全身性エリテマトーデス 合併疾患

全身性エリテマトーデス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2013/07/23 02:39 UTC 版)

合併疾患

一般に膠原病は、他の膠原病を合併しやすい傾向がある。もっとも多いのは抗リン脂質抗体症候群である。シェーグレン症候群も合併しやすい。そのほか皮膚筋炎多発筋炎全身性強皮症との合併もある。特に後者との合併は、それぞれの診断基準を完全に満たすならオーバーラップ症候群といわれるし、すべての診断基準を不完全にしか満たさないものの中には混合性結合組織病という別の疾患に診断されるものもある(この疾患が完全に別の疾患であるのか、単に各膠原病の不全型にすぎないのかは議論があるが、日本では別の疾患としてとらえられ、厚生省の特定疾患の一つに挙げられている)。

検査

  • 血液検査
  • 尿検査
  • MRI,CT,エコー
    • 血管病変の評価に有用。時に血管閉塞、梗塞巣なども認める。
脳梗塞、肺塞栓などが生命予後を左右する。

診断

通常アメリカリウマチ学会の診断基準に従って診断する。感度、特異度とも90%をこえるきわめて有用な診断基準であり、これの登場によって本症の臨床は大きく変化したと賞賛されている。また、特定疾患の申請においても本診断基準が採用されている。

経過

本症は慢性疾患である。2010年現在、この疾患を根治する治療法は見つかっていない。また、真摯な治癒努力にもかかわらず、急激な病気の勢いの増悪(「フレア・アップ」と呼ばれる)がおきることもあれば、適当にやっていても何も起こらない場合もある。上記の長い病変リストのうちどれかが急におこったり、急におさまったり、慢性症状となったり、中には病気としての勢いが終息した後も後遺症として残る場合がある。しかし、継続的に医療機関に受診していれば、今後新たな症状の発生を予測できなくとも、現段階で何かがおこりはじめているということについては予測することができる。そして早期の治療介入によって、うまく病気をおさえることは、現在の医療水準ではたいてい可能である。

病勢が悪化する原因はたいてい不明だが、日焼けしたりストレスにさらされたとき、サルファ剤を服用したとき(現在よく処方されている薬としては、糖尿病のスルホニルウレア剤など)には病勢が悪化しやすいと考えられている。

病気の勢いについて、医師の主観ではなく客観的に評価する試みがあり、SLEDAI(スレダイ)などといったスコアリングシステムを用いることがある。

当該疾患と妊娠との関係について、妊娠により本症状の勢いが悪化することが分かっている。したがって病気の勢いがコントロールされていないときに妊娠を計画することまたは無計画に妊娠することは勧められない。しかし、十分にコントロールされ、継続的に医療機関の管理を受けていれば、妊娠、健康な新生児の出産が十分可能であることが現在ではわかっている。

治療

本症はかつて死に至る病であったが、1950年代のステロイドの登場とともに生存率、生活の質のいずれにおいても劇的に改善した病気である。おそらくもっともステロイドの恩恵を受けた病気であると言えるだろう(その意味は、関節リウマチよりもずっと大きい)。下記の記述については一般的な事柄を書いたまでで、全般的に本疾患は患者個人個人によってあまりにも病気の性質が違いすぎるので、治療内容は医師団がそのとき、その病態、その個人に応じて決定するものである。

本症におちいった患者は、安定していても終生少量のステロイドを服用しつづける必要がある。これについては、厳密に科学的または疫学的な根拠があるわけではない。というのも、本症に対してステロイドの投与をやめてみる医者などというものが存在しないからである。とはいっても、自発的に内服をやめてしまった患者の観察などにより、おそらく終生のみ続けなければいけないであろうことは国際的なコンセンサスとなっている。このコンセンサスは強力であって、たとえば他の膠原病である皮膚筋炎多発性筋炎ベーチェット病などではステロイドをやめることは可能といわれているが、特に全身性エリテマトーデスにおいてのみ不可能であると考えられている。逆に、終生ステロイドを飲み続けていると、本症を完全におさえこんだまま一生を終えることはまれではないであろう。むしろそういったケースではステロイドの副作用{浮腫やうつ状態・白内障}が目立つことになるわけである。

本症を急激に発症した最初のときと、CNSループス、ループス腎炎や血液学的異常(血小板減少など)の急激な増悪(フレア・アップ)がおこったときには、強力な治療が行われる。高用量のステロイド内服、ステロイドパルス療法、シクロフォスファミドパルス療法などが行われ、そのほか病態に応じては血漿交換免疫グロブリン大量投与が行われることがある。また、アザチオプリンメトトレキサートシクロスポリンを使用する場合もあるほか、新しい治療法としてリツキシマブ造血幹細胞移植が脚光を浴びている(いずれも日本国内での適応はない)。いっぽう米国ではミコフェノール酸モフェチルが、副作用が少ない効果的な治療薬として注目されている(この場合の「副作用が少ない」とは基本的にはシクロフォスファミドの副作用を対照としたものだが、さらにはステロイドの副作用をこれら免疫抑制剤の併用によって減らしたいという思惑が、現在の欧米の膠原病診療全体の趨勢として感じられる。本邦では移植後のみ使用可能な薬剤)。日本ではタクロリムスがループス腎炎に対する適応症を有している。

発熱、皮膚症状の増悪などマイナーな病勢の悪化に対しては、中等量のステロイド投与や、ステロイドの軟膏を使用することが多いと思われる。関節痛に対しては非ステロイド系抗炎症鎮痛薬で様子を見ることもある。

そのほか病態に応じたさまざまな生活指導が行われる。たとえば、光線過敏症がある場合には日光を避ける生活が必要となる。腎症がわるければタンパク制限などが必要となる。

治療薬の副作用としてはステロイドによるものが有名である。たとえば肥満骨粗しょう症、骨壊死、高血圧高脂血症糖尿病白内障緑内障、易感染性、体液貯留傾向などが起こりうる。しかしそのほかの治療薬の副作用もじゅうぶん強い。非ステロイド系抗炎症鎮痛薬は消化管出血、肝機能障害腎機能障害シクロフォスファミドは骨髄抑制、、出血性膀胱炎、不妊症などがおこることがある。しかしいずれも必要性が勝っているから使用するのであり、そのような副作用のない代替薬といったものは存在しない(ミコフェノール酸モフェチルが、そういった意味で欧米で注目されているが日本では使用できない。ミコフェノール酸モフェチルの副作用は骨髄抑制、吐き気、下痢などである)。シクロフォスファミドの癌の副作用については持続的内服において報告されたもので、本症に対して一般的に行われているパルス療法では基本的にはおこらないであろうと考えられており、それを確認するためヨーロッパで大規模臨床試験が現在行われている。

また、近年は自己幹細胞の移植による治療法が研究されており、さらにヒトゲノムの解読により新たな治療法の研究が加速している。全身性エリテマトーデスに係る治療法は今まさにブレークスルーしつつある段階との指摘もある。

シクロフォスファミド(CYC)はループス腎炎に対して効果がある。
Houssiau FA et al. (2004) Early response to immunosuppressive therapy predicts good renal outcome in lupus nephritis: lessons from long-term followup of patients in the Euro-Lupus Nephritis Trial. Arthritis Rheum 50: 3934–3940 PMID:15593207。90人のループス腎炎患者を、日本で言うCYCパルスとCYCセミパルスとにランダムに振り分けたランダム化二重盲検試験。維持療法としてはアザチオプリン(AZA)を使用している。73ヶ月のフォローアップで、両群に有意な差はなかった。
ミコフェノール酸モフェチル(MMF)はシクロフォスファミド(CYC)と同等の効果があり副作用は少ない。
Ginzler EM et al. (2005) Mycophenolate mofetil or intravenous cyclophosphamide for lupus nephritis. NEJM. 353: 2219–2228. PMID:16306519。141人のループス腎炎患者を対象とし、MMFとCYCにランダムに振り分けたランダム化二重盲検試験。MMF群は、有意に完全寛解が多く、部分寛解は両群同等で、合計の寛解率は有意にMMF群のほうが高かった。MMF群には下痢の副作用が多いほか、CYCよりも目立つ有害事象はなかった。



  1. ^ The International Consortium for Systemic Lupus Erythematosus Genetics (SLEGEN). Genome-wide association scan in women with systemic lupus erythematosus identifies susceptibility variants in ITGAM, PXK, KIAA1542 and other loci. Nat Genet 2008;40:204-10.
  2. ^ Hom, G et al. Association of systemic lupus erythematosus with C8orf13-BLK and ITGAM-ITGAX. N Engl J Med 2008; 358: 900–9.
  3. ^ Graham, RR et al. Genetic variants near TNFAIP3 on 6q23 are associated with systemic lupus erythematosus. Nat Genet 2008;40:1059-61.
  4. ^ Han, JW et al. Genome-wide association study in a Chinese Han population identifies nine new susceptibility loci for systemic lupus erythematosus. Nat Genet 2009;41:1234-37.
  5. ^ Chiou SH et al. Pet dogs owned by lupus patients are at a higher risk of developing lupus. Lupus 2004; 13(6): 442-9.
  6. ^ 原文は英文


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