散文のエッダとは? わかりやすく解説

スノッリのエッダ

(散文のエッダ から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/06 04:09 UTC 版)

『エッダ』の表紙。18世紀アイスランド写本『ÍB 299 4to』(アイスランド国立大学図書館英語版所蔵)より。

スノッリのエッダ古ノルド語: Snorra Edda、略記号: SnE)とは、1222年ごろにアイスランド詩人スノッリ・ストゥルルソンが著したの教本である。

若手の詩人たちに北欧神話の技法を教授する目的で書かれた。大変よくまとまっている上に、失われたエッダ詩(古エッダ)やスカルド詩も数多く含まれており、この本なくして北欧神話、ひいてはゲルマン神話を現代に復元することはほぼ不可能であると言ってよい。

元々は単なる「エッダ」という名前であったが、この作品に引用される歌謡の形式もエッダと呼ばれるようになったため、区別して「スノッリのエッダ」あるいは「新エッダ」「散文のエッダ」などと呼ばれるようになった。

『エッダ』という題名、および作者がスノッリ・ストゥルルソンであるという事実は、『エッダ』の写本の一つ『ウプサラ写本』の記述に基づいている[1][2]

内容

序文英語版、および3部のそれぞれ完全に独立した作品からなる。

  1. ギュルヴィたぶらかし (Gylfaginning)
  2. 詩語法 (Skáldskaparmál) - 『詩人の言葉』とも。
  3. 韻律一覧英語版 (Háttatal)

各部は異なる年に書かれており、最初に書かれた第三部は、1222年ないし3年、第一部、第二部は早くても1225年である[3]

序文

序文ではスノッリの神話観が語られているが、随所にキリスト教の影響が見られ、またオーディントローヤ出身の人間の王とするなど、エウヘメロス的解釈が垣間見られる。ただし、この序文がスノッリの手によるものか、疑問視する声もある[4]

ギュルヴィたぶらかし

魔術王ギュルヴィが変装してアースガルズに赴き、そこでオーディン神らから古代の伝承や予言を語られる、という筋立て。古エッダ民間伝承に基き、世界創世人間の創造、神々の一覧、未来に起こるであろう最終戦争ラグナロクなどのことがまとめられている。

詩語法

の神ブラギエーギル神に詩の技法の説明をするという筋立て。完全に若手のスカルド詩人)のための作品で、昔のスカルド詩の引用や、ケニングという技巧の説明などに終始する。だが、途中で神代の興味深い挿話が何篇か紹介されており、神話の資料としても欠かせない。

韻律一覧

著者スノッリがさまざまな詩形を織り込んで作った詩で、いわば詩の手本とも言うべきものである。ノルウェー滞在時の厚遇に対し、スノッリがノルウェー王ホーコン4世とスクーリ公の偉業を讃えて贈ったものであるが、全102聯(れん)の各聯全てが別の韻律と詩形を用いられており[5]、著者スノッリが教育者としてだけではなく、詩人としても天才的であることが示されている。

写本

『スノッリのエッダ』の写本の系統樹

『スノッリのエッダ』には主に以下の4種の写本が存在する[6]

  1. ウップサーラ写本スウェーデン語版(Codex Upsaliensis、写本番号: DG 11、略記号: U.) - 4つの内最も古い写本で、1300年頃に成立。ウプサラ大学図書館所蔵[7]
  2. (スノッリのエッダの)王の写本(Codex Regius、写本番号: GkS 2367 4to、略記号: R.) - 最も保存状態の良い写本で、おそらく1325年頃に成立しただろうと考えられている。アールニ・マグヌスソン研究所英語版所蔵[8]
  3. ヴォルム写本(Codex Wormianus、写本番号: AM 242 fol、略記号: W.) - 1350年頃に成立。コペンハーゲンの図書館にて保管[9]
  4. ユトレヒト写本スペイン語版(Codex Trajectinus、写本番号: Traj 1374x または Utrecht 1374、略記号: T.) - 1600年頃の紙写本。元は13世紀ごろの写本ではないかと考えられている。ユトレヒトの大学図書館にて保管[10]

また以下の断片的な写本が参照されることがある[11]

  1. AM 748 I b 4to (略記号: A.)[12]
  2. AM 757 a 4to (略記号: B.)[13]
  3. AM 748 II 4to (略記号: C.)[14]

日本語訳

  • 谷口幸男訳『エッダ 古代北欧歌謡集』新潮社、1973年 ISBN 4103137010
    • スノッリのエッダは第一部「ギュルヴィたぶらかし」のみ。
  • 谷口幸男訳「スノリ『エッダ』「詩語法」訳注」、『広島大学文学部紀要 特輯号』第43巻3号(1983年12月)
    • 第二部「詩語法」の全文訳注。
  • ステブリン・カーメンスキイ著、菅原邦城、坂内徳明訳『神話学入門』東海大学出版会 ISBN 4486005848
    • 巻末に第二部「詩語法」の抜粋訳。
  • 谷口幸男訳注「スノッリ・ストゥルルソン『エッダ』「序文」と「ハッタタル(韻律一覧)」」(一)~(三)、『大阪学院大学国際学論集』13(1) (2002年7月)pp. 203-30; 13(2)(2002年12月)pp. 125-54;14(1)(2003年6月) pp. 99-130.
    • 「序文」および第三部「韻律一覧」の全文訳注。

校訂版・日本語以外の翻訳

校訂版

英語訳

日本語・英語以外の翻訳

脚注

参考文献

関連項目

外部リンク


散文のエッダ

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ブラギ」の記事における「散文のエッダ」の解説

スノッリ・ストゥルルソンは『散文のエッダ』第一部『ギュルヴィたぶらかし』においてオーディントールバルドル次いでこのブラギについて語っている。 「ブラギはその知恵流暢な会話言語技巧とを知られている。彼は多くスカルド詩知り、後に詩は彼の名を取ってブラグ(bragr)と呼ばれ他者より卓越した雄弁有する男性もしくは女性は「ブラグの男、女」(詩人、女詩人)と呼ばれる彼の妻はイズンである」 さらにスノッリは同第二部『詩語法』でこう書いている。 「ブラギどのように呼ぶべきか、イズンの夫、最初詩人長い顎髭の神、顎髭ブラギオーディン息子と呼ぶ」 なおこの『詩語法』自体が、ブラギ海神エーギル詩の技法解説する会話体スタイル書かれている

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「散文のエッダ」を含む「ブラギ」の記事については、「ブラギ」の概要を参照ください。

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