震災・福島第一原発事故に関する記述」の解説
「そば屋の3.11」から始まる会津シリーズ(単行本15 - 16巻収録)の第134話「会津そば-山都編(前編)」は2014年5月24日から同年6月9日までの期間限定で、Web上でpdf公開された。 本作掲載のビッグコミックと同じく小学館が発行する『ビッグコミックスピリッツ』に掲載された「美味しんぼ 第604話 福島の真実その22」での描写が物議を醸しており(美味しんぼ#東日本大震災・福島第一原発事故に関する記述参照)、同じ震災後の福島を描いた作品(それ以前にも第9巻収録の「山形・天保そば」でも震災や原発事故を扱っている)として話題となった。毎日新聞もニュースサイトで「福島をどう描くか」と題した特集を組んでおり、「福島をどう描くか:第2回 漫画「そばもん」 山本おさむさん」として本作を取り上げている。
※この「東日本大震災・福島第一原発事故に関する記述」の解説は、「そばもん ニッポン蕎麦行脚」の解説の一部です。
「東日本大震災・福島第一原発事故に関する記述」を含む「そばもん ニッポン蕎麦行脚」の記事については、「そばもん ニッポン蕎麦行脚」の概要を参照ください。
- 東日本大震災・福島第一原発事故に関する記述のページへのリンク